この苦しみ溢れる世界にて、「人外に生まれ変わってよかった」   作:庫磨鳥

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今回はアスクたちオンリーとなっています。楽しんで頂ければ幸いです。


第二十六話

 

 

 

15275:アスクヒドラ

やっぱり魂が日本人なのか、暑さとか分からなくても風呂に入ってるってだけで落ち着くんだよね〜。

 

15276:識別番号04

ここ数日、入浴するたびに謎の呪文を唱えていた奴がよく言う。

 

15277:アスクヒドラ

俺わかったんだ。抵抗するよりも全てを受け入れて悟っちゃえばいいんだって。エナちゃんとマヒルちゃんと共にお風呂に入るようになったのは世界の意思なんだって。

 

15278:識別番号02

指摘→悟りと呼ばれる状態を完全に理解はできていないがアスクが成せているようには見えない。

 

15279:アスクヒドラ

やっぱ煩悩つえーんだわ。

煩悩退散欲望退散やーれんそーらん無を湧けエロ抜け絵面がヤバイ。

 

15280:識別番号03

煩悩退散欲望退散やーれんそーらん無を湧けエロ抜け絵面がヤバイ。

 

15281:識別番号04

識別番号03。律儀に復唱しなくていい。

 

15282:識別番号03

残念です。

 

15283:アスクヒドラ

え? まさか気に入っちゃったの!?

 

15284:識別番号02

疑問⇒なぜアスクが驚く。

 

15285:識別番号03

ムツミちゃんが来ました。

 

15286:アスクヒドラ

いやぁ、正直残念がられるとは……。

って、ムツミちゃん来たのか。

 

15287:識別番号03

はい。またクッキーを持ってきてくれました。

キーちゃんもいつもの位置からこちらを見ています。

 

15288:アスクヒドラ

いつもの構図だねぇ。

今日こそ、一緒にお話しできればいいんだけどね。

 

15289::識別番号02

応答→それにはまず『ペガサス』のムツミが自身を見ている『ペガサス』のキーに気づかなければならない。

 

15290:識別番号04

やはり自身が教えるつもりはないのか? 識別番号03。

 

15291:識別番号03

それはできません。自分の存在をムツミちゃんには教えないとキーちゃんと約束しました。 

 

15292:アスクヒドラ

うむ。約束を守るのは大事。

……とはいえ様子を聞いている感じ、心変わりがあったというか、輪に入りたそうにしている気もするんだけどね……。

 

15293:識別番号04

多少強引でも発見させたほうがいいのではないか?

集合場所周辺の『プレデター』は識別番号03が掃討しているとはいえ、活動地帯である以上、安全のためにも離れた場所に居るべきではない。

 

15294:識別番号03

約束を破りたくはありません。

 

15295:識別番号04

何故そこまで約束に拘る?

 

15296:識別番号03

ムツミちゃんと約束は破らないと約束しました。

 

15297:アスクヒドラ

あー。ゼロサン。約束を守るのも確かに大事だけど、友達の笑顔を最優先、約束を守るかどうかケースバイケースで考えて欲しいかな。

 

15298:識別番号03

判断が難しいです

 

15299:アスクヒドラ

だよねぇ。

……とりあえずキーちゃんの事もしっかり見てあげてね。

 

15300:識別番号03

わかりました。注視します。

ダメです。ムツミちゃんに気づかれかけました。

 

15301:アスクヒドラ

うん、まぁ、頑張って。

 

15302:識別番号02

質問→ところで識別番号04は今どこにいる?

 

15303:識別番号04

自身が聞きたい。森林地帯を通って北東へと進んでいるが、景色に変化はなく高低差や木々による視界不良によって富士山も確認できないため現在位置は不明である。

 

15304:アスクヒドラ

線路があるところに戻れる?

