新人提督が弥生とケッコンカッコカリしたりするまでの話   作:水代

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久々に投稿。夏休み入ってから就職活動忙しかったし、仕方ないよね(言い訳


十三話 新人提督が演習とかしたりする話

 

『そうか…………製油所地帯沿岸海域を突破したか』

「ええ、卯月と言う貴重な戦力をいただいたこと、本当に感謝しますよ」

『なに、アレが自分から言い出したことだ。私に礼を言うことではないさ』

 謙遜、と言うわけではないのだろう。恐らく上官殿は本気でそう思っている。

「重巡洋艦も加わり、ようやく艦隊としての体裁が整ったと言ったところですね」

『次はいよいよ南西諸島防衛線か…………分かっていると思うが』

「ここは新人提督の登竜門の一つ、分かっています」

 南西諸島防衛線、それは製油所地帯沿岸と並ぶ、新人提督をふるいにかける海域だ。

 新人提督の約二割が製油所地帯沿岸で、そして残った八割のさらに半数以上が次の海域、南西諸島防衛線にて脱落すると言われている。

「分かっていますよ………………空母、ですよね」

 製油所地帯沿岸が初めて敵に戦艦の出現し始める海域ならば。

 西南諸島防衛線は初めて敵に空母が混じる海域と言える。

 なまじそれまで水雷戦隊で押し続けることができていただけに、空母の出現により、途端に敗北を重ね、最悪大切な艦を撃沈され、心を折る提督は後を絶えない。

 自身も知識としては知っているが、自身の艦隊は実際に空母と対峙した経験が無い。その経験の無さがどこまでマイナス要素となるか、経験の無さをどこまでカバーできるか。それにかかっていると言っても良い。

『艦戦の用意は出来ているのかい?』

「任務にあった開発で艦載機レシピを三度ほど回したら零式艦戦が出たのでそれを使おうかと」

 と言っても、未改造の瑞鳳に載せれる数程度で制空権を確保できるとは思っていない。

 あくまで敵空母からの被害を減らすためだけのもの、と割り切ったほうがいいだろう。

 本当に制空権を確保したいのなら、正規空母を使うことを考える必要があるが、今の自身の鎮守府でそれは難しい。出来ない目標を立てても仕方ないのだ、出来る範囲で出来ることをするしかない。

「あとは艦戦の開発途中に出来た単装機銃があるので、それらを駆逐艦に載せようかと」

『対空力の強化か…………まあ南西諸島防衛線ならそれでもまだ良いけれど、もっと上に行くなら10cm連装高角砲の用意くらいはしたほうが良い』

 10cm連装高角砲…………確かいくつかの駆逐艦を改造した時に所持している装備だったか。開発でも作れたはずの、並の機銃より遥かに高い対空能力を持つ主砲だ。

「まあそれは追々、と言うことで」

『そうだな、まあ今すぐ必要になる、と言うわけでも無い。少なくとも西南諸島防衛線を突破できれば、もう一人前の提督として認められる、そうなれば出撃時期がよほど空かない限り、大本営に急かされることも無くなる。ゆっくりやればいいさ』

「そうですね…………次の一戦が勝負所なのは理解しています。なので、上官殿にお願いがあるのですが」

 そう言うと、電話越しに上官殿がほう、と意外そうに呟いた。

『ほう…………キミが私にお願い、とは珍しい』

 まあ確かに、無いわけではないが、自分はあまりこの上官殿に頼み事をしたことが無い。いや、そもそも上官にそう気軽に頼み事なんて出来るはずも無いが、それでも回数は非常に少ない。

「まあ上官殿が何かと気を利かしてくれる方でしたからね…………そもそも頼み事をするほど困った状況になること自体が少なかったですし」

『ふふ…………キミにそう持ち上げられると何ともくすぐったい気分になるな。まあいい、それで? 頼み事とはなんだい? 他ならぬキミの頼みだ、出来る限り協力しようじゃないか』

 

「まあそう難しいことではないです、お願いと言うのは―――――――――――

 

 

 * * *

 

 

