超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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投稿日2回連続すっぽかし……申し訳ありません。

遅くなりましたが、投稿します。


第53話 狙われた理由、狙われなかった理由

時刻は太陽が水平線から見て45度程の位置にある時間。 リーンボックスの街ではこの時間帯頃に殆どの店が営業を始め、市場や通りが賑わう時間であるため、その賑わう声がネプテューヌたちのいる街外れの場所でも耳にも入ってきた。

 

ネプテューヌたちはベール先導の元、再びリーンボックス教会を後にして、とあるダンジョンへと向かっていた。 そのダンジョンの名前は『ヘイーロ山岳』。 リーンボックス大陸の端に位置するこのダンジョンは、モンスターがウヨウヨしていると言うこともあり、一般人はまず近づかない。 そんな場所に向かう道すがら、アイエフはベールにベールの推理を聞くことにした。

 

「あの、それでベール様。 どうしてイツキが狙われて、女神であるネプ子が狙われなかったのですか?」

 

「簡単な話ですわ。 コンベルサシオン……いえ、マジェコンヌの目的が女神の力の掌握なのですから。 あいちゃんたちは、プラネテューヌでマジェコンヌと出会ったのですよね。 でしたら、マジェコンヌはネプテューヌから力を奪おうとするよつな素振りを見せませんでしたか?」

 

ベールにそう言われ、アイエフは少し思い返すように目を軽く伏せて記憶を呼び起こした。

 

「……そう言えば、プラネテューヌで会ったあいつは他者の力をコピーする能力のようなものを持っていました」

 

アイエフの記憶では、確かにプラネテューヌで出会ったマジェコンヌらしき人物は、ネプテューヌの力を執拗に狙っていたのだ。 そのアイエフの言葉で思い出したかのようにネプテューヌは言った。

 

「あー、あれねー。 わたしの力をコピーしようとしたけど、コンパの口癖をコピーしちゃって、語尾が非常に顔に似合わないシュールな光景になったあれでしょ?」

 

「うぅ、思い出させないでくださいねぷねぷ……」

 

ネプテューヌの話した内容のせいで、コンパはその時の事を鮮明に思い出してしまったようであった。

 

ここで少し説明を入れておこう。 ネプテューヌたちがマジェコンヌと思わしき人物と出会った際、ネプテューヌたちの実力ではマジェコンヌには敵わなかった。 やがて、ネプテューヌは追い詰められ、マジェコンヌに力をコピーされようとしていた瞬間、コンパは咄嗟にネプテューヌを庇っだ。 そのせいでマジェコンヌの予定は狂い、コンパの力をコピーしてしまい、弱体化してしまったのだ。 コピーの能力の弊害なのか、その際マジェコンヌの語尾が『ですぅ』と、コンパの特徴的な語尾が移ってしまったのだ。 弱体化したことにより、マジェコンヌを何とかネプテューヌたちは撃退したが、そのシュールな光景を、ネプテューヌとコンパは忘れられないのであろう。

 

話が脱線しかけていたため、アイエフは無理矢理ネプテューヌたちの話を切った。

 

「あーはいはい、その話はまた今度ね。 でも、どうしてベール様はマジェコンヌが、他者の力をコピーする能力を持っているって思ったのですか?」

 

「それはですね、わたくしの力を奪った犯人はコンベルサシオン、つまりはマジェコンヌと推測したからですわ」

 

ベールはアイエフの質問にさらっと答えたが、その言葉の中に聞き逃せない言葉があったことを、アイエフたちは逃さなかった。

 

「ベール様の、力が奪われた? それって、どういうことなんですか?」

 

「……あれは、お忍びで参加したあるゲームイベントの帰りですわ」

 

アイエフの問いに対し、ベールは目を閉じながら語り始めた。

 

「わたくしは会場で買ったグッズで両手が塞がり、更に1日中歩いていたので疲弊していたんです。 そんなフラフラな状態を狙われたわたくしが次に目を覚ました時には、女神としての力が無くなっていたんですの……」

 

「イベント帰りって、足が棒みたいになって、すっごく眠いんだよね。 そんなところを襲われりゃ、いくら女神様とはいえ太刀打ち出来ないよね〜」

 

