「テメェ……馬鹿にするのも大概にしろよ!」
「馬鹿にする? さて、私は自分の思ったことを正直に口にしただけなのだがな」
「コイツっ!」
今現在、俺の目の前で不毛な闘いが勃発しようとしている。
激昂するように熱り立っているのは俺の友人でも在る
そして涼しい顔をして笑みを浮かべているのは
正直仲良しこよしとは行かないだろうと思ってはいたが、此処まで仲が悪くなるとは思いもよらなかった。
もっとも、その原因は殆ど俺の所為なのだが。
※
聖域へと帰ってきた俺は、早速教皇から呼び出しを受けることに成った。
まぁ、半ば予想していたことだ。呼び出しを受けた事自体は別にどうでもいい。
ただ教皇から告げられた内容に関しては、俺も正直予想外の内容だった。
精々が何らかの任務に送られる程度だと思っていたのだが――
「白銀聖闘士の統括、ですか?」
「その通りだ。お前をはじめ、同年代の者達から続々と白銀聖闘士が誕生している。お前には、その統括の任に就いて貰いたい」
白銀聖闘士は総勢で24人。
当然一つの時代で全てが現れるわけではないのだが、それでも今現在は多くの白銀聖闘士が誕生している。
青銅聖闘士とは違って、本当の意味で聖闘士と呼ぶことが出来る実力者。それが白銀聖闘士なのだが、
まぁ、組織運営をする上で部署を作って仕事をするというのは悪いことではないだろう。青銅聖闘士には手に余るが黄金聖闘士を出す程ではない――なんて案件は幾らでもあるだろうからな。
そういった任務を管理して運営出来れば教皇の労も随分と減るはずだ。
『地上の平和を守る』、それだけを考えるなら今回の話は賛成である。
ただ一点、俺がそれを統括する立場でなければ、だが。
「教皇、俺が白銀聖闘士の統括なんて馬鹿な話です。そういう面倒なことは、頭の回る文官にでもやらせれば良いじゃないですか」
「それはダメだ。お前にも解るであろう? 聖闘士とは言ってしまえば超常の力を身に着けた超人なのだ。そんな者達が、果たして頭の回るだけの普通の人間の言うことを素直に聞くと思うか?」
「……それは、まぁ無理でしょうね。文官側が非常に切れ者で、聖闘士側が一定の思慮を持つことが出来るならば可能でしょうが……」
「今の聖闘士たちは皆が若い。彼等にそういった配慮を期待するのは酷というものだろう」
溜め息を吐くようにしながら言う教皇。
どうやら普段から、思いの外に苦労しているらしい。
とは言え、それも仕方が無いかもしれないな。中枢の筈の黄金聖闘士達でさえ、未だそういった考え方が出来ているとは思えない。
それが更に若い世代と成ってしまえば、どうしても自分の力を過信して勝手な振る舞いをしてしまうだろう。
ならばそういった連中を力で押さえつけることが出来る上、多少なりとも頭の回る人間が上に立てば良いのだ。
だが、それを俺にやらせる?
冗談にしか思えない。
いっその事黄金聖闘士の誰かをその部署のトップにしてっも良いんじゃないか?
