仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー) 作:ヨマザル
『ドラッ!』
仗助のクレイジー・ダイヤモンドが シェルターから身を乗り出し、手にした石を思いっきり『怪獣』に向って投げつけた。
スタンドはあくまでもパワーを持ったビジョン、物理的な強酸液など関係ないのだ。
ガボォッッ
投げた石は、狙い過たずに『怪獣』の口の中に飛び込んだ。
すかさず第二投ッ
第三投ッ
怪物の口の中に石が詰まった。
さらにその石が『怪獣』の口の中で互いにくっつき、膨れて口の中をふさいでいった。
これが、物を『作り直す』クレイジー・ダイヤモンドの能力だ。
「今っスよ、育朗クン」
『ありがとう仗助君……次は僕の番だッ!くらえッシューティングビースス・スティンガー!』「バルバルバルン!」
バシュッ!バシュッシュッ!シュッ!
バオーの放つ毛針が、嵐のように『怪獣』をおそうッ!
しかし、その毛針は怪物にダメージを与えられなかった。
針が肉を深くえぐる前に、怪物の表面に蠢く無数の蛆虫に齧り取られたのだ。
『まだまだァ!行くぞ、バオー』「バルッ」
バリバリバリィ‼
『喰らえッ!ブレイク・ダーク・サンダー&シューティングビースス・スティンガー!!!』「バルバルバルバルバルバルバルバルバルバルッ!」
パシュッ・パッ・パパッ・バッッ!
グガァ――ン!
バオーの放つ毛針が、電気を帯びて飛んでいくッ!
この電気により、『怪獣』の表面で蠢いている蛆達は白煙を上げて倒れていった。
先ほどはすべてのシューティングビースス・スティンガーが、突き刺さる前にすべてかじり取られた。
だが、今回は毛針は何に遮られる事もなく『怪獣』に突き刺さった。
そして、突き刺さった毛針が『大気と反応して炎を上げて燃え上がり』、『怪獣』の体を炎に包んでいく。
『Bushaaaa!』
怪獣が呻く。そして……
ゴオアッン!
『怪獣』の目から高圧の体液が超高速で絞り出され、仗助をおそうッ!
「グッ……」
仗助は、かろうじてクレイジー・ダイヤモンドで、目から出る体液の弾丸を弾き飛ばした。
「危なかったぜーっ……もう少し気が付くのが遅かったら、ヤバかった」
体液の弾丸を出すのと同時に、『怪獣』の顎や肋骨、首筋から管のような物が飛び出した。
『怪獣』は、その管から空気を取り込み、 こめかみから突出した角の先から圧縮空気をバオーに向かって噴出させたッ!
『ううつ……何だ?空気の中にチョッピリだけ……まるでガラスの粉末のような粉が……』
バオーは、致命的な一撃をギリギリ避していた。
しかし、バオーの右足がッ!
身につけているジャケットがッ!
無残にも細切れとなっていた。
『かっ……風かっ!圧縮された高圧の風に紛れ込ませて飛ばしている、ガラスのように尖った粒が体を切り裂いているッ! ――動けない―― どうする……どうすればこの攻撃をかいくぐり致命傷を……』
バオーは残った左足で、圧縮空気の刃から逃れようと必死にもがいた。
その時、仗助が肩をブンブン回しながらバオーの前に立った。
『ドラッ!』
クレイジー・ダイヤモンドは地面を砕いた。
砕いた土は『作り直され』て、ぶあつい壁を作った。
壁はまたシェルターとなって仗助と『怪獣』との間に立ちふさがり、激しく吹き出してくる圧縮空気の刃を防いだ。
そしてすかさず、仗助はバオーの体の傷をも『直した』。
『仗助……ありがとう』
「育朗よぉ、さっきわかったみてーに、この壁はただの時間稼ぎにしかならねぇ――気合い入れろッ スよぉォォ〰〰〰 ッッ」
ビシッ
そして仗助の言葉通りに、土壁が切り裂かれた。
圧縮空気が……ちょうど土壁に背を向けていた仗助の背中を切り裂くッ!
