提督の憂鬱   作:sognathus

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久しぶりに愛宕にゲームの遊び相手を頼まれた提督。
彼女の部屋を訪れると意外な先客がいました。


第×42話 「ゲーム5」

「う、ぐす……」

 

「どう? いいでしょう?」

 

「う、うぅ……。こ、こんな……こんなの……」プルプル

 

「愛宕、一体どうしたんだ秋月は?」

 

部屋を訪れた時から秋月は感涙して咽っていた。

提督はその様子を怪訝で見ながら愛宕に訊く。

 

「大佐がいらっしゃる前にちょっと他のゲームを見せてたんです」

 

「他の? 秋月が泣いて……感動するような?」

 

「正直言ってアレはどっちかというと男の子受けするところなんですけど、予想通り凛々しい秋月ちゃんにはツボだったみたいです」

 

「一体何を見せたんだ?」

 

「RPGのワンシーンですよ。えと、名前はですね……」

 

「うわぁぁぁぁぁん! 大佐ぁぁぁぁ!」ダキッ

 

『ワンシーン』と聞いて何かを思い出したのだろう。

突然秋月は立ち上がると涙でぐしょぐしょになった顔のまま提督に抱き着いた。

 

「ん?」

 

「大佐……私、私……」プルプル

 

提督の胸に埋めた顔を上げて、秋月はまだ涙を滲ませながら赤くなった目で何かを言おうとしていた。

提督は内心戸惑いながらも努めて優しい声で訊く。

 

「どうした?」

 

「私、きっとサイラスに顔向けしても恥ずかしくないくらいの立派な騎士になってみせますぅぅぅぅ!」ブワッ

 

「……は?」

 

「……っ、秋月ちゃん……!」グッ

 

「ふぇぇぇぇぇん、グレンカッコよかったですぅぅ……! 特に魔王との決戦の時なんて……時なんて……はぁぁぁ……」ジワッ

 

「おい……本当に大丈夫か?」

 

提督は秋月の言っている意味がまるで解らず、いよいよ彼女の異常な様子に不安を感じ始めた。

だがそれに対して愛宕は実に嬉しそうな様子でノリ良く秋月に言葉を掛ける。

 

「秋月ちゃんいいのよ泣いても。泣いちゃうのは当然だもの」

 

「愛宕さん……」グス

 

「私は信じてるわよ。秋月ちゃんならきっとカエルに負けない騎士になれるわ!」

 

「っ、愛宕さん……!」ダキッ

 

「うんうん」ギュッ

 

「……一体なんなんだ」

 

一人置いてけぼりを食らう形となっていた提督は呆然と立ち尽くすしかなかった。

 

 

「……なるほどな」

 

「すー……すー……」

 

泣き疲れて寝ている秋月を見ながら提督は複雑な表情をしていた。

愛宕から聞かされた理由が意外過ぎて反応に困っているのだ。

 

「まさかあそこまで感動しちゃうなんて思わなかったですよ。うふ♪」

 

「あの感じだと朝潮とかに見せても同じことになりそうだな」

 

「あ、それ解ります」

 

「それにしても懐かしいゲームを見せてたんだな」

 

提督は愛宕に訊いたゲームのタイトルに懐かしそうな顔で言った。

 

「やった事あるんですか?」

 

「子供の頃少しな。最後まではやった事無い筈だが、それでもそのキャラクターと専用のBGMは覚えてるくらいには強い印象が記憶に残っている」

 

「大佐も忘れないでいるなんて、本当にこのキャラは愛されてるんですねぇ……。流石世界一カッコイイ両生類です♪」

 

「最後だけ聞けば意味が解らないな」

 

「だからいいんですよ♪」

 

「なるほど」

 

「ですです♪」

 

「しかし、あれだな。今日は三人で遊ぶつもりだったのか? だが、秋月があの状態じゃな。ゲームを変えるか?」

 

「ん~……そうですねぇ。ボ○バー○ンにしようと思ってたんですけど、二人なら……。あ、これにします?」スッ

 

「カセットタイプか。また懐かしいな」

 

愛宕が取り出したゲームを見た提督は納得した様子だ。

どうやら彼も良く知っているゲームらしい。

 

「流石に大分時間が経ってるので記録維持の電池は切れてると思いますけど、格闘ゲームならあまり関係ないと思いまして」

 

「なるほど。しかしそれ、俺の記憶通りなら大分バランスが悪かったと思うが」

 

「だから面白いんじゃないですか。何を特にやってはいけないとか覚えてます?」

 

「ん……確か、相手が飛び道具を撃った時に突進系の技を使ってはいけない」

 

「ピンポンです♪ ダメージ倍になっちゃいますものね。他には?」

 

「……投げられてはいけない」

 

「そうですね。このゲーム投げが異常に強いですものね」

 

「……十字キー一回転の技は無理に出そうとしない」

 

「っぷ、くす……ふふふ。そうですね、私も未だに失敗する時があります」

 

「連打技をL・Rボタンで入力するのは難しい。こんなところか?」

 

「凄い、大体私と一緒です♪」

 

「他にどういうのがあったっけな」

 

「他には特定のキャラの弱パンチの連撃や足技のクリーンヒットを受けてはいけないとかありますね」

 

「ああ、確か行動不能になり易いんだったか」

 

「です。後は、うーん……極偶に勝手に必殺技やガードが発生するとか、かな」

 

