仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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東方朋子 その4

仗助と六助 爺さんは崖の上からその様子を見て気をもんでいた。

 

「くっそぉおお―――ッ、育朗のヤツ、捨て鉢な戦い方をしやがってよォ〰〰」

仗助が顔をしかめた。

「あの構え……なんとなく、アイツの考えていることが予想付くゼ……アイツ、相撃ちを狙ってやがる」

 

「なんじゃとォォ……ようやく会えた子をムザムザ失ってたまるかッ!!………援護射撃をッ……クッッ……」

六助爺さんは猟銃を構え、すぐまた降ろした。

「駄目じゃ……どちらも動きが早すぎて、下手すると育朗に当たっちまいかねんワ……どうしようもない」

六助爺さんはうなだれた。

「あの子を……育朗を守ってやりたいが……こうやってただ育朗が戦っているのを見るのはもう辛い……わしらがしてあげられる事は何だ?なにも無いワ」

 

「……いいや、爺さん、俺は育朗のために一つだけ出来ることを見つけたぜ」

仗助は倒れている二匹の犬を見ながら言った。

 

何か気が付くことがあったのか、六助爺さんは1人うなずいて再び猟銃を構えた。

「そうじゃな、せめてこいつらが巨大な化けもんに育つ前に、とどめを刺してやらにゃならんなあ」

 

「いいや、逆だぜ、爺さん……こいつはおれが『直す』ッ!」

仗助のクレイジー・ダイヤモンドが、虫の息で倒れている二匹の犬を『直した』。

 

「ブルルルルッ」

「ガルンッ!」

二匹の犬は、突然元気になった自分達に戸惑い……互いをいたわるように舐め合い……そしてその後、何かを思い出したように身を低く構え、低く唸り声を上げ始めた。

 

「おい……お前、何かしたのか?」

 

「こいつらの怪我を『直した』んすよ」仗助が答えた。

 

「何だって?なんだかわからんが、お前、また敵を増えしおったのかッ!」

一大事じゃ……六助爺さんは唸る犬達を射殺しようと銃を構えたが、仗助に引き金を止められた。

「おい、青年……邪魔をするなッ!」

 

「大丈夫っす……奴らは敵じゃあないっす」

仗助は、ムシロしてやったりと言う表情をした。

「むしろ、アイツらは俺たちの味方っすよ……あの『怪獣』の首に見えた子犬……ありゃあアイツらの子供だ。かけてもいいッス。だから、アイツらは自分の子供を苦しめているのが誰か、わかってるはずッッス!」

 

仗助の言葉を肯定するように、『治った』黒白二頭の犬が、二手に分かれて飛ぶッ!

 

……白犬は『怪獣』の懐に飛び込み、壊れていく『怪獣』の体を必死になめ始めた。

 

そしてもう一頭……黒犬はバオー・ドッグに正面から挑みかかったッ!

「バルルルル!」

 

「Gyarururururu」

だが、バオー・ドッグはおそってくる黒犬を、前足の一撃で簡単に跳ね飛ばした。

 

黒犬は崖の壁に叩き付けられ、血を吐いて倒れた。

 

「おいおい、待てよ……俺は、お前たちをもう一度死なせるために傷を『直した』んじゃねーんだぜ」

仗助は自分のスタンドに自分の体を抱えさせ、崖下に飛び降りた。

 

重傷を負った黒犬は、仗助が近づいていくと力を振り絞って小さな声で唸り、ガクリと這いつくばった。

 

「……ふう……ギリギリだったぜ……」

仗助は、 クレイジー・ダイヤモンドの手で黒犬に触れ、黒犬の怪我を再び直した。

「!?……コイツ等……『バオー』じゃねー、普通の犬じゃねーか……しまった。 バオー・ドッグを直して味方にするつもりだったのによぉ――」

仗助は頭を抱えた。

 

『どうやら、この犬達の体内にいた『寄生虫バオー』はこの子に ――あの『怪獣』に―― 移動していったみたいだね……』

育朗が言った。

 

「グレート……普通の犬を戦わせるつもりはなかっただがよォォ〰〰ッ」

怪我を治療した後で捕まえておくべきだった。仗助は唇を噛んだ。

 

「Giiiiwoooo!」

バオー・ドッグが再びカントリー ・グラマーを出現させた。

またしても、カントリー ・グラマーが金切り声を上げる。その金切声を聞き、まるで出来の悪いおもちゃのロボットのスイッチを入れたかのように、黒犬、白犬、そして『怪獣』がビクビクと体をけいれんし始めた……

