仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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ジャン・ピエール・ポルナレフ その3

1999年11月9日  深夜 [A山近郊 T鉱山跡]:

 

「またまた連れて来たぜぇ〰〰っ」

森を抜けて噴上の『ハイウェイ・スター』が走ってくる。その後からはわらわらと ゾンビや、ハンター達が追いかけていた。

 

噴上は『ハイウェイ・スター』に血染めの シャツを羽織らせていた。

スタンドはスタンド使いにしか倒せない、それはゾンビとハンターの気を引くための目印だった。 シャツの血は噴上自らの血で、スミレが持っていたサバイバル・ナイフでチョッピリ自分の腕を切って絞り出したものだ。

 

ハイウェイ・スターに導かれたゾンビとハンターが、三人を見つけて歓声をあげた。

「Giyaxaaa!」

「Thichi Chiiiiiixtu!」

「Dowrryyy!」

 

意味不明の歓声を上げながら、ハイウェイ・スターが連れてきた怪物たちは億泰達めがけて走り寄ってくるッ!

 

「うわ……改めてこうやって見ると、気持ち悪いわぁ、このバケモンッ!死にやがれッ!」

スミレが嫌悪感に顔をゆがめながら、 ハンドガンを連射して、近くに寄ってきたハンターやゾンビの額に撃ち込んだ。

だが、どちらのクリーチャーも、倒れる仲間には見向きもせず、ぎらぎらした目で三人に向かって駆け寄ってくる。

 

「手筈通りに俺のハイウェイ・スターが怪物どもを引き付けた。億泰ぅ、そのあとはお前の番だぜ」

 

「おうょ。俺が一匹残らず退治してやるぜぇ~~」

億泰は、スタンド:ザ・ハンドをハンターの一匹に突っ込ませた。

 

ガオォンッ!

 

ザ・ハンドが右腕を一振りするたびに、ハンターの頭が無残にも削り取られる。

 

「Giyaaas!」

隣にいるゾンビが大声を上げ、億泰に向かって駆け寄ってきた。

 

だが、そのゾンビを、『ハイウェイ・スター』が狙い撃つッ

『ハイウェイ・スター』は非力さを補うために、石を両手に持ってそれを武器代わりに使っていた。噴上から離れた遠距離で、ハイウェイ・スターはゾンビの頭を破壊していく。

 

「フハハハハ……さあ―――、派手に暴れるぜぇィッッ」

噴上は、『ハイウェイ・スター』を走らせた。

『ハイウェイ・スター』が走るたびに、その後ろをゾンビとハンターが追いかける。

時折足を止め、数体のゾンビを破壊しては、また動く。

 

さんざんゾンビを引っ掻き回したところで、後ろから億泰が襲い掛かるっ!

億泰のスタンド:『ザ・ハンド』が、ゾンビの体を削っていく!

 

「おうぅっ。このまま突っ切って、仗助のやつを助けだしてやるぜぇ~~」

億泰は、吠えた。

 

その億泰を少し離れた死角から襲おうとしたゾンビの頭が、吹っ飛ぶ。

スミレが、ゾンビの頭を狙撃したのだ。

「急ぎましょ……」

まだ硝煙の登る銃をおろし、スミレが言った。

「今、WitDのビジョンが見えたわ、ビジョンの意味は完全にはわからないけど、私は、なるべく早くポルナレフさん達にあう必要があるみたい……」

 

「うっす……そういう事なら、まかせてくださいよ~」

 

それからどれだけ戦ったのか、いつしか三人は人っ子1人いない村に足を踏み入れていた。

その村に入ると、途切れなく噴上と億泰におそいかかってきた怪物たちが、ぴたりと動きを止めた。

 

ザザザッ―― 風が吹き、田んぼの後に生えた雑草を揺らした。

 

「ここは?」

 