ベールが女神としての力を奪われた顛末について語った時、納得するように頷くネプテューヌ。 しかしお忍びで行った所を狙われるとは、良く小説などではお姫様は幾つもの侍従や護衛に縛られる表現をされ、過保護だなんて思ったりもするが、今のベールの顛末を聞いた後だと、無防備すぎるのも考えものであると、アイエフはふと思った。

 

ベールの話を聞いた後、コンパはアイエフとは別のことについてふと思ったことがあり、ベールへも質問した。

 

「そういえば、女神さんの力がないとどうなっちゃうんですか?」

 

「普通に年をとったり、女神化……あなたたちが言う変身が出来なくなりますわ」

 

女神は国を守る存在であり、女神としての力を手に入れた瞬間から老いは無くなるのだ。 余談ではあるが、ブランは4女神の中で最も早く女神としての力を手に入れており、後々もう少し成長してから女神としての力を手に入れるべきだったと後悔したらしい。

 

「あ、だからベール様は今まで女神化をしなかったんですね」

 

ベールが女神化をしなかった理由が分かり、納得したアイエフではあったが、心中ではあの女神化した姿を見させてもらうための取引を思い出していた。 女神化出来ないのであれば、実はあの時敵が近くにまで来ていることに気づいていて、敢えてからかっていたのでは……? なんて考えていた。

 

「つまり、普通の人と同じってことです?」

 

コンパの疑問に、ベールは肯定の意を返す。

 

「そのとおりですわ。 なので、わたくしが歳をとってこの美貌が衰えてしまう前に、なんとしても女神の力を取り戻さなくてはなりませんわ」

 

女神の力が無い、と言うのは女神としての力である根幹であるシェア、つまりは国民の信仰力が途切れているという事だ。 現在ベールの体にシェアは流れ込んでおらず、普通の人と変わらないと言う事だ。 ベールの歳を取りたくないと言う理由に、一同はやや苦笑いで済んでいたが

 

「それに、わたくしが余生を全うしてしまっては、その後に発売されるゲームで遊べなくなってしまいますもの……それだけは、それだけはなんとしても阻止しなくてはなりませんわ!」

 

「……女神化に関してはついでなのね……」

 

「……コンパ、わたしはどう突っ込めばいいのかしら?」

 

「ブランさんの今の突っ込みだけでいいと思うですぅ……」

 

呆れて言うブランに、目の前の憧れの存在のぶっ飛びように困惑するアイエフと、諦めの境地に入りかけているコンパであった。

 

「そういう訳ですから、事後承諾になりかけていますが、わたくしが永遠にゲームで遊ぶためにも、あいちゃんたちにはその犯人を捕まえるのを手伝って欲しいんですの」

 

女神の力を取り戻す理由としては少々くだらないものではあるが、イツキを助けることが出来たのはベールの功績が大きい。 アイエフは突っ込む事は考えずに、少し間を開けてベールに言った。

 

「……ベール様には、イツキを助けてくれた恩があります。 その恩を返すためにも、協力させてください」

 

ネプテューヌとコンパもそれに頷く。 元々、お人好しな2人だ。 断ると言う選択肢は無いのだろう。 アイエフたちの承諾を得られた事を確認したベールは、視線をブランへと移した。

 

「……恩を借りっぱなしにするのは嫌なの」

 

ブランの言葉は素っ気ない物ではあったが、ベールはブランがそう言う性格である事は良く分かっている。 ベールはブランの肯定の言葉を聞くと、もう一度全員の顔を見やって言った。

 

「ふふっ、皆さんありがとうございます。さすがにこのことは教会の方々には相談出来なかったので、助かりますわ」

 

「? 教会の人たちはこのことを知らないんですか?」

 

「力を失ってしまったなんて、国民や仕えてくださる方々を不安にするようなことは言えませんわ」

 

コンパの素朴な疑問に答えるベール。 確かに国を守る守護者である女神が力を失くしたと知れば、混乱は必須であろう。

 

「あ、もしかして、ベール様が部屋に籠るようになった本当の理由って、ゲームの為じゃなくて……」

 

「えぇ、バレないためにも、なるべく人との接触を避けていましたの」

 

