めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ? 作:慧都
「安心院なじみね、悪いけど聞いたことないわ。当然、診たこともね」
「そうですか、すみませんね個人情報を聞いてしまって」
丸椅子に座ったままくるりとこちらを向くロリっ子に、玲は深く頭を下げた
ロリっ子は白衣を着て首から聴診器をかけている
これはクオリティの高いお医者さんごっこでは決してない、ロリっ子は正真正銘医者なのである
外見はロリ、内面は一児の母。年齢を言うことはできないが高校生の親だと言えばいくつなのか推測ぐらいできるだろう
玲としては旦那の性癖がロリコンで無いことを願うばかりである
「いーのいーの、貴方のおかげで研究も診察も捗ったし、何より自分の信念を曲げることをしないで済んだ。個人情報を教えることはしてないわけだしね
だけど気になるわ、貴方が気にするほどの安心院なじみって子は」
「気にしてるっていうか、そもそも存在するかどうかが怪しいんですけどね。それにあの事件の原因は禊じゃないですか、怒られはすれお礼を言われることではないと何度も…」
この事件とは、禊がどこからか手に入れた診察してない患者のデータ100人分とロリっ子、人吉瞳医師の実子を人質に自分と玲を異常なしと診察するように脅迫した事を指す
玲の拳骨が禊の頭に落とされ解決した前代未聞の事件である
禊が玲といる時間が減ると思っての行動だっただけに、ことの顛末を聞いた瞳が許して終わっている
瞳としては医師を続けられるのは玲のおかげであり、玲としては禊の不祥事を許してくれた恩人である
閑話休題
その縁から瞳と玲は連絡を取り合い、健康診断にはわざわざ瞳のいるこの病院まで来ているくらいなのだ
「そういえば、善吉は元気でやってますか?噂では聞きますがずいぶん荒れているとか」
玲と禊の通う学校、箱舟学園に同じく通う瞳の子ーーー善吉
球磨川姉弟は学園でいろいろ有名だが、この善吉も中々に有名だった
地毛である金髪故か、昔からよく不良に絡まれる事が多かった善吉がついにその仲間入りを果たしたらしいと聞き、親から真相を聞きたかったのだ
本人から聞いてもいいのだが、教室を訪ねるといつもいないので相当荒れているのだと玲は思っていた
「若気の至ってやつだと思うわ、私としては青春を自由に謳歌して貰いたいと思ってるの」
どこか遠い目をしながら虚空を見つめる瞳
まだ(外面は)若いんだから遊べばいいのに、と思う玲であるが口には出さない
前に言ったら脚が飛んできたから
女性に年齢の話は厳禁なのだ
「なんなら善吉と一緒に高校デビューしてみては?瞳さんなら問題なく潜り込めると思いますが」
瞳が学校、どう想像しても赤いランドセルを背負っている姿しか想像できない
ロリはばあ、恐るべしである
「それも楽しいかもね、考えてみるわ」
笑いながら話す瞳だが、その頭では真剣にそのことを考え始めていた
母は強し、愛があれば大抵のことは乗り越えられるのだ
それで職場を捨てるのは何か間違ってるような気がしないでもないが…
「では、僕はこの辺で。善吉によろしく言っといて下さい」
そろそろ帰らないと禊が拗ねてしまう
最近放課後に何かやっているようだけど、なんなんだろうか
もしかすると、禊もとうとう弟離れが来たのかもしれない
嬉しいような悲しいような、複雑な気持ちで玲は帰路に着くのであった