仗助と育朗の冒険 BackStreet (ジョジョXバオー)   作:ヨマザル

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クリーチャー図鑑

クリーチャー名:マーチン
性能:破壊力 - B / スピード - B /射程距離 - C / 持続力 - D / 精密動作性 - D / 成長性 - (無し)
能力:DRESSによってマンドリルをベースに生体改造を受けた生物兵器。オリジナルは、初期のバオーと互角の戦いを繰り広げたほど。


ヌ・ミキタカゾ・ンシ(支倉未起隆) その2

「マーチン2世ちゃんよ。かわいいでしょ」

ネリビルは、うっとりと巨大なマンドリルの頭をなぜた。

「ふふふ、ようやく見つけたわ。あんたたちもう逃がさないからね……スミレちゃんも、そんなに怖がって顔を覆ってたって、仕方ないわよぉ」

 

隣にいた”スミレ”……が顔を覆ったまま、たじたじと後ろに下がり、億泰の背中に隠れた。

 

「あらら、ずいぶん内気なのね……あなた、そんな子だったかしら?」

まあいいわ、ネリビルが首をかしげた。

「ところで、もう1人スタンド使いの男の子がいたわよね……ほら、あのロープと一体化出来る能力の彼よ。彼はどこ?あのハンサムボーイ……あの子にも、この両手のお礼をしないとねえぇッ!!」

ネリビルが喚いた。

「おいでッ。モーリンッ!このガキの相手をお願いっ」

 

ネリビルの呼び出しに答え、年老いたマッチョ男が、マンドリルの陰から現れた。

「出番か……しかし、ずいぶんとまぁ、頭の悪そうなガキの相手だな」

年老いたマッチョ男:モーリンが、しわがれ声で言った。ネリビルと同じように、日本語だ。

 

「今回は二対一だ、勝ち目は無い……警告する、死ぬか、五体満足でスミレを手渡すか、どっちを選ぶ?」

モーリンは、億泰に向きなおった。

 

「へっ……お前こそ。俺のスタンドはつえぇぇぞ。ジジイだからって容赦しねぇ~~」

億泰は、スタンド:ザ・ハンドを出現させた。

「……お前たちをぶったおしてやるぜぇ~~。二対一だぁ?そんなの関係ぇねぇッ」

 

「そうか……では、死ねぃッッ!」

モーリンは、不意を衝いて億泰に蹴りを放った。

スタンドによるものではない、生身の足での攻撃だ。

 

「がぁぁぁ!」

不意を撃たれ、蹴りを喰らった億泰が吹き飛ぶ。

 

すかさずモーリンはスタンドを出現させ、ザ・ハンドに組み付かせた。

「これで、お前を守るはずのスタンドも、『抑え込まれた』と言う訳だ」

モーリンは、再び生身で億泰に蹴りを入れた。

老人とは思えない、鋭いけりだ。

 

「糞がぁ」

億泰は、蹴りを受けながらも、モーリンの足を抱え込んだ。

「ジジイが、無理してんじゃねぇぞッ」

 

億泰は、モーリンの抱え込んだ足を払おうとした。

 

その時、モーリンは格闘家のように複雑な動きをみせた。

いつのまにか、足を抱え込んだはずの億泰が、逆にモーリンにくみしかれ、関節をかためられていた。

 

何が起こったのか、億泰にはよく理解できなかった。

モーリンの関節技は、億泰の首を、肩を、足首を完全に極め、絞っていた。

億泰が暴れるたびに、モーリンの関節技がますますきつくしまって行く……

「若者よ。頑張ったじゃあないか、しかし負けを認めて大人しくしていた方が楽だぞ」

 

「うるせぇぞ、この野郎!」

億泰は、力で無理やり関節技を振りほどこうとした。

だが、その動きを利用され、億泰はモーリンに首を絞められてしまった。

酸欠で目の前が真っ赤に染まり、まぶたの裏がチカチカしてくる。

力を入れようとしても、なかなか力が入らないのだ。

 

「ほほーっ。さすが若者、中々のパワーじゃな。しかし、無駄な努力よ」

モーリンが嘲笑った。

「お前の技と力では、俺のホールドから抜け出ることはできんわ」

 