「……廃村のようね」 

杜王町から北の方へ行くと、けっこうこんな感じでドンドン村がなくなってるのよ。と、スミレが言った。

「私の故郷も、もう一緒に暮らしてるお爺さんとおばあさんの二人しかいないわ」

 

「そうなのか……でも、だれも住んでなくてよかったぜ」

こんなバケモンがうろついているところに人が住んでいるところがあったら『最悪』だったからな。

噴上が言った。

「とっとと通り過ぎようぜ」

 

ガサガサガサ

 

三人は、雑草をかき分け、かき分け進む。

朽ち果て、崩れかかった古民家の庭も、元々道だったと思わしきところも、すべて雑草が生い茂っていた。

三人は知らない、この廃村は、昔、T町と言われ、今は廃坑となってしまったT鉱山の鉱夫とその家族で栄えた村であった。一時期は大いに流行ったが、すぐにその鉱物を掘りつくしてしまい、設立から、わずか10年ほどで再び消え去ってしまった町であった。

 

「なぁ……」

噴上が、スミレに尋ねた。

「言いづらいんだが、育朗の体の事、あんた知ってるのか?」

 

「何言ってるの?知ってるわよ。寄生虫バオーに侵されてるんでしょ」

 

「いや……そうじゃねぇ…いや、イヤ……そうだ。……それで、このままいくと……育朗が後何か月かで寄生虫バオーに体を喰らいつくされちまうんだ」

 

「……知ってるわよ」スミレが言った。

 

「あんたの予知はこの件について、何か言ってるのか?」

 

「いいえ……知らないわ。なんでだか知らないけど、ワタシの予知は、育朗のことについては、ほとんど働かないの……」

スミレが言った。悲しそうだ。

 

「なぁ、いいのかよ、そんなんで……おりゃぁ――納得いかねぇッ」

噴上は、なおも言った。

「だってよぉ、理不尽だろ。アイツ、そんな目に合っていい奴じゃねーだろ」

 

「わかってるわよッ!」

スミレが怒鳴った。

「いいわけないでしょ……でも、だからといってどうすればいいのよッッ!…………いまの私にできる事は一つだけ、ワタシは……私だけはどんなことがあったって育朗の横にいてあげるの」

 

「そうか……アンタ、強い奴だな」

 

「……強くなんてないわよ」

 

「育朗はよぉ……黙っていたけど、……俺たちにはみせねー用にしていたけど、アイツはずっと『絶望』してやがったョ」 

そう言うニオイがしたんだ。噴上は、ぼそりと付け加えた。

「俺がこんなこと言う義理じゃあねーかもしれねぇけど、アイツを、育朗のヤツを支えてやってくれよ」

 

「……もちろんよッ」

スミレは、目蓋をこすった。

 

「ところで、何で怪物共、ここにゃあ入ってコネーンダ?」

ずっと黙って二人の話を聞いていた億泰が、まったく違うことで首をひねった。

 

「そりゃあ、ここには、怪物達が怖がるようなもっとオッカネーものが在るんだろ」

フンッ と噴上が鼻を鳴らした。気が利かねー奴だ。

 

「気をつけましょう」

スミレがいつもと変わらない風に言った。

 

 

 

と、噴上が足を止めた。

「待ちなぁ……匂いがするぜェ。腐った匂いがよォ」

 

┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨

 

「あら、随分ね……」

廃村の崩れかけた民家の影から姿を現したのは、おなじみネリビルと、新顔の黒人の大男だった。

「はぁーい 億泰、久しぶりねッ」

ネリビルが、億泰にウィンクをして見せた。

「三人だけ……やってくれたわね……陽動に引っ掛かっちゃったわけかしら?」

 

「おいおい、俺にスケと戦えってか。よしてくれよ〰〰っ」

噴上が頭を振った。

「お前たちは、俺たちのコンビにゃあかなわないぜ。降参しろ」

 