 

15305:識別番号04

可能であるが再度『ペガサス』と接触する可能性が高いため、戻るつもりはない。

 

15306:アスクヒドラ

だよねぇ。当然といえば当然だけど線路が有れば電車走ってるし、『ペガサス』と鉢合うよね。

停車して『ペガサス』が降りてきたって聞いた時は、本当にひやっとしちゃった。

 

15307:識別番号04

同感だ。

 

15308:識別番号02

指摘→余計なトラブルを回避するためにも『ペガサス』や人が居そうな場所での移動は今後避けるべきである。

 

15309:識別番号04

理解している。

 

15310:識別番号02

注意→識別番号04は思いの外トラブル体質であるため強く気を付けるべきである。

 

15311:識別番号04

そのような事実はない。そもそも線路を辿って移動するという提案はアスクヒドラがしたものだ。

 

15312:アスクヒドラ

大変申し訳ありませんでした!

 

15313:識別番号02

溜息→当時そう指摘したら問題が発生した場合対処すると言って実行した識別番号04にも責任はある。

 

15314:識別番号04

トラブルが発生した場合、自身では解決が困難であり、大きく遅延が生じると挑発的な発言をした貴様に言われたくない。

 

15315:識別番号02

心外→事実を述べたまでだ。

指摘→移動を開始してからコレほどの時間を経っても富士山にすら辿り着けないのは識別番号04に問題があるからだ。

 

15316:識別番号04

愚弄するか!

 

15317:アスクヒドラ

こら! 喧嘩するなら罰として名前を面白くしちゃうからね!

 

15318:識別番号02

抗議→それはずるい。

 

15319:識別番号04

反則行為だ!

 

15320:アスクヒドラ

いつもの言い合いならともかく、今のはちょっと度が過ぎてたよ。

ゼロツーもゼロヨンも最近カリカリ気味だけど、どうしたの? お米ちゃんと食べてる?

 

15321:識別番号03

『プレデター』なら捕食しています。

 

15322:アスクヒドラ

そうね。

 

15323:識別番号03

それと、ムツミちゃんのクッキーを食べています。

 

15324:アスクヒドラ

うん、それは、うん……。

ムツミちゃんお手製クッキーに関してちょっと後で話し合おうか。

そんで? カルシウム足りない感じなのは、なんか理由があるの?

 

15325:識別番号02

謝罪⇒大規模侵攻が発生する頃には全員がアスクの下へと集まれると踏んでいたが大幅に予想が外れてしまい気が立っていたことを認める。

 

15326:識別番号04

──物事が上手く行かない事に苛立っていた。

 

15327:アスクヒドラ

……ほんと日を追うごとに人間っぽくなっていくよね。

なるほどね。頭の中で想像していた結果と、実際の成果のギャップの違いが凄くてイライラしちゃったんだな。

 

15328:識別番号02

肯定→多少なりとも予定に狂いが生じるのは想定していたがここまで上手くいかないのは想定外だった。

 

15329:識別番号04

ただ移動するだけの行為が、これほど困難なものとは想像できなかった。

 

15330:アスクヒドラ

実際に考えるとやるとだと全然違うよね、分かるよ。

 

15331:識別番号02

肯定→自身が捕食可能な『プレデター』を見つけることすらままならない。

苦悩→実際に何かをなそうとするのは難しいな。

 

15332:アスクヒドラ

そうだよー。だから俺のやらかしとか失敗とかうっかりとかも仕方ないんだよー。

 

15333:識別番号02

反論→それとこれとは別である。

 

15334:識別番号04

雑に自己弁護を捻じ込むな。

 

15335:アスクヒドラ

わぁ、君たち仲良しだね! 俺とも仲良くして欲しいなっ!

……まあ、冗談は置いといて、予定は未定、ゼロツーもゼロヨンもちゃんとできなくてもそんな気にすんなよ。

 

15336:識別番号02

応答→しかし人型に進化できないとしても大規模侵攻にすら間に合わない。

 

15337:アスクヒドラ

それこそ仕方ないよ。居場所を正確に伝えられない俺も悪いし、ゼロツーの言うように、動物のままで会うとトラブルとかあるかもだしさ。

 

15338:識別番号04

だが、自身らが集まれないのはアスクヒドラが大事に想う『ペガサス』たちの安全にも関わる事だ。

 

15339:アスクヒドラ

その辺は言いかた悪くなるかもだけどさ。ゼロツーたちが居てくれたら確かに心強いけど、じゃあ居なかったら、どうしようも無くなるってわけじゃないじゃん。

 

15340:アスクヒドラ

エナちゃんたちは強いよ。だからさ。焦らないで、自分の安全を第一に考えて行動して。みんな命懸けで動いてくれてるのは変わりないんだからさ。

 

15341:アスクヒドラ

……あー、悪いね。なんか変な感じになって。

というか、いつも通り相談とかは普通に頼るからさ、大規模侵攻一緒に戦って行こうな!

