超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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第3話 イツキ

声が聞こえる。

 

それがどんな声かは分からない。

 

いや、理解することを拒否しているのかもしれない。

 

 

でもただ一つ言えること

 

 

 

 

 

 

 

みんな滅びればいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

顔に暖かい日の光を感じ、瞼を上げた。視界に入ったのはガラス張りのドームだった。

 

「…ここは…」

 

上体を起こそうとするが、全身が酷く痛んでとても起きれない。仕方なく首だけを動かして、周りを見回す。

 

どうやら自分は植物庭園の中のガラス張りのドームの中で、ベッドの上で横にされてるようだ。

 

「あら、目が覚めたの?」

 

声の聞こえた方向を見ると、見覚えのある少女がこちらに歩いて近づいてきていた。

 

「…あ、あの、……ッツ!」

 

「まだあまり体を動かさない方がいいわ。内部損傷は無かったけど、外傷が酷かったから、とりあえず応急処置はしておいたわ」

 

よく見ると自分の腕や足には包帯が巻かれていた。思ったよりも擦り傷や切り傷が多かったようだ。

 

だが、それよりも気になることがあった

 

(内部損傷が無い…?)

 

思わず手を胸骨や腹部当たりをさすってみるが、内部の痛みは無かった。

 

(どうしてだ?あの時僕は確かに…最低でもアバラは折れていたのに…)

 

疑問が渦巻くが、少女がベッドの近くまで寄り、話しかけてきたので思考が中断される

 

「…見たところ、貴方はこの国の人では無いわね…何者なの?」

 

さて、人とあった場合の事は考えていなかったが、どうしたものか。ここで素直に記憶喪失だなんて言った所で信じてもらえる保証はない。それどころかスパイかと疑われてしまうかもしれないので、慎重に答える

 

「あ、あの僕は日本から来たんですけど…」

 

「……ニホン?…聞いたことの無い地名ね…それはどこの大陸にあるの?プラネテューヌ?ラステイション?」

 

「ぷ、ふらねてゅーぬ?らすていしょん?」

 

「あら、それともリーンボックス?」

 

「そ、それ何ですか?何かのゲームですか?」

 

「……ここは何処だか、わかる?」

 

「ろ、ロシアですか?その割りに貴方は日本語が上手ですし…」

 

「……てめぇ、何者だ?」

 

慎重にやった結果がこれである。助けてくれた恩人に疑われてしまってはこの先どうしていけば良いか分かった物ではないとかそんな事を考えるよりも、目の前の青筋立ててる少女が怖い。さっきまで優しく話しかけていた少女は何処に行ったのー?もう目とか赤いし、オーラがどす黒い。何かゴゴゴゴゴとかいう効果音と一緒にオーラが出ているもん。今にも「地獄に落ちろォォォ!!」とか叫んで首跳ねそうな勢いだ。てか助けられた少女に殺されるって…

 

と、そんなことを危惧していたのだが、目の前の少女は一息ついてこう言った。

 

「…まあしょうがないわね。危険種に襲われて、記憶が混同しているのかもしれない。とりあえず今は、傷の療養に集中すべき。話はそれからよ」

 

スイッチの切り替わりが早いのだろうか。その顔は確かにさっきまで話していた、外見は幼げだが何処か大人びた少女だった

 

もう少し眠っていなさいと、言い残し、僕に背を向けて出口に向かった。彼女がドアの前に差し掛かったところで、最初に口に出来なかった言葉を、その背中に僕は叫んだ

 

「あ、あの!助けてくれて、ありがとうございます!」

 

ドアノブに触れていた少女はピタリと立ち止まり、数刻してから振り向いてこういった。

 

「……そういえばまだ、名前を言ってなかったわね。私はブラン。貴方は?」

 

さて、何て答えようものか。自分の名前もわからないなんてのはあまりにも締まらない。

 

名無しの権兵衛?いや、名無しってもう言っちゃってんじゃん……

 

いっそ名前無いしナナシ?……無いなうん

 

ここは国際的にジョン?……何が国際的だよ

 

……どうしても名前が思い浮かばない。

 

「……どうしたの?」

 

少女は心配そうに声をかけて来る。いかんはやく名前を考えないと…!

 

必死に頭をフル回転させて考える

 

その瞬間、脳裏によぎったのは[一樹]という文字だった。どうしてか、この局面でこの文字が頭をよぎった。気づけばこの言葉を口にしていた。

 

「…僕はイツキ。イツキです」

 

何と無く頭に思い浮かんだ名前だったが、懐かしさを感じた。少女は目を閉じ言葉を返す

 

「イツキ……イツキか。良い名前ね」

 

少女は微笑んだ。その微笑みは眩しいもので、つい見惚れてしまった。そして口元を正した少女は僕に背を向け出口に歩き出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…何者なのかしら…彼)

 

教会の廊下を進みながら思案をするブラン。

 

(最初は記憶が混同しているのかもと思ったし、彼にもそう言ったけど、だからと言ってここは何処なのかは愚か、他の大陸のことも知らない)

 

(その代わりに出て来たのは私の知らない地名や言語の名前……ニホン語だったかしら)

 

そこで頭によぎった仮定。それは小説などではありがちな、しかし現実とは無縁の可能性

 

「……何にしても、調べる必要があるわね」

 

ブランは教会のある一室のドアを開けた。ドアの真上には[資料室]とあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ…」

 

ベッドで大人しくしてろと通達を受けたため、しばらく辺りを見回したり花の数を数えたりして暇を潰していたのだが、もう限界だった。

 

