我が名はティア・ブランドー   作:腐った蜜柑

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手早く済ませるつもりが地味に長くなったので分割して出しておこう。
うむ、勢いでスラスラ書けるから気分が良い! ついでに好きなジョジョ小説が更新されていたから更に気分が良いッ! と、いうわけで今回の注意事項は暴力要素が出るくらいですー。


7年後:ジョジョとの決別

 私は今、とある夢を見ている。

 なぜ夢だと分かるのかというと、目の前に広がる光景が過去のものだからだ。

 

 それは以前の自宅、ロンドンの貧民街にあるブランドー家での光景だった。

 ディオが特別(・・)な薬を父、ダリオに渡す光景であった。

 

「父さん気分が悪いのかい? だったら……この薬を飲みなよ」

 

「バッキャロー! 薬なんかより酒買ってこい酒ぇ! 酒こそ薬さ! これをたたき売って酒買ってこいティアッ!」

 

「うっ! こ、これって……母さんの形見のドレスじゃないの」

 

「死んじまった女のものなんか用はねぇぜ!」

 

 ディオが殴り飛ばされ、私に向けて放り投げられたのは敬愛する母の形見のドレス。

 誰のせいで母が死んだと思う、この男に母を侮辱する資格などあるのか。

 私が怒りの余り、袖に仕込んだ隠しナイフで父を嬲り殺そうとした時、肩を引っ張る感触を覚えて振り返った。

 悲しみ、いや怒りの余り涙を流しながら憤怒の表情でいるディオの姿に、ようやく私は殺意を抑えた。

 

「ありがとう、ディオ。 あやうく楽な死に方をさせるところだったわ。 これは私が持っておくわね」

 

「……あぁ、絶対にあの男だけは地獄に落とさなければ気が済まないッ!」

 

 ディオと私が改めて決意をする光景、そこで私の意識は暗転した。

 

 

 

 気がつけば、もはや見慣れたジョースター邸での自室の天井。

 隣のベッドで半裸を晒すのはおさげのままだが、体はすでに女性の魅力を備えたメアリーだった。

 私は部屋にあるクローゼットを開けると奥に隠してある母のドレスが収めてあるバスケットを取りだした。

 箱を開けると、中からベージュ色の簡素なドレスが出てくる。

 私はいつもそれを見つめるだけ、触れることもなく、着ることもない。

 趣味に合わないという訳ではない、ただ私にはその資格がないだけだ。

 

(昔なら、これを見る度に一人で泣いたものだけど、もう涙は出てこない)

 

 強くなったのだ。 そう思える程に私は心身共に成長したのだ。 そう信じたい。

 ジョジョとの出会いからすでに7年の時が過ぎた。 時の流れはディオとジョジョを表向きに仲の良い友人へと変え、少年は大人の男性に、そして私は光輝く長い金髪を携えた大人の女性へと変えた。

 

 私を含めた3人はヒュー・ハドソン大学へと進学し、ジョジョは考古学の分野で名声を、ディオは法律においてNo.1の成績を残し、私は医学部において優秀な成績を残している。

 

 私がクローゼットの奥へと再びドレスを丁寧に収め、身支度を整えて自室の扉を開ける。

 今日も仮初のティアを演じよう、屋敷の者達、ジョジョもディオも……そして私の心すら欺いてみせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……機は熟した。 俺達ももうすぐ卒業、もはやジョースターの援助もいらん! 財産を自由にできる年齢になった」

 

「ええ、そうね。 ところで、ジョースター卿の具合が悪いそうだけど、どうなのかしら?」

 

「ああ、あと三回(・・)といったところかな。 ……確認しておくが、当主になるのはこの俺だ」

 

「もちろんよ、ディオ! 私、当主なんて面倒なことは嫌いだもの。」

 

 屋敷内のある一室にて久々に弟と二人っきりで会話を楽しむ。

 最近、ジョースター卿が風邪にでもかかったのか具合が悪く、それが悪化する一方なのだ。

 私も医学を専攻するものとして診断はしているものの、一行に原因は不明だ。 ……西洋医学で見た場合のみだが。

 

「しかし、俺も驚いたよ。 まさか姉さんが医学を選ぶとはね。 何故だい?」

 

