超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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やっと戦闘描写……でもまだ書き溜めは本編に入ってない……


第7話 宣教師コンベルサシオン

イツキが教会に保護されてから、一週間程が経過した

 

あれから毎日ブランのモンスター討伐に付き合ったイツキ。その際には、イツキは何度かモンスターと戦闘をこなした。これは生計のたて方と自衛の手段は必要だと言うブランの意向だった。

 

モンスターと戦うころには傷も完治していたので、問題は無かったのだが、一つ問題が生じた。

 

イツキがどんな武器を使っても、あまり使いこなせる物は無かった事だ。

 

別段剣を上手く振れないとか、そういうわけでは無いのだが、イツキ曰く「素手の方が戦いやすい」と言うことらしい。

 

そんな訳で彼の装備は皮のグローブだけという、外から観ればハラハラするような物であるが、本人は気にしていない

 

「おりゃ!」

 

勢いに欠ける掛け声と共に、スカルフローズンに裏拳が突き刺さる。苦悶の声を上げ、よろめくスカルフローズンの頭に、エルボーを真上から振り下ろし地面に叩きつける

 

そのまま声を上げる間も無く、スカルフローズンは霧散した。

 

今日はブランは書類の処理に追われているため、ルウィー雪原には一人で来ているイツキ。今日の目的はコールドリザードの討伐だ。雑魚に分類される割りには中々高い体力を持ち、冷気のブレスにも注意を払わなくてはいけない

 

「後、2体か…」

 

これまでの道中何体かコールドリザードを倒したので、クエストのノルマは後は少しだけである。

 

「……」

 

人とは恐ろしいものだなとふと考えるイツキ。記憶は無いが、確かにモンスターなんて存在は無い世界に確かにいたのだ。それからこの世界に来て、たった一週間しか経っていないにも関わらず、今ではモンスターと戦っている。

 

「これは素直に、馴染むことの出来ている自分を褒めるべきなのかな……」

 

こんなにも簡単に馴染むことの出来ているのには、おそらくイツキの高い身体能力のおかげだろう。イツキほどの身体能力があれば、危険種でも無い限り命の危機に陥ることも無い。

 

戦い方はブランのものをベースに戦っていた。形容するなら[蝶の様に舞い、蜂のように指す]というもの。敵に肉薄し先手を掛け、相手の攻撃を避け、いなしながら確実に相手にダメージを蓄積させ、トドメに大きな一撃。そんなものだった。

 

武器の扱い方、つまりは格闘については完全にイツキのオリジナルとなっていた。ルウィー教会には格闘技、というより対モンスターに格闘を使う人間はいなかったのだ。

 

武器との織り交ぜでパンチなどを駆使することはあるらしいが、基本は武器が主体となっているそうだ。

 

なのでイツキはオリジナルの対モンスター用の格闘技を自分で構築する必要があった。そこでイツキが参考にしたのはブランの戦い方、[手数の多さで攻め、動きが鈍ったところで強力な一撃を決める]というものだった……というより、この戦い方が一番戦いやすかった。

 

当たり前だが、最初から強い一撃を狙いにいっても必ず当たるとは限らず、そればかりか相手に多大な隙を与えてしまう。

 

隙の少ない多段攻撃を重ね、動きが鈍ったところでトドメを刺す。これが一番効率的で、直情的なモンスターを倒しやすかった。

 

「……と!お出ましか」

 

少し考え事をしていて気づかなかったがイツキだったが、いつの間にかモンスターの群れに囲まれていた。

 

その中にはコールドリザードの姿を確認できた。丁度よく2体だ。

 

先手必勝とばかりに敵に駆け出し、手頃の良い亀パッド(ボール)を掴んで群れに投げる。

 

亀パッド(ボール)が群れに直撃した瞬間、当たらなかった何体かのモンスターがイツキに迫って来た。しかし、所詮知能が低いモンスター達なので、動きは直線的な上に真正面から攻めてきた。

 

こんな奴らにカウンターをするのは簡単だ。しかも最高速度で突進してきている。突進はスピードを上げれば相手に与えるダメージは大きくなるが、その分相手にカウンターを食らわせられた時のダメージも大きくなる。

 

イツキは正面から同時にやって来た三体のモンスターに、先頭の1体にボディーブローをかます。息を詰まらせたそのモンスターは呆気なく霧散する。2体目にやって来たモンスターを足払いし、体勢を崩させる。そして3体目を鷲掴みにし、体勢を崩したモンスターに叩きつける。

 

叩きつけられた2体はダメージを受けながらも、なんとか立ち上がろうとしたがその前にイツキのかかと落としが直撃し、粒子となった。

 

残りはコールドリザード2体。

 

「おっと、危な!」

 

イツキは肉薄して来た2体のコールドリザードの武器の斧をしゃがんで避ける。イツキの頭上で斧同士がかち合う金属音が響いた。

 

その瞬間を逃さずイツキは片方のコールドリザードにミドルキックをお見舞いし、遠方に吹き飛ばす。同時に倒すのではなく、分断し、1体ずつ倒すためだ。

 