アイエフの問いに対して答えたベールの言葉に、少しアイエフは救われたような気がした。 主に憧れの人が色んな意味であまりに遠い所にいってしまわないかという点で

 

「まぁ、その時期にネトゲの大型アップデートが入って、そっちが忙しくなったというのもありますけど」

 

しかしまあ、その救いもすぐに音を立てて瓦解した。 ブランはジト目でベールを見やる。

 

「……そっちが本音じゃないの?」

 

これはこの場のベール以外の全員の心の声を代弁していた。 これ以上憧れの女神との距離が測りにくくなってしまう前に、アイエフは話を戻すことにした。

 

「えーっと……話は戻しますけど、どうしてベール様の女神としての力を奪った犯人がマジェコンヌって思ったんですか?」

 

「それはまず順番に説明しますわ。 まず、マジェコンヌが何故女神であるネプテューヌに毒を盛るように依頼しなかったのか……って、これは説明するまでもありませんね」

 

「……ネプテューヌの女神としての力を手に入れる必要があるから、殺すことは出来ないって事でしょ?」

 

確認のために言ったブランの言葉に、ベールは肯定をすると同時に、次の事柄の説明をするためにもベールはブランに問いた。

 

「ええ、その通りですブラン。 では次に、何故イツキさんが狙われたのかですが……ブラン、確認しますがイツキさんはマジェコンヌと敵対したそうですが、イツキさんは誰かの手を借りてマジェコンヌを撃退したのでしょうか?」

 

「……いいえ、イツキは1人でマジェコンヌを撃退したわよ。 ……辛くも、だけど」

 

「ほえー……わたしたち、3人がかりでもパラメータ違い過ぎて敵わなかったのに、お兄ちゃんってやっぱ強いんだね」

 

「……」

 

素直に感心するネプテューヌに対し、ブランの表情は複雑なものであった。 あの日、確かにイツキはマジェコンヌをほぼ単独で撃退していた。 だが、それはイツキが狂気に陥る程の力を行使したためであり、イツキ自身その狂気の力に飲み込まれてしまったことに苦しんでいる。 ブランはそう思っていた。

 

ブランのその複雑な表情から読み取ったかは分からないが、ベールは今回の事件の一連の纏めに入った。

 

「これで分かりましたわね。 マジェコンヌがイツキさんを狙ったのは、そのルウィーで敵対した際の報復であり、ネプテューヌを狙わなかったのは、ネプテューヌの女神としての力を奪うためにも、殺すわけにはいかないから。 そしてわたくしの力、女神としての力を奪える力を持つ人物……」

 

「それがマジェコンヌ、と言う訳なのですね」

 

「凄いですベールさん! 名推理です!」

 

ベールに同調するように、犯人の名前を言うアイエフに、ベールの推理に素直に感嘆するコンパ。 満更でもないようにベールは

 

「ふふふ、大したことはありませんわ。 この程度、普段からその手のゲームをして培った推理力を持ってすれば、簡単に解けてしまうのですよ」

 

「おおー、まさしく、ゲーマー探偵ベール、って感じだね!」

 

「新ジャンルの名探偵さんの誕生です!」

 

「……どこ受けされるのよそのジャンル……」

 

誇らしげに言うベールにネプテューヌとコンパの発言による、誰得なジャンルの誕生に対して冷静にツッコミをアイエフは入れた。

 

「ともあれ、現在らんらんがルウィーに渡ろうとしているマジェコンヌを足止めしております。 急いで向かいましょう」

 

ベールの言葉に一同は頷き、ダンジョンで時々現れるモンスターを蹴散らしながら、前に進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘイーロ山岳の果て。その場所からはルウィー大陸がリーンボックスに接岸している際、向こう側に辛うじて見える程度の位置である。 が、見えるだけであり、ルウィーにいると言われる配管工の配管員のよつにひとっ飛びに行ける訳も無く、まずダンジョンに来ない一般人は勿論、このダンジョンに訪れる冒険家やバウンティーハンターでも、この場所からルウィーへと飛び移ろうだなんて発想には至らないだろう。 ここからルウィーに行くには、飛行能力でも無ければ無理だと思うだろう。

 

