仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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ディオ・ブランドーとDIO その2

ギュイイーンッ!

 

「仗助ぇ、もうやめてっ」

そこに、アンジェラが突進してきた。

スケーター・ボーイの能力で、靴につけた車輪をフル回転させ、仗助めがけて加速していくッ。

それは、人間とは思えないほどの素早さだ。

 

その隙に、スミレがポルナレフに駆け寄り、よろよろとしているポルナレフの肩を支えた。

 

「仙道回転蹴りッ!」

アンジェラが、波紋を込めた回し蹴りを放つッ!

だが、仗助のクレイジー・ダイヤモンドは、アンジェラの回し蹴りを難なく防いでいた。

 

『ドラッ!』

クレイジー・ダイヤモンドの力を利用し、アンジェラはいったん引き下がった。

懐からトンファーを取り出し、そしてひるむことなく仗助の懐に飛び込む。

 

『ドラッ!』

 

「!?くうッ……」

今度は、圧倒的なパワーのクレイジー・ダイヤモンドの蹴りを、アンジェラがかわした。

身をかわしざまに、波紋を込めたトンファーの連撃を撃ち込む。

「トンファー波紋連撃ィ――ッ!」

 

カッ!カッ!カッ

 

だが、トンファーの連撃も届かない。全て、クレイジー・ダイヤモンドの拳に撃ち落されてしまったのだ。

 

アンジェラはムキになって連撃を撃ち込み続けているすきに、仗助本体に足首をつかまれた。

「無駄ッス!」

 

仗助はアンジェラの足首を持ち上げた。

 

『ドラァッ!』

宙づりになったアンジェラは、仗助のスタンドに放り投げられるッ!

 

「キャアッ」

だが、アンジェラは空中で姿勢を変え、ダメージなくきれいに着地した。

「さすが仗助……強いッ!」

 

「クレイジー・ダイヤモンド、あの方のスタンドにどことなく外見が似ているな……そのパワーもだ」

(やはり、あの方の『肉体』と強いつながりがあるからか?)

エルネストが感想を漏らした。

 

仗助は、ペッと唾を地面に吐きつけた。

「アンジェラよぉ―――出来ればお前とは戦いたくねー」

降参してくれ。

 

「だめよ仗助、そうはいかないわ」

アンジェラは、再びスケーター・ボーイで突進する。

「私がアンタを止めるッ!」

 

「よせぇ――ッ、これ以上は手加減出来ねえ――!」

仗助が辛そうに言った。

 

「!?ジョウスケ、お前がやりづらいのであれば、私が殺ろうッッ」

エルネストが言った。

スタンド:オエコモバがジャケットのボタンを引きちぎり、アンジェラに向かってばらまいた。

「ボタンを爆弾に変えた……さらばだ」

 

「馬鹿野郎ッ!エルネストッ、てめー何てことしやがるッ」

仗助がエルネストを突き飛ばし、爆弾を掴もうと手を伸ばした……だが、届かないッ。

 

「こんなもの!」

アンジェラがスタンド:スケーター・ボーイの『車輪』の力で急回転し、空を舞った。

 

ドガアァ――――ン!

 

アンジェラの背後でボタン爆弾が爆発し、爆風がアンジェラを仗助たちに向かって押し出した。

 

「コォォォオオオオ……」

(そうよ、波紋を一撃でも入れれば、仗助を気絶させられるッ)

 

「アンジェラァッ!」

仗助が、クレイジー・ダイヤモンドでアンジェラを殴りつける!

 

ガスッ……

 

(クッ!こすっただけでもモノスゴイ威力だわ、でも、これなら当てられるッ)

アンジェラはギリギリ、クレイジー・ダイヤモンドの初撃をかわすッ。

「行くわよ。スタンド越しの波紋ッ!!ウルトラヴァイオレット・オーバードライ……ッ」

 

そのとき、横合いから飛び込んできたエルネストが、アンジェラの波紋を込めた一撃をかわして、生身で体当たりした。

 

「なっ!?」

 

「ほらッ」

吹っ飛ぶアンジェラを、クレイジーダイヤモンドが追撃する。

 