残ったコールドリザードは、斧を振り上げイツキに振り下ろす。が、イツキはサイドステップで避ける。その勢いのまま回し蹴りを繋げ、拳の連撃を続けざまにキメる。

 

「りゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「グォ!?グォォォォォ!!」

 

苦しげな声を上げるコールドリザード。動きが鈍ったのを確認し、大胆に攻めるイツキ。

 

「トドメだ!」

 

コールドリザードの腹の部分に、渾身のボディーブローをぶち当てたイツキ。

 

「グォ、……グ、ォ…」

 

苦悶の声を上げ、散っていくコールドリザード。モンスターはこの際素材を落とすことがあるので、忘れずに拾っておく

 

「ん、後あいつだけか」

 

仕事を終わらせるために、コールドリザードを蹴り飛ばした方向に向かおうとしたときだった。

 

突如爆音が響いた後雪が周囲に飛び散った。それが起こった方向は、あのコールドリザードを飛ばした方向だった。

 

その爆発の原因はどうやら、あの場に立っているコールドリザードのせいのようだ。ただ、どうもさっきまでと様子が違った。

 

コールドリザードの色が、毒々しい紫に変化していた。纏っている雰囲気も邪悪になっているようで、不気味だった。

 

イツキはその現象を最近フィナンシェに教えられた、[汚染化]なのだと理解した。

 

汚染化とはモンスターが何らかの原因で遺伝子が突然変異を起こす現象を指す。が、この現象は最近発見されたもので、詳しいことは分からないらしい。

 

ただ、汚染前と汚染後とでは強さが段違いになる。

 

おまけに伝染性が強く、1体でも汚染化が起きると周りのモンスターも次々と汚染化するらしい。今回こそ周りに他のモンスターはいないが、厄介極まりない

 

「……気を引き締めないとな」

 

そしてこれまで戦ってイツキが戦ってきたコールドリザードよりも遥かに速い速度で詰め寄りながら、汚染コールドリザードはブレス攻撃をくりだした。

 

「!!はやっ!」

 

移動速度もさることながら、ブレスの速度にも驚愕し、回避行動が遅れたイツキ

 

「くそっ!」

 

直撃は免れたが、左腕の手から肘の手前までブレス攻撃が当たったようで、その部分はカチンコチンに凍っていた。

 

「グォォォォォ!!」

 

叫び声を上げ、イツキに詰め寄る汚染コールドリザード。その手の斧は既に振り上げられていた。

 

それを何とかバックステップで避け、そのまま距離を離そうとしたが、汚染コールドリザードはそれを許そうとはせず、間髪入れずに斧を振り回す。

 

(斧の風切り音が半端じゃない。マトモに食らえばかなり危ないな……)

 

汚染後でも知能自体はあまり変わらないようで、動き自体は単調なものだった。しかし、その攻撃のあまりの重さに真正面から防御は出来ず、出来てもいなすのがやっとである。

 

そして斧が横薙ぎに振るわれたとき、避けるのに失敗し、体勢を崩して地面にへたり込んでしまったイツキ

 

「グォ!!グォォォォォォォォ!」

 

トドメを刺そうと斧を真上から振り下ろす汚染コールドリザード。イツキの頭上に斧が迫っていた。

 

しかし、イツキは不敵な笑みを浮かべると横に転がり斧を避けた。

 

斧は地面に深く突き刺さり、抜けなくなっていた。コールドリザード自身も驚き、急いで抜こうとするが中々抜けない。

 

そんな隙をイツキが見逃すはずが無く、地面から四つん這いのままジャンプし、回転しながら()()()()()で裏拳をコールドリザードにかます。その衝撃で左腕を覆っていた氷を吹き飛ばすことも出来た。

 

イツキは地面に倒れ伏せるコールドリザードのマウントを取り、マウントパンチを繰り出す。

 

「グォ!?グォ!グォ!!」

 

抜け出そうともがくコールドリザードだが、連続パンチが体に応えてきたのか段々と抵抗する力を失っていった。

 

「おりゃぁぁぁ!!!」

 

そしてイツキのハンマーナックルがコールドリザードの顔面を捉えたとき、コールドリザードは断末魔の声を上げ、消えた。

 

「……ハァ!疲れた……」

 

イツキにとって初めての汚染モンスターとの対峙だったが、疲れた程度で済んだのなら上出来と言えるだろう。

 

イツキは大の字に倒れたい気分だったが、流石に我慢をし、中腰で妥協をした。

 

「……おし!ギルド帰って報告しよっと!」

 

イツキはある程度息を整えた後、報告のためにギルドの方へと進み、帰路につくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もし、そこのお方」

 

ギルドに報告を終え、教会の前まで着いたとき、僕は急に声を掛けられた。

 

「はい?失礼ですが貴方は?」

 

「失礼しました。私はルウィーの宣教師、コンベルサシオンと申します」

 

藍色のローブを纏い、顔もフードで隠したその女性はゆったりとした動作で答えた。

 

どうも目の前の女性はルウィー教会の関係者のようだ。一応、ルウィー教会の職員の人達には挨拶をしたのだが、コンベルサシオンという名前には覚えが無かった。

 

