ボスコーン将軍出撃。
その報せを聞いた時のガンビーノの笑顔は見た事ないほど歪んでいた。
まあ元々強面だから余計にってのもあるんだろうけど…
城壁の持ち場で腰掛けて遠目に見えるチューダー軍と、背水の陣の鷹の団を眺めながらガンビーノの賭けを思い出してる時、それを邪魔する足音が近付いてきた。
「おおっ、カルテマ殿ではないか!ここにおられたか。いや〜奇遇ですな!」
「これは…アドン殿」
寝返りの交渉会議の場で顔合わせした時辺りからなにかと執拗に絡んでくるようになった男。
何か目に付くことをした覚えなんか無いんだけど。
「なにか御用ですか?生憎ですが貴族相手と言えど儀礼には疎いもので、失礼」
「いやいや気にする事はない!ところで、その…カルテマ殿は今は独り身だとか…?」
ガンビーノも言ってたがこの男はバカだ。
バーランとは毛色の違うバカらしいが私には同じにしか見えない。こういうバカを気に入るのはガンビーノの悪い所だ。
少なくとも私は空気の読めない男が根本的に苦手だ。
「それは…誰から?」
「バーラン殿から!」
アイツ次の戦場で殺してやる。
風がでて城の周りに砂埃が舞い上がり始めた頃、どっちから仕掛けたのか分からないが鬨の声と地響きが開戦を知らせてくる。
「始まった様ですよ?私の配置は此処ですけど貴方は内側でしょう。戻られては?」
「んむぅ……」
本気でガンビーノはこの男も
まぁ連れてくと言ってた以上はそうなんだろう。この男が着いてくるとは思えないんだけど…。
そもそもこの男は忠誠なんて物を持ち合わせてるのか?
「戻る前に1つ聞きたいんですがアドン殿、貴方は誰に忠誠を誓っているのですか?」
「む、急ですな……」
「どうなんです?」
少し迷ってる辺り、チューダー帝国に心酔してるってワケではなさそう…かな?
「そうだな、騎士の忠誠とは神と王に捧げる物ゆえに──」
違う。私が聞きたいのはそういう答えじゃない。
「貴方自身の事を聞いてるんですよ」
「……」
これは私の予想でしかないが、多分この男は生まれながらの貴族だった。だから階段式で騎士になったのかもしれない。
誰かの為にとか考えた事も無い人間が命を掛けた忠誠を誓うなんてありえないだろう。
ああ、そういう意味ではガンビーノの目は確かな物だ。
ボスコーンと違って追い詰められたら騎士やら忠誠なんてほっぽりそうな感じがする。
でもそろそろ敵の別働隊が来る頃合いだ。
これ以上話していられない、また機会があったらいろいろ聞いてみるのも悪くないかもしれない。
「失礼、ただの好奇心で聞いたんです。困らせるつもりは無くて」
「ああ…!構わないとも。言われてみるまで深く考えた事も無かった。いや、決して祖国を蔑ろにしてる訳では─」
「大丈夫ですよ、貴方を咎める人はここには居ませんから」
「カルテマ殿ッ!」
え、なに。なんで食い気味になってんの?
怖い怖い
「伝令です!カルテマ隊は即座に城門を閉じて敵の侵入を阻止しろとの事!以上」
「すぐにやる。そう伝えてくれ」
「はっ!」
アドンと別れるいい口実ができた。
足早に門に向かいながら今後の流れを思い返す。
ガンビーノの勘はやけに当たる。
でもそれが例の計画を必要とする程なのか私には分からない、今は不安だけど敵の別働隊が来ればきっとこの不安も晴れてくれるはず。
私達は一蓮托生。
今更逃げ出すなんてありえないでしょう
ガンビーノの死因の希望があれば(一応参考にします)
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