幼稚園を卒園し、小学校に上がったころ、イジメを受けた。
特に理由のない、ただ見た目で弱いと判断されただけでイジメを受けた。
当時は確かに見た目は弱々しかったし、こんな時にどんな対応をすればよかったか分からなかったから、ただただ耐えた。
我慢をし続けた。
……ドウシテボクハイジメラレテイルンダロウ…
疑問と痛みは積もり続けた
朝日が丁度登り始め、雪の大地を輝かせるころ、ルウィー教会の庭では気合の入った声が響いていた。
「997!…998!…999!…1000!!」
庭で腹筋や腕立て伏せなどの基礎トレーニングを何セットかするのが、ここ最近のイツキの習慣だった。
「おーイツキ君か。今日もやってるね〜」
「あ、おはようございます!」
朝早くから勤務に着く教会職員に挨拶をしつつ、最後にストレッチをして筋肉をほぐし、部屋に戻ろうとした時だった。
「……ぶほっ!」
突如イツキの顔にタオルが被さった。
「こんな朝早くからトレーニングなんて、あなたは健康志向な優等生なの?」
イツキは被さったタオルをどけると、ブランが教会の窓から乗り出していた。
どうやらタオルを落としてくれたのもブランらしい。イツキはありがたくタオルを使い、トレーニングでかいた汗を丁寧に拭き取る。
「あ、そのタオルあげるわ。返さなくていいわよ」
「え?いいの?ありがとう」
「気にしないでいいわ。単純にあなたのかいた汗が染み込んでいるタオルを使いたく無いだけだから」
「いや、誰だって男の汗染み込んだタオルなんて使いたくないだろうけど……」
「いいえ。あなたの使ったタオル使いたくないのよ」
「そんなに僕が嫌いなの!?最初の方は純粋に心遣いに感謝していたのに!」
「冗談よ。朝から元気ね」
「ぬおぉぉぉぉ!!」
ブランの遊び道具にされたような気分で、トレーニング時のアドレナリンによる効果もあいまって地団駄を踏むイツキであった。
◇
ブランとフィナンシェと談笑をしながら朝食を食べ終えたイツキ。今日の彼はオフであるので、街の方に行き適当にブラブラして時間を過ごそうと思い、廊下を歩いていたのだが、
「イツキ?今日あなたは暇かしら?暇なら私にちょっと付き合なさい」
有無を言わさない問いを放ったブランに捕まり、暇だったのは事実なので付き合うことにしたイツキ
2人が向かった先は、イツキがさっき向かう予定だった教会の近くの街だった。
「あなたにはこの街の案内はあまり詳しくはしてないから、先に案内するわ。私の用事はそのあと」
イツキは確かにこの街のギルドなどの場所は教えてもらったが、詳しいことはあまり教えてもらってなかった。だからブランも丁度良い機会だからも、案内を受け持ったのだろう。
「じゃあお願いするよ」
「任せなさい。じゃ、まずはあの裏通りから----
「あの本屋さんは10冊以上まとめて買うと、一冊無料にしてくれるの」
「へー気前がいいなぁ」
「この骨董屋さんは何でもあるの。コンセプトは[
「それ骨董屋さんとして成り立つの?」
「あそこにある配管工事専門店は、昔までは赤い帽子と緑の帽子を被った兄弟がいたのだけれど、ここ最近は全く見なくなったわ」
「きっと配管工事以外の仕事がてんこ盛りなんだよ。お姫様奪還とか」
「あの占い屋さん、ラステイションから主張してルウィーに来たのだけど、店の前の看板には[占いの当たる確率20%]って書いてあるのに、占い師の口癖は『俺の占いは3割当たる!』なの」
「模擬刀の先制攻撃だべ!」
「……急に叫んでどうしたの?」
「言わなくちゃいけない気がした」
「とまあ、こんなものかしら」
「……何だか釈然としない点も多かったけど、この街のことはわかったよ」
丁度日が真上に上がったころに、ブランはイツキに大体の街案内をした。イツキ自身も有意義な時間を過ごすことが出来たと感じていた。
「それじゃ、お腹も減ったしお昼にしましょ。丁度いい機会だし、私のお気に入りのお店を紹介してあげる」
