超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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第58話 つけるべきけじめ

───何故、そんなことをしたんだ!

 

……別に……

 

───理由も無く、殴ったのか! そうなのか!?

 

…………別に

 

─── ……反省する気は無いようだな。

 

…………

 

─── 別居を用意した。 中学からはそこを使え。 高校までは金を出してやるから、金輪際この家に近づくなよ。

 

───この、悪魔が!!

 

…………

 

 

 

 

 

 

赤の他人(いとこ)が吐いた最後の言葉に、俺が抱いた感情は怒りでも悲しみでも無い。

 

ただ、呆れた。

 

詳しくも聞いてもいない事を勝手に自分の妄想を当て嵌め、そうであると決めつけた事に対して呆れた。

 

いとこは俺の返答の言葉を、肯定と受け取っていた。 その時点で、俺の中でいとこは死んで赤の他人になった。

 

 

 

「……本当呆れた」

 

 

 

 

誰も何もないワンルームで呟いた一言に、誰か気づくわけでも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーツキ……イ……イツキ!」

 

誰かに呼ばれている。 暗い意識の中で、遠くから聞こえるようなその声から何となく分かった。 僕はその声の正体を知るべく、瞳をゆっくりと開ける。 光が差し込むごとに暗かった意識は明るくなって行き、やがて意識がハッキリしてきた。 どうやら、僕はベットに寝かされているようだった。

 

「……ブラン、さん?」

 

ボヤける視界を何度も瞬きしてピントを合わせつつ、僕は上体を起こした。 歪みの無くなった視界の中に映り込んでいた人物、リーンボックスにいる間の変装のためのメガネを外していた僕の仕える女神であるブランさんは、心配するように横から僕の顔を覗き込んでいた。

 

「……」

 

しかしその心配するような表情はすぐに消え、代わりに浮き上がってきた表情は、怒りの顔だった。 このブランさんの表情をよく知っている。 今ブランさんがしているのはマジギレする一歩手前の状態の怒り顔だ。

 

「……この、馬鹿ぁぁあ!!」

 

「オベスタア!!?」

 

言うや否や飛んでくるブランさんの鉄拳。 避けられる筈も無く僕の頬にブランさんの拳がジャストミート。 またベットに寝かされるはめになった。

 

「な、何するのさブランさん! 僕怪我人! 怪我人だから!」

 

僕は今正に2発目の拳を振り上げていたブランさんに対して説得を試みるが、何故かこの言葉を聞いたブランさんの瞳が赤色に変わり、今度こそマジギレモードに変わった。

 

「そ・れ・は・こっちのセリフだ馬鹿!! 病み上がりの癖に気絶する程無茶しやがって!」

 

ガーッ! と怒り出すブランさん。 1度こうなると留まるとこを知らないと言うような状態になってしまうのだ。 いつもなら僕はここで謝り倒してブランさんの怒りを宥めるのだが、ブランさんの言葉にちょっと不満があったので反論をした。

 

「そ、そりゃ確かに無茶はしたけど、ブランさんは別に無茶したっていいってルウィーで言ったじゃん……」

 

「……」

 

僕の反論を聞いた途端、ブランさんは無言で目を閉じて更に眉間に皺を寄せていた。 ……あ、ヤバイ地雷踏んだ感じだこれ。

 

「……そうね……確かに私言ったわ……死ななければ無茶したっていいって……百歩譲って患者の癖に無理して私たちの所に駆けつけたことには目を瞑るとするわ……」

 

プルプルと体を震わせながら言うブランさん。 これはガチ切れ数秒前の状態だ。 ガチ切れブランさんは例え病人だろうと容赦はしない。 多分下手したらハンマーでぶん殴られるかもしれない。 やっぱり余計な事言うんじゃ無かったなぁ……

 

そして予想通り、ブランさんは閉じていた目を見開いて怒鳴る。

 

「だからって! 死ぬ可能性もあり得るような『無茶』を実行するのを容認したからって! 私は自ら死にに行くような『無謀』を容認したつもりはねぇんだよ!!」

 

