大丈夫だ、問題しかないから。-Blue trajectory- <1st Season>   作:白鷺 葵

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2ndシーズン編リメイク作品開始のお知らせ

2023/10/10 9時から、『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版作品、『問題だらけで草ァ!!』2ndシーズン編の連載を開始しました。作品はこちら

リメイク作品である『問題だらけで草ァ!』シリーズは『大丈夫だ、問題しかないから』同様、<1st Season>⇒<2nd Season>⇒<劇場版>の三部作構成の予定です。

Re:vision要素は拾いますが、新作として展開された場合は様子見する予定。場合によっては「Re:visionとは繋がらない」体で話を続けていく可能性があります。ご了承ください。

 

今回は作品のあらすじ、プロローグに当たる文章の冒頭~一区切り部分までを掲載しておきます。

相変わらず拙いモノカキで良ければ、この作品を見守って頂けたら幸いです。

 

 


 

 

【あらすじ】

 

 

人類に革新者(イノベイター)が現れる、ほんの少し前のこと。

世界には、自分の記憶や経験を共有させる力を持つ、共有者(コーヴァレンター)と呼ばれる人々がいた。

世界には、自身がまったく見たこと経験したことのない記憶および経験や知識――虚憶(きょおく)と呼ばれるものを持ってしまった人々がいた。

世界には、共有者(コーヴァレンター)の能力と虚憶(きょおく)の両方を持つ存在がいた。

 

これは、元・ユニオン軍所属のフラッグファイター/現・悪の組織及びスターダスト・トラベラー居候のMSパイロット――刃金(はがね) 空護(くうご)/クーゴ・ハガネを中心とした群像劇。

 

果たして、世界の明日はどこにあるのか。

『パンジャンドラムがどの方向に転がるか』を予測できたら、多分見つかりそうである。

 

 

Q.問題だらけなんですけど!?

A.仰る通りです。具体的な問題点は以下の通り。

 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。

 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。

 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。

 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。

 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)

 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)

 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)

 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。

 9.このお話は1st本編開始前から始まります。

 10.現時点ではPixivとのマルチ投稿を予定していますが、更新優先度はハーメルンの方が高いです。向こうで2期篇の投稿が始まり次第、リンクを張りますのでお待ちください。

 

 上記が「大丈夫」という方は、このお話をお楽しみください。

 感想頂けると嬉しいです。

 

 


 

 

 

「あっ、第1幹部! ブライティクスに関する大河ドラマ、撮影全部終わったらしいです!」

 

「本当!? よかったぁ! 『キャストとスタッフのいがみ合いで撮影延期になった』って聞いたときは、本当(ホント)にどうなるかと思ったんだ!」

 

 

 構成員(しゃいん)からの報告を聞いた第1幹部――リジェネ・レジェッタは、安堵と喜びから大きく息を吐いた。悪の組織もスポンサーとして、資金援助や各スタッフの斡旋等で駆け回ったのだ。上手くいってくれなかったら非常に困る。重要案件が無事に片付いたので、口元が緩んでしまったのは当然だろう。

 

 他にも、映画やドラマに舞台の映像化やその原作小説の売り出しに関する事業展開は幾らでもある。新たな総帥(そうすい)として就任してから頑張っている長男の姿を思い浮かべつつ、リジェネも端末を操作しながら案件の確認を行う。

 つい最近に“新解釈を加えて再構成した”と銘打った――実際は、“程々にプロパガンダを施しつつ、なるべく史実に寄せた”――新説『ソレスタルビーイング』が長編ドラマとして放映されることになった。こちらの方にも、悪の組織――特に総帥(しゃちょう)も映画監修に関わっている。

 特に、作品の主役となる刹那・F・セイエイ、彼女が愛した男であるグラハム・エーカー、2人の相棒をやっていたクーゴ・ハガネやイデア・クピディターズ役のキャスティングには非常に煩い。彼女や彼と瓜二つの役者を見つけ出しては、役者のキャリアガン無視で主役に抜擢し、かなり厳しめの演技指導を行うという悪癖があった。

 

 “『ソレスタルビーイング』の主役に抜擢された俳優たちは、この映画をきっかけに大成する”というジンクスがなかったら、一体どんなことになっていたことやら。

 『今回も4人にそっくりな役者を引っ張って来た』と自慢げに語っていた凝り性の長男を思い出し、リジェネは思わず笑みを浮かべた。

 

 

「第1幹部、ガンダム記念館の記念式典に関する案件の進捗です」

 

「ありがとう! 後でテオと総帥(しゃちょう)にも回しておくね」

 

 

 構成員(しゃいん)から受け取った資料を、記念式典で歌う予定となっている歌手――テオ・マイヤーと、記念式典のスポンサーとしてあちこち駆け回っている総帥(しゃちょう)へ転送する。

 程なくして、彼らから返信がきた。どちらもメッセージも『資料の確認完了、進捗具合の把握、こちらの準備も万端』とあった。……どちらも激務なので、正直ちょっとばかし心配だったりする。

