超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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皆様お久しぶりでございます。 1ヶ月まるまる放っていました……すみません。 思ったよりも新生活が大変で時間かがが……ちょっとこれからは不定期更新になるかもです。

それではどうぞ


第四章
第60話 抵抗する者たち -レジスタンス-


レジスタンスとは、簡潔に言ってしまえば国の横暴な圧政や高過ぎる税金の取り立てなどに反発し、そう言う反発する人たちが集まって、自由と解放を求めて政治的抵抗運動をする組織だ。 僕たちのように、単純に自国の圧政に対する反対勢力の事をレジスタンスと呼ぶこともあれば、他国からの侵略者に自国を占領される事に抵抗する運動を指す事もある。 と言うか、元の世界では元々レジスタンスとはそちらの意味が発祥だ。

 

さて、一口にレジスタンスと言ってもどのような活動をするかは様々だが、大まかに分けると過激派と穏健派に分かれる。

 

過激派とはその物騒な名前の通り、圧政などに対して主に武力で抵抗する集団の事だ。 ゲリラ戦などの展開は勿論のこと、国の主要交通網や交易路などを破壊する者たちなどもこの分類だ。

 

それに対して穏健派とはこれまた名前の通り、武力などには頼らず、話し合いや交渉などで平和的に政治的抵抗運動をする集団の事だ。

 

この2つのうち、僕たちがどちらに分類されるかと言われれば、当然穏健派である。 ブランさんがいるから過激派と思われかねないだろうが穏健派である。 ……と言いたい所だが、実際はまだなんとも言えない。 レジスタンスの方に人は集まっては来てるが、まだレジスタンスらしい活動はしていないのだ。 つまり、話し合いなどもしていない訳だが、武力なども行使はしていないのだ。

 

だから、ね……

 

 

「テロリスト主犯イツキ! 貴様は包囲されている! 大人しく投降しろ!」

 

まだレジスタンスとして過激派か穏健派かも曖昧なのに僕をテロリスト呼ばわりするのはやめてくれないかな?

 

僕は人とロボットに銃口を向けられて囲まれている中、そんな事を思った。

 

 

 

僕とブランさんがリーンボックスからルウィーへと帰還して、2週間程が過ぎた。 レジスタンスの拠点へと帰ってきた際、フィナンシェさんと最近レジスタンスに入団したらしい人たちが出迎えてくれた。 ブランさんが留守にしている間もレジスタンスの活動をフィナンシェさんはあの双子の兄弟たちの協力の元、行ってくれていたらしい。 僕はそのフィナンシェさんの手腕に感心したのだが、それを口にした所、

 

『侍従ですから』

 

と言う最早お約束になっている言葉を聞き、侍従って凄いですねとのっぺりとした声で返していた。 そのうち侍従ってどんな事でもこなせる人として扱いそうだった。

 

それはさて置き、最近レジスタンスの団員が増えたおかげで1つの問題が浮上してきた。 それは食料確保の問題だ。

 

以前まではレジスタンスの拠点から出て、街へと食料を調達することは容易であり、教会の兵士達が街の見回りをしている事もあったが、人目を盗んで食料を確保し街から出るのは然程難しい事でも無かった。

 

ところが最近は街の中も外も、大量のアヴニール製の警備ロボットが昼夜問わず哨戒をしており、街へ食料を調達することが難しくなったとの事らしい。 警備ロボットがルウィーの各街や村に配備された理由は、僕たちのようなレジスタンスを街の中へと入れない為と言うのもあるが、これ以上のレジスタンスの団員の増加を防ぐため、つまり街の中の人々を逃がさない為と言うのが大きいらしい。

 

フィナンシェさん曰く、教会側はまだ僕たちレジスタンスの規模までは分かっていないらしいが、今の教会の政治に反対して逃げ出す国民が増えている事は把握しているとの事。 逃げ出す理由としては、殆どはその異常な税金の増額と取り立てだ。 教会側はそれらの税金を国民の安全の為に、アヴニールの警備ロボットを買うのに使っていると説明しているが、高い税金を払い、その対価が昼夜構わず監視されるとなっては国民としてはたまったものではなかった。

 

警備ロボットが配備された際、とある街では反対運動を教会におこしたそうたが、見せしめに反対運動の首謀者は教会にあっさり捕らえられ、今も教会の地下に幽閉されているらしい。 それ以降も反対運動は各地で行われているらしいが、その度に教会側は武力でそれらを鎮圧しているとのこと。

 

教会内でも今の政治や今は教会に居座っている偽物のブランさんに疑問を持つ者はいるそうたが、少しでも反対するような意見を出すと、牢屋に入れられてしまい、それを恐れて誰も偽物のブランさんに逆らえないとのことだ。 このルウィーは、偽物のブランさんの政治によってディストピアが形成されつつあった。