怒鳴り終える直前でブランさんは拳を振り上げた。 予想通りの反応だったので、僕はあらかじめ振り上げる準備をしていた両腕を交差してガードの形を作って両目を閉じた。

 

「……?」

 

しかしいつまでたっても衝撃は襲って来ない。 その事を怪訝に思っていた時、僕の丁度太ももの辺りに何かがフワリと乗る感触があった。 僕はその感触の正体が何なのか知るために交差していたガードを解き、閉じていた両目をゆっくりと開く。

 

「……」

 

僕にかけてある毛布の太ももの上あたりに、ブランさんは両腕を乗せてそこに顔を伏せていた。ブランさんはその姿勢のまま、僕に言う。

 

「……心配した」

 

そう言ったそれ切り、ブランさんは暫く何も話さずに僕に頭を乗せて伏せたまま何も言葉を発しない。 何かを待つようにブランさんは顔を伏せていた。

 

……きっと今言ったブランさんの言葉は、さっきブランさんが怒りながら言った言葉と合わせると、僕がイヴォワールさんから渡された毒を、反発するブランさんを無理矢理気絶させて飲んだ事に対する事だろう。

 

あの時の判断を、僕は後悔してはいない。 毒を飲んだ後の僕が今無事であるのは、恐らく毒によって倒れたであろう僕に解毒剤を調合してくれたブランさんたちのおかげだ。 その事に関しては迷惑をかけたと思うし、感謝したってしきれない。 だけど、あの時僕が毒を飲まなければ、アイエフさんとコンパさんの命が危なかった。 それを見過ごせと言うのは、僕には無理な話だ。

 

 

心配した

 

 

このブランさんのこの一言に、どれだけの思いが詰まっていたのだろうか……。 本当は、もっと言いたい事がある筈だ。 それらを押し込めて、ブランさんはたった一言だけに圧縮したのだ。

 

「……ごめん、ブランさん」

 

僕は顔を伏せるブランさんの頭に手を置き、優しく頭を撫でた。 僕の手が触れた瞬間、ブランさんはピクリと小さく反応したが、特に抵抗することも無く僕に頭を撫でることを許可してくれていた。 それからブランさんの頭を撫で続けていた時、ブランさんはゆっくりとこちらに顔を向けて言った。

 

「……しょうがないから、許す」

 

いつもの仏頂面で言ったブランさんの目元が、少しだけ赤かったのを僕は見逃さなかった。

 

「……うん、ありがとう」

 

だけど、その事を追求する必要は無い。 自惚れじゃないとしたら、きっとその理由は僕が一生ブランさんに仕えるための決意を強めるものの筈だ。

 

と、その時部屋の片隅のドアからコンコンと2回程ノックが聞こえてきた。 2回ノックはトイレの使用中か空きかの確認であり、基本は3回以上ノックするのがマナーであるとフィナンシェさんから習った細かい事を思い出しつつ、僕の上で顔を伏せるブランさんに退くように軽く頭をペチペチ叩いて促した。 ブランさんは少し不満そうだったが、僕の太ももから顔を動かし、マットレスの上で顔を伏せる事で妥協した所で、僕はどうぞと来客者に言った。

 

「失礼しますです」

 

ドアを丁寧に開け部屋に入ってきたのはコンパさんだった。 コンパさんは一緒に持ってきたお盆とその上にあるお茶碗や粉末らしきものをベッドの近くのテーブルに置き、僕と向き合った。

 

「イツキさん、目を覚ましたんですね。 良かったですぅ……」

 

「うん。 ごめんね心配かけちゃって」

 

コンパさんに一言謝り、僕がどれくらいの間気絶していたのか聞いたが、それ程長い時間気絶していた訳でも無いらしい。 気絶の原因は病み上がりの消耗し切った体で無理をしたための物とコンパさんは言い、そのことに関してコンパさんは珍しく少し怒っていた。 普段温厚なコンパさんが怒った事から、相当心配かけたのかと再確認した僕だった。 僕はコンパさんにも謝ると、コンパさんは笑って許してくれた。

