超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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テストは終わりました。二重の意味で終わりました。これは留年しちゃうかも……

で、今更ながらイツキ君のスペック↓公開

身長 168cm

体重 55kg

髪型 ショートの髪で癖毛な髪である。

では投下


第15話 責任

あの天真爛漫な少女と別れた後、あの鋭い視線が余程痛く刺さったのであろうか、イツキはホテルには戻らずギルドに向かった。

 

ホテルにチェックインした際に、街の地図を貰っておいたので特に迷うことなくギルドに辿り着いた。

 

ギルドのクエストの受付する機械はルウィーの物と同一であったので、普段通りの使い方で依頼を確認したのだが

 

「……素材集めの仕事はアヴニールの物が殆どを占めているな……」

 

上からしたまで画面をスクロールしても、アヴニールの文字が何処かしらで表れた。聞いた話では、アヴニールの製造工程は機械が殆どやっているらしく、従業員は大企業の割りには少ないらしい。恐らく営業や、簡単な素材集めは人がやるのだろうが、モンスターばかりはギルドに依頼するのだろう。

 

「……ん?」

 

ふと目に止まった依頼は更新したてのアヴニールの依頼。内容は、どうやらある従業員の1人がダンジョンで新兵器のモニターをしていたそうだが、兵器にトラブルが発生し、そのままダンジョンから出られなくなったので、その人を救出して欲しいと言う内容だった。

 

「……嫌な会社だけど、人命には代えられないか……」

 

イツキはこの場では会社の好き嫌いと人の命は代えられないと、自分の個人的な感情を封殺し、慣れた手つきでクエストを受注したのだった。

 

 

 

 

 

 

「どりゃ!!」

 

「ピギャ!」

 

とあるダンジョンに威勢の欠けた声と、どこか間の抜けた断末魔とも言えるのか怪しい声が響いた。

 

ここはト・キデン洞窟。何だか鬼でも出そうなネーミングではあるが、鬼どころか鬼の特徴であるツノを持ったモンスターすら現れない。代わりに現れるのはイツキにとっては馴染み深いコールドボーイ&ガールによく似たアイスボーイ&ガールとアイスゴーレムの体がアイスではなく、岩で構成されたアースゴーレム、堅いからのような物を被っているマジックストーンや赤い花に顔のあるムーランルージュというやつだった。

 

「ゴアァァ!!!」

 

イツキがダンジョンにいたアイスボーイを倒した瞬間、周りにいたアースゴーレムがイツキに突っ込んで来た。

 

「ふんっ!!」

 

「ゴア!?」

 

イツキはそれを体を軽く捻って避け、左腕の肘打ちをお見舞いし、地面に倒れたアースゴーレムを踏み潰した。

 

「「「ゴガァァァァ!!!」」」

 

アースゴーレムが霧散した直後、イツキの周りにいたマジックストーンと、ムーランルージュ2体は咆哮をあげイツキに突進して行く。イツキから言わせればその単純な突進は最早君たちにとって死亡フラグ踏んでるような物だからやめた方がいいと思ったのだが、周りをよく見るとアイスボーイ&ガールがそれぞれイツキの様子を探っていた。

 

(ふーん……彼らは割と冷静なんだな……)

 

イツキは先に突っ込んできたムーランルージュを蹴り、宙に浮いた瞬間を狙って胴体を掴むともう一体のムーランルージュを掴んだムーランルージュでバットを振る要領でかっ飛ばす。その時点で2体のムーランルージュは四散した。

 

そして残ったマジックストーンをハンマーナックルで地面に叩き伏せると、動かなくなったマジックストーンから少し距離を取る。

 

「ループシュート!!!」

 

助走をつけ、それこそサッカーのPKの舞台に立った気持ちでイツキはマジックストーンを蹴り飛ばした。

 

ループシュートと言う掛け声で打ったマジックストーンは、一直線にアイスボーイ&ガールの所に向かっていく。この時点でアイスボーイ&ガールたちは自分たちの危機に気づいたのだが、時すでに遅し。