そんな辺鄙な場所にて、2人の人間が言い争っていた。 片方はルウィーへと入国しようとし、もう片方はそれを押しとどめていた。

 

「(´・ω・`)だから、この先はおばさん立ち入り禁止なのー」

 

「誰がおばさんだ誰が!」

 

豚の仮面をつけている人物、らんらんは両手を大の字に広げて、ルウィーへと逃げようとするローブを着用し、ローブのフードを深く被った人物であるコンベルサシオンの姿のマジェコンヌを止めている。

 

「(´・ω・`)つ鏡」

 

「貴様、消し炭にするぞ!!!」

 

「(´;ω;`)ひぃ……!?」

 

おばさんと言われたことに激昂するコンベルサシオンに対し、どこからともなく取り出した鏡を見せようとするが、鏡を目の前にかざされた時点でコンベルサシオンは更に怒り、ここまでしつこく止められた鬱憤も含めて、らんらんを実力行使でどけようとする。

 

「そこまでよ、コンベルサシオン! いえ、マジェコンヌ!」

 

その時、らんらんに今にも攻撃をしようとしていたマジェコンヌをアイエフが制止する。 マジェコンヌは攻撃しようとした手を止め、視線を声が聞こえた方へと向けると、こちらの方にネプテューヌたちが向かってきていた。

 

「よくもお兄ちゃんを殺そうとしたなー! 絶対許さないんだから!」

 

ネプテューヌが開口一番にマジェコンヌを勢い良く指差し、ビシッと決めるように言った。 ネプテューヌとベールの姿を確認したマジェコンヌは、あからさまに舌打ちをした。

 

「ちっ! やたらとしつこく絡んでくると思えば、まさか女神共が来るまでの時間稼ぎだったとはな」

 

「らんらん、ご苦労さまでした」

 

先ほどまでマジェコンヌを必死に抑えていたらんらんは、素早くマジェコンヌから離れ、今はベールの背中に隠れていた。 足止め役を果たしたらんらんをベールが労う。

 

「(´・ω・`)あのおばさん怖かったよぉー……」

 

「誰がおばさんだ、誰が!!」

 

「(´・ω・`)ひぃぃぃー!!」

 

自分の役目を終え、主が来たことに安堵してかうっかりらんらんは呟いたのだが、しっかりと聞かれていたようで、

マジェコンヌの怒鳴り声を聞き、飛び上がるらんらん。

 

「あとはわたくしたちに任せて、あなたは安全なところへ」

 

「(´・ω・`)お願いするわ」

 

らんらんはすぐに後ずさり、ダンジョンの茂みの向こう側へと消えていった。 それを確認したベールは再びマジェコンヌの方へと向き直る。

 

「さて、コンベルサシオンもとい、マジェコンヌ。 あなたにはイツキさんを狙った罪の断罪と、わたくしから奪ったものを返してもらいます」

 

ベールのその言葉は意外であったようで、素直に感嘆するようにマジェコンヌは声を上げる。

 

「ほぉ、ただのオタク趣味の腑抜けた女神だと思っていたが、まさか私の真の名前にまで辿り着くとはな……」

 

「ふふっ、ノベルゲーマーを舐めるなとだけ言っておきます」

 

「そうか……ではもうこの姿でいる必要もあるまい」

 

誇らしげなベールに対し、マジェコンヌはローブを脱ぎ捨てるように上へと投げた。 そこにいた悪趣味なメイクと衣服に、魔女のような帽子を被るマジェコンヌの真の姿は、ネプテューヌたちがプラネテューヌで出会った魔女の姿と一致していた。

 

「……やっぱり、マジェコンヌってあの時のやつだったのね……」

 

「イツキさんとベールさんの予想通りです」

 

マジェコンヌの姿を見て、アイエフとコンパはプラネテューヌで出会った魔女の姿と完全に重なったことを確認して呟いていた。 ネプテューヌもそれは同じようであったが、先ほどと同じようにネプテューヌはビシッとマジェコンヌを指差す。

 

「やっと本性を表したなこのおばさんめ!」

 

「貴様まで言うか! ……まあいい。 あの時は、そこの貴様が邪魔をしてくれたせいで遅れをとったが、今日はそうはいかんぞ」

 