「ご親切ね。好きになっちゃうかもォ……でも、そういうわけにはいかないのよ、ハンサム君。あんた達にこれ以上邪魔させるわけにはいかないからねぇ〰〰だから私はテイラーと一緒にあんた達と戦わなければならないってわけ」

なんて悲劇的ッ ネリビルは笑った。

「せめて、あんたたちの血を吸って、私たちの仲間にしてあげるわよ」

 

「へィ、色男よォ」

テイラーがふざけた口調で言った。

「ネリビルと戦うのがいやなら、俺がお前の相手をしてやろうか?お前がちょっとでも俺の相手になれるだけの力があればなぁ」

 

「……スミレ先輩よぉ、ここは俺たちに任せて先に行ってくれ」

億泰が小声で言った。

「頼むぜぇ~」

 

「……頼んだわよ、億泰、噴上クン」

スミレは、蒼白な顔でうなずいた。

「あんなクズに負けないわよね」

 

「モチロンだぜぇ~~ッ」

 

「まッかせなぁ!」『オリャァアアアアッ!』

 

ザ・ハンドとハイウェイ・スターが、同時に突っ込む。

 

その間に体をねじ込ませるようにして、スミレが走った。二人の間を抜け、田んぼ跡の草むらをかき分け、一気に廃村の出口 ――切り立った小山をのぼる細道―― に向って走るッ

 

「ッ!」

スミレを捕まえようと、その背中に向けて、テイラーとネリビルが手を伸ばした。

その手を、ザ・ハンドとハイウェイ・スターが阻んだ。

 

スミレは、後ろを振り返らず山道をどんどん走って行き、やがて森の中に姿を消した。

 

「あら……でも、まあいいか」

ネリビルが妖艶に笑った。

「1人でわれらの本拠に突っ込むなんて勇ましいわ……でも、これであの子もおしまいかしら……『あのお方』に捕まって……ね」

ネリビルは、唇に人差し指をあて、ウィンクしてみせた……

「仕方がないわね……代わりにアンタたちの体を引き裂いてあげるわ」

それとも血を吸って欲しい?

 

「油断するなよ」

テイラーが言った。

「最初から本気を出して、一気に片を付けるぜぇ」

 

ネリビルがスタンド:カントリー・グラマーをだした。

例のごとく、ネリビルとカントリー・グラマーが、金切り声を上げるッ

「おいで、お前たち!億泰クンの血はあなたにも分けてあげるわ!!」

「GaiGaiGaixtu」

「Doooduoo!」

「Buoowon」

すると、周囲のハンターがネリビルの周りにワラワラと集まってきた。

 

「やってみろォゥ、ダボが」

億泰が、ネリビルを取り巻くハンター達に特攻した。

「先手必勝だッボケぇッッ!」

 

「あら怖い」

しかし、ネリビルはハンター達にジャンプさせた。ハンターは、億泰を飛び越えて噴上に飛び掛かった。

「でも、まずはあんたよ、色男君♡」

 

「おおおおおぉ、来いやぁ!」

噴上は吠えた。

 

――――――――――――――――――

 

 

1999年11月10日  未明 [A山近郊の廃墟]:

 

ポルナレフがドアを開けると……そこには東方仗助が待っていた。

 

仗助はトレードマークの髪形を変え、金髪に染めたぼさぼさの頭にしていた。

「よぉ、元気で安心したぜ」

仗助は二人にむかって、ぼそりと言った。

 

その部屋は、元々は倉庫だったのだろう。打ちっぱなしのコンクリート床に、ガランとした空間が広がっていた。部屋の中心には赤錆の浮いたコンテナが転がり、 あちこちにスパナやねじ回し、ボルトナット等が雑多に散らばっていた。部屋の壁には、鉄製の棚が括り付けてある。

 

ポルナレフ達が入ってきた扉の反対側には、少し開きかかったシャッターがついていた。

そのシャッターの隙間から月明かりが差し込み、仗助の影を長く伸ばしていた。

 

「仗助……無事なのか?」

 