 

けたたましい爆裂音が洞窟内に響き、グラグラと洞窟が揺れ、砂塵と小石が舞う。

 

それが晴れる頃に見えてきたのは大きなクレーター。そしてそこに残るモンスターたちの落とす素材だけだった。

 

「……うーん……」

 

それを見ていたイツキは呟く

 

「ループシュートじゃなかったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここら辺に確か逃げ込んだって、書いてあるけど……」

 

このダンジョンに入って、だいぶ奥まで進んだ。どうやら要救助者はダンジョンの中ほどあたりでモニターをしていたらしいが、兵器が壊れた後はモンスター達に奥に追いやられたらしい。道中確かに既に壊されたと思われる機械の部品散らばっていた。

 

「……ん?あれかな?おーい!無事ですかー?」

 

洞窟の行き止まりの近くの岩に腰掛けるように若い男が座っていたのを確認したイツキは、手を振り声を掛けた。

 

「おや……?あなたは?」

 

アヴニールのその従業員はモンスターに追いやられたにも関わらず、意外にも冷静であった。

 

「あ、失礼しました。私はイツキと言う者です。アヴニールからのご依頼により、あなたの救助に参りました」

 

近くにまで来て分かったが、その従業員は一目で高いと分かるようなスーツを着用し、メガネを掛けた姿もあいまって如何にも仕事が出来る男という風格であり、イツキはその姿にビビってさっきまでタメ口モードだった口調を、敬礼モードに変えた。

 

「これはどうも。私はアヴニール社のガナッシュと言う者です。早速ですが、ここから連れ出しては貰えないでしょうか?」

 

仕事ができる言う見た目を裏切らない抑揚で話すガナッシュと言う男は丁寧に頭を下げた。

 

「分かりました。では私が前へ進みますので、着いて来てください。なるべく離れないようにお願いします」

 

イツキも丁寧に返すと、ダンジョンの出口を目指し歩きだし、それにガナッシュも続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

イツキとガナッシュが出口に向かって歩きだし、もう少しで出口と言う所までに辿り着いた。

 

やはりと言うかなんと言うか、モンスター達は要救助者護衛中でもイツキには容赦無く襲ってきたために、予定よりも出口にたどり着くのが遅れている。

 

もっとも、このダンジョンのモンスターはイツキがこれまでずっと戦い抜いてきたルウィー雪原のモンスター達よりも弱いので、特に苦労することなく倒しているのだが

 

「ここら辺のモンスターを、特に労することも無く倒すとは……イツキさんはかなりの手練れなのでしょうか?」

 

「私には勿体無いお言葉、恐縮です。しかし、自分などはまだまだですよ」

 

道中ガナッシュにお褒めの言葉を受け取ったりもしたのだが、そこは日本人特有の謙虚スキルを発動し、自らを戒める。

 

「時間はかかりましたが、もうすぐ出口につきます」

 

「いえいえ。このダンジョンのモンスターのレベルと距離を考えれば、ずっと早い到着ですよ」

 

そんなやり取りをし、外の光が漏れ出す出口が丁度見えてきた時だった。

 

「グォォォォォオオオオ!!!」

 

突如洞窟に凄まじい咆哮が響くと、洞窟の岩壁が粉砕され、イツキ達の目の前に巨大な何かが表れた。

 

それは人間の優に4倍以上の高さを持ち、大きなかぎ爪と牙、トカゲのような尻尾を持ち、口元からシュルルルと言う音を立てながら火の粉を散らす、イツキの世界では想像上の、ゲイムギョウ界では危険種として知られる存在。

 

「ど、ドラゴン…!?」

 

「……あれはエンシェントドラゴンの亜種、『エレメントドラゴン』です。弊社の兵器を壊したのも、あのドラゴンです」

 

イツキが急に現れた招かれざる客に驚愕するなかでも、ガナッシュは平静を保ち、イツキにモンスターの情報を教えるのであった。

 