「今日の出撃は中止だ」

 朝、部屋へと来た弥生が今日の予定を尋ね、その答えがそれだった。

「中止、ですか? えっと…………どうして、でしょう?」

「ああ、昨日上官殿にお願いしてな、演習を組んでもらうことにした」

「…………演習?」

 弥生が首を傾げ呟く一言に一つ頷く。そして机の上に開いた一冊のファイルを取り出す。

 ファイルの中身は次の戦闘区域である西南諸島防衛線の詳細だ。海域の地図、潮流、敵の分布や配置、艦種などのデータがある。

 そして、差し出されたファイルを眺めていた弥生の顔がふいに強張る。

「…………空母」

「ああ、気づいたか。次の海域からは敵の編成に空母が混じる。うちにも一応瑞鳳と言う空母がいるが、まだ練度も低い上に艦載機もほぼ初期装備のままだ。このまま戦えば苦戦は必至だろう…………だから演習で空母との戦いかたを覚えてもらう」

 陣形、と言うものがある。簡単に言えば、艦隊の並び方だ。

 陣形は全部で五つあり、それぞれ単縦陣、複縦陣、輪形陣、梯形陣、単横陣と別れている。

 

 それぞれの陣形には特徴があり、単縦陣は艦隊を一直線縦に並べた最も基本的な陣形だ。

 前方一直線に向けての集中砲火なので、砲撃の密度が高く、砲雷撃戦での火力を最も高めてくれる他、艦隊運動もしやすく、砲雷撃戦に適している。

 

 輪形陣は旗艦を中心とし、その周囲を僚艦が囲むような陣形であり、艦隊が密集した性質上、最も対空に適した陣形と言える。

 反面その並びの仕様上、艦隊運動し辛く、砲雷撃戦などには向かない陣形でもある。

 

 複縦陣は単縦陣と輪形陣のメリットをあわせたような陣形で、縦に二列で並ぶ陣形である。

 砲雷撃戦の火力と命中、そして対空能力の両方を兼ね備えるが、単縦陣ほど砲雷撃戦には向かず、輪形陣ほどの対空は無いと言うどっちつかずとも言える、が使い勝手は良い陣形だ。 

 

 単横陣は、砲雷撃戦にも向かず、対空能力も無いに等しいが、対潜水艦に特化した陣形だ。

 通常、潜水艦と言うのは対潜装備と言う対潜水艦専用の装備が無いとダメージを与えるのは非常に難しいのだが、この陣形を使えば一撃で倒すのは難しいまでも雷撃能力を奪う程度までのダメージを期待できる、と言う程度には対潜能力が高い。

 

 最後に梯形陣だが、基本的には観艦式などの艦隊を魅せるための陣形であり、実戦には向かない陣形である。

 と言うか、現状で、この陣形を使った戦法が開発されておらず、あまり使う提督もいないため、現状ではほぼ廃れている。

 

「現状うちの艦隊は単縦陣しか使ってこなかったからな…………そろそろ他の陣形での動きを覚えてもいいだろう」

 使ってこなかった、と言うより他を使う必要が無かった、と言ったほうが正しい。

 つまるところ、第一艦隊は単縦陣しか使ったことがない以上、言ったからと言って実戦で突然新しい陣形で行動できるか、と言われると首を傾げるしかない。

「だから演習で空母相手の戦い方と陣形を使っての動きを訓練する」

 自身の言葉にようやく納得がいったのか、弥生がなるほど、と頷く。

「それにしても…………昨日の今日、って、随分……急、ですね……」

「あー」

 実を言うと、自分的にはもっと後、さすがに一ヶ月は無いだろうが、一週間か二週間は待たされることを覚悟でお願いしたのだが…………。

 

『何? 演習? よし、いいぞ、明日やるか、そっちの準備はもう出来てるよな? なら明日そちらに行くから待ってろ』

 

 と一方的に告げられ電話が切られたのだ。どうにもあの上官殿は頼られるのが好きなのか頼み事をして断られた試しが無い。まあその頼み事自体数えるほどしかしたことが無いのだが。

「まあ、向こうもちょど良かったらしいぞ」

 これは本当のこと。向こうも向こうでどこかと演習でもしようかと思っていたらしく、こちらの申し出は渡りに船だったらしい。

「つうわけでだ、今日の午後から演習を行うので、弥生は他のやつに連絡してヒトヨンマルマルには出撃準備整えておいてくれ、そのために午前中は空けておく」

「了解、です」

 こくん、と弥生が頷き部屋を出て行く。さて、それでは自身も午後の演習のための準備でするか、そう考え、まずは上官殿と最後の打ち合わせでもするために机の上の電話を取った。

 

 

 * * *

 

 