「ああ、おかげで大分調子がいいッスよぉ〰〰」

 

「どうやってここまで潜入したの?」

 

「……ああ、なんとなくここに来ればアンタたちに合える気がしてたんスよ」

 

仗助の態度が何かおかしい。大体、大事にしていたあの髪型を変えるなんて……本来ならあり得ないことだ。

アンジェラは嫌な予感を押し殺し、努めて明るく答えた。

「そッか。無事で良かった。ホントに心配したのよ。じゃあ急いで、ここを脱出しましょ。ここにはもう用は無いし、みんな待ってるわよ」

 

「……いや、悪いがそりゃあ出来ね――ッス」

仗助は悲しそうに首を振った。

 

「……仗助クン……前の変な髪形はやめたのか?」

仗助のもとに近寄ろうとするアンジェラを、ポルナレフが抑え、尋ねた。

 

「ちょっ……ポルナレフさん……どうして」

アンジェラが真っ青になった。

普段は温厚な仗助だが、髪形をけなされると 途端に人格が変わり、誰彼かまわず殴りかかる超危険人物になるのだ。

 

だが……

 

「いやー、そろそろ髪形を変えてみようかなって思ってね〰〰」

仗助がおどけてみせた。

「やっぱり、薄々変だと思ってたんすよ……それで、あの人より『もっと尊敬できる人』の髪形を真似してみたんですけど、なかなかいいでしょう」

 

コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”

 

「……DIO……か」

 

「そうっす」

仗助は、クレイジー・ダイヤモンドを出現させた。

「すみませんが、二人にはちょっと静かになってもらいます」

 

「仗助……お前も操られちまったのか」

ポルナレフは顔をしかめた。

(ジョースターさんのお子さんだ。怪我をさせたくないが……仗助クンのスタンド:クレイジー・ダイヤモンドは手加減できる相手じゃあない。悪いが、いきなりとっておきを出すぜ)

「チャリオッツ & エメラルドソードォッ!」

シルバーチャリオッツは、右手に銀色に輝くレイピアを、左手に『緑色に光る日本刀』のような刀を出現させた。

 

「へぇ〰〰カッケ―スタンドッすね。」

さすが、あの人が『認めた』スタンド使いっすね。

仗助が言った。

 

「レイピアとニホントウの二刀流だぜ」

ポルナレフは、仗助を睨みつけた。

「俺たちを静かにさせるといったな。やれるもんならやってみろ。実力でな。だが、しょぼい攻撃だったら……おめー、チャリオッツに切り刻まれるぜ」

 

「やめて……」

アンジェラがポルナレフのスタンドを見て、震え上がった。

「ポルナレフさんのスタンドで斬ったら、仗助が死んじゃうよ……」

「アンジェラぁ〰〰大丈夫だ」

仗助がにやりと笑った。

「ポルナレフさんよ――――ォ。あんたのスタンド、確かにカッケ―っス……だけど、そんなスットロイ刀なんかで、この俺の、クレイジー・ダイヤモンドのラッシュをとらえられると思ったら、大間違いだぜぇー」

 

「行くぞ……仗助。せめてもの情けだ、痛みは与えん!」

ビシンッ!シャシャッシャッ!

ポルナレフは、チャリオッツに剣を振らせた。ピッとレイピアの剣先を、仗助に向ける。左手に持ったニホントウは、肩に担いている。

 

 

「こえーこえー」

 

仗助がおどけた瞬間、チャリオッツが飛び込んだ。レイピアを、突き出すッ。

 

だがチャリオッツの突きは、ことごとくかわされた。

そして、チャリオッツが剣を引き戻すタイミングを突いて、クレイジー・ダイヤモンドが突進、その拳がポルナレフをおそうッ

 

バババッ!

ブゥンッ!