「……うがぁぁぁぁぁ!!無理!暇!もう動きますもんね!内部損傷は無いようだし、走りさえしなきゃ大丈夫だよね!」

 

上体を起こしベッドから降りる。幸い足は大した怪我じゃなさそうだ。

 

「うん。これなら大丈夫そうだ。さて、これからどうしようか…」

 

探検か日向ぼっこかどちらにしようか考えたところで、ドームのドアが開いた。

 

「失礼します。……あれ?もう起きても大丈夫なんですか?」

 

片手に包帯とティーセットを持っている、長い金髪の女性は自分を見て驚いていた。

 

「……」

 

自分はと言うと、こちらも驚いていた。目の前の女性が着ているのはどう見てもメイド服だ。写真とかで見たことはあるが、本物を見るのは初めてだった。

 

「……あの、そんなに見つめられると恥ずかしいのですが…」

 

女性は恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。思わず目をそらしてしまう。

 

「す、すいません……あの、貴方は?」

 

「あぁ、すみません。自己紹介がまだでしたね。私はフィナンシェ。ここで侍従をさせてもらっています」

 

持っていた包帯やティーセットをベッドの脇に置き、丁寧にお辞儀をするフィナンシェ。こちらもお辞儀をして自己紹介をする

 

「あ、ご丁寧にありがとうございます。僕はイツキです」

 

「イツキさん、ですね。よろしくお願いします」

 

そんな調子で自己紹介は済んだのだが、やはりどうしてベッドから起き上がっているのか問い詰められてしまった。退屈で起きたと答えたら、案の定

 

「怪我は治り始めが危険なんです。最低でも今日一日は安静にしていてください」メッ

 

と返されてしまった。と言うか、メッって…子供じゃあるまいし……しかしまあ、あんまり愚図っても子供っぽいので仕方なく、渋々ベッドに戻る。その際フィナンシェに

 

「良い子ですね」ナデナデ

 

と頭を撫でられた。気恥ずかしさで身を捩らせた。子供じゃありません

 

「それではイツキさん。服を脱いでください」

 

「ブフォ!」

 

突然のフィナンシェの発言に盛大に吹き出した。

 

「な、なななななな何を言っているんですか!?真昼間から!!」

 

「?包帯を巻き直したいので、とりあえず上着を脱いでもらってもいいですか?」

 

あ、そういう意味ですか…意味の取り方を間違えてしまい相手に対する申し訳なさがこみあげてくる。すいませんこちとら童貞ですので…

 

と考えたところでふと思う。

 

(あれ?でも僕記憶が無いけどその間に童貞卒業している可能性が微レ存?いやいやいや、でもその場合は僕は非童貞なのかな…)

 

「あの、イツキさん?」

 

「……」

 

「……勝手に脱がしますね」

 

イツキは自分の貞操の事を思案するあまり、フィナンシェに手際良く服を脱がされているのに気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか、本当に予想が当たってしまうとはね…」

 

ブランは一冊の、埃を被った分厚い本を持ち、イツキの居る部屋に向かっていた。

 

「……こんな現実からかけ離れたこと、同人誌の中のものだけかと思っていたけど、案外身近にあるものなのね」

 

その本は資料室のずっと奥の、管理が行き届いてない場所にあった。

 

その本の表紙は劣化が進み、掠れて読めないものだが、求めていた情報はある程度は読み取れた

 

(とりあえず、彼が何者なのかはこれで証明できそうね…)

 

その説明も兼ねて今イツキの眠る部屋に進んでいるのだが

 

「ふぃ、フィナンシェさん!そ、そこは…」

 

「……?」

 

ドアを開ける直前に、彼の声が聞こえてきた。どうやら中にはフィナンシェもいるようだ。

 

「我慢してください。男の子でしょう?」

 

「いやいやいや、男の子って呼ばれる年齢でも無いと思うんですが!?」

 

「なら尚更です。それに、その痛みも慣れれば気持ち良くなりますよ?」

 

「ええ!?そ、そんなマゾにはなりたくなりです!」

 

「ほらー、もっとしめますよ!」

 

「ちょ!?き、キツイです!し、しまるしまるしまるしまるー!!も、もう限界です…」

 

そんなやり取りが部屋から漏れ出していた。

 

「……」

 

さてこんなやり取りが中で開催されていると知って黙っているブランでは無い。

 

ブランは手に愛用のハンマーを装備し、眉間に青筋を寄せてドアを蹴破った。

 

「イツキィィィィ!!テメェフィナンシェとナニしてくれてんだコラ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「え、ブランさん?」

 

そこには包帯でぐるぐる巻きにされているイツキと

 

「ブラン様?」

 

イツキの丁度胸の辺りの包帯を取り替えているフィナンシェだった。

 

「…あ?何やってんだ?オマエら…」

 

「イツキさんの包帯を巻き直していたのですが…」

 

「いや違いますよ!もはやこれはテーピングですよ!しかも意味の無い!!」

 

「……」

 

ブランはこの手の小説や同人誌を読んでいる。つまりこれはお約束だ。しかしこのやり場の無い怒りを何処に向けようか?フィナンシェ?論外だ。

 

結論は出た。

 

ハンマーを構え、思いっきり振りかぶり、目標に詰め寄る

 

「紛らわしいんだよ!アホ!」

 

「り、理不尽だベボォ!?」

 

ハンマーがイツキの頭上にて一閃、そしてベッドに倒れ伏せるイツキであった。

 

 









少し現状説明

すでにネプテューヌは記憶を失くした状態であり、コンパとも出会っております。

ただ、作品の都合上女神化はしておらず、アイエフとも出会っておりません。

ご了承ください


※2015/8/21 後書き変更


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