めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ? 作:慧都
ご注意ください
僕はさ、一目見てから勝てないと悟ったさ
おいおい、いくら僕だって最強ってわけじゃないんだぜ?
高々、7932兆1354億4152万3222個の異常性と4925兆9165億2611万643個の過負荷、合わせて1京2858兆519億6763万3865個のスキルしか持ってないんだからさ
おっと、今は禊に一つかしているんだっけ
まあ取り敢えず、万能とかそういうわけじゃないんだ
できることはできるし、できないことはできない
僕はそういう存在なんだからね
だから初めて彼を見たときは驚いたさ
最初は黒神めだかみたいになんでも出来る完璧主人公だと思ってたんだけどね、そもそも存在としての格が違かった
例えるなら言彦が近いかな
ああ、言彦を知らないのかい?だったらそうだな…
今すぐこんな小説を閉じてGoogleで検索することをお勧めするぜ☆
僕なんかじゃ絶対勝てない存在、勝つことを定められてる主人公とかじゃなくてそもそも勝てる存在じゃないんだ
負けイベントってやつさ、TASさんだって負ける、システム的に絶対敗北するんだよ彼と戦うなら
だから僕は悩んだ、そして気がついたのさ
いくら彼の存在格が違うとしても、いまの彼はこの世界に住む下等生物と同じじゃないかってね
その考えに至ったら後は簡単だった
僕が勝てないなら自分に負けてもらえばいいんだ
人っていうのはちょっと精神を弄ってやれば自殺する
彼にスキルは通用しないことはわかってたから、周りを操って徐々に彼の精神を破壊していった
なんでこんな酷いことをするかって?
……さあね、出来ない事を探してるからじゃない?
目の前には赤い紅い血だまり、そして趣味の悪いマネキンのように顔を剥がされ血だまりに伏せる安心院なじみ
それを成したのは、自分と瓜二つの顔をした性別の違う姉ーーーー禊だった
貼り付けたような笑みを浮かべた禊は、左手に持っていた手に持った人の皮を投げ捨て、右手に持つ僕の腹を貫いた大きな螺子を握り直した
「……禊、この状態は何なんだ?俺にはこの現状が全く理解出来ない」
腹に感じる激痛と灼熱感に耐えながら口を開く
思えば何かがおかしかった
最近不仲の禊が珍しくメールをしてきて、いつもなら絶対に近づけさせない生徒会室に呼ばれた
たまたま誰に会うことなく生徒会室に辿り着き、偶然鍵が開いていた
まるで誰かが自分をこの場に導くためにお膳立てをしたかのようで………
にたり
明らかにいつもと違う禊の様子、自分に向けられたことのない禊の笑顔は恐怖心ではなく危機感を抱かせた
「『………僕はね玲』『昔から玲を見ていると一緒にいると胸の辺りがおかしくなるんだ』『ある時には押し付けられるように苦しくて別の時にはスキップしたくなるほど楽しくなってくる』」
にたり、と笑みを浮かべたまま禊は独白する
覚悟の決まった嬉しそうな目で
「『それでさ安心院副会長に相談したんだよ』『そしたら恋だって言うじゃないか!!』『よく考えて思ったんだよ』『この胸の痛みが恋だっていうんならその原因はなんだろうってさ』」
興奮しているのか、禊はハイテンションに言葉を繋げる
その手にある螺子をぐりぐりと動かしながら
「『異性としての愛か兄弟としての愛か』『そして思ったんだ試してみればいいんだよ』僕と玲を兄弟じゃなくせばハッキリする兄弟愛なら冷めるだろうし正真正銘の愛なら消えることはない』『まさに理想じゃないか!!!』」
禊は嬉しそうにそう言った
拒絶される事を全く考えないその笑顔は本物、心配などする必要はないと思っていた
玲はどんなことをしても最終的に自分を許し、無償の愛を与えてくれるのだと
本気で禊は考えていた
そして、彼女の案は最終段階へと移る
……それがどのような結末を辿るのか知らぬまま
「『大嘘憑き!!』『僕と玲を姉弟じゃなかったことにした!!!』」
高らかに告げる禊
この瞬間、禊と玲は姉弟ではなくなった
しかし禊の玲に対する思いは変わらない
本当に自分は玲のことが好きだったのだ!!!
そうはっきりして大きな幸福感の中にある禊は玲の傷を治そうと『大嘘付き』を発動させようとした
その時、玲の口が動く
明確な意思を持って呟かれたそれは禊同様世界を書き換える
ーーー誰にも気づかれることなく
「………〈追記〉『球磨川禊に弟は居らず、原作同様の世界を過ごす』」
その瞬間、球磨川禊は欲しかったはずの全てを失い
球磨川玲は知るはずのなかった全てを得た
世界は壊れ、再編が始まる