 

「クッ!」

今度は、クレイジー・ダイヤモンドのジャブを、チャリオッツがギリギリダッキングでかわした。

 

そこからは、一進一退の攻防が始まった。

 

幾度も突き出されるレイピアをかいくぐり、はねのけ、クレイジー・ダイヤモンドはチャリオッツの懐に入ろうとした。

 

一方、そうはさせじとチャリオッツは素早く動き、直線的なクレイジー・ダイヤモンドの突進をさばき続けた。

 

……チャリオッツとクレイジー・ダイヤモンドは、互いにクリーンヒットを与えぬまま何度も交錯した。

 

バミンッ!

 

二人はいったん距離を取り、互いの隙を探った。

 

「さすが……承太郎さんの元相棒っすね。あんた強ぇぇわ」

 

(クレイジー・ダイヤモンド……さすがに強い。……だが、こんなものか?汎用性の高い『直す』能力に加え、基本性能が高い正統派のスタンドと聞いているが……)

 

「もういっちょいくっス!」『ドラララッ!』

 

再び突っ込んできたクレイジー・ダイヤモンドのラッシュをチャリオッツがさばく。

だが、ポルナレフは、その攻撃が腑に落ちず、首をかしげていた。

(仗助のスタンド:クレイジー・ダイヤモンド……情報ではスピードと正確性が若干落ちるものの承太郎のスタープラチナと同等以上のパワーを持つはずだ……しかし、こりゃあ……)

 

考え込むポルナレフに隙を見つけ、クレイジー・ダイヤモンドが右こぶしを上段から振り下ろす。

だがチャリオッツはそれも難なくよけて、体勢が崩れたクレイジー・ダイヤモンドを蹴飛ばした。

(……確かに早い……だが、普通だ。こんなモンじゃ、俺のチャリオッツや、承太郎のスター・プラチナに比べりゃあ、二枚落ちの実力だぜぇ?)

 

「おい……それがお前の本気か……承太郎の話じゃあ、お前もっとヤル奴だと聞いてるぜ」

仗助にむかって、ポルナレフが挑発した。

「本気だせよ、東方仗助。今のままじゃ、勝負にもならねーぜ」

 

「……さすがに判ります?」

仗助が頭をかいた。

「実は最近ちょっと調子悪いんす。なんかクレイジー・ダイヤモンドのキレがなくなってるって感じなんすよねー……でも、俺の『直す』能力はさえまくりっすけどね」

 

ビシュッ

 

「何ぃッ?」

突然ポルナレフの足に、鋭い痛みが走った。

見ると、ポルナレフの足元を棘が刺さっている。

 

バシュンッ!

 

ミルミルうちに、棘は大きくなった。そして、棘はポルナレフの足を貫通して天井まで飛んで行った。

 

「先に床にむかって銃弾を撃ち込んどいたッす。それを今『直した』ってわけっす」

仗助が不敵な笑みを浮かべた。

「足を痛めましたね。どんどんいくっすよ……『ドラアアアアアァァ!!』」

 

「甘いぜ、エメラルドソードッ」

チャリオッツの左手のニホントウが、クレイジー・ダイヤモンドの左足を薙ぎに行くッ!

クレイジー・ダイヤモンドは素早くジャンプして、ニホントウの一閃を避ける。

 

「フン。また体勢が崩れたぜ」

ポルナレフが勝ち誇った。

「俺の、勝ちだ」

 

「うぉおおおお。クソッ!そんなに素早くて正確に動けるスタンドなのに、そんなに射程が長いなんて知らなかったっすよ……」

 

空中に飛び上がったクレイジー・ダイヤモンドの左肩に レイピアが突き刺さっていた。チャリオッツが飛び上がって、撃ち込んだものだ。

 

ダメージのフィードバックで仗助の左肩からも血が噴き出し、アンジェラが悲鳴を上げた。

 

「い…いってぇ……でも、かかったっすね」

仗助がにやりと笑った。

「あんたの動きも止めたぜ」

 

「何だと?」

 

『ドラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』 

クレイジー・ダイヤモンドが、片手でチャリオッツのレイピアをつかみ、固定した。

残された左腕でラッシュを放つッ!

