めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ? 作:慧都
『我』と僕
「ーーーーーー気分はどうだい?」
ゆっくりと闇に満ちた世界から光の世界に昇っていく
「……最悪だ」
開かれた視界に映るのは先ほどまで敵だと思っていた少女の顔
異常性〈スキル〉を使えば簡単に殺せる距離で何事もないようにしている少女の精神が強いのか、それとも殺されない自信があるのか
わからない
ため息を吐いて、思考を変える
これからどうするのか、それを考えなくてはならないから
「……僕みたいな美少女を見てそんなことを言うなんて、やれやれもっと他のことは言えないのかい?」
「美少女?寝言は寝てから言うんだな。肉体的には美人だろうが精神的には最低だよ、お前はな」
軽口を殺意で返し、自分の設定に〈追記〉する
『球磨川玲の治癒能力は高く、骨折すら一秒かからず治る』と
瞬間腹に感じていた違和感は消え、玲は立ち上がる
ご丁寧に布団の敷かれたこの空間は随分久しぶりだが、長居するつもりはない
ーーーーここは敵地である
「……それが君の異常性かい?これ以上ない理不尽な能力だねそれは」
眉をひそめ、傷のあった腹を見る少女
その視線には何か痛ましいものを見るような視線が含まれており、それは玲の琴線に触れた
「良かったじゃないか、これがあるって事はお前の望みは叶ったぞ。ここは創作物の中で、お前の感じていたことは本当だったんだよ、安心院なじみ」
捻くれた笑みを浮かべ玲は少女、安心院なじみに向かってそう言う
なじみの視線に気がつかないふりをしながら
〈二次創作者〉の能力は物語を書き換えること、書き換える為にはその元を知らなければならない
よって玲は安心院なじみの設定も識っていた
「安心院なじみ。飄々とした態度の裏では「人間は平等にカス」と捉え、幸せも不幸も全て平等に無価値だという論理観「悪平等(ノットイコール)」を標榜する。7億人の悪平等(ぼく)を従え、なんでもできる万能の存在であるが故に「シミュレーテッドリアリティ」を抱えている。行動原理は「『できない』ことを探すことで、そのために箱庭学園を創設、「完全なる人間」を作れないことを証明するためにフラスコ計画を行っている。
……だっけ?
良かったじゃないか、我の〈二次創作者〉があることがその証明になる!!!お前は物語の登場人物なんだよ、安心院なじみ!!!」
高笑いしながら玲はなじみを指差す
知りたかったはずの世界についての疑問、それを耳にしながらなじみは……
「それがどうしたんだい?僕はとうにそんなことを知ってたよ、それより君は少し安静にしておいた方がいいみたいだね。落ち着いていまの現状を考えるといい。」
そう言って教室を出て行った
続いて半纏も、……ジュースを玲の近くに置いて出て行った
残されるのはわけもわからず突っ立っている玲のみ
心に大きな傷を持ち、最愛の姉に裏切られその愛を憎悪に変えた、球磨川玲だけであった
「………そんなんじゃまるで僕が悪いみたいじゃないか」
教室を出る際になじみの言ったこの言葉は誰に聞かれることもなかった