「これは丁寧にありがとうございます。僕はイツキです。このルウィー教会でホワイトハート様の補佐を任命された者です」

 

これはブランさんとフィナンシェさんとで話し合って考えた、表上の僕の立場だ。補佐、と曖昧なものにしたのも探りを入れにくくするためのものであった。

 

何故ここまでするのかと言うと、異世界人なんて現実離れしたものは受け入れてもらえないというのもあるが、僕が異世界人と露見するのは、僕の命に関わることかもしれないという、ブランさんの考えのもとだった。

 

 

『前も言ったけど、あの異世界人の伝承は意図的に破られているページが多々あった。これはそのページに、破った者にとっては都合の悪いことが書いてあったからよ。そんな人物にとって、恐らく異世界人である貴方は都合の悪い存在の筈。知られたら、貴方は殺されてしまうかもしれないわよ』

 

確かに納得のいくものだった。それにあの本があった資料室は普段は施錠されているらしく、いつでも利用できた人間はルウィー教会の職員だけらしい。つまり、異世界人を邪魔な存在と考える者は内部にいる可能性が高いと示唆していた。

 

 

 

「おや、そうでしたか。私が不在の間に補佐の方が任命されていたとは……何せ先日までプラネテューヌに布教活動をしていまして、挨拶が遅れて申し訳ございません」

 

「いえいえ気にしていませんよ。ところで、私に何か御用があったのでは?」

 

「ええ。貴方は魔王ユニミテスの名をご存知ですか?」

 

魔王ユミニテス?聞いたことがない。それとも僕がゲイム業界のまだ習っていない範囲のことだろうか?

 

「いえ、お恥ずかしながらご存知ありません」

 

「いえ、仕方の無いことです。魔王ユニミテスの名はまだ大陸の噂程度でしか知られていませんから…」

 

「あの、魔王ユミニテスとは何者ですか?」

 

「ユミニテスではありません!ユニミテスです!……魔王ユニミテスとは混沌と畏怖の魔王と呼ばれる存在です。その強さは4人の守護女神の力をも凌ぎ、現在、女神様が各大陸に降りているのはその魔王から逃れるためなのです」

 

「……はぁ、それで?」

 

何だか胡散臭い話になってきて、真面目に聞くつもりが無くなって来てしまうが、そんなことはお構いなくコンベルサシオンさんは続ける

 

「見たところ、貴方はおそらくモンスターを倒してきたのだと思いますが、モンスターは魔王ユニミテスの従順なる(しもべ)です。倒せば罰が下ります。そのような事はおやめなさい」

 

……この人は何を言っているんだ?

 

「でも、モンスターが人に被害を与えているのは事実じゃないですか。それを放っておくというのは被害の拡大を意味しますし、教会にとっても困ることだと思うのですが」

 

「その通りです。ですが、モンスターを倒した先に更なる災厄を招く事になるならば私達のすべき事は今のモンスターの被害を可能な限り最小限に止める事だと私は思っています。女神に仕える私が本来もっとも口にしてはいけない言葉ですが、例え女神でも……絶対ではないのです」

 

……胡散臭すぎる。大体その話が本当なら仮にモンスターの討伐を人々がピッタリやめたとしても、僕たち下界の人間の未来はお先真っ暗だ。

 

「貴方はまだ若い。そんな死に急ぐような行為はやめることが賢明でしょう」

 

「うーん……魔王か…女神より強いって考えられないです……と言うか、モンスターだって、その魔王ユニ……二コマコスってのも倒せばいいんじゃないですか?」

 

「えーい!貴様、それ絶対ワザとだろ!ユニミテスと言いかけて、何故ワザワザ言い直した!一致してるのはスだけでは無いか!!」

 

「え?」

 

「……あ!し、失礼しました。ついムキになってしまい……」

 

……この人もブランさんと同じタイプなのだろうか?

 

「コホン!……魔王ユニミテスは、この世界を生み出した初代の女神様でさえ封印するしか、手が無かったほどの強大さ。今の女神様達も、魔王ユニミテスには手も足もです下界ににげるしか手が無かったと言います。時折、下界を見に来るだけの女神様が今になって一斉に……プラネテューヌを除く全ての大陸に、お姿を現しました。それこそが何よりの証拠……天界は荒らされ、女神様はなす術もないまま下界へと難を逃れたに違いありません……」

 

大きな咳払いをし、話を戻したコンベル(くどいので略)さん。切り替わりの早さと言い、ますますブランさんを彷彿とさせるなぁ…

 

「忠告はしました。それでは、私はこれで」

 

そう言い残し、教会から翻して立ち去るコンベルさん。ローブを纏ったその姿もあいまって、胡散臭さを最後まで拭えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時が僕と、コンベルサシオン、いや、ゲイム業界に仇なす存在、マジェコンヌとの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

「ちっ……後少しでネプテューヌの力を手に入れられるところだったが、まさかあんな雑魚に邪魔をされるとは…」

 

「……まあいい。癪ではあるが、ネプテューヌの方は放っておこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次のターゲットはブラン、貴様だ。精々首を洗って待っておくんだな。ハーハッハッハッハッハ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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