 

「イツキさん、ここに薬とおじやを置いておくから後で飲むです。 それとブランさん、そろそろ部屋を出るです」

 

「……分かってるわ」

 

コンパさんはそう言うとブランさんに立ち上がるように促した。 ブランさんもまたそれを了承して、ベッドに伏せていた頭を上げて立ち上がった。

 

「? どこか行くの?」

 

この台詞を言ったのは言った直後に少し後悔した。 この言い方じゃまるで1人ぼっちで置いていかれるのが嫌で駄々をこねる子どものようじゃないか。

 

「心配しなくてもいいわよ。 ただ、イツキと話をしたい人がいるってだけよ」

 

案の定、そういうニュアンスで受け取られたようで、ブランさんの声色は小さな子を諭すような物だった。

 

「話したい人……?」

 

ブランさんの言葉に、僕は考える。 僕と話をしたい人とは誰だろうか……? 無難に考えて、このリーンボックスの女神のベール様から、お礼でも言われるのだろうか?

 

「それじゃイツキさん、失礼するです」

 

コンパさんは入ってきた扉から外に出ていった。 その後に、ブランさんが続こうとしている中で、部屋の中に入ってきた人物は、部屋を出るブランさんとすれ違いで入ってきた。 部屋から出る間際のブランさんは、その人に視線を向けていた気がした。

 

「……」

 

「……アイエフさん?」

 

僕の部屋に入ってきたのはアイエフさんだった。 だけど、その顔は少しうつむき気味で表情は見て取れなかった。

 

アイエフさんは僕の言葉に返答はしなかった。 代わりにゆっくりとした足取りで僕の横たわるベットの元へと歩み寄る。

 

「……」

 

「……」

 

僕の目の前にまできたアイエフさんだが、その表情は少し読みにくい。 暗い雰囲気であるのは分かるが、それ以外は全くだ。 歩み寄ってきたアイエフさんは無言であり、そんなアイエフさんに僕も何と話しかけなくてはならないか分からない。 気まずい静寂が少し訪れた。

 

「……あの」

 

やがて静寂は、アイエフさんにより破られた。 静寂を破ったその言葉は、何かを言い淀んでいて、今やっと話す決心がついたように僕は見えた。

 

「……ごめんなさい」

 

そしてアイエフさんは謝罪の言葉を述べ、腰を深く曲げて僕へと謝った。 ……ちょっと突然すぎて事態がよく飲み込めない。

 

「……えっと、ごめんアイエフさん。 アイエフさんって、僕に謝るような事したっけ?」

 

1度記憶を振り返ってみたのだが、どうも思い当たる事が無いので、アイエフさんに確認したのだが、この言葉の直後にアイエフさんの体が一瞬震えた。 またアイエフさんは黙りこくってしまったが、何故か呼吸を少し荒げていたアイエフさんは意を決したように話す。

 

「……私、あの時イヴォワールから招待されたパーティーは罠だった事を知っていた……ううん、知らされたの。 イツキに毒を飲ませるように言ったイヴォワールから……」

 

それからアイエフさんはポツポツと話し始めた。 僕たちが2回目にリーンボックス教会に訪れた時に、イヴォワールさんから呼び出された時に、パーティーが罠であることを教えられ、その時に毒も渡されたこと。

 

そしてその帰るすがら、間違えて教会の一室に入ってしまい、しかもそこは偶々ベール様の部屋だったらしく、そのままベール様とアイエフさんは友達になり、遊んでいたこと。

 

そしてホテルへと帰った後も、そのベール様と過ごした時間のことばかりを考えていて、現を抜かしてパーティーが罠であることを伝え忘れていたことを

 

 

「……私が、ちゃんとその事を伝えていれば、こんな事にはならなかった……。 ううん、そもそも私はイヴォワールから毒を受け取った時点で、イツキの事を売っていた……」

 

そこでアイエフさんは言葉を区切り、その場で正座をして両手を目の前についた。

 