「しまったっ」

(クレイジー・ダイヤモンドのラッシュが来る……)

 

体を丸めて防御姿勢を取ったアンジェラに、クレイジーダイヤモンドが手に持った何かを投げつけた。

 

すると……次の瞬間、アンジェラは網の中につかまり、天井裏に吊り下げられていた。

すぐに、スミレも全身を拘束された格好で、アンジェラの隣に吊り下げられた……

 

スミレとアンジェラは、網の中で必死に暴れた。だが網 は丈夫で、びくともしなかった。

「しまった……」

 

 

残るはポルナレフ1人。

「クッ……二人とも今解放してやる。待っていろ」

ポルナレフは、天井から吊るされた二人に向かって、声をかけた。

だがそのとき、ポルナレフの足元が突然膨れ上がった。

「うっ……」

バランスを崩したポルナレフに仗助が投げた網が飛び……結局、あっけなくポルナレフは拘束されてしまった。

 

「チッ……しまったゼッ。ガッチリ捕まえられちまった。動けねーッ」

 

「わっ……私もです。何もできないッ」

アンジェラは、網に『波紋』を流してみて、力なく首を振った。

『波紋』のエネルギーはすべて床に散らされ、まったく効果を上げられなかったのだ。

 

「暴れても無駄デス。下手に動こうとすれば、体を痛めますよ」 

仗助の隣にいた口ひげの謎のインド人が、ユーモラスに首を左右に振りながらポルナレフとスミレ、アンジェラの前に立った。

「プライマル・スクリーム!」 

インド人がそう叫ぶと、三人を囲んでいた床がぐぐっと盛り上がった。

そして三人を、上半身だけを残した状態で、さらにガッチリと拘束した。

 

――――――――――――――――――

 

 

1999年11月10日  未明 [A山近郊 T鉱山跡]:

 

プッッ

吐き出した唾には、血と折れた歯が混ざっていた。

色々な処が腫れあがって上手く口もあけられないし、目蓋も良く開かず、敵の姿さえよく見えない。

(俺は、いったいこんな所で何をしてるんだ。もう寝ちまおう……そうだ。元々俺にはカンケ―ネー話じゃあねーか)

一瞬、意識が飛びかけた。思わず目をつぶった一瞬、残してきたスケたちの顔が浮かぶ。

 

(イヤ、まだ寝るわけにはいかねー。そうだ、俺がここで倒れたら、奴らは杜王町も襲うに決まっている。そうはさせねー、俺のスケには手を出させねー)

噴上は再び気合を込め、目の前の敵を睨みつけた。

「あらら、色男が台無しねぇ」

ネリビルが嘲笑った。

少しもったいなかったかしら?

 

「ぬかせ!このドブス」

噴上はガクガクする足を抑えて、大見得をきった。

だが、それが全くのハッタリである事は、自分でも良く分かっていた。

実のところ、噴上は気を失う寸前の処まで追い詰められていたのだ。

 

今までにここまでやられた事は2回しかない。

一度目は、珍走団の抗争上、止む無く相手の特攻隊長とステゴロのタイマンを張った時だ。奴は強かったが、何とか踏ん張って引き分けに持ち込むことが出来た。

もう一度は、東方仗助とスタンドで 遣り合った時だ。その時は噴上はボコボコに負けた。そう、完膚なきまでに。

 

だが、そのどちらの時も、少なくとも『殺し合い』ではなかった。

今回の相手は確実に噴上の命を狙ってきている。 まともに一撃を受けたら、それで終わりなのだ。

 

「Giaaaaaa!」

ジャンプから振り下ろされるハンターのカギ爪が、噴上をおそうッ!