「それはもう、病に苦しむ人を助けたいためよ! 私、心やさしい淑女だもの」

 

「本音は?」

 

「女だけで子供を作る術を見つけるため、そして世の男共を滅ぼすモノを見つけるため」

 

「……後者だけは止めてくれ」

 

 頼むから、とつけ加える程に私が本気で成そうということを察したのだろうか。

 なかなか鋭い勘を持つ弟だ、普通なら一笑に伏すところだが大真面目に私は取り組もうとしていた。

 目の前のディオも少年の頃は目つきが悪いものの、少年特有の可愛さがあったものだが今はどうだろう?

 筋骨隆々という程ではないが、かなり筋肉がついており、それでいて長身でスマートな体格をしている。

 そして上気の言葉は文字通りジョジョに当て嵌まった、どこをどう鍛えたらあんなに丸太みたいな足や筋肉で盛り上がった全身を手に入れたのだろうか。

 もはや、昔にいじめられっ子だったジョジョとは思えないほどに爽やかな好青年へと成長している。

 一通りの姉弟としての会話を楽しみ、これからの計画の手順を念入りに話終えると互いにバラバラに部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 一つ言わせてもらおう、私は相手を甘くみていたのかもしれない。

 障害になるかもしれないと予想はしていたが、終局になって立ち塞がるとは。

 

「答えてくれディオ、ティア! ……君達が今、すり替えた薬は一体何だ!」

 

「……あら、何のことかしら? 私が目の前で見ていたけど薬には何もなかったわよ?」

 

「全く、僕たちが薬を取り変える必要がどこにあるというんだい? ジョジョ」

 

 ジョースター卿の病を治療する為の薬。

 水と薬を乗せた銀のトレイを私は執事から受け取り、二階へ上がると廊下の角で待ち構えていたディオがポケットから似た包みの薬を取り出し、取り替えた。

 それを私達の方角から死角になる場所、そこでジョジョが薬を取り変えるのを目撃し、私達を問い詰めてきたのだ。

 

 しかし、目撃された場所は近いとは言いづらく見間違いという可能性も高い、よってここはシラを切るのが一番の手だろう。

 そう内心で私が勝利を確信していると、懐から一通の古びた手紙をジョジョが取りだした。

 

「ここに7年前、偶然君達の父が出した手紙がある! そしてここには病の症状が書かれている『心臓がいたみ』『指がはれ』『せき』がとまらない。 ……ぼくの父さんと同じ症状だッ! いったいこれはどういう事だディオ! ティア!」

 

「いったい……なんの話をしているんだい? 少し、その手紙をみせてくれないかい?」

 

「聞かせてくれ、君達はいつも父さんに薬を運んでいたのかい?」

 

 どこまであのクズは私達の足を引っ張る気だ。 いや、嘘という可能性もあるがジョジョの性格からして可能性は低い。

 ディオが手紙を調べようとすると、ジョジョはそれを拒否するかのように手紙を遠ざける。 まずい、かなり疑っている行動だ。

 

「……その質問は解せないわね。 なぜ、そんな質問をするのジョジョ?」

 

「答えてくれ! ティア!」

 

「薬を運ぶ役目なら姉さんが大半だったなぁ、ぼくはたまにだよ。 それにぼくの実の父と症状が同じだったかもしれない……君は一体何が言いたいんだい?」

 

「その薬、調べさせてもらう!」

 

 そう高らかにジョジョが答えると、薬へと手を伸ばそうとする。

 まずい、私は薬を乗せているトレイを両手で持っている。 ここで身の潔白を証明する為に妨害すること自体がそもそも可笑しいのに、片手になってまで妨害するとなると……。

 私が躊躇しているのを構うことなくジョジョが薬を奪い取った。 刹那、それを止める為に手首を掴む手があった。 弟の手だ、だがディオも苦しい展開だと分かっているのか苦渋の表情で止めていた。

 

「ジョジョ! その薬を調べるということは我々の友情を疑う事! 友情を失うぞッ!」

 

「せ、せっかく仲良くなれたのにまた喧嘩だなんて……。 ジョジョ! 私、また貴方達が争うだなんて嫌だわ」

 

「う、うぅっ!」

 

 偽りといえ、ここ数年の間は友好的に接してきた。

 ジョジョは薬が毒だと思っているのだろう、それは正解だ。 だが確実となる証拠はなく、ただジョジョは自身の疑惑でしか行動していないのだろう。 甘い性格のジョジョのことだ、疑うという罪深さに耐え切れないのか呻き声をあげて目を逸らした。

 後1回、後1回で致死量となるというのにここで邪魔されてたまるか!