なのでなんか反応して欲しいんですけど!?

 

15342:識別番号04

──了解した。まずは富士山を目指して識別番号03と合流することを最優先とする。

 

15343:識別番号02

了解→引き続き進化を目指して活動を行う。

謝罪→識別番号04に対するここしばらくの発言は不適切であった。すまない。

 

15344:識別番号04

自身も意固地になって識別番号02の意見を蔑ろにしていた事を謝罪しよう。

 

15345:アスクヒドラ

うんうん。良かったよかった。

ゼロサンも、そう言うわけだから、無理はしないでね。

 

15346:識別番号03

わかりました。しかし進化が停滞しているため何かしらの対策が必要です。

 

15347:アスクヒドラ

そうなんだよねー。次の進化のための必要経験値(P細胞)が足りてないって結論になったけど、どれほど必要になってるか今でも分からないしね。

 

15348:識別番号02

肯定→また識別番号03の同型機は数を優先とした量産タイプ且つ『遺骸』を捕食しているため一体につき得られる『P細胞』が少ないことが理由に挙げられる。

 

15349:アスクヒドラ

次のレベルアップまで10000P細胞必要ってなったあたりで、1ずつしか得られてない状態ってね。かといって、でかいのを食べるとなると危険度が一気に跳ね上がるし難しいわ。

 

15350:識別番号03

自身の力では大型種の単独撃破は難しく、中型種は数的不利を覆すのは難しいです。

 

15351:アスクヒドラ

そんで小型種は『P細胞』がしょぼい。

……是非もないね!

 

15352:識別番号02

対策→以前決めたように識別番号04との合流を果たしてから本格的な行動を開始するべきである。

 

15353:アスクヒドラ

だね。あとの事はゼロヨンが森を抜けたらかな? 場所は分からなくなったけど、方角は合ってると思うから、確実に近づいていると思うし、とにかく富士山に近づこう。

 

15354:識別番号04

了解。

 

15355:識別番号03

わかりました。

 

15356:アスクヒドラ

さて、今日の予定が決まったところで、ゼロサンは今どんな感じ? ムツミちゃんとお喋りしている?

 

15357:識別番号03

いいえ。自身が大きくなったことで、いつもの量だと物足り無いように見えたと、新しいクッキーを作っている最中です。

 

15358:アスクヒドラ

……材料持ってきたのかな? いや、でもどうやって焼くんだろう? 即席カマドとか?

……ゼロサン。ムツミちゃんの調理風景の詳細プリーズ。

 

15359:識別番号03

まず綺麗そうと評価した土をスコップで掘って、水をかけていました。

 

15360:アスクヒドラ

待って待って待って待って待ってほんと待って、いっかいストップでっ!

 

15361:識別番号03

分かりました。

 

15362:アスクヒドラ

……いっかいキーちゃんを挟んでいい? いまどんな様子?

 

15363:識別番号03

視線を合わせると、首を後ろへと逸らされました。

 

15364:アスクヒドラ

そっかー、富士山周辺を拠点にする『ペガサス』独特の文化じゃなかったかー。

最初にゼロサンが食べた時に平気って聞いてきたのはこういう意味だったのかー。

 

15365:識別番号04

アスクヒドラ、話を聞く限り人間は土を喰わないのか?

 

15366:アスクヒドラ

……………………人による?

 

15367:識別番号02

把握⇒極めて希な行為である事はわかった。

 

15368:識別番号03

その土を丸めて平らにしたら、渇くまで木の板に置いて待つそうです。渇きすぎると形が保てないため、ちょうど良いところを見極めるのが職人とのことです。

 

15369:アスクヒドラ

ゼロサン。あのね、クッキーっていう料理は地域で違ったりするかもしれないけど、基本的には穀物を粉にしたものを水で捏ねて焼いてるのを言うんだ。

 

15370:識別番号03

では、ムツミちゃんが作っているものは正式にはなんと呼ぶ料理なのですか?