 

……話が逸れた。 それで、食料の確保の方法でフィナンシェさんたちは困っていたのだが、僕の隣にいたブランさんは1つの提案をした。

 

その提案とは、1人が街の中に突入して教会の兵士やロボットの注意を引いて、街の外れまで誘導している間に、他の人たちが食料を調達すると言う囮作戦であった。

 

しかしここで問題が1つあった。 それは誰が囮をやるかと言うものだ。

 

今回の場合の囮の条件として、教会職員や警備ロボットたちがすぐさま追いかけてくるような有名人であることと、その追いかけてきた者たちから逃げ切れる人物でなければならない。 普通のレジスタンス団員はまずこの条件に当てはまらない。 かと言って、ブランさんが街に出ればそれだけでパニックだ。 僕たちレジスタンス団員以外は、ルウィー国民たちは教会の人間も含めて、今教会に居座っているブランさんが偽物だとは知らないのだから。

 

 

『あー、誰かいないかしらー? 教会側からは有名な人物でー、高い運動神経を持ち合わせているような凄い人ー』

 

 

このブランさんのわざとらしいセリフと共に、僕へとチラリと視線を向けた。 もう後は察して欲しい。

 

 

「おい! 早く手を上げろ! さもないと撃つぞ!」

 

 

時刻は現在日が沈む少し前辺りの、街での人の往来が増える時間帯にその作戦を実行しており、僕は今囮としての役割を果たして、教会の兵士や警備ロボットたちをおびき寄せて、このただっぴろい雪原にて囲まれていると言う訳だ。 ……ホント僕って損してるよなぁ……

 

そう言えば、僕が有名人であるか疑問を持つ人がいるかもしれないが、悲しいことに僕は『テロリストの主犯格』もしくは『テロリストのリーダー』としてこのルウィーでは有名だ。

 

テロリストとは僕たちレジスタンスを指す言葉であるのだが、これは見方の問題であるので説明は割愛。 何故僕がレジスタンスのリーダーとされているのかと言うと、僕たちレジスタンスのリーダーはブランさんだが、何度も言うがルウィー国民の殆どは現在教会にいるブランさんが偽物だとは知らない。 それは教会側の職員も含めての話だ。 だから教会側は僕をレジスタンスのリーダーと思っているらしい。 最初聞いた時は信じられなかったが、街の中で囮役をしている最中に、街中に貼られていた僕の写真と真下に金額の書かれた紙がそこらじゅうに貼ってある事から、信じざるを得なくなった。 まさか指名手配をされるような日が来るとは……

 

僕はため息を吐きつつ辺りを軽く目だけを動かして確認する。

 

「……」

 

音も立てずに赤いビーコンをチカチカと光らせ続け、こちらの姿をじっと逃さないように見つめている、僕がラステイションで戦った空中に浮かぶ球体のロボット、ビットのような姿をしているそれは、正式名称ビットスカウト。 アヴニールが元々生産していた戦闘兵器、ビットをその名の通り哨戒用に改造した物だ。 なんでも、顔認証システムを導入しており、内蔵しているカメラで人の顔を映した後、ネットワークから登録されている顔と認証する事が出来るらしい。 情報源はラステイションでアヴニールの動向を直接追っているノワールさんだ。 他にもビットスカウトにはサーモグラフィや電磁レーダーを内蔵しているが、哨戒に特化した分、戦闘は勿論他の兵器のリミッター解除などの機能は無くなったらしいが……

 

「……ビー」

 

ビットスカウトの隣にいる、2つの銃口をこちらへと向けながら1つアラート音を鳴らしたそのロボットは、R-4カスタム。 こちらも僕がラステイションでガナッシュと相対した際にガナッシュが呼び出した兵器の1つ、R-4の機能はそのままに、機能性を向上させたものらしい。 更に、このR-4カスタムとビットスカウトは情報をお互いに共有しているらしく、ビットスカウトに映し出されている視界はR-4カスタムからも確認する事が出来るらしく、機能の問題で1度にR-4カスタムが確認できるビットスカウトの視界は2つで限界らしいが、つまりR-4カスタムは通常の3倍の視野を持っており、人に見たてて説明すれば目が離れた位置にそれぞれ2つずつあると言う事だ。 この情報もまたノワールさんから携帯のメールで知ったものだ。

 

(……人は6人、警備ロボットは合計で17機、そのうちビットスカウトが11機、R-4カスタムが6機か……)

 

