「っかー!あれがドルドレイかよ。デケーなぁおい」
「うるさいぞコルカス、私らは偵察で来てるのを忘れるな。ガッツでさえ騒いでないんだぞ」
「ケッ!」
「キャスカ、なんで俺と比べんだ?」
「? お前、敵がいたら迷わず突っ込んで行くじゃないか。1番偵察に不向きだと思ってるんだが何か間違ってたか?」
…間違ってねえな。
だけど今回に関しては突っ込むなんて馬鹿なマネはしねえ。なんせ相手は俺の育ての親にして鷹の団にならぶ
聞いた話じゃ『銀蜘蛛部隊』とか呼ばれて恐れられてるとか。
「それにしても…凄まじいな。なんだあの死体の山は」
「…えっぐいぜ。軽く万は死んでんじゃねーか?」
今、俺達の眼下に広がるのはドルドレイ要塞に辿り着くことなく死に絶えたミッドランド兵の死体の群。
要塞正面に幾重にも構えられた空堀、土塁、馬防柵、棘木に阻まれながら矢を受け死んでいった兵士達。
アイツらは知らなかったんだろう、ガンビーノの仕掛けた罠の効果を。
酷いところは死体が二重三重に折り重なっている。
突撃してどうにかできるものじゃ無いんだ、俺が1番よく分かってる。
「…戻ろうぜ、グリフィスには俺から伝える」
「ああ!?なんでテメーが言うんだよ!信用ならねぇ!」
「要塞正面に作られてんのはガンビーノが作った対人罠だ。城壁に近付く敵を殺す事だけを考えて作られてる。アレが側面に作られてねぇのも罠の内なんだよ」
「なんでお前がそれを知ってるんだ?戦ったことがあるのか?」
「…ガンビーノは俺の親父だからな」
「「はぁ!?」」
キャスカとコルカスが驚きの表情で俺を見てくる。
まあグリフィスにさえ言ってねえ事だから無理もねーか。
「だからグリフィスには俺から伝える。俺以上に親父を知ってる奴も居ねーからな」
「良いだろう。だが私も同席する」
まあそうだろうな。
2人から不信感が拭えてなさそうな雰囲気をバリバリ感じる。
「なら俺も同席してや─
「お前はいい。ガッツと喧嘩になるのがオチだ」
「はあ〜!?」
「…先いくぜ」
ったく、偵察に不向きなのはどっちだか。
……なんか…気が乗らねえなぁ。
〜〜〜◇ガンビーノ◇〜〜〜
「ふははははっ!良い!良いぞガンビーノ!」
「はあ…そりゃどーも」
これ以上ないくらいご機嫌なゲノン閣下。
その両隣には線の細い美少年達が侍る。いや、マジで美少年なんだよな、これが。
美少女侍らせるんならまだ分かるんだがこれはちょっと……わっかんねーな。
髭面醜男と美少年のデュフフハーレム展開とか貴腐人方にとってもエスケープ案件だろこんなん。
これが最高司令官かよ…。
いつもあんな感じなのか聞いた時、ボスコーン将軍が目ェ合わせてくれなかったくらいだからなぁ。
「あ〜閣下?ご機嫌な所悪いんですけどね。鷹の団がミッドランド軍と合流した件はどうされるんで?」
「ガンビーノ、貴様は心配性であるな。この要塞にはボスコーン将軍に紫犀聖騎士団、コボルイッツ家のアドンもおる。案ずるでない」
…ウッソだろお前。
ボスコーン将軍?説得のために援護射撃を…、なんで目をそらすんだよおい!
「お言葉ですが奴らは他の傭兵団と一線を画す "何か" がある。だからこれまで生き残ってきたんだ、侮るのは危険かと!」
呆れ混じりの怒りを声に乗せてゲノン総督にぶつけるが
「嗚呼そうだ、言い忘れておったわ。ボスコーン、ガンビーノ。鷹の団と剣を交えるにあたってグリフィスを殺す事は断じてならぬ!生け捕りにするのだ」
「…幾ら出してくれんです?」
「ガンビーノ!控えよ!」
「ボスコーン将軍、俺はまだ傭兵なんだぜ。正式に組み込まれたわけじゃねえ。金を求めて何が悪い」
それにこの命令だけは受けときてえ。
ボスコーンが拒否できない流れってのを作っちまえばこっちのもんよ。
悪ぃな、将軍。
「グリフィスを生け捕りにした暁には貴様の望む額を出してやるぞ」
「へへへ…そりゃどーも。お忘れなく…」
「…ッ。御意」
やったぜ。
後は鷹の団がどう出てくるか…だな