めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ?   作:慧都

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『禊』と阿久根

 

 

 

 

 

球磨川禊の朝は遅い

毎朝遅刻ギリギリの時間(不幸でかかる時間を考えると)に弟である玲に起こされる

 

そして玲の作った朝ごはんを食べ、玲の準備した弁当を持ち、玲を待つ

 

禊はこの玲を待つ時間が大好きだ

理由は特にないが、玲と自分が逆転したような気がするからだろうか

 

玲が支度を終え(禊用の医療品やお菓子などを懐にしまい入れ)、いざ学校へ

 

通学路は2人、たわいもない話をしながら登校し昇降口で別れる

禊はと玲は学年が違うからだ

 

学校生活は特に何事もなく『いつも通り』、いるのにいないように扱われるのも慣れたもので知らん顔して最近買ったゲームをする

 

玲が珍しく買ったこのゲーム、狩魂はプレイヤーの投影である主人公がモンスターを倒して行くだけのアクションゲームなのだが、大人数で遊ぶことも可能なのでリア充に人気らしい

 

禊は玲とやるためにこのゲームを同時購入したのだが、一緒に遊んだ他プレイヤーと交換するハンターカードは一枚しかない

……あとはもうお察しの通りである

 

 

玲は数多くのハンターカードを持っているのに、何故自分が持っていないのか

禊は首を傾げるばかりである

 

時は流れて昼食

禊は席を立ち、玲の包んだお弁当を持って屋上へ

 

玲と一緒に食べるのではない、流石に毎日三食一緒に同じ顔を見て食べろとは玲に言えない

これは姉なりの僅かなプライドである

 

それが玲にばれているとしてもだ

 

「『阿久根くーん』『一緒にご飯食べないかい?』『一人ぼっちは寂しいんだよね』」

 

「……誰かと思ったら球磨川先輩ですか、もう昼なんですね」

 

最近の学校には珍しく解放されている屋上の中心で一人の少年が寝っ転がっていた、彼こそこの学校だけではなく近隣の学校、果ては警察にまで恐れられている『破壊臣』阿久根高貴である

 

何かを壊すことにかけては他の追随を許さない彼は、文字通り何でも破壊する

 

物であっても、者であっても何でも平等に再起不能にしてしまう彼は孤高の存在だったのだが

 

「今日も球磨川兄貴の方はいないんですかい?……そろそろ手合わせ願いたいんですがね」

 

歯をむき出しにして戦闘欲を露わにする様子からわかるように、玲にご熱心なのだ

壊そうとして、逆に壊されてしまい、格の違いを見せつけられたらしい

 

玲が禊を待っている時に起こった事なので禊はよく知らない

いつの間にか二人の間に入って仲良くなっていただけである

 

「『ごめんよ高貴くん』『今度玲に頼んでみるから許してくれないかな?』」

 

「別に話し相手になるくらいなら構わないですよ、最近は壊すのを止められてるんでストレスが溜まってるのは事実ですがね」

 

不満そうに阿久根は空を見上げた

 

玲にあしらわれた時に「空気を壊せるようになるまで破壊は禁止、僕とやる時以外はね」とのお言葉をもらい屋上で日々拳を脚を振るっているらしい

 

一度不可能だと文句を言ったら、目の前で実演されたので何も言えなかったようだ

最も、玲が壊したのは空気ではなく空間で拳の後に不可思議空間が見えたらしい、玲曰く「やりすぎちゃった」らしい

 

「『そういえば阿久根くん』『僕生徒会長になろうと思うんだけど手伝ってくれないかな』『難しいことは言わないよ僕のお願いを聞いて欲しいんだ』」

 

「生徒会長ですか、……構いませんがそれはあくまで兄貴の為です。球磨川さんは好きですが、アンタのために動く気はない」

 

スッと阿久根の纏う空気が変わる

殺気の篭った視線が禊を射抜き、破壊の化身が顔を見せた

 

それに対する禊は

 

にたり、そう表現するのが正しいであろう笑顔を魅せた

 

上等だと言わんばかりの『マイナス』オーラ全開の笑み

それを見た阿久根はその変わり様とおぞましい空気に、冷や汗を垂らした

 

いつもの『マイナス』オーラは玲によって緩和されたもので、このオーラこそ球磨川禊の本質であると悟ったのだ

 

「『いやーよかった断られたらどうしようかと思ったよ』『条件付きとはいえよろしく頼むよ阿久根くん』」

 

「……こちらこそお役に立てるよう頑張りますよ、球磨川先輩」

 

こんな感じで球磨川禊の1日は終わる

 

玲だけではなく他の人間とも縁を繋げ、目的のために動き続けている禊

 

玲と関わる時間が減るのは身を切られるより辛いことだが、これは玲も喜ぶことだと必死で我慢しているのである

全ては玲の笑顔を見たいが為に

 

「『よーし玲はもう寝てるだろう』『おっ邪魔しまーす』」

 

 

こうして夜中、玲が寝静まった後に布団に潜り込むのも必要なことなのだ

禊を嫌う神が、禊の身体に「玲成分を補給しないと死ぬ」としたからこんな事をしなければならないだから

 

「『僕は悪くない』」

 

寝ている玲を起こさないように抱きつくと瞼を閉じる

 

「『……おやすみなさい玲』」

 

そう言うと同時に睡魔が意識を刈り取りにかかった

禊の世界は闇に堕ちていく、だが体に感じる光が消えることはない

 

禊は心地よい眠りに身を委ねた

 

明日もいい日になりますように、そう願いながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上の続き

 

「そういえば球磨川さん、何か飯持ってます?俺のないんですが」

 

「『………へぇそうなんだ』『じゃあ僕は行くよ阿久根くん』」

 

「球磨川さん、その弁当の中身分けちゃくれません?兄貴が作ったんでしょう?」

 

「だ、ダメだ!!これは玲の愛が詰まった僕だけのお弁当だい!!!」

 

「なおさら分けてもらいましょう、兄貴の弁当は絶品ですからね」

 

「絶対やるもんか!!」

 

 

二人の戦いは放課後まで続き、玲が2人を止めるまで弁当争奪戦の決着はつかなかった

この戦いで阿久根高貴は球磨川禊を認めたらしい

 

………ずいぶんとレベルの低い戦いであることは言わない方が幸せだろう

 

 


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