 演習、と言うのは、実弾を使わない艦隊同士の戦闘を指す。

 実弾を使わないので撃沈の心配も無い。燃料と弾薬は消費するが、実際にダメージを受けるわけでもないのでドッグに入る必要も無い。とまあ基本的にメリットの多い訓練だ。

 ただ基本的に相手が必要となるので、他の鎮守府との都合が付かなければ出来ないと言う欠点もある。

 上官殿のところほどの数の艦隊がいれば、一つの鎮守府内で組を分けて演習を行うこともできるが、今の自身には到底難しい話だ。

 最初にも言ったが、実弾を使わないので、ダメージの判定はかなり曖昧になる。

 基本的には撃沈判定を出された艦は戦線離脱、それ以外は続行、と言う非常にシンプルな戦いになる。

 昔はマーカーなどを使って、判定を行っていたが、一張羅の制服をマーカーで汚された艦娘からの反発が酷かったらしいので現在はこんな形になっている。

 撃沈判定は各艦娘に付いている妖精が勝手に行ってくれるので提督の自身は岸で見ているだけで良い。

 

 自身から見て左側に居並ぶのは、弥生、イムヤ、瑞鳳、卯月、鈴谷の五名。

 そして右側に並ぶのはたったの一人。

 

「本当に良いんですか? 一人で」

 そう尋ねると彼女はええ、と頷く。

「こちらとしては、彼女の性能確認、と言ったところなので、むしろ他の艦がいては分かりにくくなります」

「まあこちらも低レベル艦ばかり、改造艦などそちらから来た卯月一人なので余り言えませんけどね」

「問題はありません、彼女の装備もそちらに合わせてありますから、これはこちらの提督からの配慮です」

 そう聞き、少し安堵する。さすがに装備のランクが違い過ぎて勝負にならない、と言うのは困るからだ。

「艦戦、艦爆、艦攻の一番レベルの低いのを一つずつ、それから最近開発されたばかりの二式艦上偵察機を一つ、まああまり一方的になっても訓練になりませんから」

 それは裏返せば、普通にやれば一方的になってしまう、と言うことだろう。

 まあ言い返せはしない。何せ、たった一人とは言え演習相手が悪すぎる。

「飛龍改二…………確か上官殿の第一艦隊の所属だったと記憶していますが?」

 練度(レベル)も確か九十を超えていたはずだ。そんな彼女が良くこうして来てくれたことだ、と最初に出会った時は思わず硬直してしまった。

 そして何より。

「あなたが来るとは本当に意外でしたよ、不知火」

 第一艦隊旗艦にして、上官殿の秘書官、不知火改。駆逐艦ながらにして、昼戦で敵戦艦を容赦なく叩き潰すあの鎮守府でも最強の一人だ。

「提督は今、少々忙しいので、不知火が代わりに着ました、何か問題でも?」

 ふるふると首を振る。まあこちらとしては別に問題無い。稀に、ではあるが提督の代わりに秘書官が来る、と言った例も無くは無いし。

 と、そうこう言っている互いに所定の位置に付いたらしい。

「ではそろそろ?」

「ええ、始めましょう」

 

 そうして、この鎮守府初めての演習が始まった。

 

 

 * * *

 

 

 見上げれば、空を覆う艦載機の群れ。相手がの放った艦載機であるとすぐに分かる。

「迎撃!」

 弥生がそう言い放ち、事前に装備していた機銃を突き出し撃つ。

 卯月もそれに習うようにして、同じく機銃で迎撃する。

 その間に瑞鳳が次々と艦載機を発艦させ、空へと艦載機が飛んでいく。

 瑞鳳の装備している艦載機は艦爆一つと艦戦二つ。

 だがそれでも。

「嘘っ! 落とされた!」

 数が違い過ぎる。装備数の上では瑞鳳のほうが上で、実際の艦載機の数は向こうのほうが遥かに多い。

 艦載機と言うのは全て追加装備に分類される。艦載機の無い空母はただの置物と言っても過言ではない。

 そして空母に限らず、偵察機を含めた艦載機を載せることの出来る艦には全て艦載機数と言うのが装備順ごとに割り振られている。

 例えば瑞鳳は未改造の現状では、三つ分の搭載予備領域(スロット)があるが、艦載機は1スロット十八機、2スロット九機、3スロット三機と割り振られている。

 そして1,3スロットに艦戦、2スロットに艦爆を積んでる現状、艦戦の数は合計二十一機、艦爆の数は九機となり、艦載機合計数三十機となる。正直、軽空母と言うことを除いても、かなり少ないと言えるが、未改造艦故に仕方がない。改造すればスロット数の四つに増えるので、さらに艦載機も載せれるだろう。