「教皇――」
「言っておくが、黄金聖闘士はダメだ」
先手を打たれたようである……。
「黄金聖闘士は十二宮を守護する立場が有るということもそうだが、彼等は些か過激が過ぎる」
「過激が過ぎる?」
「若いからか、自分達に出来ることを他人にも求める傾向が強い。そんな彼等を白銀聖闘士の統括にでもしようものなら、部下と成る白銀聖闘士達はあっという間に使い潰されてしまうよ。――後5年、いやせめて3年も経てば加減することを覚えてくれるかもしれないが……。まぁ、彼等の加減が効かないのも、偏にお前の所為と言えるのだがな」
「……俺は関係ないでしょ」
黄金聖闘士の加減が効かないのは、どう考えても連中の元々の性格が理由だよ。
「この人事にお前は不満を覚えるだろう。当然、ギリシア以外で聖闘士と成った者達の中には反感を覚える者も居るだろうな」
「だったら、そういった連中にやらせれば良いじゃないですか。俺は他人の下に就いたからって、いちいち文句を言うほど馬鹿じゃないですよ」
「確かにそういった連中は上に据えれば納得をするであろうが、しかしそれに見合うだけの力を持っては居ない。――常識的に考えてみろ、クライオス。お前は普通の白銀聖闘士が、アスガルドの
「…………無理、でしょうね。黄金聖闘士なら問題なく可能でしょうが」
ソレを言われるとこう答えるしか出来ない。
実際、並の白銀聖闘士はマッハ2以上の動きと言われているが、その程度の能力で神闘士達を、そしてドルバルを倒すことは不可能だろう。
「つまり、お前は能力、実績ともに申し分ないということなのだ。それにお前が上役に就くともなれば、少なくともギリシアの地で修行をした聖闘士から不満が出ることはないだろうからな」
「ギリシアの地で修行をした者の中にも、俺が上役になると聞けば嫌がる奴が居るかもしれませんよ?」
「ほぅ、例えば誰かね?」
「…………」
咄嗟に出した言葉だからな、残念ながらそんな奴は思い浮かばない。
逆に俺だって、カペラ、シリウス、アルゲティなんかが上役でも文句は言わないだろうからな。
いや、もしかしたらシャイナ辺りは文句を言うかも知れないが。
「クライオス、既に解っていることだろう。この任はお前以外には有り得ない。そして誤解をしてもらっては困るが、コレは要請ではなく、私からの命令なのだ」
「…………解りました」
命令、か。確かにそう言われると反論できない。
仕方が無い。
形だけとはいえ、俺は教皇の側に立つことを選択しているのだ。
必要以上に反発をすることは、現在の
渋々ではあるが教皇からの命令を受諾する。
仕方が無い。もっとポジティブに考えれば良いさ。自由に動けなくなるのは痛いが、その分だけ組織力を手に入れたと思えば良いのだ。
……黄金聖闘士1~2人に殲滅される程度の組織力だが、それでも組織は組織だ。
頑張れば、聖戦開始まで白銀聖闘士勢を生かすことも可能かもしれない。
最もその場合、星矢たちのパワーアップフラグが無くなる危険性も在るのだが、な。
※
数日後、教皇の勅命という形で世界各地に散らばっていた白銀聖闘士達が一同に介することと成った。
とは言え、今現在の白銀聖闘士達である。
名前を読み上げようか?
もっとも、その中でも異彩を放つ存在が二人ほど居る。
ケフェウス星座のダイダロスと、
俺も含めてそうだが、彼等の殆どはまだ10歳そこそこ。その中でこの二人はプラス2~3歳ほど歳上である。
……というか、居たんだなオルフェ。
後何年後に冥界に行ってしまうのだろうか?
