仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー) 作:ヨマザル
ザッ ザッ ザッ
「無駄ッ!WRYYYYiii !」
弾丸の雨に足を止められることなく、ピーターが近寄ってくる。
ピーターはポケットに手を入れ、まるで近所の公園を散歩しているような風情だ。
「ウォオオオおおっ―――ッッ」
ホル・ホースが銃を撃ちながら、ジリ、ジリと後ろに後ずさりした。
(くっそーどうすりゃいいんだよぉ〰〰)
ターンッ!
と、その時、銃撃音がした。
ピーターの背後から、シンディが狙撃したのだ。
「無駄ッ!」
だが背後からの銃撃でさえ、ピーターのスタンドは苦も無く弾き返す。
跳ね返された跳弾は、シンディの足元の岩を砕いた。
「シンディ……なぜだ。なぜ君が僕を撃つんだ」
ピーターは、ほんの束の間シンディを見やり、ペロリと舌を出して自分の唇を舐めた。
「無駄、無駄ッ。弾丸程度の動き、たとえ360度、どの方向から撃たれたとしても、この私なら簡単に対処できるのさ」
ピーターの気が、一瞬ホル・ホースからそれた。
覚悟は決まらない。だが、ホル・ホースは自分のプロテクターを、限界ギリギリまで薄くした。そのぶん
のスタンドパワーを、攻撃に回す。
「ソーカヨッ!試してみるかぁ?オ゙ラ゙ラ゙ラララァッ!」
ホル・ホースの『皇帝』から、まるでレーザーの様に途切れなく弾丸が発射された。力を振り絞り、これまでよりも弾速が早まっている。
皇帝の無数の弾丸が、ピーターをおそう!
「フッ」
ピーターが、ニヤッと笑い、額の汗をぬぐった。
ピーターはホル・ホースの渾身の攻撃を、そのスタンドで弾き飛ばしていく。
その弾丸の一部が、ホル・ホースの体をえぐる。
だがホル・ホースは、臆することなく全力で、弾丸を放ち続けるッ!
「なかなかやるじゃあないか……褒めてやるよ、ホル・ホース……」
「近づくんじゃあねーッ!!!」
ホル・ホースが叫んだ。
「そうか?だが、近づかなけりゃお前をぶち殺せないからな……『腹に穴をあけてやる』と言ったろう?」
ピーターは、優しく、まるで諭すように答えた。
「ホル・ホースよ、昔のよしみで、キサマに特別な扱いをしてやろう……慈悲をかけてやる。キサマは、『あまり痛みを感じないように』殺してやるぞ」
「てっ DIOさッ……DIOみて―なこと言ってるんじゃね――ッッ」
ホル・ホースは、甲高い声で叫んだ。
声が裏返り、もはや悲鳴のようだ。
(くっそぉ〰〰これだけやっても、ダメなのかよォォッ)
逃げるか?そんな思いが頭をよぎり、だがすぐに逃げられるわけがない……と、ホル・ホースは考えを変えた。
「まだわからんのか?ホル・ホースよ……私が……『私達』が、DIO様と一心同体だと言う事を……」
ピーターは、ワザとらしく頭をかいた。
姿かたちは違えど、その口調、しぐさは、確かに『あの男』にそっくりだ……
「クッ……」
気圧されたホル・ホースは、後ずさった。
バンッ!
そのとき、背後から大きな音がして、ピーターの頭が大きく揺れた。
「ほう……」
ピーターは冷静に頭を触り、自分の血で真っ赤に染まった手を眺めた。撃たれたのだ。
「キサマもやるではないか小僧……なかなか見どころのある奴だ」
ピーターが、言った。
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
ピーターの左側後方、そこにいたのは 未起隆スーツをまとった早人と、アリッサであった。
先ほどは、早人が、未起隆スーツで増強された力をつかって、石を投げたのだ。
「僕のことを、無視していたのか?」
早人が、ピーターを睨みつけた。
「オマエの敵は、ホル・ホースさんとシンディさんだけじゃあないのさ……僕だってぇえええええッッ!!」
ブォンッ!ブンッ!
早人は大声を上げ、次から次へと石を投げつづけた。
「ピーターィッ!この、裏切者ォォォォッ!」
アリッサは絶叫した。両手で銃を構え、引き金を引き続けるッ!
「ハハハハハ」
ピーターが高笑いした。
「つまらん攻撃だな……もっと工夫をしろよ」
ピーターのスタンドが、指先だけで石を、弾丸を、はじき返していく。
「そうだ……東方仗助の話だがなぁ……あれは、本当の話だ。アイツは確かに、ワタシが倒した」
ピーターが、早人をあざけった。
ゴキィッ
早人の投げた石を、スタンドの片手で軽く受け止め、砕く。
「嘘をつくなぁああああッ!!」
早人は、大きく振りかぶって、再び、力いっぱい石を投げつけた。
だが早人が投げた渾身の一投も、同時に放たれたホル・ホースの銃弾も、無情にもピーターのスタンドに弾き返された。
早人の隣ではアリッサが銃を撃ち続けていた。
「ピーター……いったいどうして……」
引き金を引くアリッサの表情は、苦痛にゆがんでいる。
「ピーターさん……」
早人の頭から、ニュルンと、おにぎり大の『小さな未起隆』が、顔を覗かせた。
「僕はアナタのことをよく知りませんが……でも、こんなことになって残念ですよ」
「フン……下らぬことを、ペチャクチャと……」
ピーターがニヤリと笑った。
「おりゃああああああっ」
バスッ
プシュッ!
ターンッッ!