 

『させるかッ!』「バルッ!」

育朗のブラック・ナイトがバオーの体から抜け出し、カントリー・グラマーを抑え込むッ。

すると、黒犬と白犬は悪い夢から覚めたかのようにブルッと身を震わせた。

『怪獣』は戸惑ったようにただボウっとしている。

 

「おい……ちょっと待てよ。今お前たちを『直して』やるからよォ〰〰」

仗助が、バオーと育朗に呼びかけた。

 

『いや、治療の時間はないよ。チャンスは今だ、コイッ!バオ―――ッ』「バルバルバルッ!」

 

手負いのオリジナル・バオーは、まるで狼のようにバオー・ドッグに飛びかかった。

互いにもつれ、傷つけあう二体のバオー……今回の二頭の争いは、徐々にバオー・ドッグに不利になっていく。

 

「バルンッ!」

そしてついに、オリジナル・バオーがバオー・ドッグをリスキニハーデン・セイバーで切り裂くッ!

いや……オリジナル・バオーはリスキニハーデン・セイバーをバオー・ドッグの体に突き立てて、その体にしがみついていた。

 

「おいッ?育朗オメェ――まさか」

 

『!?仗助ッ あとは頼んだよッ!!……行けッ!バオ―――ッッッ!!!ブレイク・ダーク・サンダーッッ!!』

「!?バルバルバルバルバルバルバルッッ」

 

ズッバァァアアアア――――ンッッ

 

オリジナル・バオーの全身が白く発光し、全身から電撃を放ったッ

 

「Gruyaaaaaaxtu!!!!」 

全身を焼かれ、バオー・ドッグが悲鳴を上げた。

 

だが、同じくオリジナル・バオーの体も自らが発した電撃に焼かれていくッ

 

「おい……」

仗助はあまりの熱と光に目を覆い、叫んだ。

「馬鹿野郎ォォォッ!早くやめろッ」

 

『仗助クン……最後に一緒に戦ってくれて、ありがとう』

育朗はカントリー・グラマーを手放すと、自分の体:オリジナル・バオーに戻って行った。

『僕はここまでだよ……後悔なんてない………伝えてくれないか?スミレに……どうか《幸せに》と…』

 

「ふざけるなッ!この野郎ッッ……そんなことは自分で言えよォッ!」

 

その時、再びバオー・ドッグが叫んだ。

「Guruuuuuuuu!」 

 

バシュ!!

 

まるで爆発するように、『怪獣』の全身が弾けた。

弾けた肉片は、すべてニョロニョロと動く蛆虫にその姿を変えるッ!その蛆虫たちが近くにいた育朗と、仗助におそい掛かるッ

 

リスキニハーデン・セイバーでバオー・ドッグにしがみついていたオリジナル・バオー:育朗は、その爆発による蛆虫の襲撃をまともに受け、バオー・ドッグからふり払われた。

 

「うおおぉぉぉぉぉおおおおっ!!!」

『くッ……』

「バルバルバルバルバル!」

 

仗助はスタンドの拳で、オリジナル・バオーはシューティング・ビースス・スティンガーで、飛び散り、おそいかかってくる蛆虫達を迎撃して行くッ!

 

一方、その爆発の中心から再び子犬が現れた。

支えとなる『怪獣』の体を突然失った子犬は、なすすべもなく頭を下にして地面に向かって落ちていく……

 

「バウバウバウ!」

 

ドンッッ!

 

白犬が身を投げ出して子犬の下に身を投げた。

身を挺して、子犬が地面に直接たたきつけられるのを防いだのだ。

子犬に代わって激しく地面にたたきつけられ、白犬はガックリとたおれた。その下から赤い血が溢れ出て、地面に広がっていく……

 

一度爆散した蛆虫たち:ユンカーズが再び一つにまとまって、まるで巨大な蚯蚓のような姿になった。

その巨大蚯蚓は、大きく鎌首をもたげて子犬と白犬の方へ向けた。

そして、再び子犬を取り込もうと巨大蚯蚓が突っ込んでくるッッ

 

「ドゥワアアアアアッ!」

白犬の血を見て、背後に控えていた黒犬が飛び出していた。

黒犬は、白犬と子犬を庇おうと突っ込んでくる巨大蚯蚓にかみつこうとするッ!

