大丈夫だ、問題しかないから。-Blue trajectory- <1st Season>   作:白鷺 葵

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3.ビギニング・エンカウント~その気なし編~

 ユニオンは、今日も小康状態だ。

 どこかでは戦いが行われているのだろうが、自分たちが所属する部隊は平和そのものである。

 

 

「AEUヘリオンの後継機開発、か」

 

 

 小さく呟き、クーゴはコーヒーを飲み干す。クーゴにとって、新聞とインターネットが主な情報入手先であった。

 ただ、親戚たちのコネクションがべらぼうに凄まじいため、そこからも情報が入ってくる。喜ばしいことであるが、素直に喜べなかった。

 今回の情報も、AEUでモビルスーツ開発に勤しむ親戚が自慢してきたことだ。親戚はフラッグに対抗心を燃やしており、見返すつもりでいるらしい。

 

 

「ああ、リアルドの猿真似の」

 

 

 クーゴの呟きを拾ったビリーが、ほぼ反射と言っていい速さで、連想した単語を口にする。

 

 事実ではある。ヘリオンはリアルドが生み出された後に誕生した機体だ。大きな違いは運用目的とデザインぐらいで、性能はこれでもかというくらいリアルドと酷似していた。というより、リアルドを参考にしたのだから当然といえる。

 リアルドが長距離の高速移動に適した変形機体であるなら、ヘリオンは用途に応じて対応する機体だ。実際、様々なバリエーションが発表されており、機体の種類に運用目的が反映されている。機体の運用次第では、リアルド以上の使い勝手の良さや成績をたたき出すこともあった。

 

 

「後継機はさしずめ、フラッグの猿真似になるんだろうね」

 

「手厳しいな」

 

 

 クーゴは苦笑した。これを親戚に聞かせたら卒倒すること間違いなしだろう。

 だが、親戚の中に燃えている炎に油を注ぎ、その結果、後継機が化ける危険性も孕んでいる。

 

 

(この場に親戚がいなくてよかった)

 

 

 クーゴは心の底から思った。技術屋の戦争については、よく知っている。AEUのMS開発者たちは今頃、入手したフラッグを分解(バラ)しているのだろうか。愛機が分解(バラ)されているような気分になり、クーゴはこめかみを抑えた。

 敵MSを出し抜く技術を得るためには、そのMSの性能や武器をきちんと知っていなければならない。他国の企業で働く技術者が『技術開発』を名目に、妻および夫や親戚名義でMSを入手して分解するなんてよくあることだ。

 MS分野だけではない。どの企業でも行われている戦いである。職業や専門が違うだけで、戦争の次元や方向性は全く違う。親戚たちが多方面で活躍するクーゴには、それはよく理解していた。

 

 刃金の家は昔から男児に恵まれず、男児が生まれたとしても早逝しやすい家系だった。そのため、女性が婿養子を貰って血筋を守ってきたという。

 

 しかしそれだけでは飽き足らなかったようで、嫁入りした刃金の女が嫁ぎ先を(事実上)乗っ取り、嫁ぎ先や本家の繁栄に貢献してきたらしい。その立役者たちには「乗っ取るつもりが微塵もなかった」というのが恐ろしいところだ。

 現在、刃金家は(事実上の乗っ取りによって派生した)分家が日本全土に存在してる。日本制覇はクーゴが生まれる以前から成し遂げられていたそうだ。そのうち世界制覇もしてしまいそうで怖い。刃金の血筋が世界制覇を成し遂げるかどうかは、自分含んだ海外組の行動にかかっていた。実にどうでもいいが。

 

 AEUでMS開発に勤しむ親戚の情熱を思うと、ビリーの発言は身も蓋もない。親戚を援護するつもりはないけれど、黙って見過ごせる気にもなれなかった。

 

 

「お前、ボロクソに言いすぎだぞ。あのときはデザイン以外何も言わなかったじゃないか」

 

 

 クーゴがいさめるようにして声をかけた。

 間髪入れず、隣に座っていたグラハムが頷く。

 

 

「当然だ。AEU、ひいてはOZに所属するゼクス・マーキス特尉がいる前で、流石にうかつなことなど言えんだろう」

 

 

 グラハムの発言に、ビリーは首を傾げる。

 

 

「えっ? ……グラハム、OZって何だい? ゼクス特尉って……そんな人AEUにいなかったはずじゃ」

 

 

 彼の言葉通りだ。AEUには『OZ』という名前の組織はない。特尉という階級に『ゼクス・マーキス』という名前の人物もいなかったはずだ。

 でも、なぜだろう。クーゴには、『OZ』という単語も『ゼクス・マーキス』という人物名にも覚えがある。もしかして、虚憶(きょおく)に関係しているのだろうか。

 グラハムはクーゴの虚憶(きょおく)による影響を受けているのだろうか。しかし、彼がそんな発言をするのは、クーゴがコーヴァレンター能力を発動させているときだけだ。

 