「へぇ〜。ルウィーの名物料理か何かなの?」
「それは着いてからのお楽しみ」
◇
「……やってなかったね。お店」
「……今日が定休日だって忘れてた」
僕たちは今は近くにあったファミレスに入っていた。ブランさんのお気に入りの店は定休日だったために入れなかったからだ。
余程気に入っていたお店を紹介出来ないのが残念なのか、ブランさんは何か落ち込んでいた。
「別に閉店したわけじゃないんだし、また今度紹介してよ」
「…そうね。また今度の機会に連れてってあげる」
とりあえず、ここでお昼食べましょうかと、メニューを眺める。
「じゃ、私はシーフードドリア」
「僕はパエリアにするよ。あとドリンクバーつけよっか」
注文も決まったのでボタンを押す。昼時で他の客も多かったので、ホールスタッフが来るのは少し遅かった
注文を終え、ドリンクバーに行こうとしたイツキをブランは引き止めた
「?どうしたの?」
「ドリンクバー往復係りのジャンケンするわよ」
つまり、どちらがパシリになるかのジャンケンをしようと言う提案、いや、命令だった。当然イツキは断れない
「ジャンケンってこういう時勝てないんだよな……」
「じゃ、行くわよ。最初はグー!」
「「ジャンケンポン!」」
イツキ←チョキ
ブラン←グー
「烏龍茶」
「……はい」
あぁやっぱりか……みたいな表情でドリンクバーへと向かうイツキ。勝ったブランはブランでご機嫌であった。
ドリンクバーエリアでグラスを取ると、先に氷を入れてから、ブランから頼まれていた烏龍茶をグラスに満たす。その後コーヒーメーカーにカップを置き、イツキはとりあえずエスプレッソを飲むことにする。
カプチーノのボタンの真上にあるボタンを押すと、コーヒーメーカーが動き出し始めた。
「おい、そこのお前」
と、その時イツキは後ろから話しかけられた。イツキは怪訝そうに後ろに振り返る
「?僕ですか?」
イツキの振り返った場所には髑髏のマスクを被り、全身をマントで隠している、声のトーンからして男なのであろう人物が立っていた。
その男は何も言わない。髑髏のマスクの赤い目を通しイツキをじっと見ていた。
「……あの、何か用ですか?」
視線に耐えきれなくなったイツキはもう一度問いを問うたが、目の前人物は何も答えない。
と、思ったころにやっと口を開けた目の前の人物
「……お前は……」
と、言葉にした所で、ピーピーピーという音が響いた。コーヒーメーカーがコーヒーを淹れ終えた合図の音だった。
イツキはコーヒーメーカーに向き直り、カップを専用の皿に乗せた後、もう一度髑髏マスクに向き直った。
「……あれ?」
そこにいたはずの髑髏マスクはいなくなっていた。
イツキは辺りを見回したがもうそれらしき人物は何処にもいなかった。
「……?」
彼が何処に消えたのかも疑問だが、彼はどうしてイツキに話しかけたのか、話しかけられた本人にもわからなかった。
「……あ、早くブランさんに届けないと」
疑問が残るがブランにキレられるのは避けたいイツキなので、今はそれを封殺し、グラスとカップを持ちテーブルに向かった。
案の定、運んでくるのが遅いとキレられた。
◇
ファミレスで昼食を食べ終わり、談笑(と言う名目のブランによるイツキの不必要に多いドリンクバー往復命令)もそこそこに店を出た2人
予告通り、イツキはブランの用事を手伝うためにブランの後をついていく。
2人が歩いて数十分、ようやく辿り着いたそこは何やら怪しさを漂わせる…否、怪しさしか漂わせない雰囲気の、妙に古ぼけて年季を感じさせる木製の店だった。
「ブランさん……この如何にも怪しいもの売ってますぜ的な店に用があるの?」
「そうよ」
即答したブランは迷いない足取りで店内に入っていた。その後を追うようにイツキも続く。
見た目通りと言うか、中も相当オンボロで蜘蛛の巣が張っていたり、所々木の漆喰が目立っていた。
「……いらっしゃい」
