仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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山岸由花子 その3

ザッ ザッ ザッ

 

「無駄ッ!WRYYYYiii !」

弾丸の雨に足を止められることなく、ピーターが近寄ってくる。

ピーターはポケットに手を入れ、まるで近所の公園を散歩しているような風情だ。

 

「ウォオオオおおっ―――ッッ」

ホル・ホースが銃を撃ちながら、ジリ、ジリと後ろに後ずさりした。

(くっそーどうすりゃいいんだよぉ〰〰)

 

ターンッ!

 

と、その時、銃撃音がした。

ピーターの背後から、シンディが狙撃したのだ。

 

「無駄ッ!」

だが背後からの銃撃でさえ、ピーターのスタンドは苦も無く弾き返す。

跳ね返された跳弾は、シンディの足元の岩を砕いた。

 

「シンディ……なぜだ。なぜ君が僕を撃つんだ」

ピーターは、ほんの束の間シンディを見やり、ペロリと舌を出して自分の唇を舐めた。

「無駄、無駄ッ。弾丸程度の動き、たとえ360度、どの方向から撃たれたとしても、この私なら簡単に対処できるのさ」

 

ピーターの気が、一瞬ホル・ホースからそれた。

 

覚悟は決まらない。だが、ホル・ホースは自分のプロテクターを、限界ギリギリまで薄くした。そのぶん

のスタンドパワーを、攻撃に回す。

「ソーカヨッ!試してみるかぁ?オ゙ラ゙ラ゙ラララァッ!」

ホル・ホースの『皇帝』から、まるでレーザーの様に途切れなく弾丸が発射された。力を振り絞り、これまでよりも弾速が早まっている。

皇帝の無数の弾丸が、ピーターをおそう!

 

「フッ」

ピーターが、ニヤッと笑い、額の汗をぬぐった。

ピーターはホル・ホースの渾身の攻撃を、そのスタンドで弾き飛ばしていく。

 

その弾丸の一部が、ホル・ホースの体をえぐる。

だがホル・ホースは、臆することなく全力で、弾丸を放ち続けるッ!

 

「なかなかやるじゃあないか……褒めてやるよ、ホル・ホース……」

 

「近づくんじゃあねーッ!!!」

ホル・ホースが叫んだ。

 

「そうか?だが、近づかなけりゃお前をぶち殺せないからな……『腹に穴をあけてやる』と言ったろう?」

ピーターは、優しく、まるで諭すように答えた。

「ホル・ホースよ、昔のよしみで、キサマに特別な扱いをしてやろう……慈悲をかけてやる。キサマは、『あまり痛みを感じないように』殺してやるぞ」

 

「てっ DIOさッ……DIOみて―なこと言ってるんじゃね――ッッ」

ホル・ホースは、甲高い声で叫んだ。

声が裏返り、もはや悲鳴のようだ。

(くっそぉ〰〰これだけやっても、ダメなのかよォォッ)

逃げるか?そんな思いが頭をよぎり、だがすぐに逃げられるわけがない……と、ホル・ホースは考えを変えた。

 

「まだわからんのか?ホル・ホースよ……私が……『私達』が、DIO様と一心同体だと言う事を……」

ピーターは、ワザとらしく頭をかいた。

姿かたちは違えど、その口調、しぐさは、確かに『あの男』にそっくりだ……

 

「クッ……」

気圧されたホル・ホースは、後ずさった。

 

バンッ!

 

そのとき、背後から大きな音がして、ピーターの頭が大きく揺れた。

「ほう……」

ピーターは冷静に頭を触り、自分の血で真っ赤に染まった手を眺めた。撃たれたのだ。

「キサマもやるではないか小僧……なかなか見どころのある奴だ」

ピーターが、言った。

 

コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”

 

ピーターの左側後方、そこにいたのは 未起隆スーツをまとった早人と、アリッサであった。

先ほどは、早人が、未起隆スーツで増強された力をつかって、石を投げたのだ。

「僕のことを、無視していたのか?」

早人が、ピーターを睨みつけた。

「オマエの敵は、ホル・ホースさんとシンディさんだけじゃあないのさ……僕だってぇえええええッッ!!」

 

ブォンッ!ブンッ!

 

早人は大声を上げ、次から次へと石を投げつづけた。

 

「ピーターィッ!この、裏切者ォォォォッ!」

アリッサは絶叫した。両手で銃を構え、引き金を引き続けるッ!

 

「ハハハハハ」

ピーターが高笑いした。

「つまらん攻撃だな……もっと工夫をしろよ」

ピーターのスタンドが、指先だけで石を、弾丸を、はじき返していく。

「そうだ……東方仗助の話だがなぁ……あれは、本当の話だ。アイツは確かに、ワタシが倒した」

ピーターが、早人をあざけった。

 

ゴキィッ

 

早人の投げた石を、スタンドの片手で軽く受け止め、砕く。

 

「嘘をつくなぁああああッ!!」

早人は、大きく振りかぶって、再び、力いっぱい石を投げつけた。

 

だが早人が投げた渾身の一投も、同時に放たれたホル・ホースの銃弾も、無情にもピーターのスタンドに弾き返された。

 

早人の隣ではアリッサが銃を撃ち続けていた。

「ピーター……いったいどうして……」

引き金を引くアリッサの表情は、苦痛にゆがんでいる。

 

「ピーターさん……」

早人の頭から、ニュルンと、おにぎり大の『小さな未起隆』が、顔を覗かせた。

「僕はアナタのことをよく知りませんが……でも、こんなことになって残念ですよ」

 

「フン……下らぬことを、ペチャクチャと……」

ピーターがニヤリと笑った。

 

「おりゃああああああっ」

バスッ

プシュッ!

ターンッッ!

