めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ? 作:慧都
球磨川禊、球磨川玲の二人は学校ーーー箱舟中学校への通学路を歩いていた
空は晴天、風は心地よく、左手にある川は太陽が反射してキラキラと輝いていた
禊はセーラー服、玲は学ラン、両者ともあたかも学生服は自らの私服であるかのように着こなしている
「『ねえねえ玲』『僕生徒会長になってみようと思うんだ』『ほら何事も経験って言うじゃない』」
くるり、とスカートを翻しながら禊がそう言う
顔はいつものように薄い笑みであるが、目はかつてないほど真剣だった
……風呂に一緒に入らないと言った小学六年生の時ぶりである
「いいんじゃない、だけど生徒会長って言うからには生徒会選挙に出ないと行けないんだろ?お前に全校生徒から信任票を貰えるとは思えないけど」
思ったことを率直に言う玲
つい、と伸ばされたその右手には野球ボールが握られており、禊の身を守ったことを意味していた
「僕が出ようか?自慢じゃないけど出れば100%の信任を得られると思うよ」
右手のボールを飛んできた方向に軽く投げて返す玲、100mしか離れていない野球少年のミットに快音が響く
だがそれを成した本人は当然のことのように流して、真剣に禊を見つめていた
「『それじゃ僕の力じゃなくて玲の力じゃないか』『僕は正々堂々生徒会長になりたいんだ』」
括弧いい文句《セリフ》だが、それを言った本人が玲に見つめられて頬を染め、いやんいやんとしていたらネタにしか感じないだろう
道行く親子は、お約束である見ちゃいけませんをやっていたくらいである
「なるほど、それなら協力はやめよう。お前が正々堂々と言うからには最低最悪な抜け道があるんだろ?」
「『その通りだよ玲!!』『さっすが僕の弟僕のことをよく理解してるよ』」
エヘヘ、とはにかみながら禊は策を語る
正々堂々と言えるのかは分からないが、規則に則っているのは事実
これをなかったことにするのは、生徒会長と言えども無理だろう
策を聞いて、玲はわずかに口角を上げた
それを見た禊は自身も嬉しそうに笑う
いま玲の頭の中では、様々なシミュレーションが成されているのだろう
未来を予想するのは玲の好きな遊びであり、結果がどうであれ過程が少しでも違っていれば玲は満足するだろう
『未来は刻一刻と変化し、予想した通りに動くことはない』
この言葉を誰が言ったのであったか禊は覚えていない
だが玲の好きなこの言葉の意味を決して忘れはしないだろう
未来を予想することは無駄である、望んだ未来を実現させるためには自分自身が未来を決めるしかない
それが玲の解釈、そして禊の座右の銘でもある
「『不幸』を変える為には自分から動かねばならない」
その原点なのだから