「……ガナッシュさん。どこかに隠れていてください。私がこいつの相手をします」

 

「分かりました。では、あなたにお任せします」

 

ガナッシュは最後まで落ち着いた動作で近くの岩陰に隠れた。それを確認したイツキは、殺気立っているエレメントドラゴンに向き会う。

 

「グルルルルルル……グォォォォォオオオオ!!!」

 

先に動き出したのは殺気立っているエレメントドラゴン。縄張りを荒らされたと思っているエレメントドラゴンは怒り心頭で獲物のイツキに突進をし、かぎ爪を振るった。

 

イツキはそれをバックステップで避け、洞窟の壁を蹴りエレメントドラゴンの顔にめがけて蹴りを放つ。

 

が、エレメントドラゴンには大したダメージを与えられず、迫ってきた腕を避けるためにイツキはエレメントドラゴンの顔を蹴り、空中で回転しながら地面に着地した。

 

「……やっぱ、危険種には効かないか……」

 

イツキは一度危険種と戦ったことがある。その時も自分の攻撃は通用せず、逆に返り討ちにあってしまったのは、イツキにとっては苦い思い出だ。

 

「……よし、アレ(・・)やるか……!」

 

だが、イツキにとってそれは過去の話。イツキはその過去を拭い去るためにも、力を解放することにする。

 

「……スゥー……ハァー……」

 

イツキは直立して目を閉じ、深呼吸をして集中した。イメージしたのは体の内から引き出すように力を解放するイメージ。

 

すこしづつ、すこしづつイツキは頭の中でイメージを固めて行く。

 

(……力を持った以上、責任を持ってその力を制御し、行使しなければならない……か)

 

ふと頭に浮かんだのはあの頭に直接響いて聞こえてきた声の主の言葉だ。

 

(……この力は……いや、これらの力を制御し、正しいことに使うこと……それが僕に課された、『責任』なのかな……この力を使うことに抵抗はある……だけど!)

 

「グオオォォォオオオオ!!!」

 

動かなくなったイツキに痺れを切らしたエレメントドラゴンは、今度こそ獲物を狩らんと詰め寄り、かぎ爪をイツキに横薙ぎに振るう。

 

(僕には、僕にとっては-----)

 

鋭いかぎ爪が、イツキの首元にまで迫った瞬間、イツキは目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(大切なものを失うのは、もっとイヤだ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強欲(グリード)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキィン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで金属同士がぶつかり合うような、甲高い音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオオ!?グオ!グオオオオ!?!」

 

苦悶の声を上げるエレメントドラゴン。そのエレメントドラゴンのかぎ爪は、まるで鉄に叩きつけられたように、形が歪なヒビを残して割れていた。

 

「……」

 

それに対してイツキはさっきまでと変わらない体勢を保ち、何事もなかったかのように(・・・・・・・・・・・・)直立していた。

 

イツキは未だ苦悶の声を上げているエレメントドラゴンに駆け出し、追撃を加えるように回し蹴りをエレメントドラゴンの顔におみまいした。

 

「グゴォォオオ!!??!」

 

洞窟にバァン!!と言う拳よりも堅く重い鈍器で殴ったような鈍い音が響き渡り、エレメントドラゴンは確かに苦痛の声を上げた。

 

エレメントドラゴンを蹴ったイツキの右足。その部分は服の上から見れば変化は無かっただろうが、今の彼の肌は人間の皮膚の色であるベージュでは無く、銀色に変化していた。

 

イツキの使った力『強欲(グリード)』。それはイツキの体を金属のように硬くする硬質化。人としての形を崩すことは出来ないが、全身の硬質化は勿論部分的にすることも可能である。例えば、エレメントドラゴンの攻撃を受けた際は全身を硬化させていた。

 

たった一発の攻撃で、苦しげな声をあげるエレメントドラゴンを見つめるイツキ。その表情は読むことは出来ない。

 