いっその事、コイツに彼女を作らせないほうが聖域にとってはプラスに働くようなきがするんだが。
因みに、白銀聖闘士が集められた理由は組織立ち上げの報告集会というか、そんなのが理由である。
……なんだかなぁ。
とは言え、それが問題だったのだ。
教皇の口にした内容は、簡単にいえば『これからも聖域の為に頑張ってくれよ』といった内容が殆どだったのだが、その中で白銀聖闘士を一つの組織として運用すること、そしてその為の統括を
そのことにギリシア勢の一部は喜び、一部は無関心、そして外様である他所の国から来た者達は困惑と苛立ちを顕にしていた。
まぁ、当然の反応だろう。
言いたいことを言ってさっさと退出してしまった教皇は、恐らく『後はお前が上手く纏めろ』とでも言っているのだろう。
――全く、好きでこんな地位につく訳ではないのに。
「あぁ……皆、初めましてが殆どだよな? 教皇からも言われたと思うが、俺が君たち白銀聖闘士の統括をすることに成ったクライオスだ。正直、面倒な事この上ないとは思っているが、教皇の命令となれば断るのは難しい。嫌々ではあるが出来うる限り仕事は熟すつもりだ。皆にも出来る限りの協力をして欲しい」
ズラリと並ぶ面々に、俺眉間に皺を寄せながら挨拶をする。
ヤル気が感じられないかもしれないが、どうか許して欲しい。本当にやる気が無いのだから。
「ささやかではあるが、この後にちょっとした親睦会を企画してある。皆に参加して欲しい」
予算は殆ど出なかったが、それでも腕によりをかけて作ったし手伝っても貰ったのだ。出来れば皆には参加して欲しいものである。
「――親睦会? なんだコレは? 仲良しこよしの子供会か何かなのか?」
聖闘士たちに移動を促そうとしたおり、不意にソレを遮るような台詞が聞こえてきた。言ったのは――
「ペルセウス座のアルゴル、君か?」
声の聞こえた方へと視線を向けると、其処にはクセの強い髪型をした少年が鼻を鳴らして此方を睨んでいた。
着込んでいる聖衣の形状と、前もって手に入れておいた資料から見るに、彼はアルゴルで間違いはないだろう。
しかし、予想外だったな。
俺はてっきり、蜥蜴星座のミスティ辺りが突っかかってくるんじゃないかと思っていたんだが。
「何か気に入らないことがあるのかな? ……まぁ気に入らないことだらけだとは思うのだけど」
「解っているのなら一々尋ねないで貰いたいな! まぁそれでも言わせて貰うのなら、教皇の命とはいえ何処の馬の骨とも解らない奴の下につくなど我慢が出来ん」
なんだろうか、解りやすいなぁコイツ。
馬鹿にする意味も込めて
『成る程、では自己紹介をしましょう。私の名前は
とでも言ってあげれば良いのだろうか?
しかし、そんなアホな遣り取りをしているとその分だけ料理が冷めてしまう。
いや、冷めても大丈夫なものを作ったつもりなのだが、しかしあまり遅くなるとその分だけゲストの怒りが高まるし……。
「えーっと、俺が統括に成ることが気に入らないって奴は手を上げてくれるか?」
手っ取り早く解決をするため、俺は皆を見渡しながら確認をする。
手を上げたのはアルゴルの他に、
※
シャイナ――
白銀聖闘士への就任、そしてその後に一悶着を起こしてそのまま任務へと……クライオスの奴は何かと忙しく動き回っていた。
私自身、アスガルドからクライオスが帰ってきたと聞いた時には労いの言葉の一つくらいは掛けたいと思ったのだけれど……私がその行動に移す前にクライオスはカノン島に行ってしまっていた。
人伝に聞いた話によると、アスガルドで決して浅くはないような怪我を負ったのだとか。アスガルドの内乱を鎮圧したと聞いた時は『流石クライオス』とも思ったけれど、それも決して簡単では無かったんだと良く解った。
だから今回、教皇から白銀聖闘士の統括……多分一番の上役のことなんだろうけど、それをクライオスがすると言われた時は一も二もなく納得をしたんだ。
実際、クライオス以外には考えられない。
今現在解っている実力、そして実績ともに私達の中ではクライオスは群を抜いてるからね。
だから逆に驚いてしまっている。
クライオスが上に立つことに反対をする人間が居るということに。