 今、クーゴはコーヴァレンター能力を発現させていない。

 だから、ヴィジョンを通した虚憶(きょおく)の共有現象は起こっていないはずなのだ。

 

 にもかかわらず、グラハムはぺらぺらと話し始める。

 

 

「ああ、彼は私の友だ。プリペンター・ウィンドを名乗っていてな」

 

 

 プリペンター・ウィンド。いつぞやの虚憶(きょおく)で、彼が拾い上げてくれた情報の1つだ。プリペンターと言う秘密組織に所属する、誰かのコードネームらしい。

 彼は同じ組織に所属するライトニングとコンビを組んでおり、組織内では『風神と雷神』で通っていたという。このコンビの補佐役としてもう1人同行していたようだが、彼のコードネームはわからなかったらしい。グラハム曰く「その人物のコードネームの由来は、『日輪の使いは烏』」だというが。

 何かちぐはぐだ。理由はわからないけれど、『グラハムの話は時系列がバラバラである』と、クーゴは本能的に悟る。そのことをグラハムに指摘しようとしたときだった。立て板に水の如く喋っていた彼が、ぴたりと話を止めてしまう。

 

 

「…………む? 私は何を言っているんだ?」

 

 

 グラハムはそう言って、首を傾げた。自分が何を言っていたのか、何を言おうとしたのか、そのすべてを忘れてしまったようだ。

 

 知っている。この現象には覚えがあった。虚憶(きょおく)を持つ人間に見られる、典型的な言動。

 クーゴが虚憶(きょおく)所持者としての能力を開花したときも、最初は彼と同じ言動をしたものだ。

 

 

「グラハム。キミは……」

 

 

 ビリーもクーゴと同じことを悟ったのだろう。驚きに目を見開いている。

 ヴィジョンを介して虚憶(きょおく)を共有していた人間が、虚憶(きょおく)を有するようになるだなんて。

 そんなケースは初めてだ。研究員たちが色めき立つ姿が見えるような気がして、クーゴは内心苦笑する。

 

 当の本人はきょとんとした顔で目を瞬かせていた。が、クーゴたちの表情を見て何かを察したようで、顎に手を当てた。

 考え込むように唸ったあと、彼は肩をすくませる。

 

 

「成程な。気を抜くと、記憶と虚憶(きょおく)の境目がわからなくなりそうだ。キミの苦労が目に浮かぶようだよ」

 

「どうせなら虚憶(きょおく)のことだけじゃなくて、普段の訓練やら何やらのときの俺の苦労を察してくれたらいいのにな」

 

「む……」

 

 

 身に覚えのありすぎたグラハムが閉口する。バツが悪そうにしてくれるだけマシだ。

 

 グラハムの実力は折り紙付きだし、多少の無茶や道理ならば文字通りこじ開けてしまえる。ただ、他者にも己と同じレベルを『無自覚に』要求している節があった。

 自分にそんな実力があるとは思わないが、どうやらクーゴはグラハムの要求するレベルに応える力があるらしい。もっぱら、彼のフォローに走ることが多かったが。

 

 そんなことを考えていたら、端末が鳴った。宛名を確認する。差出人は『エトワール』。

 自然と端末をいじる速さが上がる。メッセージを開けば、数日前に投稿した動画の感想であった。クーゴの頬が自然と緩んだ。

 本文を読み進め、クーゴは思わず手を止める。書いてある文章を何度も読み返しては、何度も確認しなおす。

 

 

『今度、コラボレーション企画をやりませんか? その際、是非ともオフで顔と声を合わせてみたいのですが』

 

 

 来た。クーゴは思わず、端末を握り締めて小さくガッツポーズを取った。

 クーゴの様子に何か気づいたグラハムとビリーが端末を覗き込む。文面を理解した2人は顔を見合わせ、クーゴの方を覗き込んだ。

 

 

「ほう、デートのお誘いか。これはしっかり作戦(プラン)を練る必要があるな。我々も協力しよう!」

 

「そうだね。僕たちにできることがあったら言ってくれよ!」

 

 

 我がことのように喜ぶ親友2人。しかしこのチームには、悲しい弱点があった。

 

 

「……そう言うお前らは、女性をエスコートした経験があるのか?」

 

「あ」

「む」

 

 

 ビリー・カタギリは、『好きな人がいるけれど告白したことのない』男である。年齢はそのまま『彼女いない歴』に換算できた。

 グラハム・エーカーは、『空を飛ぶために縁談を蹴った』男である。もちろん、彼の年齢も、そのまま『彼女いない歴』に換算できた。

 クーゴ・ハガネは、『そもそも恋愛する状況にない』を地で行った男である。当然、己の年齢はそのまま『彼女いない歴』に換算できた。

 

 この中で一番モテるのは誰かと言われたら、クーゴは迷いなくグラハムを挙げる。

 