(……かぎ爪食らった瞬間、生きた心地しなかった……)

 

その無表情のイツキの心中は冷や汗だらけであった。

 

全身がガチガチの強固な戦士と化しても、精神まで強固になる訳では無いので、巨大な凶器が迫れば怖いものだろう。

 

(でも、この力を使えば……僕は……)

 

既に自分の新たな力の実力が分かったイツキはもう何も怖く無いと安堵し、立ち直ろうとしているエレメントドラゴンに駆け出した。

 

「グオ!グオオオオオ!!」

 

詰め寄ってきたイツキに気づいたエレメントドラゴンは急いで立ち上がり、尻尾を横薙ぎにイツキに振るうが、イツキはそれをジャンプすることによって避け、エレメントドラゴンの頭を両手で掴むと、押し込むような動作で地面に叩きつけた。

 

堪らず地面に倒れ伏せるエレメントドラゴン。イツキはエレメントドラゴンの顔やジャンプ台にして、背中に飛び移ると、拳を上に突き上げ強く握り、力を込める。

 

倒れ伏せたエレメントドラゴンはどうにか立ち上がろうとするが、蓄積されたダメージで力が入らない。

 

そしてイツキの突き上げられた右腕が、パキパキと氷が凍っていくような音を鳴らしていく。

 

そして手のひらまで音が鳴り終え硬化を終えた瞬間、イツキはジャンプし、標的に垂直に突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鋼鉄の戦槌(アイアン・メイス)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イツキの右腕が、エレメントドラゴンの背中を捉えた瞬間、ゴキゴキバキバキ!と言う骨の砕ける音が洞窟内をけたたましく響かせた。

 

声もあげられずにエレメントドラゴンは虚しく空に響きもしない唸り声を上げると、パシャンと粒子となった。

 

危険種、エレメントドラゴンがたった1人の人間にやられた。それは女神でも無い限り出来ない所業だ。

 

(……流石に危険種相手では無理があるかと思いましたが、まさかここまでとは……)

 

岩陰から様子を見ていたガナッシュは、表情こそ変化はないが、心情は驚きの感情で一杯だった。

 

「……ふぅ……終わった」

 

それをやった人物は全く緊張感の無い抑揚で仕事の終わりを呟くのだから、畏怖すら抱けないのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

エレメントドラゴンを倒し、ガナッシュをアヴニールまで送り届けた後、イツキはホテルの自室に戻った。

 

ガナッシュをアヴニールに送る最中、ガナッシュはイツキの危険種を簡単に倒す実力を見て、是非ともアヴニールで働かないかと勧誘をした。当然だがイツキは断った。いくら多額の金を約束されても、他の人の利益を搾取するような会社の人間にはなりたく無いと言う思いがあった。

 

ともあれ、アヴニールの関係者に実力を認められるのはこの先の情報収集で役に立つだろうと思い、明日また別のアヴニールの仕事を受けることをガナッシュに伝えておいた。

 

そしてホテルの自室に戻る頃は夕暮れ時。そろそろ空腹感が体を満たすころなのだが、イツキの体を占めていたのは空腹感では無く、疲労感であった。

 

「……うへぇ……」

 

体中の倦怠感に耐えられず、ベットに倒れこむように……いや倒れこんだ。

 

イツキの新たな力の正体、それは七つの大罪と呼ばれる人間の罪に走ると言われている七つの欲の事である。

 

七つの大罪、それぞれ傲慢、嫉妬、憤怒、暴食、色欲、怠惰、強欲の七つからなるその欲の力がイツキの中には宿っている。

 

これは『強欲(グリード)』の力を使った反動であった。そもそもイツキが『強欲(グリード)』の力を使うのは初めてであり、まだ力の扱いに慣れていなかったためだ。

 

「……これから少しづつ使って、慣れていかなきゃな……」

 

それが僕の背負った責任だ、とイツキは付け加える。

 

「……眠い……」

 

疲れとベットの柔らかさのせいで、イツキの眠気を加速させた。

 

「……」

 

そしてイツキは眠気に耐えられなくなり、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い

 

 

 

どこを見ても赤い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

床も地面も天井も、視界に映るものは全て赤い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このべったりとして、ドロドロとした鉄くさいこれは何だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、これ血だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……血?

