提督の憂鬱   作:sognathus

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お疲れの提督は久しぶりの一人晩酌で気分転換をしていました。
扉の前には就寝中の札を掛けているので火急の様でもない限り誰も来ないはずです。
ですが、その予想は意外にああさり崩れました。


第4話 「晩酌2」

コンコン

 

提督(札は確かに掛けた。その上でこの時間にノックをしてくる奴といえば......)

 

提督「......足柄か?」

 

足柄「っ、そ、そうです......よ」

 

提督「いいぞ。入れ」

 

ガチャ

 

戸惑いがちに半開きになったドアの隙間からどこか申し訳なさそうな顔をした足柄の顔が除いた。

 

足柄「入っていいの?」ヒョコ

 

提督「いいと言ったろ? 入れ」

 

足柄「う、うん......失礼......します」

 

提督「......」

 

足柄「あの......」

 

提督「うん?」

 

足柄「よく、わたしって判ったわね」

 

提督「俺が晩酌してると思ったんだろう?」

 

足柄「でも、疲れているのに......」

 

提督「そう。疲れている事に対して配慮ができて、かつ晩酌の事も分かっている奴といえばお前くらいだからな」

 

足柄「ごめん。迷惑だった?」

 

上目づかいですまなさそうにで聞いてくる足柄の顔は普段より幼く見えた。

 

提督「いや、まぁお前なら別にいい」(足柄もこういう顔をするんだな)

 

足柄「で、でもこの前の晩酌の時は迷惑かけちゃったじゃない」

 

提督「あの時はお前に合わない洋酒を勧めた俺にも非がある」

 

足柄「でも、気を利かせくれた......」

 

提督「もうしないとは言わない。今度は加減をして飲めば問題ないだろう?」

 

足柄「あ、うん......そうね。気を付けるわ」

 

提督「それでいい。もうしない、と責任を背負い込むような答よりかは力を抜いた良い答だ」

 

足柄「あ、ありがと......」

 

提督「どうした? 普段と比べて元気がないな」

 

足柄「大佐が疲れてると思って、その......」

 

提督「そうやって気を遣ってくれるだけで、気分はそれほど悪くはならないものだ。だからもう遠慮するな」

 

足柄「いいの?」

 

提督「いつものお前がいい。ほら、やりに来たんだろ?」ス

 

提督はそう言うと、氷を入れた空のグラスに焼酎を注いで足柄の前に出した。

 

提督「ほら、飲め」

 

足柄「あ、ありが......ううん。ありがとう。頂くわ」

 

提督「それでいい」

 

足柄「んく......ふぅ」

 

提督「美味いか?」

 

足柄「少し薄いけど、雰囲気で味って結構変わるのね。今はこれが凄く美味しく感じるわ」

 

提督「はは。足柄もようやく本当の意味でお酒が呑めるようになってきたか」

 

足柄「何よ。まるで自分の方が上手く飲めるような言い方ね」

 

提督「そうは言わないが、少なくとも前のお前と比べてなら上手い自信はあるな」

 

足柄「もう、その話はよして......恥ずかしいんだから」

 

提督「はは。悪い。......ごく......ふぅ、それで?」

 

足柄「え?」

 

提督「此処に来た目的は晩酌以外にもあるんだろう?」

 

足柄「それは......」

 

提督「まぁ、話し難いならいい」

 

足柄「あ、いえ。言うわ。今日のあの......ケッコンカッコカリの事よ」

 

提督「ああ」

 

足柄「あれってさ、誰でも大佐に好意を寄せて......伝えてもいいの?」

 

提督「状況はどうあれ公言したようなものだからな。今更否定する気はない」

 

提督「勿論、結果的に1人のみを選ぶ可能性もあるが」

 

足柄「そ、それでも好きになるのは、伝えるのは自由よね?」

 

足柄「少なくとも今の時点ではそうよね?」

 

身を乗り出してそう聞いてくる足柄は少し必死そうな表情に見えた。

 

提督「落ち着け。ああ、そうだ。そこまで制限できるものではないし、するつもりもない」

 

足柄「そ、そう......なら......」

 

足柄「わたしも大佐の事好きって言っていい? 結婚してほしいって言ってもいい?」

 

提督(やはりか)

 

提督「......全く今日は、男冥利に尽きるというやつか。艦娘とはいえ、異性にこうも好意を持たれる日が来るなんてな」

 

足柄「話をはぐらかさないで!」

 

提督「落ち着けと言ったろ。そんなつもりはない。俺自身今の状況に戸惑っているんだ」

 

足柄「あ......ごめんなさい。また迷惑掛けちゃって」ガタッ

 

酒が入ったせいだろうか、振られたと勘違いした足柄は早々に席を立って部屋を出ようとした。

 

提督「待て。何回落ち着けと言わせるつもりだ」ガシッ

 

足柄「だって......!」 提督「受ける」

 

足柄「え?」

 

提督「お前の申し出を受ける」

 

足柄「ほ、本当? ......う、嘘じゃないわよね」

 

提督「そんな質の悪い嘘をつくほど俺は性格は悪くない」

 

足柄「う、嬉しい......ひっく......ぐす」ボロボロ

 

提督「だが、さっきも言ったが結果は――」

 

足柄「分かってるわ。でも今はきちんと気持ちが伝わった事が嬉しいの」

 

提督「......そうか」

 

足柄「ねぇ」

 

提督「ん?」

 

足柄「抱いて」

 

提督「言葉通りの意味ではないな?」

 

足柄「流石にそんな卑怯な事はしないわ。ただ、抱いてくれるだけでいいの」

 

足柄「嬉しいから......その気持ちを今だけ確かめさせて」

 

提督「分かった。ここに座れ」

 

提督は軽く自分の膝を叩くと、足柄を横に座らせて頭を胸に預けさせた。

 

足柄「ありがとう......凄く落ち着く......嬉しい」

 

提督「そうか。今日はこのまま寝ろ。後で妙高に部屋に運ばせるから」ナデ

 

足柄「ん......姉さんに迷惑けちゃって悪いけど......今日はそうさせてもうらわ......」

 

 

数時間後

 

足柄「スー......スー...」

 

提督(前と同じ年頃の、いやもっと幼く見える顔だな)ポンポン




足柄さん絡みだと力が入ってしまいますね。

今度は早めに妙高さんに伝えていたので問題なく部屋に返せたらしいです。
妙高さんは少し恨めしそうな顔で、「次は私もやってみようかしら」と思ったと思わなかったとか。

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