「……こんなことで、赦されるだなんて思ってないわ……。 だけど、言わせて欲しいの……。 本当に、ごめんなさい……」

 

そう言ってアイエフさんは頭を地面へと下げた。 土下座だった。

 

「…………」

 

僕はそんなアイエフさんを見て、何も言わずにベットから足を下ろした。 そして頭を下げたままのアイエフさんの目の前に立ち、足を屈めた。 アイエフさんの体がビクッと震えた。

 

「……ねぇ、アイエフさんって僕の事が嫌い?」

 

そう聞いた時、アイエフさんの表情こそ分からなかったが、体がピシリと固まったように見えた。 返答が無いので、続けて僕は言葉を紡ぐ。

 

「……それとも、僕の事が憎いかな? 殺したいほどに」

 

……我ながら酷い質問だと思ったが、効果はあったようであり、アイエフさんは弾かれるように頭を上げた。

 

「そ、そんなことがあるわけ……ッ!」

 

アイエフさんがその先の言葉を言うことは無かった。 僕がアイエフさんの顎に左手の親指と人差し指を軽く添えて驚いたからだ。

 

「うん、やっと顔をあげてくれたね」

 

「……ズルイわよ、そんなの……」

 

アイエフさんは僕から視線を逸らしながら言った。 まあ、確かに意地の悪い事をしたとは思うが、アイエフさんに顔を上げてもらうためだけに僕はこの質問をした訳じゃ無い。

 

「アイエフさんは、僕が憎い訳では無い。 だとしたら、アイエフさんがイヴォワールさんから毒を受け取ったのは、イヴォワールさんがネプテューヌとコンパさんの事を人質に脅したからとか、そんな所かな?」

 

「……ッ……!」

 

僕の指摘にアイエフさんは更に視線を泳がせた。 どうにも図星なようだ。 イヴォワールさんはどうも規律、と言うよりはどんな時でも国のこと、ひいてはベール様の事を第一に考えて行動しているように思えた。 多分、コンベルサシオンもといマジェコンヌは、イヴォワールさんのそう言う性格を利用して、魔王ユニミテス云々の事を吹き込んだのだろう。 恐らくベール様の為、とか吹き込まれてイヴォワールさんは動いたはずだ。 だとすれば、実行するかは別として、脅しくらいはしてくるだろう。

 

と、ここで僕はアイエフさんが脅されていたのならしょうがない。 悪いのは元凶であるマジェコンヌだと言おうとしたのだが、それよりも先にアイエフさんが言葉を紡いだ。

 

「……でも、私がイツキを売った事に変わりは無いわ……。 天秤にあの子たちの命と、イツキの命を天秤にかけて、真っ先にあの子たちの事を選んだ……」

 

それから、アイエフさんは僕から逸らしていた視線を真っ直ぐに向けてこう言った。

 

「……私はイツキに償いをしたい。 だけど、情けないことに私はあなたにどうすれば赦してもらえるのか分からない……だから、私に何か出来ることがあれば、言って欲しい」

 

……本気の目だった。 多分、アイエフさんは今自分の命を僕に捧げるようなつもりで言っているのだろう。 アイエフさんはネプテューヌやコンパさんと違って、真面目な常識人枠の人だ。 今回のことを重く受け止めるのは当然と言えるだろう。

 

「……そっか」

 

そんなアイエフさんに、僕は顎を抑えていた左手の親指と人差し指を放しーー

 

 

 

ーーそのままアイエフさんのおでこへと上昇させて軽く小突いた。

 

 

「痛っ!」

 

声を漏らしたアイエフさんはおでこを両手で抑えている。 ちょっと力を入れ過ぎたかと反省しつつ、僕はアイエフさんに説教をする。

 

「あのねアイエフさん。 男にそんな気安く『何でもする』なんてニュアンスの言葉を言っちゃダメだよ。 多分、それ言うべきような人って、もっと別にいると思うから」

 

「ち、違うわ! 私、気安くこんな言葉を言った訳じゃ無い! イツキに償いをしたいからーー」

 

「それと」

 