正面のホル・ホース、右後方のアミ、早人、未起隆、アリッサ、そして左後方のシンディ、三方から同時に、ピーターを攻撃するッ
だが、ピーターのスタンドは前方からのホル・ホースの銃弾を弾き返し続ける一方、簡単に後方からの攻撃をブロックし、そして跳ね返した。
「グッウウウウ!」
「ああああああ」
『ウゥウウウウ……痛いデス……』
跳弾が返ってきた。
早人は自分の投げた石を左肩に、アリッサは銃弾を右わき腹に受けた。
あまりの痛みに、二人は傷口を抑えながら膝をつき、地面に突っ伏した。
未起隆の声が、早人の脳裏に響いた。
『ウゥウウウ……すみません早人クン、私がいながら、アナタに怪我をさせてしまって……』
……君を守り切れる自信がない、もう動かず寝ていてください。
「未起隆サン……危険なことは解ってます……」
そんな未起隆の願いを無視して、早人は歯を食いしばって立ち上がった。
折れた右肩を庇いながら、早人はもう一度ピーターに投げつけるための石を拾った。
「僕は、ぼくは……生きて、お母さんを守るんだッ! ――仗助さんにも約束したんだッ!―― そのために、お前を倒すッ!!」
早人が、宣言した。
「フン……小僧……お前から死にたいらしいな」
ピーターは、懐からフォークを取り出した。そのフォークを投げつけようと、早人に向かって大きく片手を振りかぶる。
……少しだけ、ピーターの動きが止まった。
その時だ。
バシュッ!
突然、ピーターの顎が『縦に』跳ね上がった。
「なっ……」
┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨
ピーターの足元の地面に、『蝉が地上に出てくる時に開けるような』親指大の穴が開いていた。
次の瞬間、その穴から再び何かが飛び出し、ピーターの顎を再び打ち抜くッッ!
「ガッ」
顎を撃たれたピーターは、まるで『バトミントンのシャトルを打ち上げたよう』に吹き飛んだ。
そして、背中から地面にたたきつけられ、動かなくなった。
ヌプッ!
ピーターの頭からは1枚のDISCのようなものが飛び出し、海の中へ吹っ飛んだように見えた。
「ヘヘハ…ヒャッハッハッ……エンペラーの弾丸で地面に穴をあけていたのよ」
ホル・ホースは、早人を見てウィンクした。
「安心しな……峰うちって奴だ。殺しちゃいねーよ。アミの前でコロシはできねぇ〰〰ヒヒヒッ」
「でも、まさかピーターさんが……」
早人は複雑な思いで、ピーターに近づいて行った。
ひっくり返って意識を失ったピーターの胸には、3つのコインが埋め込まれていた。
そのコインを見ると、それまでヘラヘラと笑っていたホル・ホースが、今度は真っ青な顔になった。
――――――――――――――――――
1999年11月10日 昼 [A山近郊の廃墟]:
全身から血を噴出すハンターの肩口から、橋沢育朗のスタンド:ブラック・ナイトが顔を出した。
育朗は、心配そうにポルナレフに呼びかけた。
『ポルナレフさん、怪我はないですか?……ご無事で何よりです』
―――そして、自分勝手に仲間から飛び出して、すみませんでした。
『育朗』はポルナレフに頭を下げた。
「『育朗』クン……いや、助かった」
ポルナレフは尋ねた。
「君は今、近くにいるのか?無事なのか?スミレちゃんの話では……」
『ええ……僕の体はまだ――でも、どうして仗助クンが?まさか、彼も僕と同じように……』
「そうだ、『肉の芽』にやられている」
『なんてことだ……』
元はと言えば僕のせいだ。
『育朗』は、唇をかんだ。
その頃…… 仗助とエルネストのにらみ合いは、終わりに近づいていた。
「仗助、お互い意見の相違はあるだろう。だが今やるべき事は奴らを排除することだ、違うか?」
「わかってるぜ。ただムカッ腹が立っただけだ……わかってるぜ」
仗助は、最後にエルネストをもう一にらみして、腕組みをした。
「お手並み拝見だぜ、エルネストよォ」
「フッ……」
エルネストが砂を掴んで拾い上げた。そこに、エルネストのスタンドの翼が触れる……
「喰らえィッ この砂弾を避けられるかッ」
エルネストは、手に取った砂をポルナレフたちに投げつけたッ
『ううっ!」
育朗が顔色を変えた。
空中に広がる、小さな砂粒の一つ一つ……それがすべて、小型の爆弾に変じているのが、見えるッ!
「!?チャリオ――――ッツ!」
ビュワンッ!バシュッッ!!
だが、エルネストの爆弾は、ポルナレフのスタンドと相性が悪い。
砂粒の爆弾は 『育朗』とポルナレフに触れる手前で、すべてチャリオッツのレイピアに切り落とされた。
しかも、ただ切り落としただけではない。チャリオッツの鋭い剣先が空気を切り裂き、爆風をエルネストに向けて吹き飛ばしたッ
「我がスタンド:シルバー・チャリオッツの剣先は、空気を切り裂きスタンドの『炎』でさえ弾き飛ばすッ」
ポルナレフは、エルネストに人差し指を突きつけたッ!
ボゴォーンンッ!
弾き返された爆炎が、エルネストをおそうッ!
「グォオオッ」
エルネストは後方に飛び、爆炎の直撃をかろうじて避けた。
だが、爆風にあおられ、吹き飛ばされた。
「Uurrrrry! やるじゃあないか、ポルナレフ!!」
エルネストは壁に叩きつけられ、耳と目、そして頭部から血を流していた。
だがダメージを受けながらも、エルネストは楽しそうに笑いつづけた。