 

15371:アスクヒドラ

…………泥団子かな。

 

15372:識別番号03

なるほど、これが団子と呼ばれる料理でしたか。

 

15373:識別番号04

アスクヒドラ。後々の面倒ごとになる前に正直に話せ。

 

15374:アスクヒドラ

……ゼロサン。泥団子というのはあくまで団子っぽい形状に丸めたものだからそう呼ばれるようになったもので、料理じゃないんだ。俺たちなら食っても平気だけど、人が食べるものじゃない。

 

15375:識別番号03

では、この泥団子はどういったものでしょうか?

 

15376:アスクヒドラ

うーん。強いて言うなら真心かな……。

といっても、それは人に食べてって言ったら悪いことが起きるタイプのものなんだ。

だからさ、ムツミちゃんの手料理を食べるかどうかはゼロサン本人が決めて欲しい。

 

15377:識別番号03

よくわかりません。

 

15378:アスクヒドラ

だよねぇ……あー、どういうのが正解なんだろう。ごめん。いい言葉が浮かばないや。

 

15379:識別番号03

ですが、食べた時のムツミちゃんの表情を何度も見たい。食べないと勘違いされた時の顔を見たくないと思っています。

 

15380:アスクヒドラ

……そっか。

幸いって言ったらアレだけど味は分からないし、お腹も壊さないしさ。ゼロサンが思うようにしてほしい。あ、でも人が食べちゃダメなやつだから、ゼロサン以外に食べさせようとしたら全力で止めてあげてね。

 

15381:識別番号03

分かりました。

質問があります。泥団子がほどよく乾き切るのにどれほどの時間がかかりますか? ムツミちゃんたちが帰るまでには乾きますか?

 

15382:アスクヒドラ

んー。夏日だし晴れていたら早めに乾くんじゃないかな?

そっちの天気はどう?

 

15383:識別番号03

快晴です。

 

15384:アスクヒドラ

それなら大丈夫かな?

……でも、いやぁ。泥団子かー。

食べても平気なのは分かるけど、俺は無理かもしんない……どうしても、口に入れるものと認識できない。

 

15385:識別番号04

お願いされたら普通に食いそうだがな。チョロデター。

 

15386:アスクヒドラ

そりゃそうだよ。エナちゃんたちに食べてって上目遣いでお願いされてみ!? 100個でも、1000個でも食べちゃうに決まってるでしょ!

 

15387:識別番号04

さも当然の如く語るな。

──まて、西方向上空から轟音が聞こえてきた、確認する。

 

15388:アスクヒドラ

轟音?

 

15389:識別番号04

目視した。人間の飛行機と思われる二つの飛行物体が超音速にて、西方向から東方向へと通過。念のため追従する。

 

15390:アスクヒドラ

飛行機ふたつ……二機で飛んでるって事か……ゼロヨン、多分それ戦闘機だと思う。

 

15391:識別番号03

戦闘用に作られた飛行機ですね。

関係性があるか分かりませんが西方向からこちらに向かって音が近づいてきます。

 

15392:アスクヒドラ

ゼロサンも? 方向的に同じ戦闘機かな?

 

15393:識別番号03

視界が木々によって遮られているため目視による確認が行なえません。ムツミちゃんたちが音に脅えてしまっています。

 

15394:アスクヒドラ

ゼロサンは、ムツミちゃんたちに寄り添ってあげていて。

ゼロヨン。戦闘機見える?

 

15395:識別番号04

再度視認した。富士山周辺を旋回中。何かを確認している様子。

 

15396:アスクヒドラ

てことは、目的自体が富士山? なにかを見に来た?

 

15397:識別番号02

質問⇒富士山内にて上空から目視できるほどの巨大物体あるいは大型の『プレデター』に心当たりは無いか?

 

15398:識別番号04

こちらからは確認できない。

戦闘機二機、富士山を1周した後に離脱。

 

15399:識別番号03

音が遠ざかっていきます。

該当するかは分かりませんが、自身を生みだした大型種が存在します。

 

15400:アスクヒドラ

やっぱり、同じ戦闘機みたいだね。

え? 巨大な卵っぽいとは聞いていたけど、そんなにでかかったの? んー、ゼロサン、今の自分の全長と比較してどれくらい? 