 

 だが、目を逸らしたジョジョがすぐさま私達を強い意思が籠った瞳で睨み返してきた。

 

「ディオ、ティアッ! 紳士、淑女として君達の父ブランドー氏の名誉にかけて身の潔白を誓ってくれッ! 誓えるならぼくは薬を戻し、2度と話をしないっ!」

 

「ち、誓い、だと? 誓いか……ぐぐぐ」

 

(父の名誉に誓え、だと? こ、堪えなさい、ディオ。 栄光はすぐ目の前、なのよ)

 

 私のこめかみの部分がピクピクと痙攣しているのを感じる。

 必死で怒りを抑えようとも抑えきれぬ程に憎悪と怒りが溢れ出てくる。 思わず手に持つトレイに置いてあるコップの水が震え、波紋を作っている程にだ。

 ディオも同じ思いなのか、体を震わせながらも必死に耐えている。 だが、もしも我慢ができないというのであれば……いや、すでに私は言わずとも答えは決まっていた。

 

「あ、あいつの話を俺の前でするな。 あいつの名誉に誓うだと? 勘違いするな、あんなクズに名誉などあるものかァ―――ッ!」

 

「その薬を渡しなさい! ジョジョッ!!」

 

 ディオが叫ぶと同時に持っていた水が入ったコップをジョジョの顔に目掛けて放り投げる。

 見事に頭にぶち当たると水飛沫で目に水が入り、頭から血を流して怯むジョジョ。

 その間にもディオが勢いよくジョジョの顔面を殴りつけ、すかさず私はスカートの中に隠していた鉄製の仕込み棒を取りだす。

 これは棒の中身が空洞になっており、軽量化と伸ばす為の棒の部分を収納する役目も担っているのだ。

 私は時計回りに棒を伸ばし、自身の身長の半分程まで伸ばすと今度は反時計周りに回して固定する。

 

 この間、僅か3秒ッ! 訓練し続けた成果が今ここで出ているものの、まるでゴキブリのようにしぶといジョナサンが殴りつけられたディオの拳を掴んで離さない。

 

「ふははっ! 胴体がまるで隙だらけじゃぁないかしらぁ! ジョジョォォォッ!」

 

「うぐっ!? テ、ティア! まさか、君まで!?」

 

 もはや本性を隠す必要もない、今! ここで! 痛めつけてでも証拠を隠滅するのだ!

 驚いているジョジョの無防備な腹部へと深く突き刺さる鉄の棒。

 続いて痛みの余り前屈みになった所で、下から顎を打ち抜いて失神させるのが私の必勝パターンだ。

 

(これでチェックメイトッ! たかが下種な男なんぞにこのティアが負けるはずがない!)

 

「君達への疑問が確信に変わったぞッ! 君達の動揺と憎悪は普通じゃない! 実の父親と何があったのかは知らんが君達は父親を殺害しているッ!」

 

 だが私の目論見は失敗することとなった。

 予測していたのか、それとも本能的な行動なのか、ジョジョが顎を打ち抜くはずだった棒先を空いた片手で掴んだのだ。

 男と女では筋力の差があるといえど、押しても引いてもびくともしないことに焦りを覚えた。

 仕方がなしに鉄棒を手放すと、代わりの武器になるものはないかと辺りを見渡す。

 戦いの準備などしておらず、他に持っているのは袖に仕込んだ大型ナイフのみ。 これでは殺傷能力が強すぎる、ここで殺しては今まで警察沙汰になるようなことを避けてきた意味がない。

 

「うげぇ! こ、こいつ何て馬鹿力だ」

 

「ぼくは父を守るッ! ジョースター家を守るッ!」

 