 だが、上司の縁談を断った一件や空に対する情熱に負けて、最終的に女性の方が諦めてしまうのだ。

 たとえ女性側が諦めなかったとしても、最後はグラハム自らが引導を渡す。女性を不快にさせずにあしらう技術は称賛に価した。

 

 社交界に顔は出すものの、グラハムは常にマイペースだ。気分を害せばすぐに去っていくし、気分が乗れば延々と語り続ける。戦闘での引き際なら察せるのに、その他に関する引き際にはやや疎かった。

 彼が女性を熱心に口説く図など想像できない。むしろ、女性が勝手にわらわらと群がってくる方だった。社交界の光景を思い出し、クーゴは天を仰いだ。できればあそこに近づくことなく人生を生きていきたいのだが、階級には責任と束縛が付き物であった。

 

 

 

「……はあ」

 

 

 前途は多難である。

 

 まずは、『エトワール』に返信する文面を考えるところから始めなくては。

 オフ会のプランを練るのは、その後からだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女性はくすくすと笑っていた。端末に映し出されるのは、先程『夜鷹』から送られてきたメッセージである。

 頬が緩むのを止められない。妙に浮ついた気分になる。鼻歌を歌いながら、女性は艦の廊下をスキップしていた。

 

 もの鬱気に宇宙を眺めていたのは、眼鏡をかけた青年だ。彼は女性に気づくと、訝しげにこちらへ視線を向けてきた。十数分後、彼はヴェーダからの緊急ミッションを受領するだろう。困惑しながらも、粛々と準備手続きをしてくれるに違いない。

 シミュレーターを終えた色男は、ピンクの髪の少女と何やら話していたようだった。女性が通り過ぎたことに気づき、2人は首を傾げる。あと数十分後に、彼らは自分の姿を見て仰天したメカニックに「あれ見た!?」と絡まれることになる。

 反対側からやって来た浅黒い色の青年が女性とすれ違った。あと数秒後に、『もう一人の彼』と「あの様子だと男関係だ。察しろや」「え、えええええええ!?」と会話を交わし、反対側からやって来たハロから『ヒトリシバイ、ヒトリシバイ』と言われてしまうのだ。

 

 女性はシミュレーター室へと直行する。今日は『彼女』と一緒に、フォーメーションの確認をするという予定があった。

 

 数分後に『彼女』がシミュレーター室へとやってくるだろう。

 浮足立っている自分の姿を見た『彼女』は、いつもと変わらぬ仏頂面でいるに違いない。

 

 お互いのプライベートには言及しない。それが、クルーたちの暗黙の了解だ。

 しかし、シミュレーション終了後、『彼女』は眼鏡の青年から「ヴェーダからのミッション」を言い渡されることになる。

 それが女性の護衛だと知った『彼女』は、表情一つ変えず、2つ返事で引き受けるのだ。そして、ヴェーダが提示した案に眉をひそめる。

 

 

「楽しみだなぁ」

 

 

 女性はほぅ、と息を吐いた。腰まで伸びた薄緑の髪がさらりと揺れる。

 

 もうすぐだ。もうすぐ『夜鷹』に出会える。顔を合わせ、声を聞き、言葉を交わすことができるのだ。

 彼が歌った曲を聞きながら、女性は“未来”へと思いを馳せた。

 

 黒髪黒目の小柄な東洋人。日本生まれの日本育ちだが、“空へと行かなくてはならない”という使命感に駆られてユニオンの軍人になった男性。本名は刃金(はがね) 空護(くうご)。名前の通り、ユニオンにおける“空の護り手”として活躍している。

 彼は『エトワール』と接触するために動画を投稿し始めた。『エトワール』も彼と接触するため、積極的にコンタクトを取った。『夜鷹』も『エトワール』も、客観的に見れば“お互いにお互いの計画に沿って動いた”だけにすぎない。打算が前面に出ていることは確かだった。

 それでも、女性は胸を張って言える。「“自分”は確かに、“彼”の歌を通して知った“彼”自身に惹かれたのだ」と。歌い手としての『自分』も、かりそめの名である《自分》も、もう二度と表舞台に出ることのないであろう“自分”も、『夜鷹』および刃金 空護/クーゴ・ハガネに魅せられた。

 

 

「『死ぬのが怖くて、恋ができるか』か」

 

 

 『夜鷹』の歌を聞いて以来、女性は新たな虚憶(きょおく)を見るようになった。その中で、とある女性が零していた言葉だ。

 

 世界への反逆者として生きる自分たちに、人並みの平穏や普通の人生など、到底約束されない。そんなものを望むこと自体が、己の破滅へと繋がりかねないからだ。

 だけど、と女性は声高らかに叫びたい。自分たちだって人間だ。誰かを嫌いになったり、好きになったりするのは当然のことである。それができなきゃ、真の平和は訪れない。

 ただ、許し合えれば。互いがそこにいて、生きていくことを許し合えるならば。その当たり前を、「当たり前なのだ」と言うことができれば。それが、平和である証ではないのか。