 

15401:識別番号03

おおよそ九倍ほどです。

 

15402:アスクヒドラ

でっか! 少なくとも20メートル以上あるのか。あと多分、ゼロツーの言いたいこと分かったわ。

 

15403:識別番号02

予測⇒戦闘機の狙いは識別番号03など小型『ギアルス』を生産する大型種である可能性が高い。

 

15404:識別番号04

戻ってきた戦闘機が何かしらの物体を富士山に向かって発射。

視認できてはいないが状況からして発射物が富士山表面に着弾して爆発。

戦闘機は富士山を通過して、最初に来た方向へと戻る形で飛び去っていった。

 

15405:アスクヒドラ

やっぱり大型種狙いか!

ゼロサン無事!?

 

15406:識別番号03

無事ですが、ムツミちゃんたちが轟音と震動によって軽度のパニック状態になっています。キーちゃんが半泣きと思われる状態になりながら、こちらへと飛び出してきました。

 

15407:アスクヒドラ

よかった。いきなりで驚いたけど、まあそりゃ『プレデター』を産み出す『プレデター』だし、いつ自衛隊が攻撃してもおかしくないよね。

 

15408:識別番号04

肯定→放置すれば無限に『プレデター』を生み出す存在は人類にとってなるべく早く抹殺するべき存在である。

 

15409:識別番号03

落ち着き始めたキーちゃんが、自衛隊が富士山のプラント型に対して攻撃作戦を行なうって先生が言っていたことを思い出し、それかもしれないとのことです。

 

15410:アスクヒドラ

「富士山のプラント型」がゼロサンや超小型ギアルスを生み出した大型種の事として、一連のは自衛隊による作戦って事で確定っぽいね。

 

15411:識別番号04

同意する。主観であるが元より目標物を定めてあった動作に見えた。

 

15412:識別番号02

僥倖→プラント型の状況は不明であるが生産機能が停止および低下すれば識別番号03の負担が軽減される事になる。

 

15413:アスクヒドラ

倒しても倒しても増えまくっていたもんね……なんならゼロサンが倒していること自体はバレてはいないけど、数は減っているのは気付かれていたのか生産数も日が増すにつれて増えていったし。

 

15414:識別番号03

富士山周辺から振動音を確認。

 

15415:アスクヒドラ

マジか、もしかして二発目?

 

15416:識別番号04

戦闘機は確認できていない。音の発生源は違う要素だ。

視野を拡大して様子を窺う。

 

15417:識別番号03

音が近づいてきます。

 

15418:識別番号04

『ペガサス』を連れて音から離れろ識別番号03!

 

15419:アスクヒドラ

どうした!?

 

15420:識別番号04

富士山表面にて大規模な『プレデター』──訂正『ギアルス』の移動を確認! 何処にいるか分からんが下手をすれば巻き込まれるぞ!

 

15421:アスクヒドラ

え!? それって大規模侵攻が発生したってこと!?

 

15422:識別番号02

否定→おそらくプラント型が攻撃された事により子機である小型ギアルスたちが反応した或いは親機からの命令による大移動である可能性が高い。

 

15423:アスクヒドラ

マジかっ!? ゼロサン! とりあえずムツミちゃんたちの安全最優先で!

 

15424:識別番号03

すでにムツミちゃんを背中に乗せて、キーちゃんを口に咥えて音とは反対方向へと移動しています。

 

15425:アスクヒドラ

キーちゃんも乗せてあげて!?

 

15426:識別番号03

そうしたいのですが、時間がありません。

 

15427:アスクヒドラ

時間?

 

15428:識別番号03

同型機である『ギアルス』が三方向から総合計数百体の規模で接近中。その中の何体かにムツミちゃんたちを捕捉されました、追いつかれます。交戦開始。

 

15429:アスクヒドラ

とにかく逃げろっ!

ゼロヨン、今どこだ!?

 

15430:識別番号04

富士山周辺の森には到着しているが何処にいる識別番号03!

 

15431:識別番号03

不明です。『ギアルス』を回避するために移動しています。

 

15432:アスクヒドラ

待ってろ! 俺も今から富士山まで行くから!