正面のホル・ホース、右後方のアミ、早人、未起隆、アリッサ、そして左後方のシンディ、三方から同時に、ピーターを攻撃するッ

 

だが、ピーターのスタンドは前方からのホル・ホースの銃弾を弾き返し続ける一方、簡単に後方からの攻撃をブロックし、そして跳ね返した。

 

「グッウウウウ!」

「ああああああ」

『ウゥウウウウ……痛いデス……』

 

跳弾が返ってきた。

早人は自分の投げた石を左肩に、アリッサは銃弾を右わき腹に受けた。

あまりの痛みに、二人は傷口を抑えながら膝をつき、地面に突っ伏した。

 

未起隆の声が、早人の脳裏に響いた。

『ウゥウウウ……すみません早人クン、私がいながら、アナタに怪我をさせてしまって……』

 

……君を守り切れる自信がない、もう動かず寝ていてください。

 

「未起隆サン……危険なことは解ってます……」

そんな未起隆の願いを無視して、早人は歯を食いしばって立ち上がった。

折れた右肩を庇いながら、早人はもう一度ピーターに投げつけるための石を拾った。

「僕は、ぼくは……生きて、お母さんを守るんだッ! ――仗助さんにも約束したんだッ!―― そのために、お前を倒すッ!!」

早人が、宣言した。

 

「フン……小僧……お前から死にたいらしいな」

ピーターは、懐からフォークを取り出した。そのフォークを投げつけようと、早人に向かって大きく片手を振りかぶる。

 

……少しだけ、ピーターの動きが止まった。

 

その時だ。

 

バシュッ!

 

突然、ピーターの顎が『縦に』跳ね上がった。

「なっ……」

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

ピーターの足元の地面に、『蝉が地上に出てくる時に開けるような』親指大の穴が開いていた。

次の瞬間、その穴から再び何かが飛び出し、ピーターの顎を再び打ち抜くッッ!

 

「ガッ」

顎を撃たれたピーターは、まるで『バトミントンのシャトルを打ち上げたよう』に吹き飛んだ。

そして、背中から地面にたたきつけられ、動かなくなった。

 

ヌプッ!

ピーターの頭からは1枚のDISCのようなものが飛び出し、海の中へ吹っ飛んだように見えた。

 

「ヘヘハ…ヒャッハッハッ……エンペラーの弾丸で地面に穴をあけていたのよ」

ホル・ホースは、早人を見てウィンクした。

「安心しな……峰うちって奴だ。殺しちゃいねーよ。アミの前でコロシはできねぇ〰〰ヒヒヒッ」

 

「でも、まさかピーターさんが……」

早人は複雑な思いで、ピーターに近づいて行った。

 

ひっくり返って意識を失ったピーターの胸には、3つのコインが埋め込まれていた。

 

そのコインを見ると、それまでヘラヘラと笑っていたホル・ホースが、今度は真っ青な顔になった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

1999年11月10日  昼 [A山近郊の廃墟]:

 

全身から血を噴出すハンターの肩口から、橋沢育朗のスタンド:ブラック・ナイトが顔を出した。

育朗は、心配そうにポルナレフに呼びかけた。

『ポルナレフさん、怪我はないですか?……ご無事で何よりです』

―――そして、自分勝手に仲間から飛び出して、すみませんでした。

『育朗』はポルナレフに頭を下げた。

 

「『育朗』クン……いや、助かった」

ポルナレフは尋ねた。

「君は今、近くにいるのか?無事なのか?スミレちゃんの話では……」

 

『ええ……僕の体はまだ――でも、どうして仗助クンが?まさか、彼も僕と同じように……』

 

「そうだ、『肉の芽』にやられている」

 

『なんてことだ……』

元はと言えば僕のせいだ。

『育朗』は、唇をかんだ。

 

その頃…… 仗助とエルネストのにらみ合いは、終わりに近づいていた。

「仗助、お互い意見の相違はあるだろう。だが今やるべき事は奴らを排除することだ、違うか?」

 

「わかってるぜ。ただムカッ腹が立っただけだ……わかってるぜ」

仗助は、最後にエルネストをもう一にらみして、腕組みをした。

「お手並み拝見だぜ、エルネストよォ」

 

「フッ……」

エルネストが砂を掴んで拾い上げた。そこに、エルネストのスタンドの翼が触れる……

「喰らえィッ この砂弾を避けられるかッ」

エルネストは、手に取った砂をポルナレフたちに投げつけたッ

 

『ううっ!」

育朗が顔色を変えた。

空中に広がる、小さな砂粒の一つ一つ……それがすべて、小型の爆弾に変じているのが、見えるッ!

 

「!?チャリオ――――ッツ!」

 

ビュワンッ!バシュッッ!!

 

だが、エルネストの爆弾は、ポルナレフのスタンドと相性が悪い。

砂粒の爆弾は 『育朗』とポルナレフに触れる手前で、すべてチャリオッツのレイピアに切り落とされた。

 

しかも、ただ切り落としただけではない。チャリオッツの鋭い剣先が空気を切り裂き、爆風をエルネストに向けて吹き飛ばしたッ

「我がスタンド:シルバー・チャリオッツの剣先は、空気を切り裂きスタンドの『炎』でさえ弾き飛ばすッ」

ポルナレフは、エルネストに人差し指を突きつけたッ!

 

ボゴォーンンッ!

 

弾き返された爆炎が、エルネストをおそうッ!

 

「グォオオッ」

エルネストは後方に飛び、爆炎の直撃をかろうじて避けた。

だが、爆風にあおられ、吹き飛ばされた。

「Uurrrrry! やるじゃあないか、ポルナレフ!!」

エルネストは壁に叩きつけられ、耳と目、そして頭部から血を流していた。

だがダメージを受けながらも、エルネストは楽しそうに笑いつづけた。


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