悲しいかな、モーリンの言葉は正しかった。

億泰は必死に暴れたが、暴れるが暴れるほど関節がさらに深く極められていく……

やがて、億泰はグッタリとして、抗うのを止めた。

 

「ようやくあきらめたか……ヨシヨシ……てこずらせおって」

モーリンが満足そうに言った。

ぐったりとした億泰に、モーリンが止めをかけようとした。思いっきり体をそらし、億泰の首を締め上げる。

 

その時、へっと億泰が笑った。

「ああ、あきらめたぜ。俺ぁ頭悪いからよぉ。一度に二つの事はできね~のよ……だから、もうあきらめたんだよ」

 

「おお、愁傷なことだのォ」

ヒャヒャヒャ。モーリンが笑った。

 

「だから……あきらめたぜぇ~~ッ ステゴロの方はよぉ!」

億泰の目が、光った。

 

ガボンッ!

 

突然、モーリンの左肩が、そして左腿がえぐれた。

「!?なんだとぉ!!!」

痛みに耐え切れず、モーリンは億泰のホールドを解いた。傷口を抑えて、地面を転げまわる。

 

その隙に、億泰は立ち上がった。

億泰の背後では、億泰のスタンド:ザ・ハンドが、プラネット・ウェイブスを組みしいていた。

プラネット・ウェイブスの左肩と左腿が、モーリンと同じように不自然にえぐれていた。

ザ・ハンドが、削ったものだ。

 

「貴様ッ……集中していたな。スタンドの操作に」

地面に突っ伏したモーリンが、億泰を睨みつけた。

 

「俺のスタンドの攻撃は、痛てぇからよぉ~~お前、俺のザ・ハンドに勝てると思ってたのかョ……!?」

億泰は、モーリンを見下ろした。

 

その時……

 

ドゥオンッ!

 

今度は、立ち上がった億泰の左腕に、突然『孔』が空いた。

500円硬貨を一回り大きくしたような孔だ。

その孔から、血が噴き出してきた。

 

「ウォオオオ!!――痛ってぇ……なんだこりゃ。やっべぇー」

やられちまったぜぇ。

何が起こったのか理解できないまま、億泰は傷口を抑え、膝まずいた。

 

ドォオンッ!

 

その億泰の左足に、またしても、500円硬貨大の穴が一つ空いた。

 

ドドゥワンッ!

 

そしてもう一つ、左脇腹が抉られるッ!

 

「ガッ!」

たまらず、億泰は地面に這いつくばった。

その足元に、見る見るうちに血だまりができていく。

 

「ハッハハ。何だってえ? 『お前のスタンドに勝てると思ってたか』だ ってぇ?」

モーリンは、噴き出る血を抑えながら笑った。

「もちろんだ」

 

「こ……このやろ~~」

億泰が怒鳴った。

「てめー何しやがった。答えろッ!」

 

「お前は、我が攻撃をまともに食らった……いいだろう、教えてやろう」

モーリンは、億泰の腰を踏みつけた。

「……我がスタンド、プラネット・ウェイブスは、『宇宙から隕石を呼び寄せることが出来る』能力なのだッッ!貴様の体の孔は、わがスタンドが呼び寄せた隕石が、作ったものよ」

 

「な……なんだとぉ……」

 

「だから少年よ、もう立つな。今は、警告の為に敢えて致命傷を与えなかった。だが、次に立ち上がったら、容赦なくお前の土手っ腹を、打ち抜く」

降参しろ。

モーリンは、億泰を見下ろした。

 

     ◆◆

 

「アンタも、おとなしくしてなさいよッ」

マーチンの上に乗ったまま、ネリビルは、億泰の陰に隠れていた"スミレ"を捕まえた。

「見て……あんたたちに奪われた両腕に、義手をつけたのよ……これ、手首から銃弾を撃てるの。……便利でしょ」

アナタの体に銃弾を撃ちこんだら、静かになるかしら。

ネリビルは、"スミレ"の手首をねじった。

 

手首をねじられ、酷く痛いはずだ。しかし、特に反抗をするでもなく、"スミレ"はおとなしくしていた。

 