「グゥワァァッッ」
仗助は、音もなく地面に倒れた。
『仗助ッ!』
間一髪、怪物に止めをさされる寸前に、バオーが意識が朦朧としている仗助を抱えた。安全なところまで移動させる。
圧縮空気がおそった瞬間、仗助はちょうど育朗をかばうような位置に立っていた。だから、育朗:バオーには仗助が盾になったため、ひどいダメージがなかったのだ。
「チッ……くしょぉお、やられちまったぜぇぇ」
仗助は膝に力を入れ、何とか立ち上がろうとし……また地面に突っ伏した。
『仗助クン、いま回復剤を……』
すかさずブル・ドーズ・ブルーズを仗助に撃とうとしたところで、育朗は躊躇した。
仗助には出発直前に、すでにブル・ドーズ・ブルーズを打っていた。
副作用のリスクを減らす為、ブル・ドーズ・ブルーズの回復薬をもう一度仗助に打ちたくはなかった。
だが……今薬を打たなければ、結局は仗助を助けることは出来ないッ。
『……今、止血する。がんばれッ!』
今回だけだ。育朗は意を決した。 『仗助君……ブル・ドーズ・ブルーズのオーバードーズは危険なんだ。薬が強すぎる知れない』
覚悟してよ。
「薬も打ちすぎッと、毒になるって奴ッスねぇ〰〰」
だが、他に手はないっすよ。
仗助がうなずき……育朗は意を決してブル・ドーズ・ブルースを放った。
育朗の指から小さなバルーン付きの弾丸が放たれ、仗助に突き刺さるッッ
プッシュううううっ
「うっ!」
仗助は心臓を抑えて少しの間のたうち回り……そして……再び立ち上がった。
「育朗クン……確かにこの薬キツイッすねぇ〰〰だがもう終わったぜぇ〰〰俺たちはやってのけやがったたぜぇ――」
心臓に手をやり、脂汗を流しながらも仗助がニヤッと笑った。
『GuGyaaaaaaaaaa!』
その時、咆哮を上げて『怪獣』が崩れ落ちた。
見ると、『怪獣』は体の内部から火を吹き出し、もだえ苦しんでいる。
『!?仗助君、これは……』
「そうっス。アンタの撃った『ビースト・スティンガー』を直して、ヤツの周りに火を付けたまま浮ばせたぜ……ヤツはその火が付いた『ビースト・スティンガー』を体内に吸い込んだってワケッス……後は自分が吸い込んでる空気に煽られてどんどん勝手に燃える……」
『Guroooon』
燃え上がる怪獣の喉元から、何かがぬるりと現れた。
例えて言えば、ドーベルマンの舌、手足、尻尾をタコの触手に変え、さらに形を歪め、おどろおどろしい色に染めたような姿だ。
同時に、『怪獣』の首から上だけがポトリ……と落ちた。
落ちた首は急速に縮み、そして中に取り込まれていた二匹の犬 ――黒犬と白犬―― が現れた。
「キャウ――ン」
炎を吹き出している『怪獣』が叫んだ。まるで子供のように……
イヤ、その『怪獣』の首の切断面には、確かにもう一匹、子犬の頭が見えていた。
『怪獣』の喉から飛び出した不気味なバオー・ドッグは、スタンドを出した。
それは……そのスタンドはネリビルのカントリー・グラマーだッ
『Kuaaaaa!』
カントリー・グラマーは叫び声を上げた。
すると、 首のない『怪獣』本体がゆっくりと仗助の方を振り向いた。
ジュルルルルッッ
『怪獣』の首の断面からすさまじい勢いで触手が飛び出した。
触手は、断面から顔を出していた子犬の頭を覆いつくし、互いに絡み合い……
巨大な口をもった新たな『頭』を生成した。
(マズイッ……ここは、僕が)
まだうまく動けない仗助をかばおうと、バオーが『怪獣』と、バオー・ドッグの前に飛び出した。
『2対1では不利だ……ここは早めに決着を付けるッ』「ウォオオオウ――――ム!」
バオーが、リスキニハーデン・セイバーを構えた。
その刃は育朗の身長程に伸び、さらには刃先から炎が噴き出した。