 

15433:識別番号02

制止→アスクは学園から出るな。

 

15434:アスクヒドラ

だけどこのままだとゼロサンもムツミちゃんたちも危ないだろっ!

 

15435:識別番号02

理由→この時期に下手に動けばアルテミス女学園の『ペガサス』に負担が掛かるうえに余計なトラブルを生み出しかねない。

理由→もしアスクが富士山へと移動したところで間に合う保証は無い。

質問→『ペガサス』のエナたちの精神により強い負荷を与えたいのか。

 

15436:アスクヒドラ

っ! それは卑怯すぎるだろゼロツー!

 

15437:識別番号02

提案→識別番号04は『ペガサス』のムツミたちの反応を参考に合流することを推奨する。

質問→数多くの『ギアルス』が動いている状況で『ペガサス』の反応を見分けることは可能か。

 

15438:識別番号04

可能だ。ゆえに識別番号02の提案を受け入れる。しかしながら現時点で、まだ索敵範囲内に『ペガサス』と思わしき人物は見当たらない。

 

15439:アスクヒドラ

というかこれって一時的なものなの!? このまま都市とかに雪崩込まない!?

 

15440:識別番号02

不明→現時点でどういった意図での大移動であるかは正確に把握できていないため可能性はゼロではない。

質問→動いているのは識別番号03の同型機だけか。

 

15441:識別番号03

はい。そのようです。

 

15442:識別番号04

識別番号03の同型機とされる小型ギアルスの群れは森林地帯よりも外に抜け出す様子はなく、山の方、推測であるが攻撃された箇所へと集まっているように見える。

 

15443:アスクヒドラ

ゼロサン! 定期的に書き込みして現状を報告してくれ!

 

15444:識別番号02

予想→此度(こたび)の『ギアルス』の動きはプラント型による防御態勢移行における移動であり識別番号03は偶々移動ルート内に存在しており巻き込まれてしまった。

 

15445:識別番号03

無事です、現在追われる形でプラント型が居る地点へと移動しています。キーちゃんを背中に乗せました。苦しかったし目が回ったと怒られました。

 

15446:識別番号04

プラント型の位置は戦闘機の攻撃によっておおよそは把握できている。自身もそちらに向かう。

 

15447:識別番号03

進行方向に別の群れ、このままでは囲まれてしまうため強行突破します。ムツミちゃんが〈魔眼〉による支援を行なってくれて無事に突破しました。多用しないでほしいです。

 

15448:アスクヒドラ

ゼロヨン間に合う!?

 

15449:識別番号04

犬狼の神速を見せてやろう。

 

15450:識別番号03

キーちゃんが通信機で救助を求めましたが通信圏の外へと出てしまっているらしく繋がりません。

 

15451:アスクヒドラ

それこの間の独立種の時に言って失敗したやつ!

 

15452:識別番号04

言わせたのは貴様だがな!

 

15453:識別番号03

レーダーを埋め尽くすほどの同型機の群れが草木や岩などを切り刻みながら迫ってきてます。速度は僅かにこちらの方が上なため距離には余裕があります。

 

15454:アスクヒドラ

ミキサーの波かよ! 絶対に追いつかれるなよゼロサン!

 

15455:識別番号04

富士山にて『ギアルス』の群れに追いついた。最後尾に居る。

 

15456:識別番号02

質問→突破できるか

 

15457:識別番号04

無理だ。登りで迂回する。

 

15458:識別番号03

攻撃してくる個体の数が多くなっており、また足場が悪く障害物も多いため群れとの距離が縮まっています。

 

15459:アスクヒドラ

もうそこまでゼロヨンがきてるからなんとか踏ん張って!!

というか振り切れたら追って来なくなるのこれ!?

 

15460:識別番号02

不明→しかし、『ペガサス』たちに狙いを定めた個体を除けば大半は防衛陣形を構築するために移動しているだけであると考えられる。

結論→プラント型を通過して離脱してしまえば群れは追って来なくなる可能性は高い。

 

15461:識別番号03

進行方向に再度同型機の群れが現われました。強引に突破します。

 

15462:アスクヒドラ

うぇ!? またかよ!

