提督の憂鬱   作:sognathus

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時雨との会話のペースに披露してしまった提督は仮眠をとったのですが、ちょっと寝過ごしてしまったようです。
優しい神通さんが起こしに来てくれました。


第14話 「居眠り」

神通「大佐、大佐……。起きてください」

 

提督「ん……」

 

神通「あ、起きました? 大佐」

 

提督「ああ、神通か」

 

神通「お休みのところ申し訳ありません。執務の仕事がまだ残ってましたので……」

 

提督「む、そうか。寝過ごしてしまっていたか」

 

神通「お体の具合良くないのですか?」

 

提督「いや、体は大丈夫だ。ただちょっと精神的にな……」

 

神通「? 何かあったのですか?」

 

提督「大したことじゃない。時雨は見たか?」

 

神通「時雨ちゃんですか? いえ、見てませんけど……」

 

提督(言っていた通り、すぐに部屋に戻ったみたいだな)

 

提督「そうか。ならいいんだ」

 

神通「?」

 

首を傾げて疑問を呈してる神通を見て提督はあることに気付いた。

 

提督「……神通」

 

神通「はい?」

 

提督「確か、今日の秘書艦はお前じゃなくて那珂じゃなかったか?」

 

神通「あ……」

 

神通はそう言われると困った顔をして口ごもった。

 

提督「何かあったのか?」

 

神通「その……那珂は、玩具屋に行っているようでして……」

 

提督「玩具屋? お前らしくもないな、見逃したのか」

 

神通「いえ、いないと気付いた時には書置きが置いてありまして……」

 

『トップアイドルになる為に必要な物が玩具屋にあるので行ってきます!』

 

提督「なんだこれは……」

 

神通「すいません。私にもあの子が何を考えているの全く……」

 

提督「全く......戻ってきたら連れて来い。罰を与えないとな」

 

神通「それは、私にお任せ下さいませんか?」

 

提督「ん? 個人的に行うということか? それでは軍規の意味がないんだがな」

 

神通「妹がしでかした事ですから」ニコ

 

眩しい程の笑顔だが、その裏には凄まじい怒りが渦巻いているのを提督は感じ取った。

妹に煙に巻かれた事が余程腹に据えかねているようだ。

 

提督「今回だけだぞ」

 

神通「ありがとうございます」ペコリ

 

提督「ああ、それと」

 

神通「はい?」

 

提督「神通、お前はもう部屋に戻っていいぞ。元々お前は今日は秘書艦じゃなかたんだからな」

 

神通「……大佐、差し出がましい事を承知でお尋ねいたしますが」

 

提督「ん?」

 

神通「大佐は残りの仕事を一人で処理されるおつもりですか?」

 

提督「秘書艦がいないのだから仕方ないだろう」

 

神通「私、お手伝い致しますよ?」

 

提督「いや、だからお前は今日は――」

 

神通「お 手 伝 い さ せ て く だ さ い」ズイ

 

提督「む……」

 

神通「そじゃないと、大佐に申し訳がなさすぎて……那珂をどうにかしてしてしまいそうです……」

 

神通の背後に黒いナニカを提督を見た気がした。

そしてそれを見た瞬間、提督は即座に決断した。

 

提督「分かった。すまないが、頼めるか?」

 

神通「よろこんで」ニコ

 

 

――数時間後

 

提督「ん……もう少しというところだな」

 

神通「これを一人でなんて……これからはやめて下さいね?」

 

提督「悪い癖だ。加賀にも前に同じことを言われた」

 

神通「なら尚更じゃないですか。ダメですよ?」

 

提督「善処する」

 

神通「た い さ ?」

 

提督「分かった。しない。だから加賀には内緒にしておいてくれ」

 

神通「ふふ、分かりました。お互いに約束ですね」

 

提督「そうだな」

 

 

――それから更に数分後

 

提督「そういえば、那珂の奴はアイドルどうこうは今更だから置いておくとして、玩具屋なんかに何を買いに行ったんだ?」

 

神通「そういえばそうすね……。マイク……でしょうか」

 

提督「なるほど。それはあるかもしれないな。性能はあまりよくなくても玩具のようなマイクなら安いかも知れないしな」

 

神通「そうですね」

 

提督「ああ」

 

神通「……あの、私からも訊いていいですか?」

 

提督「なんだ?」

 

神通「もし教えて頂けたらで構わないのですが、昼間、大佐が居眠りをしてしまうほど疲れていたのが何故なのかちょっと気になって……」

 

提督「ああ、その事か」

 

提督「時雨と実家から来た頼りの事を話していたんだったか」

 

神通「実家からのお便り……ですか?」

 

提督「ん、まぁその事で時雨と話してたんだが、あいつのペースに飲まれて疲労してしまったという感じだ」

 

神通「そうだったんですか。ふふ、時雨ちゃんたら」

 

提督「あいつも大人しそうに見えてなかなかにマイペースだからな」

 

神通「そうですね。あの、ところでさっきのお便り事なんですが、実家というと大佐がお生まれになった家からのお便りという事ですよね?」

 

提督「そうだ。流石にお前はそれくらいは分かるよな」

 

神通「その辺りの常識は個々にバラつきがあるみたいですね……困らせてしまってすいません」

 

提督「それはお前が謝る事じゃないだろ。大丈夫だ、気にしてない」

 

神通「恐縮です。あの……それで」

 

提督「ん?」

 

神通「実家からお便りというと大佐のご家族に何かあったのですか?」

 

そこに来て提督は初めて表情を少し曇らせた。

何やら言い難いそうだ。

 

提督「別に家族に不幸があったとかじゃないんだが……」

 

神通「?」

 

提督「見合いの話だった」




ドラマみたいな切り方にしてみました。
このあと波乱万丈な展開が……というふうにはあまりしたくないですね、疲れるので(ア

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