店の奥まで進むと、店主らしき人物がが居た。が、その姿はまるで乞食のようで、服は古ぼけたシーツを被っているだけだった。
その人にブランさんは店主を隔てたカウンターに肘を乗せ話しかけた。
「予約してたの、来てる?」
「……今日届いたばかり。知っていたのか?」
「勘よ」
「……そうか……受け取れ」
そう言って店主がカウンターの下から取り出したのは、何やら怪しい錠剤の入ったピルケース
……では無く、この店の雰囲気にはそぐわない見るからに新品の同人誌の山だった。
「は?」
「?どうしたのよイツキ……あ、そっか、この店の雰囲気にはまるで合わない物が出てきたとか思ったでしょ」
「……それは心外」
「いや、だって……」
表情から見破られた疑問は常連であるブランさんが説明してくれた。
「ここの店は、見た目こそ怪しさしか漂わない変な店だけど、実際はただの同人グッズ販売店よ。知る人ぞ知る、ね…」
「……風情があると言え、風情があると……」
「え、でもじゃあ何でブランさんはこんな怪しさMAXの店でわざわざ買っているの?」
この問いに関するブランの回答は以下の通り
「かっこいいからよ」
「……」ブイv
即答のブランと何故かVサインをしてる店主。このテンションにイツキは苦笑いするしか無かった……
「あ、一応他の物も見たいのだけど」
「……把握した」
と店主が言うや否や、彼がカウンターの置物に触れた途端、イツキ達から見て斜め左の壁が右に動き出した。どうも隠し扉だったらしい。
「……他の物も力作揃い」
「それは楽しみね」
2人は特に驚く様子も無くその隠し扉に入っていく。
「イツキ。貴方もその同人誌持ってこっち来て」
その言葉でショックから目覚めたイツキは、山の同人誌の隣に置いてあった紙袋に同人誌を入れて、急いでブラン達の入った扉をくぐった。
◇
扉をくぐるとそこは別世界でした。
……なんの比喩も無く別世界だったよ本当に…
僕の目の前に広がっているのは、奥が見えない位に広い空間に所狭しと並べられている同人誌やCD、同人ゲームだった。
しかもさっきまでいた場所とは雰囲気も一転し、壁も天井も床もしっかりとしたコンクリートで出来ていて、電気がキチンと通っているのか、蛍光灯の光が床によって反射されていた。
「それじゃ、私はちょっと新商品見てくるからここで待ってて」
戸惑う僕にお構い無く、自分の目的を達しに奥へと進んでいくブランさん。取り残された僕は、とりあえず荷物見張れる範囲内をウロウロしようと思ったのだが
「……」トントン
「?何ですか?」
突如肩を叩いて来たのは、いつの間に着替えたのかさっきまでの不潔なシーツでは無く、ちゃんとした服を着た店主だった。
「……オススメ」
そう言って何処からとも無く取り出して来たのは、同人誌だった。
……どう見てもR-18のエロ同人の
しかも内容はタイトルから察するに女の子が凌辱される系の物だ。この店主初見の客になんてものをオススメするんだ……
「……お気に召さないか?」
「あなたは僕がそんなアブノーマルな性癖の持ち主に見えるんですか!?」
「……む、そうか純愛系が好みか……」
「いやいやいや、そもそも何で僕が何か買う前提で話進んでいるんですか?」
「……安心しろ。カバーはキチンとつけてやる……」
「いや僕が気にしてるのは買って帰る時の他人の視線じゃなくて、何で買う前提で話進んでいるのかが疑問なんですよ」
「……この同人誌は最近知名度が上がっている同人作家の書いた、16歳の女子と27歳の男が援交する純愛同人だ」
「話聞いてよ!て言うか、援交の何処が純愛だ!しかもその男ロリコンじゃん!どう見ても不純異性交遊でしょ!」
「……我儘な客だ……」
だめだこの人、話まるで聞いてくれない。
「……仕方が無い。とっておき……」
と、思ったところで店主は懐からボタンを取り出し、おもむろに押した。
ガタッ!ウイーンガチャ!