 

だが、その次の瞬間、巨大蚯蚓はまたしても小さな蛆虫に分散した。

小さな蛆虫たちは、行く手をふさぐ黒犬におそい掛かるッ!

 

黒犬はチラリと背後の白犬と子犬を振り返り……逃げることなく蛆虫たちをその身に受けた。

 

「ギィィィィィ!」

蛆虫達は、本能に導かれるがまま、黒犬の体に穴がうがち、食い尽くす……

 

そのころ、意識を取り戻した『子犬』は、オロオロとぐったりとしている白犬の体を舐めていた。

周囲に一切注意を払っていなかった子犬は、だが黒犬の悲鳴をききつけて母親:白犬の体を舐めることを中止した。

子犬は周囲を見回し、目の前に立っている黒犬の背中を見つけた。

子犬は、その黒犬が自分たちをかばうために、蛆虫に生きたまま喰われているのを理解して、悲痛な鳴き声を上げた。

 

「クゥウウンッッ!」

「ブ…バウッ……グ…ウンッ…」

 

黒犬は、背後の鳴き声を聞きつけ、振り返った。

 

子犬と黒犬の目があった。

 

「グゥワッ!!」

黒犬は子犬に向かって、まるで父親が息子を優しく諭すような調子で軽く吠えた……そして、その姿は蛆虫に飲まれ、あっと言う間に消えていった。

 

「Uwyoooooooooooooooooon!」 

子犬が、悲嘆にくれた鳴き声を上げた。

その声を聴き……倒れていた白犬が一瞬首を持ち上げた。白犬は、最後の力を振り絞って子犬に近寄り……その頭を優しく舐め……

バタンと倒れた。

 

泣き叫ぶ子犬をしり目に、跳ね散った蛆虫達は、

今度はバオー・ドッグに集まっていく。

そして、バオー・ドッグを中心として巨大な『蛟』に『タコ』の触手がついたような 醜悪 な形へと収束していく……

『蛟』は、飛び掛かってきたオリジナル・バオーの攻撃をその触手で防いだ。

そして、ぱっくりと大きな口を開け、その肩を齧って振り回したッ!

 

『ううっ!』

オリジナル・バオーが降り飛ばされるッ

 

「グルグルグルグルッ」

子犬が泣くのを止め、立ち上がった。

子犬は最後に白犬をひと舐めして…… 小刻みに体を震えさせた。

ブルブルブルッ!

子犬が身を震わせるたびに、その体が一回りづつ大きくなっていく……

虎毛が逆立ち、まるでライオンの鬣のようにひろがっていく。

額の毛皮が割れ、そこから黒い触毛の塊が現れる。

前足、腹、そして背中から尻にかけてカニの甲羅の様な、白いプロテクターのようなものが現れるッ!

 

「ヴァンッ!ヴァンッ!ヴァンッ!」

そして、そこには武装強化した子犬:新たなバオー・ドッグが立っていた。

「バァウンンン!!」

子犬が、恐ろしい速度で触手が生えた『蛟』に突進して行った。

 

『……そうだ。あの子も、僕と同じバオー………自分の体だけでなく、肉親さえもDRESSに奪われたんだ』

バオー:育朗は、虫の息だった。

『蛟』の一撃で、これまでの負傷に加えて右肩を大きく食いちぎられたのだ。

戦いのさなかだというのに、バオーのプロテクターがところどころはがれ、その下から育郎の素顔が現れていた。

あまりに深い傷を回復するために、バオーの体液が大量消費されたのか。

その結果、体液が変身を維持する分に足りなくなっているのか?

 

『まずい……仗助……僕を『直して』くれ……早くあの子を守らないと……』

育朗は、『蛟』に向かって行く子犬を痛ましげに見た。

『あの子はまだ子犬なのに、けなげにも親の仇討ちをするつもりなんだ……僕たちが守ってあげないと』

 

「………………おお……」

仗助は、這いずりながら育朗のほうへ向かっていった。

 

ぷしゅッ

 

だが……育朗まで後5メートルというところで……

ユンカーズの蛆虫達が、仗助の足に喰らいついた。

一匹、一匹とユンカーズはその数をまして足に喰らいついていき……やがて仗助の足を完全に覆いつくした。

 

「クッソオ……あと少しの処で」

ガクリ……

ユンカーズに生命力を奪われ、 東方仗助がガックリと頭を垂れた。

出現させたスタンド クレイジー・ダイヤモンドのビジョンさえもが急速に薄れていく……

 