教会の兵士たちを振る切るのは簡単だ。 だが、ビットスカウトとR-4カスタム。 この2機を合わせた総合的な戦闘力は落ちたかもしれないが、機能性と索敵性能は遥かに向上しているので、幾ら僕でも振り切るのは難しい。

 

そんな訳で僕が取るべき行動とは……

 

「……はいはい、降参しますよっと……」

 

僕は降参するように()()()()()()ゆっくりと両手をあげつつ、右袖に隠していた手榴弾を素早く手に取り、練習しまくった末に得た円滑な安全ピンの引き抜きを実演し、その場で手榴弾を落とした。

 

数秒後にその手榴弾はパァンと言う破砕音を鳴らして爆発した。 瞬間僕にに銃口を向けていたR-4カスタムと、ビーコンをチカチカと鳴らし続けていたビットスカウトは、まるで目が見えないかのように機体をフラフラとさせ、僕のことを捉えていなかった。

 

僕が今使った手榴弾はチャフ・グレネードと言う物で、爆発すると周囲の空気に顕微鏡でしか見えないほど微細な金属片をばら撒き、機械のセンサー・システムを撹乱する物であり、要は対機械専用の目潰しのような物だ。 このチャフ・グレネードは2つの警備ロボット、特にセンサーや電磁レーダーで殆どを構成されているビットスカウトには効果抜群であり、今回の囮作戦で必須となっている。

 

僕はチャフ・グレネードが機能しているのを確認した瞬間その場から動き出し、教会の兵士たちへと突進する。 兵士たちはチャフ・グレネードの爆発音に驚いており、隙だらけであった。

 

まずは間を殆ど開けずに棒立ちしている2人に両手を広げてラリアットをお見舞いする。 2人は詰まったような声を吐いて地面へと倒された。 雪原の上から頭を打ったようであり、気絶していた。 雪がクッションになった筈なので死んではいないだろう。

 

「!? 怯むな! 撃て!」

 

2人を倒した瞬間、いち早くチャフ・グレネードの爆発音から立ち直った1人が叫び、GGM-Ⅲ(対象の神経を一時的に麻痺させるレーザー型特殊銃)を構え、それに続くように残る3人も僕に銃を構え、引き金を引き麻痺レーザーを照射した。

 

それを僕はその場で飛び上がり、それを避けた。 飛び上がった僕を追うようにレーザーも上に上がるが、僕はレーザーが追いつく前に1人の後ろに立った。

 

「ッ! うわっ!!」

 

振り返ってきたその兵士の腕を掴み、足払いをして宙に浮かせてそのまま投げ飛ばした。 1人の兵士を巻き込んでその兵士は飛ばされて地面へと転がった。

 

「クソォ!!」

 

その様子を少し離れた位置から見ていたその兵士は毒づき、ヤケクソにレーザーを照射してきた。 姿勢を低くしてそれを避け、そのままレーザーを照射する兵士に接近し、顎を掠めるようにアッパーカットを食らわす。

 

「アガァッ……!」

 

顔を打ち上げられ、声を漏らして膝を着く兵士。 顎が揺らされた事により、脳震盪が起きたのだ。 僕はその兵士が握っているGGM-Ⅲを落としてしまう前に、兵士の手ごとその銃を掴み、味方への誤射を恐れて撃つのを躊躇っている兵士に銃口を向け、引き金を引いた。

 

「! ギャアアア!!」

 

避ける間も無くレーザーが直撃し、前進に雷が走ったかのようにつま先を立てて直立したまま、ブルブルと小刻みに震える兵士。 引き金を引く手を離し、レーザーの照射を止めるとその兵士は少しその場で立ち尽くし、ゆっくりと地面へと膝を着いて倒れこんだ。 何度か痙攣するように体を震わしていることから、麻痺はしっかりと効いているのだろう。

 

これで僕を追跡する者はいない。 教会の兵士たちはしばらく気絶もしくは身動きが取れないだろうし、警備ロボットたちもまだチャフ・グレネードが効いているため、混乱するようにカメラや銃口をあちらこちらに向けていた。

 

とは言え、時間が経てば気絶していた兵士は目を覚ますだろうし、チャフ・グレネードの効果もいずれは切れるだろう。 ここに長居する必要も無いし、僕は一直線にその場から飛び出し走り出した。 向かう先はレジスタンスの拠点とは全く別方向の森だ。 逃げ去った場所からアジトの場所を特定されるのは避けなければならないし、森の中で追跡者がいないことを確認してから帰るためだ。

 

僕は全速力で雪原を踏みしめ、雪を巻き上げながら森へと飛び込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまブランさん」

 

「ん、おかえりなさいイツキ」

 