 

 女性は知っている。そう願いながらも、世界を管理する機械(そんざい)から否定されたために、踏みにじられた命があったことを。

 管理された社会。完璧な箱庭。誰も気づこうとしないけれど、小さな綻びは存在しているのだ。そこに気づかなければ、そこを直そうとしなければ、世界は変われない。

 

 

「イデア・クピディターズ」

 

「ああ、刹那」

 

 

 後ろから聞こえた声に、女性――イデア・クピディターズは振り返る。この艦で自分は、ラテン語で『理想への憧れ』という意味のコードネームで呼ばれていた。

 シミュレーターでコンバットパターンの練習をする相手が、目の前にいる少女――刹那・F・セイエイだ。勿論、彼女の名前もコードネームである。

 中東出身の特徴である浅黒い小麦色の肌に、砂漠を思わせるような赤銅色の瞳。艶やかな黒髪は、少年と見間違う程短くまとめられている。

 

 

「今日のシミュレーションデーター、更新されたみたい」

 

「聞いている。始めるぞ」

 

「了解。よろしくね」

 

 

 挨拶を交わし、シミュレーターに乗り込む。

 

 刹那の愛機はガンダム01、エクシア。格闘戦を得意とするタイプであり、MS全般だけでなく、対ガンダム戦も想定して作られた機体だ。

 いいや、対GNフィールド用のMSともいえる。エクシアの武装は、GNフィールドを切断できる仕様になっているからだ。

 ガンダムタイプとの戦闘を予測した機体というのは、世間に太陽炉やガンダム系の情報が流出するという懸念に対応しているのだろう。

 

 イデアの愛機はガンダムESP-Psyonタイプモデル03、スターゲイザー。イデアの持つ虚憶(きょおく)とイオリア計画、および『自分たちの計画』の技術で生み出された機体だ。元になった機体は、C.E.(コズミック・イラ)と呼ばれる年代に開発された、同名の無人・自立運用展開教導機の宇宙探査用MSである。ぶっちゃけると、非戦闘用MSだ。

 そのため、刹那や他のマイスターたちのガンダムとルーツが違う。最初はそのことで面倒なことになりかけたが、イデアの能力とヴェーダの采配のおかげでどうにかマイスターになれたのだ。機械によって命を脅かされた存在の末裔としては、機械の采配で命拾いするとは複雑な気分である。

 

 白と青を基調にしたエクシアの隣に、純白のスターゲイザーが並ぶ。その様は、戦乙女の後ろに佇む天女のようだった。

 

 スターゲイザーが背負った巨大なリングが、天女が羽織る羽衣を連想させる。スターゲイザーに搭載されているシステムを稼働させれば、機体周囲に発光現象が発生し、ますます「羽衣を羽織った天女」に近い佇まいとなるのだ。

 ミッションスタートを告げる機械音と同時に、エクシアとスターゲイザーが出撃した。緑色の粒子が光の軌跡を刻む中、青緑に輝く光が縦横無尽に残像を刻む。非戦闘MSでありながら、驚異的な機動力を持つダークホース的な存在――それが、イデアの駆る愛機であった。

 

 

(タイプアンノウン系で組まれた部隊ね。……新しく追加されたタイプか。あれ、G-ARF型って名前になったのね)

 

 

 タイプアンノウンとは、イデアの虚憶(きょおく)から形成されたデータを基にして再現された機体たちの中で、黒い靄を纏って表示される機体の総称である。

 イデアの虚憶(きょおく)は映像で残せるが、それでも不鮮明な部分は存在した。『武装と能力値の再現は可能だが、機体の姿が不鮮明』な場合は、黒い靄を纏った姿で表示される。その仕様から、クルーたちからはタイプアンノウンとして呼ばれるようになった。

 

 G-ARF型は、日本の剣術をベースにしたコンバットパターンを駆使する機体であった。メインウェポンは日本刀を模したようなブレードで、近接戦闘を得意としている。エネルギー消費が少なく、戦艦を真っ二つにしたりビームごと敵機を真っ二つにしたりする程の破壊力を宿していた。

 剣の名前は「ガーベラストレート」。名刀の名を冠した剣の切れ味には充分注意する必要があった。イデアは刹那へ視線を向ける。彼女は無表情のまま、G-ARF型に攻撃を仕掛けた。ブレード同士がぶつかり合い、派手に火花を散らしている。

 エクシアとG-ARF型のぶつかり合いを見た他のG-ARF型が刹那に攻撃しようとする。それよりも先に、スターゲイザーが武装を展開する方が早かった。ヴォワチュール・リュミエールの稼働により発生した光輪が、G-ARF型を弾き飛ばす。間髪入れず、ビームガンで追い打ちをかけた。直撃を受けた機体が爆散した。