一方、二人からわずかに離れたところでは、『蛟』が子犬をあしらっていた。

子犬はヒラヒラトと飛び回り、スキを見ては『蛟』の体にダメージを与えようとしていた。

だが……

 

「ギャウン!!!」

ついに、子犬も『蛟』に強烈な攻撃を受けた。

脇腹をえぐられ、のたうちまわる子犬……

 

「い……育朗よぉ……俺にブル・ドーズを撃て」

仗助の頼みに、育朗は首を振った。

『駄目なんだ……ブル・ドーズ・ブルーズは副作用が強すぎる……』 

君はもう、2本ブル・ドーズ・ブルーズによるバオーの体液を注入されている。三本目は危険なんだ。

 

「育朗…………お前が俺に、ブル・ドーズ・ブルーズを打つ。俺がお前を『直す』」

 

『いや……出来ない。むざむざ君を殺すわけにはいかないよ――心臓が破裂するかもしれない』

 

「育朗、やってくれ」

このままじゃどの道全滅ダゼ 仗助は笑みをうかべた。

 

『しかし……』

 

「いいからさっさとヤレヨ!!!」

なおもためらう育朗に向かって、仗助がキレた。

「お前と一緒にするなッッ俺は今ある命を自分から捨てねェェッッ!!」

 

『クッ!』 

育朗が仗助の目をまっすぐ見て、そしてその右手をまるで握手を求めるかのように差し出した。 

仗助もまた、右手を差し出す。

 

育朗の薬指の爪がパカッと開き、そこから針が仗助の手に……飛ぶッ

 

「!?うっ……ウォォォォォ!!!!」

ドクンッ!

 

ブル・ドーズ・ブルーズ・フェノメノン、その能力は寄生虫バオーの体液を変質させ、何らかの効果を持った薬と化す事だ。

その元は、生身の人間を戦闘生物……いや、生体武装(Biologic Armed) を持つ兵器(Ordnance) に変貌させるほど強烈な寄生虫(Helminth)バオーの体液。

 

……… そのバオー(BAOH)の体液をオーバー・ドーズされた仗助の体が、まるでパトカーの点滅するライトの様に頻繁に跳ね上がるッ!

「ウッ……ウウッ!」

仗助が咆哮を上げた。

 

『仗助ェッ!……しまった』

やはりやめるべきだった。育朗は臍を噛んだ。

 

「ウワァァアアッ!」

叫んだ仗助の口から、鮮血が吹き出した。

 

やがて……

ビクビク と跳ねていた仗助の体の動きが止まった。

 

『仗助……』

育朗が仗助の容態を確認するために、幽体となってバオーから抜け出ようとしたその時ッ!

 

仗助の目が再び開く。そして、立ち上がったッ!

 

『仗助……無事か?』

 

「おお……グレートな気分だぜ。育朗、礼を言うぜェ〰〰」

仗助は立ち上がると、クレイジー・ダイヤモンドを出現させた。

「後は俺に任せときな」

 

『なッ……仗助クン、僕も戦うッ』

 

「悪リィが、命を無駄にするやつとは一緒に戦えネーぜ……」

 

『……頼む…僕の体は《戦う為》に作り変えられたんだ……もう長く持たないかもしれない』

 

「……だったら、なおさら残っているその命を大切にしねェとよォ〰〰」

 

『頼む……《スミレの為に戦う》 それが僕の生きる目的……』 それを奪わないでくれ……

 

育朗と仗助は、しばらく無言で向き合った。

 

「…………育朗ッ、約束できるか? 命を無駄にしねェと ―――生きて、再びスミレ先輩の元に帰ると」

それは、お前のためってだけゃねェ……スミレ先輩の為っす。

出来るか?

 

仗助の真剣なまなざしを受け止め、育朗がうなずいた。

『……約束するッ!』

 

「よし、信じたからなッ!」仗助が笑った。

そして次の瞬間、クレイジー・ダイヤモンドがバオーに触れ……傷を全快させるッ。

 

「行くぞォッ!育朗ォッッ」

仗助が叫んだ。

 

『!?リスキニハーデン・セイバー・オフッ!』 「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバル!」

完全復活を遂げたバオーが両手を高く掲げた。両手の指爪から、炎を上げる小刀程の刃が、20本、生えた。

その炎を上げて放つ小刃が次から次へと『蛟』をおそい、そして……

 

『ドラララララララァッ!』

クレイジー・ダイヤモンドが放つラッシュが『蛟』をえぐルッ!