「料理が冷めてもつまらないので、出来れば手短に話を纏めたい。1人づつ順番に理由を言ってくれるかな?」
ニコリと笑みを浮かべて問いかけるクライオス。
人好きのする笑顔を浮かべているが、実際のアイツは結構無茶な性格をしている。どっちかというと自分勝手かな? 力づくで物事を治めるような部分があったからな……。
反対をした連中は、口にする言葉を気をつけないといけない。
「――まぁ、大方はアルゴルの言ったとことと同じだ。我々は君のことを良く知らない。ギリシアの地で修行をしていた者達はそれなりに親交も有るのだろうが。今日はじめて顔を合わせた男が上に立つ……そう言われてもな」
「そうだな。実力の良く解らない奴が上に立つなんてのはゴメンだぜ」
「おう。そうだ、そうだ」
順に、ミスティ、ジャミアン、ディオの順で口を開く。
成る程……単純クライオスの実力が解らないから――か。
確かに私だって、急に出てきた奴の命令い従えなんて言われたら反発をするだろう。特に今現在、こうして文句を言っている奴らの命令を聞けなんて言われた確実に拒否をする。
「――オイ! クライオスはアスガルドの内乱を鎮めた男だぞ!」
「そういった実績があるからこそ、教皇は今回の人事を行ったのだ!」
ミスティ達の言い方が気に入らなかったのだろうか、シリウスとカペラが声を上げた。その隣で頷いている所を見ると、どうやらアルゲティも同意権みたいだ。
「その話は俺達も聞いている。だが、それが果たして其処まで評価される案件だったのかどうかは疑問が出るだろう?」
「何だと、貴様!」
「うん? 何を熱り立っているのだ貴様は? 我々は何も間違ったことを言っているつもりはないのだが?」
「そうだぜ。それとも何だ? お前達はクライオスの金魚のフンなのかよ!」
「言い得て妙、と言うやつだな」
「テメェ……馬鹿にするのも大概にしろよ!」
「馬鹿にする? さて、私は自分の思ったことを正直に口にしただけなのだがな」
「コイツっ!」
クスクスと笑うミスティ、そしてそれに合わせて声を上げてディオとジャミアンも笑った。駄目だ、私もこいつらの事が嫌いだ。
クライオスを馬鹿にされたからかは解らないが、少なくともこのままじゃ仲良くするなんて出来そうにない。
「落ち着けお前達。俺達は口喧嘩の優劣を問題にしているわけではない筈だ。結局のところはだ、クライオス。俺達は白銀聖闘士、黄金聖闘士には届かないまでも言ってしまえば完成された聖闘士なのだ。ならば実績といった解り難いモノではなく、もっと解りやすく実力を示して貰うべきではないか?」
アルゴル……面倒な言い回しをする奴だな。
簡単にいえば、自分と戦えと言っているだけじゃないか。自分に勝てたら認めてやるぞ――って、お山の大将気取りか?
いや、今の奴はお山の大将にすら成っていないから、目障りなコバエの様なものだな。
正直、私なんか『ヤッてしまえ』とも思う。
けれどクライオスは何か悩むように口元に手を当てていた。
「……貴方も彼等と同じ意見なのかな? ダイダロス」
首を傾げるようにクライオスは、先程から黙ったままのダイダロスに問いかけた。話が振られるとは思っていなかったのか、ダイダロスは一瞬目を見開くと驚いたように表情に出す。
「俺は皆の意見を聞きたい。言ってくれないか、ダイダロス?」
「正直に言えば、俺はクライオスが纏め役に就くことを反対しているのではなく、今回の様な纏め役を作ること自体に反対をしている」
「へぇ……続けて」
「俺達は
「それは個人のモチベーションの問題じゃないのか? 個人が持つ矜持や誇りを刺激する仕事だけが回ってくるなんてことは有り得ない」
「だからこそ、そういった組織だった物を作るべきではないと主張している」
「つまり個人個人で任務の取捨選択を出来るようにするべきだと、そしてそのためには組織だった形などは足枷にしかならないとダイダロスは主張するんだな?」
眉間に皺を作った状態で言うダイダロスの言葉に、クライオスは面白そうに口元に笑みを浮かべていた。
何が面白かったっていうんだ? ダイダロスは言ってしまえば、教皇の命に反すると言ってるようなものなんだよ?