 

 

この手のひらには血がベッタリとついていた。

 

 

今すぐ、手にへばりつくようについている血を拭いたかったが、何故か手が動かない。それどころか、足が勝手に前へと進んでいく。

 

 

 

 

目の前に、急に何かが現れた。

 

 

 

 

それは人だったのだろうか?泣いていた。助けてくれと、命だけは勘弁してくれと手を合わせ、必死だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はワラッテイタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……は?ワラッテイタ?な、何言ってるんだ僕は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左腕が破裂しあの悪魔の象徴へと切り替わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シネ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!!!!!!ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ッツ!!!!」

 

過呼吸をしながら、いつの間に眠ってしまった僕は飛び起きた。

 

何だよ今の……!最悪な夢だ。どうしてあんな物を……

 

そんな事よりも僕は自分に吐き気がした。夢の中で、自分は泣いている人間を嗤って、しかも殺そうとして……

 

途端に体中を悪寒が走る。あまりの冷たさに自分の体を抱くように両手を背中に回した。

 

……こんな夢をみてしまえば嫌でも思い出してしまう。

 

あの凄惨な光景を、人を切り、快楽で満ちていた自分を

 

「……うっ……うっううぅぅぅぅぅ……」

 

そんな自分に嫌気が差し、縮こまるように体を丸めると、僕はすすり泣いた。

 

忘れたい。けど、忘れてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分は悪魔であり、罪深い者であることを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、あの後泣き疲れて眠ってしまった。

 

悪夢にうなされることはなかったが、どうしようも無く夜が怖くなってしまった。

 

「……って、子供じゃないんだがら……いい年して夜が怖いって……」

 

今僕はガナッシュとの待ち合わせ場所に一足早く着き、近くの木陰で涼んでいた。

 

まだ仕事の内容は聞いていない。その場で直接説明するらしい。そのため、一応待ち合わせの時間よりも少し早めに来たのだが、少し早すぎたようだ。

 

「おや、先に着いていらしてましたか。すみません待たせましたか?」

 

と、噂をすれば何とやら。ガナッシュともう1人壮年の男性がこちらに歩み寄っていた。

 

「……お前か。ウチのガナッシュを助け、危険種をたった1人で討伐したと言うのは……にわかには信じ難いな」

 

壮年の男性は僕を値踏みするかのような視線で僕を見ていた。嫌悪感を感じるが、それを我慢する。

 

「社長。見た目は軟弱そうですが、実力は確かです」

 

「……ふむ。お前がそう言うのならそうなのだろう。多少は期待をしてやる」

 

……どうやら、壮年の男性はアヴニールの社長らしい。それにしても傲慢不遜な態度である。正直気に入らないが、仕事に私情を挟むわけにはいかないので、ガナッシュに依頼内容を早速聞くことにした。

 

「あの、ガナッシュさん?今回の依頼内容はどういったもので?」

 

「ああ、実は今回の依頼はもう一つグループが受けていますので、その方達が来てから依頼内容の説明を「あーーーーっ!!!そこにいるのはまさか!!?」……」

 

と、ガナッシュの言葉を遮る大きな声が遺跡の前に響いた。

 

聞き覚え……と言うより、忘れるわけ無い声だ。

 

何と無くあの娘とはまた会う気がしてはいたが……

 

あまり振り返りたくは無いが、仕方なく降り返る。

 

「やっぱり!!お兄ちゃんだー!!」

 

予想を裏切らないそれの正体は、あのホテルで散々な目を合わされた元凶の、薄紫色の髪をした少女だった。

 

 

 

 

 

 





ネプテューヌのイツキに対する呼び方はそのうち変えます多分

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