「あら、素直ね。珍しい……でもね、容赦しないわよンン」

ネリビルは石を拾って、"スミレ"の頭をその石で殴りつけた。

 

「ガッ!」

男のような悲鳴を上げて、"スミレ"が這いつくばった。

 

「まだよ、こんなもんじゃ、許してあげないわ」

ネリビルは、ねじった手首を引っ張り、無理やり"スミレ"を立ち上がらせた。

 

「チェックメイトだな、坊主」

モーリンが、億泰をさらにグリグリ踏みつけた。

「俺は一度、土下座ってやつが見たかったんだ……やってみろよ」

 

「けっ、言ってろ、ダボが……」

億泰が、ペッと唾を吐いた。

 

と、その時、"スミレ"が動いた。

「違いますね……チェックメイトは、そちらですよ」

スミレの声ではない、男の声だッ。

"スミレ"は思いのほか素早い動きで、身をねじって、ネリビルの手から逃れた。

 

捕まえようとするネリビルの前で、"スミレ"が、顔を覆っていた手をほどいた。

その奥からは、奇妙に劇画調の、スミレのよう……な?顔が、姿を現した。

 

「……誰、あんた……騙したわねッ!」

 

「よくぞ聞いてくれました、実は私、宇宙人なんです!!」

劇画調の“スミレ”が、真顔で答えた。

 

「きさまぁ、真面目に答えろッ!」

モーリンが吼えた。

 

ネリビルの目も、怒りに燃えた。

 

カントリー・グラマーが出現し、金切り声をあげる。

『Kyaaaaaaaaaa!』

 

その叫びに呼応するように、マーチンが動く。その巨体からは信じがたい速度だ。

マーチンは未起隆に飛びつくと、未起隆の喉を締め上げた。

 

「グブッ……」

 

「マーチンちゃんの手にかかって、死になさいッ」

 

「グブッ……それは、困ります」

突然未起隆の体が、『蛇』に変わった。

蛇は、締め上げようとするマーチンの手を、するりと逃れた。

蛇の動きは止まらず、思いのほか素早い動きで、完全にマーチンから離れた。そして、するり、するりと動き、隣にいたモーリンをがんじがらめに縛りあげた。

 

「なっ……なんだとっ」

蛇は、暴れるモーリンをものともせず、木の上につるし上げた。

 

続いて、奇妙なことに、モーリンの真向かいの大木から、『木の枝』がグングンと伸びてきた。

その木の枝が、モーリンの右肩に触れた。

 

「?ンンンウッ??」

モーリンが首を傾げた。

 

枝の先が、四つに割れ、開いた。

 

タ――ンッ!!

 

次の瞬間、乾いた音と共に、『枝の先』から弾が飛び出した。

 

モーリンの右肩が、打ち抜かれるッ

続けて、モーリンの左腿・右腿へと、枝が伸びて行く。

そのたびに、枝が触れた箇所が、打ち抜かれるッ!

 

「グァアッ!」

モーリンの体が痙攣した。

 

「キッキィ――――ッ」

モーリンの真向かいの木の樹皮が、バラリとはがれ、木の隙間からインピンが顔を出した。

インピンは、にらめっこのように頬を膨らませている。

 

さらにその奥から、猟銃を構えたもう1人の『スミレ』が、現れた。

「あんたこそ動かないで、……、次は急所を狙うわよ……このノータリン」

木の上で、『スミレ』がモーリンに警告した。

 

「貴様……既に仕掛けていた。と言うことか」

モーリンが、苦々しげに言った。

 

「フフフ……」

猟銃を構えた『スミレ』を覆っていた木の皮が、はがれた。木の皮は、はらりと劇画調の”スミレ”の顔にかかった。

 

木の皮は”スミレ”の顔を覆い、変形し、そして現れたのは、未起隆であった。

「驚きましたか?」

 

「やるじゃあない」

ネリビルはうなった。

「ロープと一体化できるわけじゃなくて、何にでも変身できる能力って訳ね……しかも、複数同時に……アナタ、凄い能力を持ってるのねぇ。……そうだ、私たちの仲間に入らない?」

 