「極偶に? どれくらいの頻度だ?」

 

「確か500回に一回くらいだったはずです」

 

「流石にそんな事にまで注意を払って遊ぶのは俺にはできないな」

 

 

「あ、3強キャラ使ってもいいですよ?」

 

コントローラを握って準備が整った提督に愛宕はふと言った。

提督は3強と聞いて直感であるキャラクターを選んだ。

それはゲームの主人公的位置のキャラクターで、飛び道具と対空技を持つ所謂オーソドックスなタイプだ。

 

「3強? これか?」

 

「あ、それ最弱ですよ」

 

「なに? じゃぁこのライバルもか? 同性能だから」

 

提督が指したキャラを見て愛宕はそれをあっさりと否定した。

 

「いえ、実はこのキャラの方が微妙に立ち直りがそのキャラより立ち直りが早いんです。だから最弱は大佐のキャラですね」

 

「……飛び道具と対空を完備した主人公キャラが最弱なのか……? このプロレス技を使う奴じゃないのか?」

 

「飛び道具を出した時の硬直時間が長いんですよ。対空技も地上にいる相手に当ててもダウンしないから反撃受けちゃうし。そのおヒゲさんは、まぁ特定のキャラとの組み合わせがなければ」

 

「……」

 

「あ、でも対抗手段はあるんですよ。しゃがんで弱攻撃を連打すれば動きを止めれます」

 

「そんな戦法考えた事もないな。それに今したとしても活かせられる自信がないな」

 

「まぁそんな事言わずにやってみましょうよ。私だってやるのは結構久しぶりなんですから」

 

「お前、そういえば生まれてからどれくらい経ってたるんだったか」

 

「え? うーん……3年くらいでしょうか」

 

「……」(たった3年程度でレトロゲームまで含めてここまでゲーマーになった奴に勝てる気がしないんだが……)

 

「あ、ハンデも付けていいですよ。私は星一個でいいですから」

 

「……」(対戦前からこの自信、もう無理だろ)

 

 

『ファイッ!』

 

「んー……やっぱり家庭用はアーケード版と比べてアニメーションが少ないのがあるからちょっと見栄えが気になりますね」

 

「……なに?」

 

「あ、余所見だめですよ」

 

ドグ、ゲシ! ピヨピ……ビシッ!

 

『ヨウウィン!』

 

提督の操作キャラは一瞬で愛宕にサンドバックにされた。

提督は愛宕のテクニックに言葉を失う。

 

「……」

 

「まだ諦めるのは早いですよ。さ、第二ラウンドです!」

 

『ラウンツー、ファイッ!』

 

 

それから1時間後

 

「……なぁ他のゲームにしないか?」

 

ついにゲームを初めてから勝利どころかラウンド勝利すら一回もできなかった提督は、少し疲れた顔で提案した。

それに対して愛宕は提督に勝った事より、ゲーム自体を楽しんでいるので凄く機嫌が良さそうだった。

 

「あ……ごめんなさい。つい」キラキラ

 

「今度はこれにしようシュミレーションだ」スッ

 

提督が箱から取り出したゲームを見て愛宕は、別に気にする様子もなくあっさりとその提案を受け入れた。

 

「あ、街作るのですか、いいですよ。じゃぁ1時間で人口が多い方が勝ちでどうです?」

 

「分かった」

 

「じゃ、私はパソコンのエミュレーターを使うので大佐はどうぞテレビの方を使って下さい。っ、しょっと……」

 

 

「おい、道路全部剥すのか? え、維持費0? 消防と民家を潰すのか?」

 

提督は横で自分の街の方針を決めている愛宕の選択内容を見て顔をしかめる。

 

「無い方が公害起こりませんからね。住民の意見なんて無視でOKですよ。短期決戦が目的なら維持費もそんなに気にする必要ないんです。地価の低い場所は公園にした方がまだ有意義ですし、警察と消防何て無駄ですよ」

 

「……」

 

 

またそれから一時間後。

 

「私の勝ちですね♪」

 

「まさか火事が起こってる街に負けるとは思わなかったぞ」

 

「生活圏広げましたからねぇ。一部が燃えても直ぐそっちに人が集まるので」

 

「なるほど……」(「どういうプレイの仕方だ)

 

「んむ……あれ……大佐? 愛宕さん?」コシコシ

 

「あ、秋月ちゃんおはよう」

 

「二人とも何をしてるんです……?」

 

「大佐とちょっとゲームで勝負してたの。秋月ちゃんもやる? 三人で遊べるの出すわ」

 

「あ、はい。パズルゲームとかあります? それなら私でも出来そうです」

 

「なるほどね。じゃぁ、王道のこれをやりましょう!」バッ

 

愛宕が取り出したのはソ連が作った有名なゲームの比較的新しいものだった。

決して自信がなかったわけではなかったが、提督は何故かこの時あらゆるゲームを愛する愛宕と、ゲームが不得意そうでありながらパズルは出来そうと言う秋月の言葉に言いよう無い不安を感じるのであった。

 

そして実際に提督はこの1時間後今度は二人にそのゲームで完敗するんのであった。




久しぶりに昔のゲームをやってみましたが、ロックマンXくらいしかまともにできませんでしたw
しかし下手でもステージの敵の配置やアイテムの場所は何となく覚えているんですよね。

それ思うと自分は小さい頃結構ゲームで遊んだんだなと思いますw

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