提督の憂鬱   作:sognathus

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今回のイベントは新規実装のドロップ艦の入手率が特に酷かったですね
俺も枯れかけました


作戦終了

「今回の作戦も無事完了した。皆ご苦労だった、暫くゆっくり休んでくれ!」

 

『ワアアアアア♪』

 

深海棲艦に対する作戦も最近は人間側が優勢になってきたのか攻勢の色が強くなってきた気がする。

そんな事を提督は考えながら、彼は階下の艦娘たちに今回の作戦の完了を宣言した。

未だに戦闘の興奮が冷めずにその余韻に震える者。

今回も無事に作戦が完了してホッと安心の息を吐く者。

皆反応は様々であったが、その心には共通して喜びあり、彼女たちの表情からもそれは容易に見て取れた。

提督はそんな艦娘たちを眺めて満足そうに一度頷くと踵を返して一人静かに執務室へと戻った。

 

「お疲れ様」

 

「ああ」

 

部屋で待機命令を受けていたのか部屋に入ってきた提督を叢雲が落ち着いた声で迎えた。

その時の部屋は晴れた日差しで電気がなくても明るく暖かな雰囲気だったのだが、何故か二人を取り巻く雰囲気はそれに反して冷めていた。

 

「さて……一番逼迫しているのは?」

 

「燃料。過去最低の備蓄量よ」

 

「……そうか。他は?」

 

「全て最大備蓄可能な量の半分以下。その中でも鋼材は燃料に次いで少ないけどそれでもまだマシと思えるくらい燃料がマズイわ」

 

「やはり友軍の捜索に費やしたのが原因か」

 

「それ以外ないわねぇ」

 

「ふむ……」

 

作戦遂行中提督の艦隊は友軍の救難信号を受信した。

しかしその時に限って激しい敵の攻撃と悪天候が重なり、信号の発信源の特定は困難を極めた。

提督本人は艦娘たちに負担をかけない為にも非情な決断を下すつもりであったのだが、逆に彼女たちから強い捜索の嘆願を受け、結局提督が折れる形で作戦の遂行と並行して友軍の捜索を行うことになったのだった。

しかしてそれは功を奏し、作戦遂行中に合流した艦娘以外にも波間に浮かんでいた小さな影2つ(石垣とフレッチャー)を発見して救助に成功するという奇跡的な成果を挙げることに繋がった。

その上今回の作戦も最後まで全うできたとあっては正に非の打ち所がない結果に誰もが満足するところ……であったのだが、結果として凄まじい物資の消費を招いていしまい、現在二人はこうして頭を悩ませることになってしまったのである。

 

「通常任務には支障はないと、判断するが?」

 

「肯定ではあるけど、それは明日から即資材の補充に極力努めるのが当然の条件ね」

 

「我が基地の稼働が始まって以来の危機だな」

 

「敵襲を受けているわけでもないのに最大の危機ってところが泣けるところねぇ」

 

悩ましげに大袈裟な動作で頭を振る叢雲。

しかしその顔には提督への不満は一つも浮かんでおらず、寧ろ口元には小さな笑みが浮かんでいた。

 

「なんか楽しそうだな?」

 

「あ、ふふっ、ごめんなさい。なんか昔を思い出してね」

 

「さっき言った基地が稼働した頃か」

 

「ええ、あの時は何もかも手探りだったからいろいろと苦労したわよね」

 

「……そうだな」

 

提督は背もたれに深く背中を預け、過ぎた過去を思い出す。

あの時は基地近海の哨戒が主な任務で、まだその時にいた艦娘は叢雲と……。

 

「おぉ、何処にいるかと思えばこんな時にまで仕事かえ?」

 

提督が思い出に浸りかけたところでノックをせずに部屋に入ってきたのは最古参の一人の初春だった。

普段だったら入室する時に必ずノックをする彼女がそうしなかったのは、その時は無礼講だと理解していたからだ。

 

「ちょっとぉ、せっかく二人で良い雰囲気になろうとしていたのに水をささないでくれるかしらぁ?」

 

唇を尖らせてそういう叢雲だったが、決して気分は害してなく、目は明らかに笑っていた。

 

「それは悪いことをしたのぉ。されど妾とて其処に御わす殿方を好く身。此処はお互い同じ気持ちを持つ者同士、仲良うするわけにはいかんかえ?」

 

「仕方ないわね。でも、仕事の話もするからちゃんと相談に乗ってよね」

 

「ん、やはり備蓄の事かえ?」

 

「そういう事だ。早速で悪いが明日からお前にも力を貸して欲しい」

 

「何のことはありんせん。貴方が助けを求めるのなら、妾は当然それに……いえ、それ以上の成果を携えて応えてみせましょう」

 

「遠征隊の編成と指揮に関しては私たち二人に任せて頂戴。時間の配分は任せても良いわよね」

 

「当然だ」

 

「では、悩ましい問題に光明を差す手段の予定が組めたところで、いい加減妾達も祝杯の一つでも上げようぞ♪」

 

初春はそう言うと待ってましたとばかりに背中に手を回して隠していた一升瓶を机の上に置いた。

叢雲はそれを見て呆れかけるが既に提督が酒を注ぐためのグラスを持ってこようとしていたので、呆れるのを通り越してつい笑ってしまった。

 

「あはは、何よそれ。大佐ったら」

 

「まぁせっかくだ。こういう時くらい、な?」

 

「そうそう♪」

 

「もう、仕方なわいわね。それじゃ……」

 

『乾杯』

 

酒が注がれた3つのグラスがカチリとぶつかる音と三人の祝杯を挙げる声が同時に部屋に響いた。




始まりの艦娘である叢雲と初春
この二人の名前が入手順のソートにした時に真っ先にトップに来るのを見る度にちょっと感慨深い気分になります

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