レジスタンスのアジトの他の家より2回り程大きな建物の中に入り、その建物の中で居間として使われている部屋に入ると、部屋の中央のソファで寝そべって本を読んでいたブランさんは本を閉じ、僕の方へと顔を向けた。

 

森の中で追跡者たちがいないことを確認し、一応念には念を入れて、近道を避けて大きく迂回して僕はレジスタンスのアジトに帰ってきた。 ちなみに食料調達の団員は、僕が囮になっている間に街を抜け、このレジスタンスのアジトに繋がっている秘密の地下通路を使って帰る算段なのだが、未だにアジトへと戻ってきていない団員が2人程いるらしく迂回して帰ってきた僕より遅いとは、何かあったのかと心配だった。 ……と言うのは嘘だ。 大体誰と誰がどんな理由で遅れているのか予測がつくからだ。 話は変わるが……本当は僕もその秘密の地下通路を使いたい所なのだが、その所在が教会側にばれてしまったら、秘密の地下通路は秘密では無くなってしまう。 なるべく使うのは避けた方がいいとは分かってはいるんだ……いるんだけど、やっぱり僕って損してるなぁ、って思う事を否めない。

 

そんな僕の鬱な感情が顔に出ていたのか、ブランさんはソファに座り直して僕を気遣うように言った。

 

「ごめんなさいねイツキ。 あなたにばかり大変な思いをさせて……。 でも、こんな役割を果たせるのはイツキしかいないのよ」

 

ブランさんはそう言って、口元に手を当てて申し訳なさそうに僕から視線を逸らすブランさん。 驚く僕を他所にブランさんは続ける。

 

「本当は、私が動くべきなんだろうけど、それをする事は出来ない……。 こんな情けない主人で、ごめんなさいね……」

 

僕はブランさんが気遣ってくれた事に驚いて少し硬直していたが、表情に出してしまっていた感情に対して叱咤して抑え込み、ブランさんの座るソファへと歩み寄り、片膝をついて丁度ブランさんの頭と同じ位置に僕の頭を下ろした。

 

「いや、気にしないでよブランさん。 ナルシストみたいだけど、囮の役割は僕が1番適任なのは僕自身がよく分かっているよ。 それに、僕はブランさんの補佐官なんだ。 ブランさんのためなら、例え火の中水の中でも、ブランさんの為に行動するよ」

 

こう言う言葉は口にすると恥ずかしい物だ。 普段だったらこのセリフを言った直後、ブランさんに顔向けできなくてその場で逃げたしただろう。 だけど、今はこんな臭い言葉を言うことに抵抗は無かった。

 

ブランさんは顔を上げ、僕に視線を合わせる。 そして、あまり見ない満面の笑みを浮かべながらながらこう言った。

 

「ありがとうイツキ、そう言ってくれて嬉しいわ。 おかげで存分にこき使えるわね」

 

「うん、知ってた」

 

ただ、言わせて欲しい。 これはひどい……本当にヒドイ……。 ブランさんが大抵笑う時って、本当にロクなことを言わないなぁ……まあ、それを何と無く見抜くことが出来たからこそあんな昭和じみた臭いセリフを言えた訳なのだけど。 僕はそう思いつつ片膝から立ち上がり、部屋の外へと向かう。

 

「あら? 何処か行くの?」

 

「お腹減ったし、何か食べてくるよ。 食べ終わったらまたここに来る」

 

それだけ言って僕は部屋のドアノブを回し、部屋の外へと体を出す。 ドアノブを後ろ手で閉めている直前で僕は手を止めた。

 

「……言い忘れていたけど、さっきの本心だからね」

 

そうだ、あの言葉に嘘偽りは無い。 本心だ。 ブランさんは、あの日身寄りもあても無かった僕を救ってくれた人だ。 その事は片時も忘れた事が無い。 簡単に口に出して言えるような物じゃ無いが、ブランさんのためなら死んだっていい。

 

ちょっと捨て台詞のようで恥ずかしかったけど、気にせずドアノブを押し込んでドアを閉め、台所へと向かった。 遮断された居間の中で、小さな声で馬鹿と呟いた人がいたことを、僕は知る由もなかった。

 

ともあれ、現時点での僕とブランさんの関係はこんな感じであった。







作者「何か気づいたら総合評価かなり上がってて、ネプテューヌ小説内総合評価ランキング5位になってたよブランさぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああん!!!」

ブラン「某カードゲームアニメの某ブラコンの真似をして叫ぶ作者は嫌いよ(無言の腹パン)」ドスッ

作者「ハウッ!?」

イツキ「なぁにこれ?」




お気に入り件数もUAも上がっていました。 皆様、ありがとうございます。


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