「いえ、結構です。それに、私の星では、みんな同じ事が出来るんですよ」

私は、特別な能力を持っているわけではありません……と、未起隆は大真面目に言った。

 

「形勢逆転って奴よ」

木の上から、スミレが言った。

「わたしたちの勝ちよ。あきらめて、投降しなさい。オ・バ・サ・ン」

 

「本当ぅ?」

ネリビルが笑った。

「あなたぁ、ホントに本気でそう言ってるのぉ?おめでたいわね。……フフフ……スミレちゃん、悪いけど形勢を逆転させてもらうわよ。……モーリンッ!わかってるわね」

 

「おおぉッ、プラネット・ウェイブス! あの木を、……打ち抜けッッッ!!」

モーリンが叫んだ。

 

ベキッ!

 

すると、スミレが隠れていた大木に、突然大きな穴があいた。

 

バリベリベリ

 

大木はけたたましい音を立てて、へし折れ、未起隆とモーリンの上に降り落ちるッ!

 

「なんですってェッ?自分も巻き込まれるのに……イカレてるわ……」

スミレは、唖然としてモーリンを見た。

 

「ウワッハハハハ……わが主、わが救世主のためッ!我がすべてをささげるッッ」

モーリンは満足げに、大木が自分の上に降りかかるのを見ていた。

「ひゃゃひゃひゃひゃあああ」

倒れ墜ちる大木の影から、モーリンの狂ったような笑い声が響く。

 

本物のスミレは、まるでお手玉のように、木から投げ落とされていた。

 

インピンが、地面に向かって落ちていくスミレのパーカーから、飛び出した。

空中に飛び出したインピンは、尻尾を膨らませて、ゆっくり地面に降りていく。

 

未起隆は、その様子を確認してほっとした。あの様子なら、インピンは怪我もせず降りてこられるだろう。

だが、スミレは危ないッ!

 

「スミレ先輩ッ。つかまってください」

蛇に変身してモーリンを縛り上げていた未起隆が、動いた。

崩れかかる大木の下で、未起隆はモーリンを放し、蛇から元の姿に一瞬で戻った。

そして、右手をフック付ロープに変身させた。

未起隆はそのフックを別の木にかけ、力いっぱい引っ張り、スミレに向かって飛んでいくッ!

ブウンッ!

未起隆は、振り子のように身を揺らして、上から降ってくる大木をかわした。

 

一方、未起隆に解放されたモーリンは、何もできないまま倒れ落ちる木にぶつかり、地面にたたきつけられていた。

その上に、先ほどモーリンが自分で打ち抜いた大木が、折れ重なった。

モーリンの体が、大木の下敷きとなる。

モーリンの口から響いていた笑い声は、絶叫に代わり……うめき声となり……そして止まった。

 

「なっ……またお前か……許さないわよぉ。泣いてもッ、わめいてもッ、あんたを殺すッ!」

上を見上げ、ネリビルが吼えた。

 

スミレは、未起隆にだきかかえられ、かろうじて地面に落ちる事から、のがれていた。

「ミキタカゾ、アンタも怪我してるのに私を救ってくれてありがとう……」

 

「僕は大丈夫です。僕は宇宙人ですが……『男』です。ちょっとの怪我くらいなら、我慢できます」

未起隆が、頭の血をぬぐいながら言った。

スミレを助けたときに、上から降ってきた木片で怪我をしたのだ。

「それより、スミレ先輩は怪我ありませんか」

 

「アンタのおかげで、怪我はないわ……でも、なんて奴なの、自分を犠牲にしてまで、私たちを道連れにしようとするなんて……」

 

スミレの足元には、自ら撃ち抜いた大木の下敷きとなったモーリンの腕が見えていた。

ぐったりと力を失ったモーリンの体。その横でピカピカ光っているCDが、妙に場違いに見えた。

モーリンの私物だろうか?

