大抵どの基地でも最大の火力として活躍している大和型の新たな大規模改装は大ニュースだった。
それは提督の基地でも例外ではなく、早速青葉が興奮した様子で執務室に現れた。
これはそんなとある一日の話。
「大佐、武蔵さんに新しい大規模な改装が入るって本当ですか?」
ノックも無しに入ってくるなり青葉は興奮に肩を揺らし、まるで問い詰める様な勢いで提督に聞いてきた。
自分が改装を受けるわけではなないのに何故彼女がここまで興奮しているのか、正直提督は解らなかったが一応その問いには首肯した。
「そうだ。本部のみで用いられていた技術の一部が俺たちにも開放されるらしい」
「それは大ニュースですね! 早速武蔵さんに教えてあげないと!」
「大丈夫だ。そについては今朝方本人の方から確認があったからな。皆耳が早い。俺から伝える前に何処で知ったのか」
「まぁ艦娘独自のネットワークくらい現代ならありますからね。私もそれで知ったクチです」
「ラ○ンのコミュニティみたいなものか?」
「そんな感じです」
提督も携帯端末を使って上司や部下と連絡を取る事はある。
しかしそれでも提督の場合は連絡くらいにしかあまり使わず、ゲームといった娯楽は勿論、コミュニケーションアプリもそんなに進んで使う事は無かった。
(俺も偶には暇潰しに弄るくらいは必要だな)
提督はポケットから取り出した自分のスマホを見て苦笑した。
「それで、何かお祝いとかはするんですか?」
「ん? 武蔵の改装のか?」
「勿論ですよ」
提督の言葉に青葉は当然ですと言った態度で肯定する。
だが意外にも提督は、それに対してやや逡巡するような様子を見せた。
青葉は怪訝な顔をして聞いた。
「どうしたんです?」
「いや、祝おうとする考え自体は俺も悪くないと思う。だがな」
「? はい」
「今回改装を受けれるのは武蔵だけだろ? つまり先行して妹の方が受けるわけだ。それを安易に祝うべきだと思うか?」
「ああ」
青葉はしまったという表情で口元に手を当てた。
(そうか。そうだよね。大和さんの気持ちも考えてあげないと)
「まぁあの大和が妹の強化を喜ぶより強く嫉妬するなんて考え難いが。それでもあいつの様子を窺うくらいはした方が良いと思うんだ」
「そうですね。それは賢明だと思います」
「という事で大和をちょっと呼んで来てくれないか。仲間から口頭で伝えてくれた方が個人的な要件だと理解してくれるだろう」
「承知致しました。もう今からでいいんですか?」
「ああ」
「畏まりました。では青葉ちょっと行って参ります!」
そんな元気な返事をして青葉は大和を呼びに行った。
大和が提督の元を訪れたのはそれから程なくしてからであった。
「大佐、失礼致します。お呼びでしょうか?」
「ああ、うん」
「何でしょう」
「……率直に訊かせてくれ。武蔵の改装を祝ってやろうかと思うんだが……」
「え?」
大和はそこで不思議そうな顔をした。
それは何故その事で自分を呼んだのだろうと言う純粋な疑問からくる表情だった。
提督はそれを見て自分が抱いていた懸念が杞憂だと確信した。
「すまん、不要な気遣いだったような」
「あ……そう言う事ですか」
流石は大和といったところか。
彼女は提督のそんな様子を見ただけで彼の真意を何となく察した。
「妹を祝ってくださるんですもの。それは姉としても純粋に嬉しく思います」
「うん、ありがとう」
「え? っ、ふふ。大佐、そのお言葉はちょっとおかしいですよ? お礼を言うのは寧ろ私の方じゃないですか」
「……そうだな。いや、まぁそれでも、なんというか、な」
「……ありがとうございます」
大和はそんな提督に心から感謝と好意を込めた目で見つめてお礼の言葉を返した。
やはり彼は良い人だ。
軍人としてしっかり厳しい所もあるが、それでも私たちに対する人と同じ気遣いや態度はずっと変わらない。
だから自分も他の仲間たちと同様彼を慕うようになったのだ。
(……好きになって良かった)
「? どうした?」
何やら黙って見つめられていた事をむず痒く感じた提督はそれが気になって大和に聞いた。
大和はそれに対して微笑みを称えながら静かに提督に歩み寄った。
「いえ、大した……いいえ、とても大事なことですけど、いいんです。でも――」
「ん?」
「よろしければちょっとお膝をお借りさせて頂けませんか?」
そう言うと大和はその場で跪いて椅子に座っていた提督の腕と顔を乗せた。
その顔はとても幸せそうな笑顔に満ちていた。
はい、武蔵の改装の話と思いきや、大和のメインの話でした。
うちも運良く最初から条件を揃える事ができていたので、改二になりました。
いやぁ、凄いですね火力。
良いですね5スロ。
おかげで間違いなく現在彼女は我が泊地最強の戦艦となりました。