 

「おりゃあああッ!」

噴上は、カギ爪をハイウェイ・スターで防御した。

だがハイウェイ・スターは、近接戦闘向きのスタンドではない。

ハンターの物理的なパワーを支えきれず、ハイウェイ・スターが膝をついた。

噴上も、スタンドのフィードバックを受けて両膝を地面につく。強烈な圧力に、噴上の肉が、骨が、関節が悲鳴を上げた。

だが噴上には、それでもまだ反撃の余力が残っていた。

 

『おりゃああっ!』

ハイウェイ・スターは、その手に持っていたナイフを、ハンターの脳天に叩きつけた。

 

「Cyaaaaaa!」

悲鳴を上げて、ハンターは崩れ落ちた。

 

だが、ハンターに続けて、ネリビル自身が飛び込んできた。

「非力なスタンドで頑張るじゃないッ。でも、これならどう?」

ネリビルは、楽しくてたまらないとでもいうような口調でいい、噴上を殴りつけた。

ゾンビの強烈な拳が、噴上を襲うッ!

 

「くそっ」

防御のために、噴上は慌ててハイウェイ・スターを呼び戻した。

だが、間に合わないッ!

 

「ぐおおぉ!!」

かろうじて直撃は避けたものの、自らをゾンビと化したネリビルの拳は強烈だった。

かすっただけなのに、その鉄の拳は噴上にダメージを与え、吹き飛ばした。

「あら、無駄に頑張るジャナイ……弱いくせに」

ネリビルは、ペロリと下口唇を舐めた。

その唇から、尖った牙が覗いた。

「あなたの血を飲むのが楽しみ。ドンドン行くわよー」

ネリビルは、ジャブを打ち込んだ。噴上をなぶるかのような、手打ちのパンチだ。だが、その軽い一撃でさえ、侮れない。

 

「ち、チクショウ」

悔しいが確かにヤバイぜ。

ハイウェイ・スターの力で、 噴上は必死にネリビルの攻撃をさばき続けた。

一発でもまともに喰らったら、終わりなのだ。

 

ゾンビであるネルビルの攻撃は、重く、早かった。

徐々に噴上は押され、押し込まれていった。

 

「降参しなさい、色男クン――そうすれば、せめてあんまり痛くない様に殺してあげる。むしろ気持よく逝けるかもよ♡」

 

「なっ、ナメヤガッてよぉ――」

噴上は怒りに、ブルブルと震えた。

「か、か、返り討ちに、してやるぜ」

 

「フフフフッ」

ネリビルが頭に手をやってセクシーポーズをとり、噴上を見下した。

「そうよ、そうよねェ……出し惜しみはいけないわよねぇ……そうだっ、あんたに……とぅうっておき を見せてあげるわアン」

ネリビルの肩にスタンド:カントリー・グラマーが出現した。

カントリー・グラマーが耳障りな金切り声をあげた。

その金切り声が、止んだ時だ。

 

カサ ガサカサッ カサガサガサガサガサッ

何かが近づいてくる音がした。

廃村にはこびる放棄された水田の跡から、はこびるススキやなにやらを踏み倒し、突き進む音が、聞えるっ。

 

「何だ、何が来やがる?」

この嫌なにおいはなんだ?

 

「すぐわかるわよ」

不安そうにきょろきょろする噴上を、ネリビルが嘲笑った。

「せっかちは損よ、楽しみに待ってなさい」

 

「!?」

と、ようやく噴上にも、何が近づいてくるのかわかった。

「マジか……」

噴上は隠れ場所はないかと、あたりを見回す。

だが隠れる場所など無かった。

 

噴上が右往左往している間に、荒れ果てた水田跡の藪を掻き分けて現れたのは、都合三体の巨大な大蜘蛛だった。

大蜘蛛は涎を垂れ流しながらもガチガチとその牙を打ち鳴らし、びっしりと剛毛(黒く、濡れている)が生えている八本の足をカタカタと打ち鳴らす。

気絶しそうになるほどの悪臭と、ガラスをひっかいたような鳴き声。

その口が、おぞましく蠢いた。

噴上を、補食する気だ。

 

噴上は足が震えてきた。

あんな化け物に食われるなんて、ゴメンダ。

 

「ウェブスピナー:液グモよ……あんたに対抗できるかしら?」 

ヒャゥ…ハァッ ハハハァッ! ネリビルが高笑いを上げた。

 

噴上の脳裏に、チラリと三人のスケ達の顔が浮かんだ。

「うぉぉぉおっ、止めろおッ!」

 