「――成る程、良く解った。ダイダロスとは後ほどユックリと話し合いの場を設けよう。そういった反対意見は重要だ。何処をどうすれば良い形になるのかといった参考になるからな」
「……怒らないのか?」
「怒る必要は何処にもないだろ? 俺が意見を言ってくれと願ってダイダロスはそれに応えた。怒りを露わにする部分が見当たらない」
笑みを浮かべながら言うクライオスの言葉に、ダイダロスは息を吐くと肩の力を抜いた。どうやらクライオスのことを少なからず認めたようだ。
とは言え、ダイダロスが考えを変えたわけじゃないんだろうけどね。それに少なくとも、私だって『命令だから何でもやれ』――なんてのは嫌だしね。
「さて――と、残りの人達は俺の実力が解らないって話だったかな? まぁ、そういった意見に関してはそのうち解りやすい形で納得できる場を準備するよ。多分だけど、他の人達も面白がるだろうからな」
「そのうちとは、随分とのんびりとした話だな? 俺達は今すぐにでも始めてしまいたいのだが?」
さざなみ程にも揺れないクライオスとは違い、アルゴル達は少しづつ小宇宙を高めている。今すぐに、こんな所で始めてしまうつもりだというのか?
馬鹿だ、本当に馬鹿だよ。
ほら見な。クライオスだって溜め息を吐いてる。
「……時と場所を選ぶべきじゃないか? 俺としては無事に皆を会場に案内したい――」
「何をしているクライオスッ!」
クライオスが説得をしようと口を開いていると、それを邪魔するような大きな声が周囲へと響く。私を含めて皆がその声の主を探して視線を動かすと、其処には若干の苛立ちを含んだ表情をする
……何で怒っているのだろうか?
「何をしていると聞かれると、現在他の白銀聖闘士達を説得中、かな?」
「そんなものはサッサと済ませろ! 向こうでは皆が首を長くして待っているのだぞ!」
「いや、俺もそうしたいのですがね。何分今日は初日ですし、出来るだけ穏便に済ませたいと――」
「そういった面倒なことはするな。言うことを聞かない奴などは叩いてでも聞かせれば良だろう」
「そりゃ、
「えぇい、まどろっこしい! 退け! 俺が文句を言うような奴は殴り飛ばしてくれる!」
「いやいやいや、アイオリアが殴り飛ばしたら普通の聖闘士は死にますから」
「お前で加減することを覚えたぞ」
「その加減の仕方は、まず間違いなく足りてないと思うよ?」
パタパタと手を振りながら顔をしかめているクライオス。
それはそうだ。私達の小突くと、黄金聖闘士の小突くでは意味が違う。
それにしても、さっきアイオリアは『向こうでは皆が首を長くして待っている』とか言っていなかったか?
「クライオス、懇親会……だったかい? それって他にも参加者が居るのか?」
疑問に思い聞いてみると、クライオスはキョトンとした表情を浮かべた。
『言ってなかったか?』って顔だね、アレは。
「懇親会は俺達白銀聖闘士は勿論、十二宮を守護する黄金聖闘士たちが参加する予定に成ってる。現在聖域に居る黄金聖闘士は全員出席となっているけど」
それはつまり……
「ちょっと待て、クライオス。つまり黄金聖闘士の方々は既に待っておられると言うことか?」
「そうだね」
「それは、ココで揉めれば揉める程待たせる時間が増えるということだな?」
「当然そうなるな」
「何故それを先に言わないのだ!」
「……懇親会があるって言わなかったか?」
「黄金聖闘士の方々が出席するとは聞いていないぞ!?」
悲鳴を上げる様にアルゴルが言うと、その言葉に賛同したのかディオ、ジャミアン、それにミスティまでもが顔を青くした。
流石に黄金聖闘士が相手になると萎縮してしまうようだ。
「……それじゃあ、コレも言ってなかったかな? 懇親会の料理の一部は、
「――ッ!?」
「あぁ、やっぱり伝えてなかったか。……悪かったね?」
「悪かったで済ますなぁ!」
肩を竦めて『アハハ』と笑うクライオス。