 

 

(……みんなが旅立って、結構な年月が過ぎたな)

 

 

 忙しい日常の中、リジェネはふと立ち止まって空を見上げる。蒼穹の片隅に咲く花は、今日も綺麗だ。

 

 刹那たちが旅に出たのは、1年戦争の記念館が出来たばかりの頃だった。今では計画中だったガンダム記念館建設も既に終わっており、AGE-1を始めとしたガンダムが展示されている。勿論、ソレスタルビーイング製のガンダムはレプリカだ。歴史的な価値だけではなく、“唯一現存するMSを見に行ける”観光施設という側面もあり、人で賑わっている。

 現在ではMSは存在せず、全てワークローダーと呼ばれる非武装人型機動ロボットが闊歩していた。機体の殆どが“ELSを始めとする外宇宙生命体と共同で動かす”ことを前提に設計開発されており、外宇宙航行時のサポーターとして活躍している。MSとしてのガンダムは残らなかったが、その系譜はワークローダーへと引き継がれていた。

 

 ブライティクスも、当時前線で戦っていた大人たちの多くがパイロットや指揮官から退役していたり、重鎮として今も現役で頑張っていたり、寿命で亡くなっていたりする。

 あの頃子どもだった面々――地球防衛組やキオたち――も大人を通り越して初老となり、そろそろ後進育成に取り組もうとしていた。

 外見変化が緩やかなリジェネたちとは違って、周りはあっという間に成長し、老衰し、次世代に後を託していく。

 

 リジェネたちにもそういう文化が無いわけではないが、新人類としての特性上、人間よりも圧倒的な“周回遅れ”になりがちであった。

 

 

『あれから50年近く経過したのに、まだ仕事に慣れてないのか?』

 

『もうちょっと落ち着いて仕事してるイメージがあったから、未だにあの調子なのは驚いたよ』

 

 

(『元・第1幹部がグラン・マから指導者(ソルジャー)総帥(しゃちょう)の地位を継いで、僕が第1幹部に配属された』ことは、体感時間的に()()()()のことなんだけどなぁ……)

 

 

 つい先日顔を合わせた仁とキオからかけられた言葉を思い出し、リジェネは内心苦笑した。イベント関連の仕事でてんやわんやしている姿を見た2人は、懐かしそうにこちらを見つめていたっけ。

 

 

『……僕たちって、宙継くんと同年代だったよね?』

 

『外見年齢が若いままの人たち見てると、なんかバグるよな』

 

 

 尚、その隣で悠宇とディーンが割と真面目な顔をして悩んでいたか。特に前者は、久しぶりにマノンやゴーグ等と再会して話をしていたらしく、色々思うところがあったらしい。

 他にも、クレセント銀河や高度文明連合からの使者が地球を訪れたこともあったか。ブライティクスが結んだ縁は、後の外宇宙探索や異種族との対話に活かされていた。

 

 勿論、ブライティクスの戦いが終わった後も、地球は何度も危機を迎えた。その度に、仲間たちは立ち上がった。

 

 ブラック企業を体現したような政治体系の惑星及び異星人(外見は人間と瓜二つ)から「奴隷になって、社畜の如く365日戦い続けろ」と命令されたこともあるし、神にも等しき生物による身勝手極まりない暴挙によって地球人が拉致されていたなんてこともあったし、いつぞや自分たちが打ち倒した“時代遅れのシステム”を凶悪にしたような存在の暗躍に地球全土が巻き込まれたりもしたか。

 仲間の多くが故郷たる惑星へ帰還したり、ショウたちのように機体を破壊や封印していたり、刹那たちのように外宇宙探索へ旅立って不在だったりして、ブライティクス全盛期と比較すれば戦力不足もいいところである。それでも何とかやってこれたのは、平和を目指して武力を手放し、故郷へ帰り、外宇宙探索へと飛び立った仲間たちの想いを無駄にしたくないと思ったから。

 

 

(あれから色々あったけど、僕らは元気でやっているよ)

 

 

 リジェネは()()()()()人々に思いを馳せる。脳裏に思い浮かべたのは、新緑のマントを翻す女性――敬愛する『母』の背中だった。

 彼女は“楽園”とよく似た白鯨に飛び乗って、どこか遠い場所へと飛び立ってしまった。()()()()()人々たちが乗る白い船は、今頃どこを飛んでいるのか。

 ……答えなんて、『1つ』しかないと《理解し(わかっ)ている》。彼女が乗った白鯨の行き先が何を意味しているかなんて、とっくの昔に気づいている。それでも――。

 

 

(いつか、貴女が僕たちを迎えに来てくれたら。……貴女にたくさん、話したいことがあるんだ)

 

 