 

ラッシュはチャリオッツをとらえ、チャリオッツは崩れ落ちた。

 

「ああぁぁぁぁ……ポルナレフさん……仗助ぇ……アンタ、なんてコトを!」

アンジェラが嘆いた。

 

と、そのときだった。

クレイジー・ダイヤモンドに殴られ、崩れ落ちたはずのチャリオッツの姿が、かき消えた。

 

 

「いや、これは……残像か……」

と、仗助がポルナレフの姿を探したそのほんのチョッピリの隙、そのほんの僅かな隙に、チャリオッツは仗助の背後に回り込んでいた。

ニホントウが、仗助の左胸、背後から、突然ぬるっと突き出される。

 

「うぉっっ……」

仗助は、ニホントウをつかんだ。その手から、血が噴き出る……

 

「ジョッ……仗助ッ!嫌ぁあああああ!」

アンジェラが、悲鳴を上げた。

 

コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”

 

いつの間に回り込んだのか、仗助の背後にはポルナレフが立っていた。

ポルナレフはチャリオッツの左手のニホントウを、仗助の胸に突き刺しているッ!

 

だが、不思議なことに仗助は特段痛みを覚えた様子もなく、元気そうにしていた。

「こっ……こりゃあ〰〰??」

 

「仗助ぇ、お前は動くなよ……我が 新しい能力 エメラルドソードは望むときに非実体化することができる……お前が少しでも動いたら、エメラルドソードを実体化させ心臓を斬る……」

 

「……いやぁ……さすが承太郎さんの相棒っすね……どうやって俺のラッシュをよけたんですか」

 

「簡単だぜ、カッチュウを外した。そうすれば倍の速度で動けるって訳だ。 オィッ!! アンジェラ!」

 

「ハイッ」

 

「仗助を、波紋で気絶させろッ」

 

「わかりましたぁ!」

アンジェラが涙をグイッと拭いて、スケーター・ボーイを出現させた。

確かに『波紋』を喰らわせれば、仗助を正気に返らせられるかもしれない。

 

「いや、いま眠らせられるわけには、いかないっすね」

 

と、ポルナレフの体がグイッと後ろに引っぱられ、同時に仗助が天井に向かって上昇した。

 

「うおっ…………」

ポルナレフが振り返って背後を見るッ。

すると、ポルナレフが引っ張られている先に、杭が突き出ているのが見えた。

「チャリオッツ!」 

 

カリンッ!

 

あわててポルナレフは自分に突き刺さろうとしている杭を、シルバー・チャリオッツに切り落とさせた。

「……くっ……いつの間に、俺の体にこの杭の破片を仕込んで立ってわけか……そして、仗助の奴はあのプラットフォームの部品を一つ持って戦ってたってわけだな。それを直した」

 

 

「そうっす。仕込ませてもらっていました」

天井近くのプラットフォームに到達した仗助が、下を見て笑った。

 

その時だ。

「ポルナレフさん、後ろッ」

背後に迫る何かに気が付いたアンジェラが、叫んだ。

「すぐ逃げてぇッ」

 

ボガァアアアアンッ!!

 

突然、ポルナレフの背後が爆発した。

 

チャリオッツは咄嗟に周囲の空気を切り裂き、爆発を弾き返すッ。

「!?なんだと……」

 

「いやぁ……さすがっすね……オエコモバの爆弾でも仕留められないとはねぇ」

仗助がプラットフォームから飛び降りた。

 

爆炎の中から、長身の男が姿を現した。

男の肩には、鴉のような外観のスタンドが止まっている。

 

「紹介しますよ、こいつはエルネスト……スタンドは触ったものを爆弾に変える能力。オエコモバっす」

仗助が言った。

 

「そうかよッ」

ポルナレフは、よろよろと立ちあがった。


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