提督の憂鬱   作:sognathus

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暁が改二になって基地に帰ってきました。
でも改造を受けてきた割には彼女の様子はどことなく虚ろ、元気がない感じです。
暁はそんな上の空のまま、提督に改造の報告もせずに自分の自室兼相部屋の扉を開けました。
すると……。


第3話 「不一致」

「暁改二おめでとー!」

 

「おめでとうなのです!」

 

「おめでとう……」

 

「えっ」

 

パーンッ

 

暁が部屋に入るなり突然、雷・電・響(ヴェールヌイ)といった自分の妹分達が祝福をして出迎えてくれた。

準備良く雷などは準備良くクラッカーまで用意していたようで、部屋に入ってきた暁を見るや待ってましたとばかりにその紐を引いた。

 

「……」

 

乾いたクラッカーの音と僅かな火薬の臭いが立ち込める中、果たして祝福された当事者である暁は何故か心ここに非ずといった顔でポカンとしていた。

 

「あ、あれ暁どうしたの?」

 

「クラッカーに驚いたんじゃないのかな?」

 

「電びっくりしたのです。やっぱりいきなり鳴らしちゃうよくなかったんじゃ……」

 

雷達は暁の予想外の反応に動揺して祝福ムードから一転して心配そうな顔をする。

だがそれでも暁は特に何を話すでもなく、心配する彼女達を前にして微かに唸るような声を漏らす程度の鈍い反応しか示さなかった。

 

「……」

 

「ね、ねぇ本当にどうしたの?」

 

「暁ちゃん?」

 

「らしくないな。何かあった?」

 

「……ない」

 

やっと何か言葉らしい音が聞こえたがまだ何を言ったのか判らない。

雷はもう一度お願いする様に耳に手を当てて訊いた。

 

「え? なに?」

 

「レディになってなーーーい!」

 

「「「 」」」

 

暁の絶叫に、今度は3人が言葉を失ってポカンとした顔で暁を見た。

 

 

 

「なに?」

 

提督は怪訝な顔で暁に聞き直した。

 

「だ・か・ら! 暁、せっかく改二になったのにあんまり前と変わってないのよ!」

 

「……いや? 少なくとも改造結果を見る限りは能力は飛躍的に……」

 

「そうじゃないの!」

 

「?」

 

成長していると言うのにしてないという暁。

提督は彼女が何を言いたいのか解らず困っていた。

 

「だから、能力は上がったかもしれないけど見た目が前とあんまり変わってないじゃない!」

 

「ああ……」

 

そこでようやく提督は納得したと言った顔をした。

つまりは彼女も龍驤と同じなのだ。

 

「……もっと大人に近い外見になりたかったのか?」

 

「そう! そうなの!」

 

「……具体的にはどんな風になりたかったんだ?」

 

「え? そうねぇ……やっぱり神通さんみたいなお淑やかで大人なレディになりたいわ」

 

「お前が神通のような……」

 

提督はふと天井を見上げ、暁の口調で喋る神通を想像した。

 

 

神通『お子様言うな!』

 

 

「……無理だろう。絶対」

 

「何で!?」ガーン

 

あまりにもハッキリと否定されショックを隠し切れず涙目で叫ぶ暁。

だが、無情にも提督はその様を見ても容赦なく続けた。

 

「改造は基本的に対象の能力を向上させる為に行うものだ。その過程で五十鈴の様に副次的効果が身体的特徴として表れる事があっても、ベースとなっている艦娘の体つきが変わるなどという事は先ず有り得ないだろう」

 

「そ、そんなぁ……」ジワッ

 

「素直に前より強くなった事を喜んだらどうだ?」

 

「えぇ……でもぉ……」

 

「じゃぁ考えるんだ。今の姿のままでも得をしていると言える事を」

 

「今の姿でも……?」

 

提督の提案に滲んだ涙を拭って何とか止めた暁はふと考える。

 

(今の姿でも得を……。駆逐艦じゃないとできない……してもらえない体験……?」

 

「……」キョロキョロ

 

「?」

 

何を思いついたのか暁は、その時自分の周りに提督と自分以外の気配がないか確かめるように辺りを見回した。

そして気配がない事を確信すると今度は提督をジッと見上げてきた。

 

「……」ジッ

 

「? どうした?」

 

「だっこ」

 

「ん?」

 

「抱っこ、して」

 

「……」

 

意外なお願いについ真顔になって暁を見返す提督。

だが暁は恥ずかしそうにしながらも目は逸らさずに提督を見つめたままだ。

やがてもっとねだる様に両手まで上げてきた。

 

「抱っこ」

 

「……レディじゃなかったのか?」

 

「私は“レディの誇り高さも持つ”駆逐艦暁なの。だからレディの高貴さを大衆に自慢する事もできれば、こうやって駆逐艦の特権を行使する事もできるのよ」

 

「それただの屁理屈じゃないか?」

 

「レディは感情で物を考える生き物なのよ? だから大佐からしたらただの屁理屈かもしれないけど、レディからしたら当然の思考から導き出された真っ当な理屈なんだから」

 

「……なんか改造を受けて口が上手くというか、開き直った感がするな」

 

「もーいいじゃない! 抱っこしてよ!」

 

「それでお前の気は済むのか?」

 

「うん」

 

「……」スッ

 

「わっ」

 

暁は軽々と提督に抱き上げられ、そのまま彼の膝に乗せられた。

 

「これでいいか?」

 

「んー……なかなかの座り心地ね。あ、でももう少しこのままがいいかしら?」

 

「……まぁ改造祝いだ。今日は暫くお前のオーダーに応えてやろうか」

 

「流石大佐。レディの扱いを心得ているわね♪」

 

暁は提督の膝の上で本当に嬉しそうに笑った。




暁改二になりました。
響と違って攻撃的なステータスが何か良いですね。

あ、そういえば摩耶と鳥海の改二の話書いてなかった。
それもその内書かないと。

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