 

 同時に、エクシアがG-ARF型を一刀両断する。ガーベラストレートごと叩き切ったのだ。

 

 やや荒削りな太刀筋であるが、彼女と出会ったときと比べると格段に成長している。イデアは微笑み、G-ARF型を翻弄するように戦場を飛び回った。

 その隙をついて、刹那が次々とG-ARF型を屠っていく。エクシアの背後にいたG-ARF型が、右手にエネルギー弾を生み出して攻撃しようとしていた。間髪入れず、イデアも反撃に転じる。身に纏っていた光輪を飛ばし、G-ARF型を撃破した。

 

 

「ミッション、コンプリート」

 

「これで全機撃破。うん、時間ぴったりね」

 

 

 刹那の無機質な声が戦いの終わりを告げた。成績を見て、イデアも満足げに頷く。

 

 軽くインターバルを入れ、次のシミュレーションを始める。普段と変わらぬルーチンワーク。何度目かのシミュレーションが終わったとき、部屋の扉が開かれた。

 眼鏡をかけた青年が、相変わらず仏頂面で立っていた。紫色の髪が揺れる。ああそうか、ヴェーダからの緊急ミッションを受領したのか。

 

 

「2人とも、ヴェーダからの緊急ミッションだ」

 

 

 予想した通りの状況に、イデアはひっそり悪戯っぽい笑みを浮かべる。それは、青年と刹那が気づかぬ程ささやかなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 格納庫に新しい機体が並んでいた。フラッグとAEUイ■■トの系譜を継いだ、フラッグの究極系とも言える量産機。

 

 機体の色は鮮やかなペールグリーンである。しかし、その中に混じって、青い機体のものがあった。これは、搭乗者が部隊の指揮官であることを示している。

 一般機だろうと指揮官機だろうと、この機体に乗れる人間は限られている。主たる人間の一角として、グラハム・エーカー隊長率いるソ■ブレイ■ズ隊が挙げられた。

 

 

「こうして見ると、感慨深いものがあるなぁ」

 

 

 クーゴはしみじみと息を吐いた。

 

 ブラストの猿真似、フラッグの猿真似。ビリーがヘリオンやイ■ク■を酷評していたことを考える。まさかフラッグの発展に■ナ■トの系譜が加わるなんて、誰が予想しただろう。

 この2機を掛け合わせた新しい機体が生まれたことこそ、新しい世界の幕開けに相応しい。その一歩として、この機体は華々しく空を舞うのだろう。自分もまた、この機体と共に空を舞う。考えただけで、口元が緩んできた。

 今なら、グラハムの気持ちがよくわかる。空を愛し、空を翔ることを望んだ彼の、子どもっぽい表情。きらきらした想いに触れた気がして、あまりの眩しさに目を細めた。今でもグラハムはその気持ちと若々しさを失っていない。

 

 そしてそれは、新たな世代にも受け継がれつつある。クーゴは、新しく配属された新人のことを思い出した。

 ア□エス・□ル□ュと□ン・ス□□サー。彼らは昔からの友人らしく、とても仲が良かった。2人とも、グラハムに憧れる新米軍人である。若いって素晴らしい。

 

 今年でクーゴも35歳。思考回路もおっさん臭くなったものだと苦笑する。

 

 

「存在自体が年齢詐欺と言われるキミが言う台詞か?」

 

「お前、その言葉そのままバットで打ち返してやる」

 

 

 今年で34歳になったグラハムに、クーゴは笑いながら言い返してやった。相変わらず、この男には「年齢+歳児」という言葉が似合う。現在34歳児の男は、今日も元気であった。

 グラハムは先の大戦で顔半分に大きな傷を負っていたが、それでもまだ充分若く見えるレベルである。彼らしさを取り戻し、憑き物がとれたということもあるに違いない。

 そこまで至るまでの道は、決して平坦なものではなかった。あまりにも長い道のりを思い出し、また気分が遠くなる。喉元過ぎればなんとやら、だ。

 

 またこうして、くだらない会話で笑いあえる日が来るなんて。

 戦いのさなか、ずっと願い続けた日常が目の前にある。それはとても幸せなことだ。

 

 

「一般機の中でも、キミのは更に特別性なんだろう? E■P-■s■onバ■■トとは、『私設部隊』の技術部も奮発したものだ」

 

 

 グラハムは笑いながら、クーゴが駆るであろう機体を仰ぐ。一般機とは違い、晴れた空を思わせるような真空色(まそらいろ)の機体。

 先の戦いで『目覚めた』クーゴの、ひいては今後、現れ/増えていくであろうクーゴの『同胞』たちのための、特別なシステムが搭載されている。

 クーゴは己が搭乗する機体を仰ぎ見る。先の戦いで共に駆け抜けた愛機(フラッグ)を、ほぼフルチューンナップした仕様だ。

 

