提督の憂鬱   作:sognathus

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提督が日課朝練の準備をしていると、見覚えのない艦娘がこっちに向かって来るのが見えました。
よく見ると全身がボロボロです。
何があったんでしょう。



第28話 「保護」

~早朝、鎮守府正面入り口

 

提督(曙はまだ来てないみたいだな。ストレッチをして少し体をほぐしておくか)

 

提督が軽くストレッチをしていると正面から一人の艦娘がやって来るのが見えた。

最初は曙かと思ったが、自分の方が先に来ているはずなので基地とは反対の方向から来ることは有り得なかった。

 

提督「ん......?」

 

提督(あれは......夕雲か? 確か俺の艦隊にはいないはず......だとすると)

 

夕雲「......」トボトボ

 

トン

 

夕雲「っ!?」

 

提督「艦娘だというのに正面にいる人間にすら気付かないとは......」

 

夕雲「あ......」

 

提督「君は此処の艦娘じゃないな。何処から来た? 何か用向きでも?」

 

夕雲「う......その......」ブルブルカタカタ

 

提督「俺が怖いか?」

 

夕雲「......」コク

 

提督「そうか。まぁ大体察しはついた。信じろとは言わないが、悪い様にはしないから一度基地に来ないか?」

 

夕雲「......何も......しない?」

 

提督「君が元居た場所でされた事のことを言っているのなら、それはここでは有り得ない」

 

夕雲「......案内を......お願いします」

 

提督「分かった。着いて来なさい」

 

 

~執務室

 

長良「大佐、この夕雲の子は? うちにはまだいなかったよね?」

 

長門「その筈だ。という事は......」

 

提督「結論を急くな。先ず話を聞け」

 

夕雲「......」

 

提督「今朝、本部からある鎮守府で艦娘の反乱が起こり、それを鎮圧したとの報せが届いた」

 

長良「は、反乱?」

 

叢雲「なるほどね。そこの鎮守府の提督、やっちゃったのね」

 

初春「妾達は提督との絆が深いほど自身が持つ力を発揮できる。そしてその絆は団結力、提督への忠誠心にも繋がるのじゃ」

 

長門「という事はそこで起こった反乱というのは」

 

叢雲「大方、そこの提督が誤った行動・行為を取り続けて艦娘との絆どころか、憎悪を買ってしまったのでしょうね」

 

長良「そんな事有り得るの? その、わたし達が提督に手を掛けちゃう事なんて」

 

初春「親しくなれなくても普通に接していれば、基本、妾達にはそのような考えは思い浮かぶことは無い」

 

長門「そこの提督がよほど悪辣だったと?」

 

提督「それは、夕雲に聞けば分かるだろう」

 

提督「夕雲、辛いだろうが首を振るか頷くだけでいい。そこで提督から虐げれていたのか?」

 

夕雲「大丈夫です......話せます」

 

夕雲「私達の扱いは、詳しくは言えませんが......酷いものでした......」

 

夕雲「逆らう意思を持ち切れないことをいい事に......本当に......うっ......」

 

長良「ねぇ、大佐。そんな提督が本当にいるものなの?」ワナワナ

 

提督「居てはならない。そうしない為にも海軍も厳しい選考をしているし、各鎮守府への査察も定期的にも抜き打ち的にも行っている」

 

提督「流石に『提督になれる』適正が有るだけでは、採用したりはしていない」

 

長良「じゃぁ、どうしてです?」

 

提督「稀に居るんだ。お前たちが女なのをいい事にそれだけを求めて、外面を完璧に取り繕って、内に秘めた醜い願望を悟らせない男が採用されることが」

 

長良「そこまでしてるのに何で......!」

 

提督「ここ数年ではなかった事だ」

 

長門「......そこにいた他の艦娘と提督はどうなった?」

 

提督「提督だった男は遺体となって発見。他の艦娘の大半は自主投降をした。処分は全て解体。一部の者は頑強に抵抗するも鎮圧された。そして......」

 

提督「この連絡書によると、一名のみ見つかってないらしい」

 

叢雲「それが......」

 

夕雲「はい。私です......」

 

初春「よくここまで来れたの」

 

夕雲「何処でもよかったんです。でも暫く逃げてたら見覚えのある基地の明かりを見つけてそれで......」

 

長良「保護を求めに来たのね!」

 

夕雲「いいえ」フルフル

 

長門「む......」

 

夕雲「反乱に加担しなかったとはいえ、仲間はやってはならない事を犯しました。これは連帯責任です」

 

提督「なら、何故ここに?」

 

夕雲「最初は逃げたい一心でしたけど......最後に安心が出来るところを求めていたのかもしれません」

 

夕雲「現に大分落ち着きました。提督、ありがとうございます。今は心穏やかです。もう解体処分も悔いなく受け入れることが出来ます」

 

提督「海軍に所属する艦娘として軍法に則った処分を望む、か」

 

夕雲「......」コク

 

長良「提督......!」

 

叢雲「長良さん、待ちなさい」

 

提督「長門?」

 

長門「......うむ」コク

 

提督「村雲、初春?」

 

叢雲「賛成よ。だから好き」

 

初春「無論。妾も叢雲と同じである」

 

提督「長良は......まぁ、必要ないな」

 

長良「さっきから何を言ってるの......?」

 

夕雲「......?」

 

提督「夕雲」

 

夕雲「は、はい」

 

提督「これからは俺の事を大佐と呼びなさい。君の身柄は今日よりうちで預かる」

 

長良「大佐ぁ!」パァ

 

夕雲「そんな......! でも、無理です。私達には全て所属する鎮守府の認識番号が登録されていて......」

 

提督「そのデータは抹消し、改めてうちのものへと書き換えた物を発行する。問題ない」

 

長門「そんな大それた事......できるのか?」

 

提督「他の提督には悪いが、こういう時はコネを使わせてもらう。褒められた事ではないと分かっているがな」

 

長良「コネって......そんな事ができちゃう偉い人と知り合いなの?」

 

提督「ああ、幸運にもな」

 

夕雲「誰......にそんな事、頼む......つもりですか?」

 

提督「大本営本部の中将、親父殿に頼む」




少しドラマチックにしてみました。
けど、次の話であっさり終わる予定です。
可愛そうな子を助けるシーンてやっぱり胸熱な展開ですよね」

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