「ゲヒヒヒヒ!! この世界は俺達イマジンがいただくぜえ!!」
「手始めにこの町から侵略だあ!!」
巨大な風車がシンボルの街、“風都”。その街中で、突如空間の歪みから出現したモグラのような顔にドリルや爪を纏った二体の“モールイマジン”が、建物を破壊しながら暴れていた。そこに、逃げ惑う人々に逆らうようにシルクハットを纏った一人の男が歩んで行く。
「やれやれ、この前の変な霧が町を泣かせたと思ったら、ここでも町を泣かせる奴らがいるみてえだな」
帽子を人差し指で押し上げると風都の探偵、“左翔太郎”はニヒルに決めてみせる。
『翔太郎、君って本当にハーフボイルドだね』
「おいおい、それを言うならハードボイルドだろフィリップ……って何だありゃ」
脳内に語りかけてきた相棒のフィリップに返した翔太郎が、ふとモールイジン達が暴れている場所の近くにある木の上に何かが突き刺さっていることに気付く。そこには、頭から木に突っ込んだらしい人間の下半身が見えていた。
「た、たすけてえええー!」
木に引っ掛かったまま、その声の主はバタバタと足を動かす。
「ったく、どうやったらあんな所に引っ掛かるってんだ?」
『余程の悪運の持ち主でもない限り、まず無理だろうね』
呆れた様子の翔太郎に続いて、フィリップが楽しそうに話す。
「あっ、もう少しで抜けそう、もう少し……うわああああ」
情けない声で叫んで、その人物は木の上から派手に地面に落ちる。
「っと、おい大丈夫か!」
「な、何とか大丈夫です……慣れてるので」
心配そうに覗き込む翔太郎に向かって人当たりの良さそうな顔でにへらと微笑んで、“野上良太郎”は服を払いながら起き上がった。
「慣れてるってお前……」
呆気に取られる翔太朗の前で、良太郎はごそごそとポケットを漁ると電ライナーのパスを取り出す。
「よ、よかった、失くしてなかったあ」
「あんた、何者か知らねえがここは逃げな、変な奴らが出てきてるんでな」
しかし、良太郎は強い意志の篭った目で翔太郎を見ると、首を横に振った。
「せっかくだけど、大丈夫。モモタロス達とははぐれちゃったけど僕も電王として、戦わないといけないから」
そう言って良太郎はベルトを腰に巻きつける。
「お前それ……」
翔太郎が驚いてベルトを見つめる。良太郎は頷くとパスをベルトの前に翳した。
「変身」
『Plat form』
電子音声と共に、“仮面ライダー電王・プラットフォーム”に変身完了した良太郎が、うわああああと叫びながら二体のモールイマジンに突っ込んでいく。
「あん? 何だコイツ!」
「どけ邪魔だ!」
「あうっ!」
軽く払いのけられあしらわれながらも、何度も果敢に立ち向かって行く電王の様子を見ながら翔太郎がやれやれといった素振りで帽子を直した。
『翔太郎、僕も行こうか?』
「いや、ここは俺がいくぜフィリップ。相手も2体。こっちも正々堂々、切り札で勝負だ」
『フフ、君って本当にハーフボイルドだねぇ』
「だーかーら、それを言うなら」
翔太郎がロストドライバーを腰に装着すると同時に羽織っていたベストからジョーカーメモリを取り出す。
「ハードボイルドだろ? 相棒」
“ジョーカー!”
「変身」
ロストドライバーに差し込んだメモリの電子音声と共に、“仮面ライダージョーカー”が姿を現す。
「いくぜモグラ野郎!」
「なっ、なんだこいつ!」
突如戦いに割って入ってきたジョーカーに驚いたモールイマジンは、パンチ一発で吹き飛ばされる。
「き、君も仮面ライダーなの?」
「あん? てことはやっぱりお前も……っと!」
モールイマジンの飛ばしてきた棘を躱しながら、ジョーカーが電王を庇うように戦う。
「えいっ、それっ」
ジョーカーの支援を受けながら、腰砕けになりながら電王も何とか手にしたデンガッシャーでモールイマジンと斬り合う。
「くそっ、何だこいつは!」
「カイにはこんな奴いるって聞いてねえぞ!」
「あん? 何ぶつぶつと……言ってやがる!」
狼狽ながら戦うモールイマジンの一体を蹴り飛ばし、ジョーカーはシュッと手を振った。
「ぐええっ!」
「そろそろ地中に戻っておねんねしてな、モグラ野郎」
そう言ってジョーカーがメモリをベルトから抜いて腰のスロットに差し込む。
『ジョーカー! マキシマムドライブ!』
腰のスロットに刺さったメモリをタッチして、ジョーカーが倒れているモールイマジンの前で右腕をクロスして決めポーズを取ると跳び上がる。
「ライダーパンチ!」
「ギャアアアアアア!!」
爆発したモールイマジンを見届けると、ジョーカーはすかさずもう一体のモールイマジンを振り向いた。
「くっ!」
「おかわりが欲しいか?」
振り向きざまに、ジョーカーが再び腰のメモリを叩く。
『ジョーカー! マキシマムドライブ!』
「ライダーキック!!」
飛び上がったジョーカーが、モールイマジン目掛けてキックの体勢で突っ込む。
「ぐああああああ!!」
蹴りを正面から受けて爆発したモールイマジンは、そのまま煙と共に消滅していった。
「お、終わった……」
変身を解いた良太郎は、その場にへたり込むように座る。翔太郎もふっと息を吐くと、変身を解いて良太郎に手を貸して起き上がらせた。
「あ、ありがと……」
「お前、大丈夫か?」
まだ少しふらつく良太郎に手を貸しながら、翔太郎が何か言おうとしたその時。
「おーい! 良太郎ー!!」
向こうの方から、良太郎の名前を呼びながら一人の女性が駆けて来た。その後ろには赤、青、黄、紫の鬼のような化物もいる。
「なっ、ったく今度は怪物に追われる女の子かよ」
「ち、違うんです! ちょっと待ってぇ」
ダブルドライバーを取り出した翔太郎を、慌てて良太郎が諌める。
「あん?」
こうして、またここにもライダー同士の出会いが起こった。