(大事なのは、間合と刃先を立てること……)
育朗は、昔高校の武道の授業で体育教師が言っていた事を思い出した。
(相手の呼吸を読むこと、そして円の動きと速度だッ)
バオーは、まるで武道家のように、舞踏家のように、おそいかかる『怪獣』とバオー・ドッグの攻撃をかわし……二体を両断しようとした。
だが……
(しまった。あっ…………浅いッ!……一撃で倒せなかった)
バオー・ドッグは、育朗のその動きを「ニオイ」で読んでいた。
┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨
それは、ほんのちょっぴりの違いだった。
だが、育朗の『殺意』のニオイを感じ取ったバオー・ドッグは一瞬立ち止まっていた。そう、野生の感で危機を察知したバオー・ドッグは、オリジナル・バオーを警戒して攻撃に移るのを躊躇したのだッ
その躊躇がバオー・ドッグと『怪獣』の踏み込みを浅くさせた。
そして皮肉なことに、その浅かった踏み込みが、オリジナル・バオーのカウンターの威力を半減させ……まさに首の皮一枚、ほんのチョッピリだけ『怪獣』とバオー・ドッグを生かしたのだッ!
カウンターが十分に決まらなかったオリジナル・バオーは、体勢が崩れていた。
その崩れた体を、すかさずバオー・ドッグの触手が拘束した。
そして触手は、オリジナル・バオーを持ち上げ、地面にたたきつけるッ!
『グッ!』
ヴォオオオオオオオオン!
再び、『怪獣』の放つ暴風の刃がバオーをおそうッ!
『怪獣』は風を生み出すために、自ら大量の圧縮空気をため込んでいる。
その圧縮空気の圧力で、『怪獣』の体の一部がはじけ飛ぶッ!
自らから噴出した空気は、『怪獣』の全身を燃え上がらせている……
だが、『怪獣』はカントリー・グラマーの命令にしたがい、自分自身を苦しめながら、自分を壊しながら、暴風の刃による攻撃を止めないッ!!
「ギャオオオオオン!」
『怪獣』は苦しそうにほえた。
その体がまたはじけ、燃え上がった。
だが、攻撃は止めないッ
バサンッ!
遂に空気の刀が、逃げ回るオリジナル・バオーをとらえた。
バオーの足が切断されるッ!
(クッ……しまった……逃げ切れない)
どうしても逃げられないと判断して、育朗は『バオー』に無駄にあがく事を止めさせた。
育朗は、奇妙なまでに落ち着いて状況を分析していた。
そして、致命的な空気の刃が自分とバオーの命を刈り取ろうとするのを、冷静に、ほとんど待ち焦がれていたものがやってきたように、ただ、じっと見つめた。
(……六助おじいさん、すみません。仗助、後を頼むよ…………スミレ…どうか、幸せで……)
その時ッ!
「今助けるぞォッ」
ターン!!
銃声が響き、バオー・ドッグと『怪獣』が吹き飛ぶッ!
「!? どうしてッ?」
育朗が顔を上げると、そこには白煙を上げた猟銃を持った老人が、目を丸くして立っていた。
「……お前、育朗かっ!」
老人は倒れている仗助から少し離れた、崖上の小道に立ち戦いの様子を見下ろしていた。
(あれ……は、ばかなッ 六助おじいさん!)
育朗は驚愕した。
(おじいさん……お元気そうだ……また会えるなんて……僕を助けてくれた、でもまずい!あの怪物の前におじいさんを出しちゃあダメだ)
「Gyaaaaaaaaa!」
あと少しでオリジナル・バオーにとどめを刺せたところを邪魔され、バオー・ドッグは怒り狂っていた。
「Varurururururu……」
バオー・ドッグはシューティングビースス・スティンガーを放った。
それは、驚愕のあまり目を丸く見開いている六助爺さんをおそい……
グサッ!
六助爺さんの体に突き刺さったッ!