といういや何処の近未来だよと思う音と共に床が回転し、そこに台に置かれた同人誌の山々が現れた
「……あの、コレは?」
僕だって男だし、性の事には興味はあるが今ここで性的表現の激しい物を買う気はしない。適当な事を言って買うのを断ろうとするが、次の店主の言葉に度肝を抜かれることになる。
「……全部、ブランの同人グッズ。同人誌は純愛から凌辱、百合まで多種多様。他にも添い寝CD、抱き枕カバーなどなど」
「ブフォ!」
そう、そこに並べられていたのは誰であろうブランさんの同人グッズだったのだ。
「……これ、ブランさんの許可得てるんですか…と言うか、ブランさん添い寝CDとか録音したんですか?」
「……録音は本人はしてない。そこはゲイム業界の科学技術を駆使して、適当な本人の声を録音し作り上げた……」
「……許可は?」
「……」
1番答えて欲しい質問には答えてくれなかった。
「……それで、買う?」
「……オススメは?」
「……[ネプテューヌ×ブラン]の代名詞とも言われるこの百合同人」
「……買いま「イツキィィィィィィ!!」うぉ!?」ゴスッ!
少しの気の迷いで買おうとしてしまった瞬間に背中に突如痛撃が走った。
「テメェはナニを買おうとしてんだコラ!!と言うか店主!テメェもナニ勝手にツレに、しかも私の同人グッズ売ろうとしてるんだ!私の同人グッズあるなんて初めて知ったぞ!!」
やっぱりと言うか許可を得ていなかったらしく、その同人グッズを買おうとした僕に大変ご立腹のブランさん。今は怒りはあの店主に向いているが、僕に向いたら何をされるか分かったものでは無い。
今現在怒りの矛先を向けられている店主はと言うと
「……顧客確保は商売の基本」
キレモードのブランさんに物怖じもせず、無表情を崩さなかった。
「てか、これどう考えてもプライバシー権の侵害だよな!?私はこんなの許可してねぇぞ!」
「……」ピラッ
そして無言で一枚の紙を取り出す店主。それはブランさんの同人グッズを作る際の許可書のようなものだった。1番下にあった名前、それは
[許可者 フィナンシェ]
の文字だった。
「フィィィィィィィナンシェェェェェェ!!」
「ちょ!ブランさん!お、落ち着いて!」
「これが落ち着いてられるかぁぁぁ!!」
と、言ってハンマーを装備して店主に突撃するブランさん。しかし店主は見た目には思えない機敏な動きをし、ブランさんの攻撃をヒョイヒョイ避けていた
「……」ヒョイヒョイ
「ちょこまかすんなぁぁぁぁぁ!」
怒りのブランさんの猛攻は続いた
〜10分後〜
「……」ヒョイヒョイヒョイ
「いい加減当たれぇぇぇ!!」ブンッブンッ!
〜30分後〜
「……」ヒョイ
「…クソ!……止まりやがれ…ゼェ…」ブンッ!