 

「ギャァアアアアッ!」

巨大な『蛟』が、まるでサッカーボールのように吹き飛ぶッ

 

「ヴァウンッッ!!」

……子犬が、吹き飛ぶ『蛟』に飛びついたッ!

そして、『蛟』の首にあたる部分に噛みつくと、グルグルッとその牙を中心に素早く何度も回転し

……その首を破壊した。

その最後の攻撃で、子犬は力尽きたようにふらふらと倒れた。

 

「!バルッ!バルバルバルバルバルバルッッッ!!!」 『ブレイク・ダーク・サンダー!』

子犬が離れると同時に、待ち構えていたバオーが電撃を放つッ! 

 

『ぐぉぉぉおおおおっ』

発する電力のあまりの総量に、バオーの両腕がまるで熱した炭にふいごで空気を送り込んだ時のように赤黒く輝いた。

バオーの両腕、両肩、足、あちこちからプスプスと煙が立ち、体が燃え始める……

 

「おい、育朗 やり過ぎだぜ。それ以上やったら、お前の体が壊れちまう」

消し炭になっちまったら、俺でも『直せる』かわからねェゾッ!

 

『いや、ダメだ。いまが最後のチャンス!ここはどんな《犠牲》をはらってでも、奴を倒すッッ』

仗助の手を振り払い、バオー:育朗は電撃を放ち続けた。

 

「おい、《約束》を忘れんじゃねーぞォッ」

 

『忘れてないよッッ。だが、今こいつを倒さないとその先なんて、無いッッ!』

 

「Ugogoggogogoooooo!」

だが、バオーの全力の電撃を受けてもまだ『蛟』は生きていた。

『蛟』はその体から煙を立ち上らせていた。だが、その動きは止まらず、叫び声を上げて周囲の木々をなぎ倒していく。

 

「バルバル……バルッ…バル……バ………」

やがて、バオーが膝をつき……電撃が止まった。

そのバオーの右腕は、今や完全に炭化し……崩れ落ちた。

『くっ…これでもまだ倒せないなんて』

育朗は歯噛みした。

『あと少しだったのに……ここまで力を振り絞ったブレイク・ダーク・サンダーは、もうしばらく打てないんだ』

何か次の手を考えないと………

 

「いーや……まだ手はあるぜ。なぜなら、お前はまだ電撃を放ってねェェーんだからよォォ〰〰ッ」

《約束》を破りかけたテメーに、大サービスしてやるぜ。

仗助が育朗の背後に立った。

そして、クレイジー・ダイヤモンドの新しい力が発動するッ……

「クレイジー・ダイヤモンド……Get Back!」

 

キュイイイイイ―――――ンッッ

 

『ほら、撃てるだろ?とどめはお前に譲るゼ、育朗』

仗助は、5秒だけ時が巻き戻った バオー:育朗の背中を、そっと後押しした。

 

「!バルッ!バルバルバルバルバルバルッッッ!!!」 『ブレイク・ダーク・サンダー!』

自分だけ時間が巻き戻ったバオーと育朗は、自分ではそうと気が付かないまま全力の電撃を『もう一度』、『蛟』に食らわせた。

『ぐぉぉぉおおおおっ』

 

その隣で、仗助は近くに転がっていたバイクのタイヤを『作り直し』て、高圧電流を封じるためのゴムシートを作っていた。

そのシートをまるでマントのようにクレイジー・ダイヤモンドにかぶせ、そして……

「おまけだッ」

『ドララララララララァッッ』

クレイジー・ダイヤモンドが弾幕の雨を『蛟』に降り注ぐッッ!

 

Downnn!

二人の連弾を同時に受けた『蛟』はその変身を解き、空高く吹っ飛び……そしてバオー・ドッグの姿に戻って……パタンと倒れた。

 

「はーっはーっは――――」

バオーが変身を解き、『育朗』に戻った。

 

「終わった……ぜぇ」

「そうだね、終わった………僕たちが、終わらせた」

仗助と育朗は共に地面に寝ッ転がり、互いの拳を突き合わせた。

 

「おいッ!お前たち 大丈夫かッ?」

六助爺さんが、疲労困憊の二人と一匹を助け起こした。


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