「うっ……」
シューティングビースス・スティンガーの直撃を受けた六助爺さんが、口から血を吐いてぶっ倒れた。ちょうど心臓にあたる部分に、攻撃を受けたのだ。
ボッ……
そして空気と反応した毛針は燃え上がり、六助爺さんの体に火をつけた。
『お爺さんッ』
育朗はブラック・ナイトを飛ばし、六助爺さんの傍らに寄り添った。
だが、すでに六助爺さんは、動かなくなっていた。
(死んでいる……馬鹿な…………これは……夢だ)
『うぉおおおおお!!』
育朗は、背後に迫るバオードッグの事も忘れ、号泣した。
一方、育朗に負けず劣らず仗助も動揺していた。
(死んだ……育朗、泣いているのか……爺さんが死んだ…… ジジイ……いや……オヤジみてぇな爺さんがよォォ……)
仗助は、六助爺さんのそばに這っていった。
そして、傍らで泣いている育朗をみて良平爺さんの葬儀の時を思い出した。
まるで自分の家族を無くした時のように、ヤルセナイ思いを抱いていた。
そして……
(殺させねぇー……何としても……何としてもだ)
破れかぶれの気分で、仗助はクレイジー・ダイヤモンドを発現させた。
(俺が、必ず直す!)
ドンッ!
……だが、クレイジー・ダイヤモンドが火を消し、傷を治しても、六助爺さんは息を吹き返さない……
《仗助……死んだ人間を生き返らせることは出来ない……どんなスタンドでもだ》
良平爺さんのきれいな死顔と、承太郎の声が仗助の脳裏に浮かぶ……
(いやッ!もう一度だ)
『ドラッ!』クレイジー・ダイヤモンドが六助爺さんを拳で軽くたたき、もう一度『直すッ』
……だが、六助爺さんは息を吹き返さない。
『ドラララッ!』
もう一度、直す。
『ドララララララッ!』
もう一度、もう一度、直す。
「うっ……うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!―――― コメカミか?首か?心臓か?右肩か?肺か?どこだ?――――悪いのは?――――どこを治す?――――」
『ドラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララァ――――――――ッ!!!!!!!』
ディーパスオーバードライブで強化されたクレイジー・ダイヤモンドが、ラッシュを六助爺さんにかけつづけた。超高速のラッシュの一撃、一撃が六助爺さんを『直し』続け……そして……
その瞬間が、訪れた。
キュイイイィィィ―――――ンッ
ふいに仗助が感じる『時間の流れ』が変わった。
まるで、違う『世界』に入ったような、静寂な『世界』の入り口が見えたような気がした。
その『世界』には行けないかもしれない。それでも今、仗助は周りがとてもスローに動いているように感じていた。
その不思議な世界の中で、クレイジー・ダイヤモンドが拳を撃ちつづけ、六助爺さんを『直す』。
そのラッシュの速度が、どんどん素早くなっていく……
一瞬の間に、無限とも思える回数の破壊と再生を繰り返したクレイジー・ダイヤモンドは、その能力の限界を超えた。
仗助とクレイジー・ダイヤモンドは、六助爺さんの上に流れている『時』に手をかけ、流れた『時』を5秒だけもとに引き戻した ――
「今助けるぞォッ」
五体満足な六助爺さんが、猟銃を抱え、再び『怪獣』とバオー・ドッグを狙撃した。
ターン!!
時が戻ったのは六助爺さん本人のみ。周りの時間は通常通りに過ぎ去っている。
だから、『怪獣』とバオー・ドッグは≪5秒前の≫六助爺さんにうたれた傷に加え、さらに第二発目をほとんど同じ場所にくらった。
さすがのバオー・ドッグも、一瞬、ひるみ、のけぞった。
そこを我に返ったバオーが飛び込んでいくッ!
「バルバルバルバルバルッ」
バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノンッ!
バオーの体から放出される高圧電流が、「怪獣」とバオー・ドッグを同時に痛めつけるッ!