 “白鯨が迎えに来る”ことが何を意味しているのか、リジェネたちは知っている。『迎えを望むのはいけないものだ』ということも、知っている。

 同時に、知っているのだ。それが『いつか、誰にでも、分け隔てなく、等しく訪れる()()()なのだ』ということも。

 

 

「地球連邦のキース・アニアン大統領が、火星のゼラ・ギンス大統領や木星連合の大統領と会談を行い――」

 

「外宇宙探査から帰還した“楽園”の艦長ジョミー・マーキス・シンさんが、『新たな銀河系と異種族とのコンタクトに成功した』と――」

 

「民間企業の外宇宙探索部隊に所属している刃金宙継さんが、長年のパートナーである“金属生命体の特殊個体”と婚約を発表――」

 

 

 リジェネが物思いに耽っている間にも、世界は絶えず動き続けている。新たな世代が台頭し、世界を次のステージへと推し進めていくのだ。

 

 まだまだ当分、白鯨はリジェネたちを迎えに来ることは無いだろう。勿論、リジェネたちにだってやるべきことは沢山ある。地球と他の惑星に住まう命たちを繋げ、相互理解と平和を築くために。次世代を担う人々に心構えを教えるために。そうして――白鯨が迎えに来るよりも早く、この地球に帰って来る旅人を迎えるために。

 新人類の勘が叫んでいるのだ。“外宇宙へ旅立っていったソレスタルビーイング号が、もうすぐ地球に帰って来る”と。特に総帥(しゃちょう)の力は正確な日時を察知していたようで、正式な発表(こたえあわせ)が行われる瞬間を今か今かと待ち構えている。ブライダル雑誌の準備をしていたので、旅立った面々の誰かが()()()()()()になっているのだろう。

 ブライティクス時代の僚友たちの結婚式――その一部は、悪の組織が経営しているブライダル事業・部門が担当していたことを思い出す。式を挙げた当事者たちからすれば遠い昔に思うだろうが、リジェネたちにとってはつい最近の出来事であった。瞼を閉じれば、僚友たちの結婚式の光景がありありと思い浮かぶ。

 

 

(……一番ヤバかったの、アキトとユリカの新婚旅行だったなぁ。“2人が新婚旅行中にテロに合う”虚憶(きょおく)を《視て》対策立てたのが上手くいったっけ)

 

 

 地球に残留することを選んだソレスタルビーイングのセカンドチームと、軍を辞した後は紆余曲折の末に悪の組織へ就職したジラート――否、レイナ・スプリガンらを巻き込んで、アキトとユリカ夫婦を襲撃しようとしたテロリストをぶちのめしたのは今でも覚えている。

 奴らの目的――ユリカを生体CPU擬きにするのと、アキトを人体実験の被検体として使い潰そうと画策していた――を、総帥の思念波経由で把握したレイナ・スプリガンの大暴れによって、テロリストどもは壊滅。テンカワ夫妻は何の問題もなく新婚旅行を満喫することが出来た。

 

 尚、テンカワ夫婦は、“ソレスタルビーイングの地球残留組とレイナによる共同戦線によって、自分たちを狙ったテロリストどもが一網打尽にされた”ことを把握していたらしい。

 料理修行中の夫の元に遊びに行った際、夫婦から感謝されたことは今でも覚えている。照れ臭いのを誤魔化すようにアキトの作った料理をダメ出ししていたレイナが、顔を赤らめていた姿も。

 リジェネたちにとってはつい最近の光景だけでど、アキトたちにとっては遠い昔の話だろう。“アキトが独立して自分の店を持ち、レイナがそちらを贔屓店に変えた”のは、今から数十年前だったから。

 

 

「生まれる命があれば、去り行く命がある。先を行く人々は、生まれ落ちたばかりの命を――“未知なる可能性(もの)”を秘める存在の未来を照らす役目を担う」

 

 

 ブライティクスの由来は“未知なるものを照らす光”。未知なるものの中には、勿論『未来』も含まれている。

 戦乱を駆け抜け、平和のために戦い抜いた彼らの軌跡は、今もこうして、人々の未来を照らし出しているのだ。

 

 

「“僕らの頑張りが、未来を照らす”……。その輝きを胸に抱いて、ヒトは未来を切り開いていくんだ。――そういうこと、だよね?」

 

<――――>

 

 

 リジェネの呟きに応えるように、懐かしい女性(ヒト)の《聲》が響く。何を言っているかは《聴き取れなかった》けれど、それに込められた想いを《理解する》ことはできた。

 残響でしかないのかもしれない。リジェネの脳が、彼女と過ごした日々をエミュレートしただけの産物でしかないのかもしれない。だとしても、それを忘れることはできなかった。

 だって、きっと、同じ気持ちで前を向いている長兄の姿を、リジェネはずっと見てきたから。母と同じ瞳の色の外套を翻して、先頭に立つ彼の背中を知っているから。

 

 紡がれてきた命を、託されてきた命を、これからも続いていく営みを照らすための光として、自分たちは歩き続けるのだ。

 

 


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