やはり様々な艦娘から反応があった模様。
これはそんな話の一部である。
なお、結構関連の話が続く模様。
「聞いたか筑摩! 大佐が転勤なんじゃと! 吾輩を置いてだぞ?! そんなの嫌じゃ?!」
「ね、姉さん落ち着いて……」
何処からどういう風に広がったのか、提督の転勤の噂が広がるのは波が広がるようにどころか空に雷が轟くかの如く早かった。
早速ショックで駄々をこねはじめたのは駆逐でも海防でもなく、なんと航巡部隊のエースであり、隊長だった利根だった。
利根は自室で筑摩と二人きりになるなり、我慢していた胸の裡をぶちまけ始めた。
元々部屋に着く前から何処かで知ったようで、無邪気な子供の様な部分がある彼女が部屋の外で動揺を見せなかった事は大した忍耐と言えた。
が、その平静も、唯一人の妹の前では装ったりしなかった。
今は枕に顔を埋めて泣き顔を見られまいとしながら足をバタバタしている。
それによって下着が見えてしまう事などお構いなしだ。
いや、元々それに関しては気にした素振りを見せた事はなかったが。
「嫌じゃ嫌じゃ! のう筑摩、何ぞ妙案はないか? 大佐が転勤を思い留まってくれるような妙案は?!」
「姉さん……いくら大佐が思い留まっても、これは辞令だから……。上からの命令なの。軍で個人の意見を通すのは流石に無理よ……」
「そ・れ・で・も! お前はそれで良いのか?! 大佐が行ってしまっても良いのか?!」
「…………嫌です……!」
涙でぐしょぐしょになった顔で振り返った利根にそう問い詰められ、筑摩もついにそかで瓦解した。
彼女は顔を手で覆ったかと思うと、そのまま姉の胸に飛び込み涙声でそう言った。
利根はそんな妹の頭を、まだ泣いたことによって目を赤くしながらも、そこは姉らしい気丈な優しい笑みを浮かべて撫でるのであった。
「そうじゃろ。そうじゃよな……っ」
そして利根もまた筑摩の頭に顔を埋めて泣き始めるのだった。
しかしそんな励まし合いも1時間もすれば、流石に二人は落ち着いて今はベッドの上で壁を背にして揃って体操座りをしていた。
「のう筑摩、どうしようかの……」
「それは大佐がいなくなった後の話?」
「うん……」
「新し提督の下でもしっかり務めを果たす……のみ、かな……」
「そう……じゃよな……うん」
「新しい提督か……」
「……一応叢雲さんと初春さんに相談してみる?」
「……」
特にそれで提督の転勤がなくなるなど考えられなかったが、筑摩はこの基地で最古参にして裏のまとめ役である二人に相談する事を提案した。
あの二人なら相談する事で、少なくとも今よりはもっと前向きな気持ちになれる気が利根はした。
「そうじゃの。二人の今日の勤務予定は把握しておるか?」
「うん、今日の夜なら空いている筈よ」
「うむ、では訪ねるにあたって何か土産を用意せねばな。内容が内容じゃしな。やはりお酒かの?」
「まだ明けていない一升瓶が幾つかあるからそれにしましょう。後は軽くオツマミでも作っていかない?」
「そうじゃな」
二人はここでやっと前向きな笑顔になる事が出来た。
料理にしろ相談にしろ、行動する事で今の悲しい気持ちは少しは紛れそうだったからだ。
「ツマミを作る材料は足りておるか?」
「特に大丈夫だけど……卵が余裕欲しいかしら?」
「うむ、心得た。吾輩が購買で調達してこよう」
「ありがとう姉さん。お願いね」
「うむ」
利根は行ってきますと部屋を出た。
その時だった。
「ん?」
「あ……」
タイミングが悪い(?)事に利根はちょうどそこで提督と鉢合わせてしまった。
「買い物か?」
いつもと変わらない提督の声だった。
利根はそんな普段の提督の声ももう直ぐ聴けなくなると思うと居た堪れない気持ちになり、再び目に涙が浮かび始めた。
だから震える声でなんとか返事を返す事しかできなかった。
気丈に振舞おうともしたのだが、そうしようとすると必ず失敗する。
何故かそう確信できた。
「うん……」
俯いて元気のない利根らしくない態度だった。
提督は流石に気になって大丈夫かと声を掛けようとしたが、その前に急に自分に抱き付いてきた彼女に止められた。
「……」
「……」
提督も利根もそのまま無言だった。
しかし暫くして利根の方から身を引き、今度は自然な笑顔でこう言ったのだった。
「突然すまなかったの。ちょっと卵を買いに行って来るのじゃ」
「そうか」
「うむ、またの大佐」
そのまま普段と変わりない足取りで立ち去っていく利根を提督は複雑な表情で見送った。
前は仕事から帰った後も書けたんですけどね。
今はしっかり話を作ろうとしたら集中できなかったり、他にソシャゲやってたりでかなり難しい感じです。
なので更新するとしたら今後は休日中心になると思います。
利根頑張れ! 提督頑張れ! 筑摩良いぞ!
それではまた。ノシ