「Jiwsshhhuuuww!」

ウェブスピナーが、悲鳴を上げる噴上に飛び掛かった。

 

     ◆◆

 

「ヘイッ!兄ちゃん。さっきの威勢は如何したんだよぉお?!」

テイラーが嘲笑った。

 

「ちっ」

億泰は、油断なく地面を睨み付けていた。

棚田を少し降りた所にいる噴上のピンチも見えている。

だが噴上の苦境も気になってはいたが、今の億泰に手助けが出来る余裕は無かった。

 

ボコッ

 

目の前の地面に穴が空き、そこからアオダイショウ大の蛆虫が何本も飛び出した。

これが、テイラーのスタンド、ユンカーズだ。

 

「フン」

飛び出してきたピンク色の蛆虫は、すかさず億泰のザ・ハンドが掻き消した。

「お前、ほんとにキショク悪いスタンドを使いやがってよぉ~~だが、この俺の敵じゃねえな」

億泰は蛆虫の残骸を踏みつけ、テイラーに向かって全力で走った。

 

「うぼぉおああああァ!」

威勢のいい口調とは裏腹に、テイラーは億泰から逃げていた。

だがただ逃げているわけではない。口から人差し指大の蛆虫のようなスタンド、ユンカーズを次々に吐き出しながら逃げている。

 

テイラーを追って崩れかかった民家の角を曲がった億泰は、嫌悪に顔を歪ませた。

 

億泰とテイラーの間に、蛆虫たちがうごめいているッ!

蛆虫達は億泰の周りをぐるりと囲み、周囲の地面をほぼ埋め尽くしていた。

蛆虫たちは小刻みに身を伸縮させ、口から何かの液を垂れ流し、億泰の周りを取り囲んでいた。

 

その隙に、テイラーがまた億泰との距離を取った。

「ヘッ、何度やったって同じだよ。お兄ちゃん、あんた、とろすぎるんだよぉ」

 

「調子に乗りやがってよぉ~~」

億泰は、何とかテイラーを自分のスタンドの射程距離に入れようと、悪戦苦闘していた。

だが、テイラーに近づこうとするたび、ユンカースが無数に表れて億泰をおそってくる。

億泰が何とかそれを排除しているすきに、テイラーは再び距離を取ってしまう。

その繰り返しであった。

 

「フン……お前のスタンド、シンプルに強いよなぁ。だぁがぁあ、スタンドの能力ってのは、単純な強さなんかじゃあ計れねーよぉなあ。あれだ、バカとスタンドは使いようって奴だ」

(億泰の奴は感情的で挑発するとすぐ我を忘れると聞いたぜ……ここは奴を出来るだけ怒らせてやる)

テイラーは挑発を繰り返した。

「お前はバカだからなぁ、スタンドをろくに使えやしねーだろーなぁ」

 

ヌシャッッ

 

テイラーはトラッシュ・トークで億泰をあおりながら、隙を見てザ・ハンドの左足、右足と、ユンカースを食いつかせていった。

 

「うるせーぞこの野郎!!」

ザ・ハンドがあわてて左手を地面に向けて振りまわす。

 

「おっと、おめー動きがど鈍すぎるなぁ」

 

ヌシャッッ、ヌシィィッッッ

 

テイラーは余裕の笑みでさらに一匹、もう一匹と、ザ・ハンドと億泰に取りつく蛆虫の数を増やしていく。

 

蛆虫が一匹取りつくたびに億泰の顔がゆがみ、目に見えて動きが鈍くなって行った。

「てめー動くんじゃねーゾォ、削ってやるからよぉ」

 

「ヘッ……このブンブン丸野郎、ちょろ過ぎるんだよぉ!」

 

「こっ、この野郎ォ……」

 

(ヘッ、だいぶカッカ来てやがるぜ、よし、ダメ押しだな)

テイラーはさらに億泰を挑発した。

「こんなぼんくらじゃあ、兄貴も浮かばれねーよなあぁ……お前、もしかしてポンコツのお前の父親よりも頭悪いんじゃねーかぁ」

 

コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”

 