〜1時間後〜
「……」ドウジンシドクショチュウ
「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」
〜2時間後〜
「……そろそろ店じまい」
「」チーン
「ブランさん起きて!ブランさーーん!!」
この後ブランさんが立ち直るまでに時間を要した。
ちなみにブランさんが燃え尽きている間にちゃっかりグッズ買ったのは秘密だ。
◇
「……ハァ……無駄に疲れたわ……それもこれもイツキのせいよ」
「ひどい言いがかりだよ…」
あの店を出るころにはすっかり陽が暮れていて、教会への帰り道の雪原に来るころには、月が顔を出していた。
イツキはブランの同人誌の入った袋を片手に持ち、ブランは疲れた様子で雪道をザクザク進む。
何だか今日も波乱万丈で濃密な時間を過ごしたけど、ブランと楽しい時間を過ごせたと思うイツキ。
「ねぇ…」
先頭を行くブランは急に立ち止まりイツキに話しかけた。イツキはどうしたのか聞くと、ブランはイツキの手を取り教会のへの帰り道とは違う方向へズンズン進み始めた。
「ちょ、ブランさん?」
「あなたに見せたいものがあるの」
そう言ってブランは戸惑うイツキを無理矢理引っ張っていくのだった。
◇
イツキがブランに引っ張られて数分すると、小高い丘に辿り着いた。
「?ここは?」
「……あっち、見て」
イツキは言われるがままにブランの指差した方向を振り返る。
「……!」
そこからはさっきまでいた、今は街灯が街の建物を幻想的に彩り、闇夜の中で輝いている街を一望することが出来た。
「ここ、私のお気に入りの場所なの」
「……」
イツキはその光景に見惚れていた。ここから見える街の景色は、街灯1つ1つが星のように輝き、その星々を天上の月が照らし、更に輝きに磨きをかけているようだった。
「……綺麗だ…」
イツキのつぶやきを聞いたブランは、連れて来て良かったわと言うと、目を閉じ両手を後ろに回して語り始めた
「……私、女神様らしくない女神だわ。すぐに怒り出すし、趣味もそう……」
けどね、と区切りイツキに向き直るブラン
「…この街を、この国を、この大陸を、守っていきたい。その気持ちだけは負けない……いいえ、
「……ブランさん…」
「ずっとこの国を守っていくの女神としての責務だと思っていた……けど、私は女神として以前に、私自身がこの大切な人達が住む街や人々を守っていきたい。最近、やっとそう気づいたの」
「あの街に住んでいる人たちとくだらないやり取りをしたり、子供たちと遊んだり、そんなくだらないけど、大切な時間を過ごしていきたい」
「それが、私の幸せだから」
決意表明をしたブランは満足気な顔だった。
ブランのその言葉に、イツキは何か返さなくてはいけないと思い、口を開ける。
「……ブランさん」
「何?」
「……その……あの…」
イツキは口を何度も閉じたり開けたりする。答えなくてはならないのに、こう言う時にどんな言葉をかければ良いのか分からなくなってしまうのはイツキの悪い癖だった。
「……イツキ、無理して言葉を紡ごうとしなくてもいいわよ。これ、ちょっとした私の独り言だし」
「うっ……ごめんなさい」
フォローをしてくれたブランに、肝心なことを何も言えないことを申し訳なく思うイツキ。
「それじゃ、帰りましょう。フィナンシェも心配しているだろうしね」
ブランはそう言いながら、イツキに手を差し出して来た。
「え?」
「ほら、早く」
そこでイツキはブランが手を差し伸べてきた理由が分かった。手を繋ごう、と言う意味だ。
「あの、何で手を?」
突然のことに戸惑うイツキ。戸惑い故か無粋な質問をしてしまう。
ブランは少しキョトンとして、それから微笑んで口を開いた
「……そうね、それはーーー
その刹那
ブランの身体が切り裂かれた。
イツキの目の前に映る景色が、全てゆっくりと、古い映写機で通したようにスローモーションになった。
「……え?」
目の前で血だらけになって倒れていくブランを、イツキは呆然と見ているしかなかった。
「おや、随分と呆気ないものだな……女神ともあろう者が情けない……アーッハッハッハッハッ!」
時代遅れの笑い声が聞こえた方向、そこには悪趣味なメイクと服装をした、魔女がいた。