 これからも、自分はこの子と共に戦っていく。その光景を頭の中に思い浮かべる。

 青い空を自由自在に飛び回る、真空色(まそらいろ)の機体。考えるだけで、心躍るものだった。

 

 クーゴの思考回路を中断するかのように、端末が鳴り響く。差出人は『エトワール』、もとい、彼女だ。

 

 

「ほう、デートのお誘いか」

 

 

 グラハムが、からかうように目を細めた。

 クーゴだって負けていない。茶化すように彼を小突く。

 

 

「お前こそ。『彼女』とはどうなってるんだ?」

 

「ふふ。あえて言わせてもらおう! 私と『彼女』は「やっぱりいい。今のでよくわかった」

 

 

 全力で叫びそうになったグラハムを制する。彼を茶化すとロクなことにならない、典型的な例であった。

 

 思い出したくない苦労が頭に浮かび、クーゴは天井を仰いだ。他人の恋路に巻き込まれた日々は、今でも時折フラッシュバックしてくる。

 これ以上この話題にこだわると、クーゴの精神衛生上、辛いものがあった。どうにかして話題を変えよう、とクーゴは決意したときだった。

 

 

「グラハム少佐!!」

 

 

 救いの天使が来た。クーゴは素直にそう思った。新米軍人2人組、□ニエスとジ□である。

 グラハムは眩しいものを見るように目を細めた。彼がこの2人に目をかけていることなど、見てすぐにわかった。

 

 ア□エスとジ□が並ぶ光景は、先の大戦以前の自分たちを思い出させてくれた。自分たちには長い戦いと離別があったけど、今、こうして共に歩んでいる。

 彼らはどうだろう。自分たちのように、対立して離別するなんて経験はしてほしくない。クーゴとグラハムが肩を並べて戦えるようになったのは、仲間たちが手を貸してくれたおかげだ。

 何かがひとつでも狂ってしまっていたら、クーゴはグラハムを連れもどすことができなかったかもしれない。対立したまま殺し合い、最悪の末路に至っていた可能性もある。考えるだけで恐ろしかった。

 

 グラハムは2人と雑談を始める。その後ろ姿を眺めながら、クーゴはふと考える。

 

 □ニエ□と□ン。この2人は、自分たち以上の偉業を成し遂げるだろう。彼らは互いに互いを高め合い、優秀なパイロットとして大成する。

 最高の相棒。この表現がとてもよく似合う。クーゴとグラハムの関係とよく似た、けれども、クーゴとグラハムとは違う形で、彼らは空を翔るのだろう。

 

 

「……さて、今のうちに返信返信、っと」

 

 

 端末を開いて『エトワール』に返信する。文章を推敲し、少しの間躊躇った後で、クーゴは送信ボタンをクリックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如浮かんだ虚憶(きょおく)を記憶し終えて、クーゴは大きくため息をついた。あの虚憶(きょおく)は、少しだけ年を食った自分たちがいた。

 あれは未来の光景なのだろうか。だとしたら、自分たちに『彼ら』のような後輩ができるということになる。クーゴはもう一度、端末を見直してみた。

 

 

「世代交代、かぁ。俺らからしてみれば、まだまだ先のことなんだけど」

 

 

 正直、実感がわかない。

 

 当然だ。まだ自分たちは彼らと出会っていないし、彼らと年齢も近しい。

 あんな穏やかな眼差しで、若さを羨望するようになるにはまだ早かった。

 いつかはあんな風になるのだろうか。……あんな風に、なれるのだろうか。

 

 そこまで考えて、クーゴはふと考えた。「虚憶(きょおく)の中で笑いあっていたあの2人組は、あの後どうなったのだろう」と。

 「知っている/知らない」。その先を、クーゴは「知っている/知らない」。クーゴ・ハガネはその先を――

 

 

「…………命の、名前――」

 

 

 突然、歌がクーゴの口をついた。再び虚憶(きょおく)がフラッシュバックする。

 

 

(――!)

 

 

 赤い機体が飛び出した。強大な敵に向かって、青年は容赦なく銃口を向ける。だが、彼の一撃は、敵に一切のダメージを与えられていなかった。

 珍しく、グラハムが戦慄する。クーゴの背中にも悪寒が走った。反応が遅れた赤い機体に、敵は容赦なく一撃を振りかざす。青年に待ち受ける運命は、絶対の死。

 それはだめだ。そう思ったとき、青い機体が赤い機体の前に躍り出る。もう一人の青年が、赤い機体に乗る青年を守ろうとしているのだ。一撃が迫る。

 

 そこへ割り込んだのは、クーゴが駆るエメラルドグリーンの機体だった。グラハムが名を呼ぶ声が、一拍遅れて響く。

 次の瞬間、すさまじい衝撃が走った。青い機体共々派手に吹き飛ばされる。爆ぜる音。背後から聞こえたのは、機体の暴走音。

 