「だがよぉ、お前の親父も DIO様のおかげで死ねねー体なんだってなぁ」

ヒャヒャヒャとテイラーが笑った。

「お前、せめて父ちゃんが普通に死ねるようにしてやりたかったらしいなぁ……知ってるぜぇ、アホなお前は、親父を普通に死なせてやる術を、自分から棒に振っちまったんだろ?」

 

「何だ……と?」

 

「お前、親父さんを殺せるスタンド使いを、自分の手で殺っちまったらしーじゃねーか。ヒャッヒャッヒャッ……あのキラー・クイーンならよぉ。お前の親父を再生のまもなく木端微塵にできたんじゃあねーか? あぁああ?」

バカな息子を持つと、化け物になっても父親は苦労するよなぁ。 

同情するぜぇ。

 

テイラーが調子に乗って言い募ると、億泰は黙ったまま沸々と怒りを蓄えているように見えた。

しかし、台風後のダムのように、臨界線ギリギリまで水位が上がった億泰の怒りは、遂に『決壊』した。

 

「貴様ッ、許せん!!!!」

 

(来たぜ!大振りの奴だッ!奴の左手を避けて無防備などてっぱらにィー、ユンカーズをぶち込んでやるぜ)

テイラーは勝利を確信し、にやっと笑った。

 

「オラッ」

ザ・ハンドが大きく振りかぶった。

 

(よし、今だ!)

テイラーが一歩後ろに下がった。

 

ボゴォウッ!!

 

ザ・ハンドの左手が空を切るッ

 

あまりにも大振りなその一撃を簡単に避け、テイラーは自分の両手、口、鼻、目、耳など ありとあらゆる穴から、 蛆虫を何回りも大きくしたようなテイラーのスタンド:ユンカーズを吐き出すッ。

 

ドロレレレェーーッッ

 

吐き出されたユンカーズは、億泰を食い尽くそうと四方八方から同時におそい掛かるッ!

(ヨシッ、勝った。隙だらけだぜ)

テイラーは、勝利を確信し、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「クソッ! まけねぇぞお~……グッ。ウォオオオッ! いっ……痛ってぇ!!」

抵抗する億泰が、ユンカーズに飲み込まれそうなっていく……

 

「ヒャッヒャッヒャアア、お前の負けだ! ユンカーズッ!奴を食らい尽くせッ ―― ガッ?!」

 

と、突然テイラーの動きが止まった。

なぜか、体中に、無数の『足跡』が食い込んでいたのだっ!これは、スタンドだ。

「なっ……」

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

戸惑うテイラーの目の前には、顔を晴らした噴上裕也が立っていた。

「ファ……ファイゥエィ・スターを、じ、じ動操縦、モードにしたぜ。お前の体力をすべて吸い尽くしてやるッ!」

話しながら、噴上の顔の腫れがどんどん引いていく。それと同時に、テイラーの体から力が抜けて行った。

 

 

「きっ……貴様」

テイラーは億泰を睨みつけた。

 

「ほらよッ!」

億泰は、力を失った蛆虫を払いのけた。

 

「貴様ッ!怒ったふりはワザと……冷静に演技をしていたのか……うっ……ウギィイイいいッ!!」

テイラーは力なく、崩れ落ちた。

ハイウェイ・スターが、テイラーの体からさらに生命力を引き出していく。

テイラーの体のなかで、ハイウェイ・スターが触れいている部分が徐々に透き通り、背後の骨格がボンヤリと見えてきた。体が見る見るうちにやせ細り、声からもだんだん力を失っていく。

「あぁ、ぁぁ……ぁ…………」

 

「コイツは任せたぜ、噴上よぉ」

億泰はもう一度ビュンッ と空間を削り、そしてネリビルの真正面に瞬間移動した。

億泰のスタンド:ザ・ハンドの空間を削る能力の応用だ。

 

「ほりゃっ」

ザ・ハンドがその右手を振り回す。

すると、三体の大蜘蛛:ウェブスピナーが瞬時にその体を削り取られ、倒された。

ザ・ハンドの、空間を削り取る能力によるものだ。

 

「今度は手加減しね~ぜ、ネルビルさんよォ」

億泰は、獰猛に言った。


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