マジェコンヌはコンパの事を指して言い、言われた本人は少し驚き、縮こまるようにアイエフの背中に若干隠れた。 マジェコンヌとしても、あの時自身が起こしたミスによって遅れをとったことは屈辱的であったようだ。

 

構えを取ろうとするマジェコンヌに対し、ネプテューヌも続けて言おうとしたが

 

「そっちがその気ならこっちだってーー」

 

「待ってネプテューヌ。 こいつには、言っておきたいことがあるの」

 

ブランがネプテューヌが言葉を言い切る前に、待ったを入れた。 ネプテューヌ自身、ここは決め場だったようで文句を言いたげであったが、後ろからアイエフが抑え込んだ事により退場を余儀無くされる。

 

マジェコンヌはネプテューヌに横槍を入れたブランへと視線を移した。

 

「貴様は……どこかで見たような気もするが、私が誰だか分かっているのか? 私と戦いに来たのではないのなら、さっきのうっとおしい雑魚のようにさっさと失せろ」

 

マジェコンヌは目の前のブランを()()()()()()として扱い、見下すように言った。 マジェコンヌは、目の前の巫女服を着用し、頭に流星の髪留めをつけ、メガネかけている少女がブランだとは分からなかったようだ。

 

確かに、マジェコンヌはコンベルサシオンとして長い間ルウィー教会の宣教師として仕えていたが、本来の目的を果たすための下ごしらえのために、他国への布教と言う名目で他の大陸を何度も渡り歩き、ルウィー教会へと帰ってくる事は殆ど無かったため、ブランの最も印象的な大きな帽子が無いことと、メガネや髪留めによって第一印象を変えているために、気づかなかったのだ。

 

しかし、姿形は変わってもブランの性格は変わらない筈なのだ。 なのだが、ブランはいつもならこの手の煽りを言われるとすぐに怒るのだが、今はそれが無く、代わりにブランが紡いだのは静かだ物だった。

 

「……別にあなたが誰であるかなんて、どうでもいいことだわ。 ……問題なのは、あなたがイツキにしたこと」

 

イツキ、と言う単語を聞いてマジェコンヌは口角を釣り上げた。 人が苦しむのを見て喜ぶような、嗜虐的な笑みだった。

 

「ほぉ、貴様は奴と知り合いなのか。 何、奴にはルウィーで苦渋を舐めさせられたのでな……相応のお返しをしたと言う訳だ。 先ほどのネプテューヌの発言によれば、どうやら一命は取り留めたようだが、あれは私が自ら調合した毒だ。 さぞ苦しんだことだろうなぁ……」

 

マジェコンヌはイツキの悶え苦しむ姿を想像し、歪んだ笑みをハッキリとさせる。 身の毛のよだつようなその笑みに、コンパやアイエフは少し悪寒を感じた。

 

その言葉を目の前で聞いていたブランは静かに目を閉じる。 ブランもまた、イツキが苦しむ事となった原因や、苦しんでいた様子を脳裏に浮かべた。

 

「……そう、イツキは苦しんだ。 ……苦しませてしまった。 ……あの時と同じで、私がしっかりしていれば、苦しませる事も無かったのに」

 

イツキが苦しんだ原因を、あくまで自分のせいだと言うブラン。 脳裏に浮かべていたのは毒の事だけでは無かった。 イツキが狂気に飲み込まれかけたあの時から、ブランは悔やんでいる事があった。

 

「……そう、他でもない私のせいで……あの時、私が油断していなければ」

 

ルウィーが奪われることは無かった。

 

女神としての力を奪われることも無かった。

 

 

イツキが苦しむことも、無かった筈なのに……

 

 

ブランは無言のまま右手を軽く上げる。 瞬間ブランの右手にハンマーが握られ、ブランはそれを軽々扱い、目を開けてハンマーの肢の先をマジェコンヌへと突きつける。

 

「……だから、テメェはここで倒す。 必ず倒す。 完膚なきまでに叩きのめす。 ……それが、私のケジメだ!」

 

「……だったら、やってみせろ!」

 

そのマジェコンヌの声を皮切りに、戦闘の火蓋は切って落とされる。


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