 止めなければと思ったとき、自分の機体にも異変が起き始めた。

 

 ばちばちと火花が爆ぜ、警告音ががんがん鳴り響く。頭が痛い。自分の機体もまた、青い機体の異変に引かれているのだろう。

 まずい。これはまずい。最悪だ。グラハム、と、クーゴは呼びかける。自分が何を言いたいのか理解したらしい。奴は今にも泣き出しそうな顔で、クーゴを見ていた。

 それでいい、と、クーゴは笑う。ほら、撃て。お前にだから頼むんだ。撃て、早く。手遅れになる前に、早く。お前は隊長なんだろう。部下が見てるぞ、ばか。

 

 いいや、ばかなのは自分だ。あいつにあんなことさせちゃいけないのに。こんなの、副官失格じゃないか。

 そこへ、連邦のものとは違う機体が飛び出してくる。剣がこちらに向けられた。ああ、そうか、止めてくれるのか。

 

 俺はどうでもいいから、後ろの奴は助けてやってほしい。こいつは将来有望な若者なんだ。

 

 その訴えは聞き届けられたのだろうか。わからない。理解する前に、視界が真っ白に染まったからだ。

 不意に、脳裏を駆けたのは1人の女性。最後に会ったのは、この戦いが始まる数日前のことだった。

 

 会いたい。会いたいな。

 こんなことになるのなら、もっと話をしておくべきだった。

 もっとよく顔を見ておくべきだった。後悔ばかりが募る。

 

 そういやグラハム、大丈夫だろうか。また、変な方向に突っ走っちゃいないだろうか。仮面つけたりしてしまうんだろうか。最後のはやめてほしい。やっと外してくれたのに、またあんなのになったら困る。

 ああ、そうか。俺は死ぬのか。未練と心配をたくさん抱えたまま、死んでいくのか。35年の人生。意外と短かったというか、随分と中途半端というか。20代前に命を落とすことが多い刃金の男にしては、長く生きた方だろう――

 

 

「クーゴ!? 大丈夫なのか!? 顔が真っ青だぞ!」

 

 

 声がした。見上げる。虚憶(きょおく)の中で見たときよりも若い、いつも見慣れた、グラハム・エーカーの姿だった。

 

 奴はきょとんとした顔でクーゴを見ていた。クーゴも、彼の顔を見ながら何度か瞬きをする。

 あまりにも平穏すぎる光景。先程のような、人生クライマックス的な状態とは完全に無縁な状況だ。

 必死になる彼の姿を見ていて、失礼だが、クーゴは思わず吹き出してしまった。途端にグラハムが眉間にしわを寄せる。

 

 人が心配しているのに、と、彼は怒りの言葉を漏らした。「ぷんすこ」という擬音がよく似合う怒り方である。

 それを見ているだけでほっとする。ふふ、と、クーゴは笑った。クーゴの変化を見たグラハムも、同じように笑った。

 

 

「その様子なら大丈夫そうだな。戦場に出る前からあんな状態だとは、不戦敗もいいところだ」

 

「ひっでえ言い草だな」

 

 

 軽口をたたき合い、2人は前を向き直った。

 周囲を見回し、待ち人を探す。

 

 現在、クーゴとグラハムは『エトワール』と接触するため、待ち合わせをしているところであった。

 

 ユニオンにある大きなショッピングモール街。相談して決めた待ち合わせ場所の目印は、大きなカエデの木と白いベンチだ。現在、クーゴとグラハムがいる場所がそうである。

 自分たちは待ち合わせ時刻よりも、わざと早めに来て待機していた。クーゴはベンチに座って、グラハムは少し離れた場所で他人の振りを装いながら。

 万が一、クーゴに何かあったときのための護衛役およびサポート役として、グラハム自らが同行を引き受けてくれたのだ。先程のことといい、とても心強い援軍である。

 

 

「さんきゅ。俺はもう大丈夫だから、他人のフリに戻ってくれ」

 

「その旨をよしとする!」

 

 

 グラハムは大仰に頷いて、所定の位置へと戻ろうとした。が、奴はぴたりと足を止める。何かに取りつかれたかのように微動だにしない。

 奴の視線を辿れば、中東出身と思しき少女と、薄緑色の髪を腰まで伸ばした女性がこちらへ近づいてくるところであった。

 グラハムの視線は少女へと向けられている。彼女は白を基調にした清楚なワンピースを身にまとっていた。着慣れていないのか、どこか足取りがぎこちない。

 

 

「運命だ……」

 

 

 グラハムが、感慨深そうにそう言った。

 

 

「は?」

 

「彼女こそ、私の運命だ! 間違いない!!」

 

「何を言っているんだ、お前は」

 

 

 意味を理解できなくて、クーゴは思わず眉をしかめた。相変わらず、グラハムは少女をじっと見つめている。

 翠緑の瞳はきらきらと輝いている。良い意味でも悪い意味でも、奴はまっすぐであった。

 