そんな場違いな考えを頭から追い払い、スミレは未起隆の手をひき、木の上に移動した。

安全な木の上に移動すれば、怪我をしている未起隆の負担も、少しは軽くなるはずだ。

 

「億泰さん、こっちは任せてください」

未起隆が、足元の億泰に声をかけた。

 

「……未起隆、よくやったぜ。いいか、そのままスミレ先輩を地上に下すんじゃねぇぞ……後は、俺に任せな」

 

「悪運の強いガキどもだッ」

ネルビルは億泰に背を向け、スミレと未起隆の方を見上げて、喚いた。

「こんな悪いガキは、たっぷり血を吸っておしおきしてやるろりりりりぃぃぃぃ!!」

奇声であった。

 

(うっげぇ~~あのオバサン、すっかり頭のネジがとんでるぜぇ~~相手したくねぇ……)

しかし、 億泰は勇気を奮って小石を拾い、ネリビルに投げつけた。

 

バシッ!

 

小石は命中した。

ネリビルはゆっくり振り向き、じろりと億泰を睨みつけた。

小石があたったところから血がタラリと落ち、ネリビルはその血をペロリと舐めた。

「この……ビチグソ小僧がぁああッ! マーチンちゃんッ」

ネリビルは憤怒の叫びを上げながら、カントリー・グラマーを出現させた。

 

カントリー・グラマーはマンドリルの耳元に取りつき、なにやら囁いた。

 

マーチンは、カントリー・グラマーの指示にウギィと吠えた。

そして空高くジャンプすると、億泰の頭上からおそいかかった!

 

「億泰ぅうう、先ずは手負いのあんたを倒す事にしたわッ!」

 

「何言ってやがる」

億泰は鼻で笑って、ザ・ハンドをマーチンに突っ込ませた。

「俺の右手は、無事なんだぜぇ~~」

 

「gUgYIIIIIIII !」

マーチンは人間の太ももほどもある杭を口から吐き出し、億泰に投げつけたッ。

 

ガオンッ

 

すかさずザ・ハンドの右手が唸り、杭を消滅させた。

「唯の猿が俺様におそい掛かるなんて、百年早いぜ」

ザ・ハンドはマーチンを蹴り飛ばした。

そして、とどめを刺そうと、右手を振りかぶる。

 

そのとき、マーチンの背中からサッカーボール大の火の玉が出現した。火の玉は、億泰に向かって飛んできたッ!

 

ボォムンッ!

 

「うぉぉぉおおおお!」

かろうじて億泰は火の玉を避けた。だが、億泰の頭は、まるでアイパーをかけたかのようにチリチリになっていた。

「このエテ公ッ!ただじゃあおかねーゾッ」

 

「ザ・サン……」

ネリビルが言った。

「それがマーチンちゃんのスタンドの名前よ……とっても強いわよぉ」

 

ザ・サンは、マーチンと億泰の中間をフラフラと浮かんでいた。

火の玉の発する熱で周囲の空気が揺らぎ、辺りの景色がゆらゆらと歪んで見えた。

 

「ザ・サンだとぉ。俺様のスタンドと似たような名前を付けやがって、この真似っこ野郎がぁ!」

削ってやる。

億泰とザ・ハンドが火の玉に向かっていくと、火の玉は2、3度膨らみ、一筋の炎を吐き出した。

 

幸い狙いは外れ、炎は億泰に当たらなかった。

しかし、炎の熱で億泰の上着が引火した。

「コノヤロー、ノーコンのくせにスゲー火力じゃねーか」

億泰は上着を脱ぎ捨てた。

脱ぎ捨てた上着はあっという間に燃え尽きて、後には灰だけが残った。

 

「あら……意外と器用にかわすのね」

 

「あったま来た。もう手加減しね~、思いっきり削ってやるぜ」

億泰のザ・ハンドと、マーチンが激突するッ!

 

触れたモノをこの世界から削り取るザ・ハンドの右手と、

凶暴な野生の力が込められたマーチンの牙、

そして、凄まじい熱量の火球:ザ・サンの放つレーザービームとが 、

交錯するッ!

 

ギャアアア!

 

悲鳴を上げ、先に倒れたのはマーチンだった。

ザ・ハンドによって、マーチンの右腕の肩から先は、完全に削られていた。

マーチンは、傷口から激しい血を噴出させ、ドウッと倒れた。

 

「どうだ!……っっ痛てぇッッ!」

倒れたマーチンを見下ろす億泰は、すぐに足を抑えてうずくまった。

億泰の足が、反対方向にねじれていた。


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