 

15463:識別番号03

あ──。

 

15464:アスクヒドラ

ゼロサン?

 

15465:識別番号03

────駄目ですッッッ!!!

 

15466:識別番号04

──間に合った。こうして出会うのは初めてだな識別番号03。

 

15467:アスクヒドラ

どうなっているの!? なにがおきているの!? わっつあっとぷりーず!?

 

15468:識別番号04

識別番号03の背に乗っていた『ペガサス』の一人が落下。『ギアルス』の群れに巻き込まれる前に救出した。

こっちへ来い。『ギアルス』の群れの進行外ルートを発見している、こちらを辿ってプラント型へと移動するぞ。呆然としている暇があるなら動け。

 

15469:識別番号03

……分かりました。

 

15470:アスクヒドラ

ゼロヨン! 合流できたのか! というか間一髪だったのか!?

 

15471:識別番号02

要請→現状の詳細。

 

15472:識別番号04

肯定する。包囲網を離脱に成功する直前の識別番号03と合流、そのまま併走しながらの移動を開始した。

 

15473:アスクヒドラ

よかった! ほんとに良かった!! 

 

15474:識別番号04

どうやら識別番号03は二人を乗せていたため速度低下していたらしく、自身がキーを請け負えば余裕を持って移動できるだろう。パニックを起こしていたキーとムツミが話し合って落ち着く、どうやら自身は識別番号03のお友達という認識になった模様。

 

15475:識別番号03

……質問があります識別番号04。自身はムツミちゃんを乗せても『ギアルス』に追いつかれない速度を維持出来ますか?

 

15476:識別番号04

ムツミの体重はキーと比較してどれくらいある?

 

15477:識別番号03

ムツミちゃんのほうが軽いです。

 

15478:識別番号04

それならば肯定する。ムツミをこちらに乗せるつもりか?

 

15479:識別番号03

はい、ムツミちゃんとキーちゃんをよろしくお願いします。

ムツミちゃんの制服を噛んで持ち上げますので近づいてきてください。

 

15480:識別番号04

了解した。

 

15481:アスクヒドラ

そんな挟むタイプのショベルカーみたいに……

 

15482:識別番号03

キーちゃんが手伝ってくれた事もあってスムーズに、識別番号04の背中に移すことに成功しました。

 

15483:アスクヒドラ

まあ、ちゃんとできたみたいで良かったよ。

 

15484:識別番号02

質問→『ペガサス』を識別番号04に託して何をするつもりだ識別番号03。

 

15485:識別番号03

自身が『ギアルス』に攻撃を加えて引き付けます。

 

15486:アスクヒドラ

囮になるってこと?

 

15487:識別番号03

はい。ムツミちゃんたちをよろしくお願いします。

 

15488:識別番号04

まて、静止しろ識別番号03!

 

15489:アスクヒドラ

さすがに危険すぎるよ。ゼロヨンも合流したしもうちょっと……え!? もうやっちゃった!?

 

15490:識別番号04

止める暇もなく識別番号03は明確に『ペガサス』を追ってきた同型機の『ギアルス』と交戦を開始。数体ほど仕留めた後に、別方向へと走り出した。

 

15491:アスクヒドラ

ゼロサン! あまり無茶すんな!

 

15492:識別番号02

予想→プラント型が近くにあるため敵対意思を確認出来た識別番号03の排除を最優先にした。

 

15493:識別番号04

ムツミが識別番号03を追おうとして危険行為をしかけたが、キーが制止。無事に『ギアルス』の移動ルートから完全に離れることに成功。

こちらを追ってきた『ギアルス』数体を一掃し、一時的な安全を手に入れた。

 

15494:識別番号02

要請→識別番号03の現状の詳細。

 

15495:識別番号04

『ギアルス』は識別番号03を敵対存在と認識したのか、一部の群れが進路を変更して識別番号03へと向かっている。おかげで包囲網に隙間ができて、余裕で突破できた。

 

15496:アスクヒドラ

ゼロヨン、ゼロサンのこと見える!?

 

15497:識別番号04

視認できない。方向的にプラントへと移動したと思われる。ムツミが識別番号03を探すために移動を開始しようとしており、それをキーが制止している。

自身も識別番号03の安否が気になるため移動したいが、どうすればいい?