 そして問題の相手、飛龍は正規空母、同じ正規空母でも加賀ほどでは無いにしろ、それでもその艦載機数は圧倒的だ。

 飛龍改二の艦載機数は1スロット十八機、2スロット三十六機、3スロット二十二機、4スロット三機の合計七十九機、瑞鳳の倍以上の数である上、1スロットに艦爆、2スロットに艦戦、3スロットに艦攻と装備している。

 

 ここで問題になるのが各艦載機の種類だろう。

 

 艦攻とは艦上攻撃機、魚雷を積んだ艦載機である。

 一撃の威力が非常に高いが、当てるために水面ギリギリを飛ぶ性質上、非常に打ち落とされやすい。

 艦爆とは艦上爆撃機、爆弾を積んだ艦載機だ

 遥か上空から急降下しながら爆弾を落とすため非常に命中が大雑把で、威力自体は直撃でもしなければそれほど高くない。だが基本的に上空を飛ぶため、機銃などで撃ち落されにくい性質を持つ。

 そして艦戦とは艦上戦闘機、即ち艦載機を撃ち落すための艦載機である。

 航空戦において最も重要な分類に位置する艦載機であり、艦戦の数と能力の如何によって制空権が左右されると言っても決して過言では無い。

 

 先ほどの話に戻すが、瑞鳳の放った艦戦は二十一機、逆に飛龍の放った艦戦は三十六機。

 つまり1.5倍以上の数に差があるのだ。制空権は奪われたに等しい。

 そして制空権の無い空を飛ぶ艦載機などただの的である。

 次々と落とされていくこちら側の艦載機に瑞鳳が目を見開く。

 そしてどんどんと数を増していく敵の艦載機を捌ききれず、段々と被弾を増やしていく艦隊。

 

 戦局の優勢はどちらか、明らかであった。

 

 

 * * *

 

 

「ふむ…………やっぱりこうなったか」

「数が違い過ぎるのもありますが、何よりも航空戦に不慣れですね」

 やはり見ただけで分かるのか不知火の言葉に、目を瞑る。

「どうしますか? 少し手伝いますか?」

「…………そこまでしてもらっていいものか悩むな」

「今更遠慮するような仲でもないでしょうに、少しくらい不知火にも頼りなさい」

 数秒思考する。ジィと見つめる不知火の視線に、やがて折れる。

「じゃあ…………頼んだ、不知火」

「ふふ…………任せなさい」

 

 

 * * *

 

 

「ハァ…………ハァ…………ハァ…………」

 荒い息を吐く。都合三度もの演習。五対一と言う状況で、それでも一方的に追い込まれている現状に歯を食い縛る。

 どうすれば、そんな疑問がぐるぐると頭の中を駆け巡る。

 見やれば仲間たちも同じような状況だ。無事なのは、正規空母からの攻撃を全く受けないイムヤくらいだ。辛うじて練度も高く場慣れしている卯月は呼吸を整えているが、それでもうっすら額に汗が滲んでいる。

 どうすれば勝てる? ぐるぐると同じ疑問だけが頭の中を巡る。

 答えが出ない、明らかな経験不足。旗艦として何も指示が出せない、どうしていいのかが分からない。

 思考が迷走し、焦りすら感じてきた、その時。

「全艦注目」

 凛、と張り詰めた声に自然と顔をそちらへと向かった。

 そこに艤装を付け、先ほどまで司令官の隣にいた艦娘が立っていた。

 名を、確か…………。

「不知火です」

 そう、不知火だ。陽炎型二番艦。つまり弥生と同じ駆逐艦。

 その彼女が、一体何故ここに?

 そんな疑問を浮かべた直後。

「突然ですが次の一戦、不知火が貴方たちの指揮を執ります」

 そんなことを言った。

 




【戦果】

『第一艦隊』

旗艦  弥生   Lv5    どうすれば、いい? どう、すれば……
二番艦 伊168 Lv4    不味いわね、みんなかなり参ってるわ。
三番艦 瑞鳳   Lv4 MVP うぅー、私の艦載機がみんな落とされるぅ。
四番艦 卯月改  Lv45   ひりゅーさん強すぎだぴょん(白目
五番艦 鈴谷   Lv3   さすがに強いね、演習じゃなきゃ三回は沈んでるよ。
六番艦 None


『第一艦隊』

旗艦  不知火改 Lv99(?)  さて、教導の時間といきましょうか
二番艦 ???? Lv??
三番艦 ???? Lv??
四番艦 ???? Lv??
五番艦 飛龍改二 LV92   航空戦に慣れてないわね、どうするのかしら?
六番艦 ???? Lv??

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