めだかボックス?知ってる、主人公チートの漫画だろ?   作:慧都

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『風紀委員長』と番長

 

死にたいならかかってこい、死にたくないならさっさと逃げな

 

それは正に強者の余裕、自分を虐めていた歳上の男たちはそれだけで萎縮し破れかぶれで襲い掛かる

 

逃げてくれ

 

自分は叫ぶ、いや叫ぼうとした

しかし大声を出そうとしたその瞬間にすでに勝利は終わっていた

 

逃げろと言ったのにかかってくる馬鹿ばかりか、全く

 

そう言って少し嬉しそうな笑みを浮かべる自身と同じくらいの少年、暴力をふるった絵も言えぬ高揚感ではなく何か別のものに満足したようで嬉しそうだ

 

ありがとうございました、助けてくれて

 

お礼を言うと少年は何でもないというように手を横に振った

逆に今のことを秘密にするよう求めてきた

 

なんでもこんな事をやると正当防衛であるにも拘らず怒られてしまうことなのだとか、少年だけでなく自分も

 

家にいる母親(自分と同じくらいにか見えない)に怒られる姿を想像して、勢いよく首を縦に振る

怒られるのはごめんだ、母親は怖いのだ

 

それを見て少年も安心したようだった、背中を向けて去って行く

 

名前はなんていうの?

 

その背中に問いかける、なんだか聞かないといけないような気がしたのだ

 

少年は驚いた顔をして言った

 

「僕の名前は球磨川玲、君のお母さんにお世話になったことのあるんだ、君とも遊んだことがあるんだよ人吉善吉くん」

 

それが自分の覚えている玲との最初の記憶

あんな背中を目指して自分は歩んできたつもりだった、しかし目の前の現状はどうだ

 

死屍累々(死んではいない)の上級生の山、中学デビューに失敗した成れの果てで自分は不良になってしまった

 

今日もまた喧嘩に明け暮れる日々、何の理由もなくただやらねばやられる闘いの為だけに脚を振る

 

最愛の母から授かった脚術『サバット』でまた一人敵を倒す

 

望んでないのにいつの間にか与えられた称号は『番長』、その称号を狙った不良達に追いかけられる

 

「カッ、もうやってられるか!俺は『番長』なんてやらねーよ!!ただ平穏に学校生活を満喫させやがれ!!!」

 

そう言い残し、窓から跳んだ

 

ほんの少しの浮遊感、そして地面へ

 

二階からの落下エネルギーを鍛え上げた脚のみでなく体全体で吸収、怪我一つなく地面に着地する

 

そこに現れる一つの影、その影めがけ全力の回し蹴り

タイミングも威力も申し分ない一撃は、ある男の片手で防がれた

 

「善吉、人にいきなり暴力だなんてしていいと思ってるの?僕じゃなかったら死ぬかもしれないぜ」

 

「れ、玲さん…、これには深い事情がありましてですね」

 

「風紀委員室まで御同行願おうか、人吉」

 

「…はい」

 

人吉善吉、箱舟学園で恐れられるまでに成長した『番長』

しかし、相手が悪かった

彼に対するは問題児、球磨川禊の弟、『学園最強』の風紀委員長、球磨川玲

 

一般生徒には感謝され、不良には恐怖され、教師には信頼される

 

玲の事を尋ねられたら学園に通う全ての人間がこう言うだろう

 

「球磨川玲には逆らってはいけない」

 

 

 

 

 

 

 

 

教室の窓という窓から賞賛の声が響き、玲はそれに手を振ることで応える

 

そんな玲の傍で

 

俺が何をしたって言うんだ…

 

連行されながら善吉は涙を堪えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、善吉。その椅子に座って寛ぐといい、お前が好き好んで『番長』とか呼ばれていたとは思ってないが話は聞かないといけないんだよ」

 

備え付けられている給湯器でポットにお湯を注ぐ玲

 

連行された風紀委員室、そこに居るのは玲と善吉の2人のみ

いや、そもそも風紀委員は玲しか居ないのだから当然といえば当然である

 

「あの、玲さん……。もしかして怒ってます?」

 

恐る恐る善吉が口を開く

茶菓子を二人分用意して善吉の目の前に座る玲

その玲から明らかに怒りの感情が感じられた

 

身を竦ませながら言葉を待つ善吉

それに対して玲はにっこりと笑顔を見せる、……目は笑っていなかったが

 

「やだなぁ、善吉。僕は大変なことになってる善吉に何度もコンタクトを取ろうとしたけど逃げられた事なんで全然気にしてないよ?今回だって窓から飛び降りるとか危険なことしたなんてちっとも怒ってないんだからさ」

 

(お、怒ってらっしゃりますよ玲さん!!!サタンヤベェんじゃねーか、この状況!!!怒っためだかちゃんよりこえーぞ……((((;゚Д゚))))))))

 

「さて、善吉。キリキリ吐いてもらおうか?」

 

「イ、イエス、サー!!!」

 

 

 


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