 

15498:アスクヒドラ

……危なかったらそのまま動かないようにして、大丈夫そうなら俺もゼロツーもゼロサンが気になるから見に行ってほしい。

 

15499:識別番号04

了解した。自身も識別番号03の現状が気になるため移動を開始する。

 

15500:識別番号03

この感情がどう呼ばれるものなのかは分かりません。

 

15501:アスクヒドラ

あ、ゼロサン! 無事? 怪我してない? ……ゼロサン?

 

15502:識別番号03

ですが。

 

15503:アスクヒドラ

あの……ゼロサン? ゼロサンさん?

 

15504:識別番号04

頭上から見下ろす形で識別番号03及びプラント型を視認。

識別番号03は周辺の『ギアルス』を蹴散らしながらプラント型に向かって走っている。

 

15505:識別番号02

質問→プラント型の様子。

 

15506:識別番号04

半分ほど溶解しており瀕死状態であり生産機能は停止しているがまだ生存している様子だ。このままでは再生して問題無く稼働するようになるだろう。

 

15507:識別番号03

──友達が死ぬようなことはあってはならない!

 

15508:識別番号02

緊急→なにをする気だ識別番号03!

 

15509:識別番号03

プラント型を捕食します。

 

15510:識別番号04

静止しろ、冷静になれ、飛ぶな溶けている箇所から中へと入ろうとするな待て待て待て待て待て待て待て!

 

15511:アスクヒドラ

わー!? ばかばかばかばかばかばか!!

 

15512:識別番号02

停止→冷静→制止意味→不明→なにしてる→なにしてる?

 

15513:識別番号03

プラント型を捕食しています。

 

15514:アスクヒドラ

捕食してますじゃないって!? いまどんな感じなの!? ゆで卵を食べ進める蟻みたいな感じ!?

 

15515:識別番号02

指摘→その例えは自身らに伝わらない。

 

15516:識別番号04

──プラント型に集っていた周辺の『ギアルス』たちに変化あり、移動途中だった『ギアルス』たちは停止し、液体化がはじまったプラント型に集まっていた群れも含めてまばらに下山していく。

 

15517:アスクヒドラ

えっとえっと……と、とりあえずゼロサンの事は置いて。

プラント型が死んだから集まれって言う命令が無くなったのかな?

 

15518:識別番号02

肯定→プラント型は生産した子機たちの司令塔も担っていたのだろう。

余談→いずれ数が揃えば一斉に人間の都市に向かわせていたかもしれない。

 

15519:アスクヒドラ

ミキサーの波が都市にね……想像するのも嫌だな……。

……はい、話戻して! ゼロサンは無事!? 返事して!?

 

15520:識別番号04

識別番号03の存在を視認できない──待て、溶解したプラント型から物体が出現。

 

15521:識別番号02

疑問→それは識別番号03ではないのか?

 

15522:識別番号04

不明、形は楕円状となっており、プラント型に似ている。サイズは自身の全長よりも大きい。

 

15523:アスクヒドラ

プラント型と似てるってことは卵っぽいのか……卵……卵?

……ゼロサン……聞こえてるなら、ちょっと揺れてみてくれん?

 

15524:識別番号04

──物体が揺れた。

 

15525:アスクヒドラ

…………まーじかー。

 

15526:アスクヒドラ

……これが本当の卵に孵るってね!

 

15527:識別番号02

判定→くそつまらん。

 

15528:アスクヒドラ

正直、俺も思った。






『ギアルス・ラプトル』
プラント型によって精製される小型ギアルス。全身が鋭い刃物で構成されており、移動するだけで物体を切断する。一定の数となったら人間の居住区を目指して移動する。数万単位にて通過するだけで全てを切り刻んでいく様子は、まさにミキサーの波と呼ばれるものだろう。なお小型故に建物の中にへと簡単に入り込める。

識別番号03は玉子に戻ったというよりも、(さなぎ)になった状態です。

~自衛隊の現状~
空:殆どのリソースつぎ込んで、なんとか保っている。たまに出てくる飛行型プレデターを相手取っている。
海:跡形も無く壊滅。
陸:戦える装備が無くて実質、国家公認のレンタル農奴。

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