「お前……育朗か?」
そのとき崖の上では、六助爺さんは目の前にいる育朗の幽霊:ブラック・ナイトにようやく気が付き、目を丸くしていた。
「お前……長いこと顔も見せんくせに、俺より先に、死んじまったのか?この……馬鹿たれがァ!」
スミレが……婆さんも、ワシも、どんなにお前に会いたがっていたのか、知ってるのか。
だが、口では怒ったようなことを言いながらも、六助爺さんは目にいっぱいの涙を貯め、喜びの笑みを浮かべていた。
「だが……何でもいい、良かったワイ。よく戻ってきたなぁ――」
『お爺さん……お爺さんこそ、よかったッ良くぞ無事で……』
育朗が喜びの涙を流した。
『お爺さん……僕は何て言えばいいのか……』
「なんだ、わからないのか?こんな時は、ただ タダイマ と言えばいいんジャ」
六助爺さんはガハハと笑った。
「間に合った……ぜぇ―――っ」
仗助は、すっかり消耗して地面に大の字に寝ころんでいた。
横目で、六助爺さんと育朗が再会を喜びあう光景をほほえみながら見ている。
クレイジー・ダイヤモンドで『時をまき戻す』(Get Back)
それが出来る、兆候はあった。
あの最後の瞬間、吉良のとどめを刺すとき、仗助は、空条承太郎のスタープラチナ・ザ・ワールドの時が止まった世界で実際に何をしたか、何となく分かっていた。
キラー・クイーン・バイツァ・ダストが一時間の時を吹き飛ばそうとした瞬間、爆破された岸部露伴の傷を癒そうとしていた時に感じた『感触』を覚えていた。
そして、本来なら間に合わなかったはずの億泰のけがを直し、命を救った時の事も、よく覚えていた。。
たとえ仗助が意識していなかったにせよ、それらの経験は確かにスタンドによって、仗助の魂の奥に刻まれていた。
そして危機において、新たに爆発した魂の力が、仗助の黄金の精神が、クレイジー・ダイヤモンドを新たな覚醒に導いたのだ。
皮肉なことではあったが、肉の芽を埋め込まれた際に与えられた『刺激』もまた、仗助を覚醒させる補助の役割をはたしていた。
だが、戦闘はまだ続いている。
「!?……おい、まずいんじゃあないか、お前の体がやられとるぞ。 ――あれはお前の体じゃあないのか?」
六助爺さんが崖下の戦いにようやく気が付き、血相を変えた。
六助爺さんの感想は正しかった。
ブラック・ナイトとの共闘ではなく、単体でモデュレイテッド達と戦っていたオリジナル・バオーは、何発か致命的な攻撃をまともにくらい、アチコチを斬られ、溶かされていたのだ。
『!大変だッ』
お爺さん、行ってきます。ここで待ってて……
育朗は慌ててブラック・ナイトを崖下に飛ばし、オリジナル・バオーの体にもぐり込んだ。
(もう思い残すことはほとんどないよ。バオー……またせたね、ここからはずっと一緒に行こうッ!)
「ガルルルウンンッッ」
育朗とバオーが再び一つになった。
その瞬間からバオーの動きが目に見えて良くなった。
だが……既に大勢は決していた。
すでに、バオーは左足を太腿から切り倒され、右手のひらを半分失い、また全身のプロテクターも今にも剥がれ落ちそうな状態であった。
二対一の状況を、戦略や効果的な身の運びでカバーできる限界はすでに過ぎていたのだ。
バオーは、飛び掛かってきたバオー・ドッグを柔道の要領で投げ返した。
だが、投げられたバオー・ドッグは空中で身をひるがえし、ダメージを受けることなく両足で地面に着地した。
そしてすぐさま、育朗:バオーに向かって再び飛びかかったッ
『くっ……早いッ!強いッ!』
バオーはヤギツバヤにおそい掛かるバオー・ドッグのスピードに対応出来ないまま、どんどん押し込まれた。
(僕の体なんてどうでもいいッ。でも最後にこの落とし前だけはつけるッ!……きれいに勝つ必要はないんだ。このバオー・ドッグを何とかして捕まえられればッ!)
押し込まれながらも、育朗は冷静に起死回生のチャンスをうかがっていた。