 少女は女性としばらく何かを話していたようだ。彼女は頷き、女性と離れようと歩き出す。

 

 次の瞬間、弾丸を思わせるような速さでグラハムが飛び出した。クーゴが止める間もなく、奴は少女の元へと文字通り突撃する。

 異常に気付いた少女が逃げようとしたが、それよりも先に、グラハムが少女の手を取る方が圧倒的に早かった。

 彼は社交界でも滅多にお目にかかれない爽やかな微笑を浮かべている。しかし、少女も女性も、果てには周囲にいた人々もどん引いていた。

 

 クーゴだって今すぐ他人のフリして逃げ出してしまいたい。しかし、ここで逃げたら誰が奴を止められるのだ。

 だというのに、クーゴは動けなかった。目の前で起こっている超現象についていけない。

 

 

「貴様、何者だ!?」

 

 

 グラハムの手を振り払い、少女が奴に問いかけた。

 赤銅色の瞳は不審者への敵意に満ち溢れている。

 クーゴには、警戒する少女の気持ちがよくわかった。

 

 それを知ってか知らずか、グラハムは満面の笑みを浮かべた。

 

 

「私はグラハム・エーカー。キミの存在に、心奪われた男だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このときのクーゴ・ハガネはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は諦めたくないんです。人の心の光を、信じているから」

 

「貴方は、それを人に伝える力を持っている」

 

 

「貴方に会えて、本当に良かった」

 

 

 クーゴの運命が、イデアとの出会いから始まることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フラッグファイターであるグラハム・エーカーは、既に死んだ」

 

「ここにいるのは、ただの亡霊だ」

 

 

「どうしてこうなったんだよ。お前、こんな奴じゃなかっただろ?」

 

 

「……ああ、そうだ。ミスターブシドー、お前に言伝を頼みたい」

 

「俺の相棒であるフラッグファイター、グラハム・エーカーに伝えてくれ」

 

「『どんな手を使ってでも、お前をあいつらの元へと連れ帰る』ってな!」

 

 

 少し先の未来で、かけがえのない相棒(グラハム・エーカー)と対立することを。

 

 

 

 

 

 

 

「う、うわあああああ! フラッグが、フラッグがぁぁぁぁぁ!」

「コイツ、フラッグに擬態した!? しかもメタリックカラーになった!」

「気を付けろ! コイツに直接触れると同化されるぞ!」

 

「あ、でもかっこいいかも。カラーバリエーションで、この色を提案してみようかな」

 

 

「何だコイツ!? きっしょ! きっも! 超ひっでぇ!!」

「仲間を取り込んで強くなりやがった! なんて奴だ、インベーダーめ!」

「サイズ差なんて関係ない! 俺たちにだって、戦いようがある!」

 

「こんな進化はしたくないなぁ。ゲッター線も使いよう、ってことか」

 

(そういえば、人革の民間企業に努めてる身内から『ゲッター線についての研究始めた』って聞いたけど……うん、まさかな)

 

 

「虫だー!」

「人間が、虫の女王と合体したぞー!」

 

「この突破口を開くのは、『アイモ』だな」

 

「『アイモ』って、確か、恋の歌だっけ? あの虫の群れが、別の虫の群れに向けて贈るやつ。数百年に1回歌うか歌わないかの……」

 

「クーゴ、是非とも歌詞を教えてくれ!! ちょっと少女宛に歌ってくる!」

 

 

「機械に支配されてたまるか!」

「人間様を舐めるなよぉぉ!」

「機械仕掛けの神が、なんだってんだー!」

 

「管理社会、か……」

 

「未来は自分たちで決めるものだと思うけどな」

 

 

「『あなたはそこにいますか?』って訊かれたんだけど、どう答えればいいんだ?」

「俺はここだ! ここにいるぞー!!」

「消されてたまるか! 俺がお前を消してやるー!」

 

「深い質問だよな。『あなたはそこにいますか』って」

 

 

 ユニオンのシュミレーターが、クーゴの虚憶(きょおく)の影響を受けて、異種生命体だらけになってしまうことを。

 

 

 

 

 

 

 

「下半身がサイコロ……」

『気を付けろアレルヤ! ふざけたナリだが、あいつぁヤベーぞ!!』

 

「たった一撃でヴァーチェが大破しただと!? あのMS、大きさも威力も化け物か……!?」

 

 

「俺は、ガンダムになれない……。ガンダムは、ハロだったのか……?」

 

「どうしてこんなMSを出した!? こんな悪魔を出したんだ! 言え、言うんだ!!」

 

 

 ガンダムマイスターのシミュレーターが、イデアの虚憶(きょおく)を受けて、地獄絵図に化してしまうことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クーゴ・ハガネの災難が始まるまで、あともう少し。




【参考および参照】
『日本の伝統色』の『天色(あまいろ)』の説明より、真空色(まそらいろ)

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