めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ?   作:慧都

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『彼女』と彼

 

 

 

「『ねえねえ』『風ってどこに流れて行くんだろう』」

 

「さあな、強いて言えば風が起こるのは気温差によるものなんだから、気温が一定の場所で消えるだろう」

 

今はそうそうない、雑草の茂った河川敷で2人は寝転んでいた

太陽は天高く登りその暖かな日差しを大地に落としており、爽やかな風が2人の顔を凪ぐ

 

2人とも学生服、傍に学生カバンが置かれていることから学校をサボりここにいることが予想できた

…事実その通りなのだが

 

「『まったくなんていい日なんだ』『最高の天気に最高の気温』『こんな幸せでいいんだろうか』」

 

「お前のことだ、後で倍になって返ってくるんだろうよ。いまは幸せでいいんじゃないか?」

 

「『あはは確かに』『幸せだけではいられないのさ僕は』」

 

「お前は存在が不幸に偏ってるからな、大人しくのんびり待てばいい」

 

食うか?と差し出した飴を嬉しそうに受け取られて、少年は笑みを浮かべる

 

なぜならそれを口に入れ、頬に含めたその姿が幸せそうであったから

 

『不幸』の体現者が見せる幸福の表情

その矛盾が愉快であったのだろうか

 

2個、3個と与えているうちに空は暗くなり、雨粒を落とし始めた

 

「『…降ってきたね』」

 

「…そうだな、帰るか」

 

少年は学生カバンから折りたたみ傘を二つ取り出し、片方を手渡した

 

それを嬉しそうに受け取り、開くその姿は至って普通だ

 

ーーーー開いたその瞬間に吹いた強風で傘が壊れるのを差し引けばだが

 

「濡れて帰るか」

 

「『そうだね』」

 

役に立たなくなった折りたたみ傘を恨めしげに見つめると、それを少年へと渡す

 

受け取った少年は、それが当たり前で有るがの如く元のように畳みカバンに戻した

 

雨は、家に帰るまで止むことはなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『へくしょん!』『風邪引いちゃったかもね僕たち』『早く温かいお湯に浸かりたいよ』」

 

タオルで髪を拭きながらそう言うが二人はまだ帰ってきたばかり

同然風呂なんて沸いているわけもない

 

「残念ながら風呂はまだ、体を拭いて着替えなよ」

 

テキパキと濡れた学校用品を机に広げ、すぐさま風呂の支度にかかるその姿はとても板についていた

 

「『そう言う君だって濡れたままじゃないか』『さっさと着替えればいいのに』」

 

自身を拭くことない少年に文句をいいつつ、髪を拭き終わり自身の道具を並べて行く

そのほとんどがボロボロで原型を留めていないのは何故だろうか

 

「僕は風呂の用意をしておく、こう言った場合は年下が年上を敬うものさ」

 

自慢げにそう言うが、それはお年寄りや社会でやることではないだろうか?

その動きは止まることなく続き風呂の支度が終わるとすぐさま二人分のホットミルクを用意し始める

 

「『……普通年上が年下を気にしてやるところじゃない?』『そこは?』」

 

そう言って少年を手伝おうとするが

 

「じゃあ、レディファーストだよ禊。女の子は体を冷やさないようにしないとね」

 

いつもの呼び方ではなく名を呼ぶ少年、その顔は笑っているが瞳は笑っていなかった

 

「『こんな時ばっかり名前を呼ぶんだから』『はいはいわかりました』『さっさと着替えてくるよ

 

 

 

 

 

 

玲』」

 

瓜二つの少女はまたもや嬉しそうに微笑んだ

 

 

 

 

 

 


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