 私が躊躇していると、ディオの腕を万力のように絞め上げ、頭上に掲げるようにして放り投げた。

 投げられた先は1階と2階を繋ぐ吹き抜けとなっており、当然のようにディオが悲鳴をあげながら落ちて行く。

 慌てて身を乗り出して落ちたディオを確認すると、怪我を負っているものの何とか生きているようだ。

 

「君の、いや君達との7年間の考えがわかった。 ぼくらには最初から友情などなかった! そして父にはもう近づけんッ! この薬を分析して必ず刑務所に送りこんでやるぞッ!」

 

 上からディオを見下ろし、宣言するかのようにジョジョが声を張り上げたところでこちらへ振り向き、静かにこちらを見つめてくる。 心なしか、私を憐れんでいるような穏やかな視線だ。 それが妙に勘に触る。

 

「ティア、まさか君までそんな非情な性格だとは信じたくなかったよ。」

 

「その憐れむような視線を止めろジョナサン・ジョースター! クソッ、お前さえ、お前さえいなければッ!」

 

 相手を鎮圧するに足る武器が最後まで見つからなかった私は、恨みの言葉を残して部屋へと逃げ帰るしか手段はなかった。

 これから先は恐らく時間との勝負となる。 ジョジョが薬を調べるのが先か、私達が先にジョジョを殺すのかの勝負となる。 これは負ける訳にはいかない、ここまできたというのに負ければ……もう、後がない。

 

 

 

 

 

 

 

 ジョジョがいずこかへ外出するという報せが来た。 恐らくは薬の出所を探りにいったのであろう。

 私達が使用した毒薬は東洋の秘薬! 西洋医学では分析すらできない代物だ。 故に自身で探しに行く必要があったのだ。

 

 私達は今、ジョジョの自室へと侵入している。 ここに目的を達成するのに最適なものがあるからだ。

 ディオが金具で机の引き出しの鍵を破壊すると、中から不気味な石仮面と本が現れた。 それら2つを机に置き、真っ先に本の内容を調べると私達にとって天啓ともいえる内容が記されていた。

 それは仮面の研究記録、粒さに仮面の秘密を記している本だ。

 

「ほほぅ、記録している、記録しているぞ! ジョジョのやつ、こんなところまで仮面の研究をすすめている! フハハハハハ!」

 

「ふふふ、まさかディオもこの仮面の秘密を知っているなんてね。 ……だけど、この屋敷で知っているのは私達とジョナサンのみ。 つまり、この仮面を使って殺害すれば」

 

「「仮面の研究中の事故死! 私達(俺達)に容疑はかからないッ!」

 

 7年前にディオも見ていたらしいがこの仮面、血がかかると仕掛けが作動し、仮面から骨針が幾つも飛び出す仕掛けとなっているのだ。

 興味深いのは水や酒といった同じ液体には反応せず、血液のみに反応するという不思議な特徴を持っているが今はそんなことはどうでもいい。

 これをジョジョに被せて使えば間違いなく骨針は脳みそまで達し、即死は免れない。 その事実だけが大事なのだ。

 

「そうだ、姉さんの忘れ物を渡しておくよ。 それと、すまない。 俺はあの時、どうしても怒りを」

 

「いいのよ、私だって抑えきれそうになかったわ。 あのクズ、死んでまで私達の足を引っ張るなんて、もっと苦しめてから殺せばよかったわ」

 

 忘れ物と称して渡されたのはディオと共に落下した仕込み棒だった。

 素直に受け取ると、妙に神妙そうな顔のディオが目を伏せながら謝ってきた。

 らしくない、十中八九演技だとは思うがもしかしたら素の顔なのだろうか? とはいえ、私もあの時は心が憤怒で満ち溢れていた。 あそこを上手く賛同して切りぬけたとしても、一生私はその事を引き摺るだろう。 それならば断った方がまだましというものだ。

 後は帰ってきたジョジョをどう仕留めるか、その事だけは念入りにディオと話しこんだ。

 

 




とりあえず、もうティアの本性を曝け出しまくるパターンでいいじゃぁないか。
……そろそろ佳境に入るから、どう仕上げていくのかが悩み所。


二人がかりで勝てない強いジョナサンというか、根性という名のSA着けてる人にしか見えなくなってきた。

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