めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ? 作:慧都
球磨川禊は『不幸』である
歩いていれば何もないところで転ぶし、鳥の糞は当然のように降り注いでくるし、夏になれば打ち水を頭から被る事もしばしば
むしろ何も起こらないことが『幸運』であると言えるだろう
だが球磨川禊には唯一人に誇れる『幸運』がある
球磨川玲
自身の弟であり、何でも持っている『異常』な彼
持ってないモノなんかなく、もしあったとしても瞬きをしている間に手に入れている彼は何も持ってない自身とは対照的な存在である
球磨川禊の持ってない『幸運』も彼は当然のように持っていて、当たれば~という物は一度も外したことがないし(ガリガリ君が4回連続で当たった時は禊が貰って終わりにした)、信号機が急いでいる彼の足止めをしたことはない(禊と歩く時は余裕を持って行動するため普通に止まることはある)
姉思いの最愛の弟である彼が自分が唯一誇る、持っている『幸運』なのだ
不幸故か、はたまた身に纏うオーラ故か、学校で虐められていた禊(やり返すのは玲に止められていたためやり返さなかった)を守ってくれたのも玲であるし(玲が気付き、その後いじめっ子は学校に来る途中で大なり小なり怪我をするようになり、転校していった)、自分に優しさを感じさせてくれるのが玲だけであるからなのか禊は玲に依存している
それを禊は自覚しているし、むしろ誇ってすらいる
依存するほど自分は玲の近くにいるのだと
……異性としての愛が芽生えていることを禊はまだ知らない
玲が女子と話していると不機嫌になるのは、姉として弟を取られたくないと思っているからだと思(い込もうとし)ている
球磨川玲は自身を『幸運』であると思っていない
むしろ『不幸』であるとさえ思っている
玲は努力というものをしたことがない
何もせずとも全てにおいて玲は頂点に立ったからだ
生まれて1分で日本語を覚えた
生まれて5分で自身の肉体を掌握した
生まれて10分で自らが異常であることを知った
生まれて1時間で異常の全てを支配した
奇しくも今までで一番苦労したのは自分の体内を操作することだった
自らの肉体がある程度成長し動いても問題なくなってから、困ることなど皆無
世界は思い通りに流れるだけ
そこにやりがいなんてものはなく、無意味に生まれて無関係に生きて無価値に死ぬ、そんな人生であるように感じた
その人生に色を、意味を与えてくれたのは他でもない自分の姉ーーー球磨川禊だった
自分と違い何も思い通りに進まない姉、自分一人の人生では経験することの出来ない出来事を毎日繰り返す姉
自然と常に一緒にいるようになった
自分の知らない世界を知る最も身近な人物
未知を既知に変える喜び、そして……
いつも無表情な姉が自分と共にいるときは笑顔になる
それが一番大きな理由かもしれない
つまるところ、姉と弟、禊と玲は似たもの同士であるのだった