僕は弾かれるように抑えていた手を下ろし、反論する言葉を遮る形で僕の言葉を続ける。

 

「アイエフさんが僕に償いをする必要は無いよ。 この部屋には今回の行いを絶対に赦さない人がいるからさ」

 

「……っ……」

 

アイエフさんは一瞬体を硬直させた。 その目はあぁ、やっぱり……と言ったような諦めの瞳だった。 そのアイエフさんに、僕は追い打ちをかけるように微笑んで言う。

 

 

 

 

「だから、僕はアイエフさんを()()()。 アイエフさんのしたことを()()()()人は1人で充分だしね」

 

 

 

 

 

「……え?」

 

アイエフさんは素っ頓狂な顔をしていた。 まるで僕が何を言っているのか理解出来ないような顔をしていた。 まあ、僕だって立場が逆であればそんな顔をするかもしれない。

 

「それって、どういう意味なの……?」

 

案の定、アイエフさんは僕に言葉の意味を聞いてきた。 多分、アイエフさんは無自覚なのだろう。 本当は誰に1番()()()欲しいのかを。

 

「そのままの意味だよ。 アイエフさんを赦さない人がこの部屋に既にいるから、僕はアイエフさんを赦すのさ」

 

「だから、それがどういう意味なのかってーー」

 

「それはアイエフさん。 君自身のことだよ」

 

また遮る形で僕は言った。 その言葉を聞いたアイエフさんは面食らったように硬直した。

 

「……私、自身?」

 

「そう。 アイエフさんは多分、今途轍もない罪悪感に苛まれてると思う。 自分の行動を悔いているとも言うべきかな? アイエフさんはそんな自分が赦せないんだ」

 

僕はアイエフさんの瞳を真っ直ぐに見て、言葉を続ける。

 

「だからこそ、自分が赦せないからこそアイエフさんは僕に謝ったんだ。 そりゃそうだよね。 他人に赦してもらえない事を、自分が赦せる訳が無い」

 

まあ、勿論アイエフさんは僕に対して悪いことをしたと言う自覚があって謝ったと言うのもあるだろう。 アイエフさんは少し俯いて考えているようだった。 思い当たる節があるのだろう。

 

「だから、僕は君を赦すよ。 アイエフさんは自分の非を認めて、僕に謝罪してくれた。 それって、簡単なことじゃない。 それが分かっているのなら、僕から言うことは何もないさ」

 

あ、悪い意味で言ったんじゃないからね? 最後の言葉、何てつけ足しながら言った。 アイエフさんはその言葉に何か反応した訳でも無かったが、代わりに恐る恐るといった感じでアイエフさんは問いかけた。

 

「……イツキの言う通り、私は私のした行いが赦せない……私は、この先どうやって償いをすればいいの?……その先で、私は私を赦すことが出来るの?」

 

アイエフさんらしくない、曖昧な言葉の質問だった。 僕はそのアイエフさんの質問に対して、少し考えてから答えた。

 

「それはちょっと僕には分からない。 この先、アイエフさんがどうやって罪を償うかは自分で決めて行動しなくちゃいけない。 赦して貰う相手が、自分自身だからね。 そして、その行動の果てに自分を赦し、赦される事が出来るのかも」

 

だからこそねーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイエフさんは、たとえこの先自分を赦すことが出来なくても、自分の出来る精一杯の償いをすればいいと思うよ。 そう言う姿に人は惹かれて、支えてくれるんだ。 もうアイエフさんにはさ、そんなアイエフさんを支えてくれる仲間がいるんだからさ」

 

 

 

右手を差し出す。 アイエフさんは、差し出された右手をどうすればいいのか分からないようだった。

 

僕は微笑んで、アイエフさんに告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー僕と仲直り、とは少し違うけど、親愛の印の握手をして欲しいな。 僕もアイエフさんの事、支えたいからさ」

 

 

 

 

 

 

差し出された右手は、彼女の右手で優しく包まれていた。

 

 

 

 

 

その表情に、もうさっきまでの陰鬱さは無かった。


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