それに見事なツッコミを入れるアルゴル。
なんだろうか? アルゴルは思ったよりも取っ付き易い人間なのかもしれない。
けれどクライオス……絶対に伝え忘れじゃなくて、故意に伝えなかったに違いない。黄金聖闘士の誰かが焦れてやって来るのを待っていたんだろう。
「まぁ、そういう訳だからさ。色々と言いたいことも有るだろうけど、今日の所はそれを抑えて、楽しくやろうよ。実力云々はその内に機会を作るから」
現れたアイオリアに萎縮していた連中に向かってクライオスは笑顔を向けると、皆は幾分安堵したような表情に成った。
雰囲気が和らいだのかもしれない。
うん。こういった状況を作ったことを考えると、やっぱり私達の上に立つのはクライオスしか居ないと思える。
それにだ、クライオスは私の素顔を見た男なのだから、誰よりも強くなってくれなければ困る。
女の聖闘士はその素顔を見られた場合、その相手を殺すか愛さなければならない――か。
愛……正直まだまだ解らないけれど、その相手がクライオスだと言うのなら悪くはない。
※
……いやぁ、普通に黄金聖闘士達のこと伝え忘れてたよ。
同理で連中が後々のことを考えずに突っかかってきた訳だ。
アイオリアが来てくれたのは良かったな。
コレが例えばミロとかだったら、何人か怪我人が出たかもしれない。
一番怪我人が出た可能性はシャカだろうが、しかしシャカはまかり間違っても様子を見に来るなんてことはしないだろう。
しかし、実力を示せ……ねぇ。
あの場所でぶっ飛ばせば良かったのだろうか?
失礼な言い方かも知れないが、俺は目の前に居た連中には何の脅威も感じなかった。普段の相手が悪すぎるのか、あの程度の小宇宙ではとてもとても……。
恐らくはやろうと思えば一瞬でカタは着いただろう。
幻覚を見せても良かったかもしれない。
兎も角、俺の主観では連中をどうにかするのは難しいことではなかったのだ。
しかしその場合、ダイダロスや
ダイダロスの実力は正直未知数ではあるが、面白い考え方をする奴だ。出来れば味方に取り込みたいし、オルフェなんかは黄金聖闘士に匹敵する――なんて言われるような奴だからな。
出来るだけ変な刺激はしない方が良いだろう。
――あぁ、しまった。
懇親会の会場に到着すると見るからに不機嫌そうな顔をしている連中が4人居る。
デスマスク、ミロ、アフロディーテ、シャカの4人だ。アイオリアも混ぜれば5人だな。
やって来た俺達に対して散々遅いだなんだのと文句を言ってくる。
えぇ、そうですね。俺が悪かったですよ。
でもね、折檻をするなら俺が聖衣を脱いでからにしてくださいな。
また壊されても困るんで。
因みに懇親会は、主に黄金聖闘士が楽しむ形で進んでいった。
俺は遅かったことが理由で何人かの黄金聖闘士からお仕置きを受けたのだが、その後に俺に文句を言ってきていた連中から
『統括、頑張ってくれ』
的なエールを送られたのだった。
解せねぇ。
一応は、戦う場所の用意をしなくて良いのか?と尋ねたのだが、
『俺達には無理だ』
と口を揃えて言われた始末。
やはり俺には解せなかった。
まぁ、納得をしてくれたのならそれで良いさ。
後ほどダイダロスとオルフェ、この二人とは少しだけ接触をしておこう。
この先、色々と頼むことが増えるかもしれない実力者だからな。
そう言えばう一つ解せないことが有った。
それは不思議と、シャイナが俺に料理持って来てくれたということだろう。シャイナの素顔を見たことがある俺としては、何時『お命頂戴!』となるかと今でも恐々としているのだが、幸いデモンローズに鍛えられた俺には毒殺の心配もない。
だから持ってきてくれた食事は美味しく頂いたのだが……。食べれば食べるほどに追加をされるのは結構キツかった。
シャイナの弟子であるカシオスがあそこ迄デカくなった理由は、案外この辺りにあるのではないだろうか?
頑張れば早く書けるものだと思いました。
次回予告は……
考え中