提督の憂鬱   作:sognathus

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ある日提督が執務をしていると、筆を執る手を止めて秘書艦のビスマルクが話し掛けてきた。
何やら少し不満げな顔で彼女は以前提督が風呂でのぼせた事について訊いてきました。


第×41話 「自慢2」

「大佐、お風呂でのぼせたって本当?」

 

「ああ、情けない話だがそうみたいだ」

 

「ちょっと、気を付けてよね。朝潮から話を聞いた時は凄く心配したんだから」

 

「そうか、すまないな。気を付ける」(問題は自分が目を覚ました時は既にベッドの上に一人だけだったという事だ。恐らくは朝潮達が助けてくれたんだろうが、それまでの記憶が全くないから実際にどういう状況だったのか今の時点で把握できていない。服も着せてもらっていたし……)

 

「もう……さ、最初から私を誘ってくれたらのぼせる事なんかなかったのに……」カァ

 

ビスマルクは恥じらい頬を仄かに朱に染めながらそんな事を言った。

対して提督はそんな彼女にあきれ気味な顔でツッコム。

 

「何でお前と一緒に入る前提なんだ。異性と一緒に入るのが当たり前と言う時点でおかしいだろ」(それにその様だと結局はこいつがのぼせていた気がする)

 

「ケッコンしてるんだからそんなの気にしなくていいじゃない」

 

「全く気にしないというのも司令官の体裁として問題あるだろう。公私混同はしない。加えて互いの合意も必須だ」

 

「むぅ……」ブスー

 

「どうしたんださっきから。何かあったのか?」

 

「別に……。久しぶりに二人きりなのに大佐があまり構ってくれないから……」

 

「二人きりなのはお前が秘書艦だからだろ」

 

「でも! それでも私が秘書艦をするのって久しぶりじゃない!」

 

「……そうだったか?」

 

「Ja!(ヤー)」

 

「そっか」

 

「え、それだけ?」

 

「まだ仕事があるしな」

 

「えぇ……」シュン

 

「お前、一応優秀なんだからこういう時くらい手伝ってくれ」

 

「手伝ったらご褒美くれる?」

 

身を乗り出してそんな事を訊いてくるビスマルク。

その目は子供の様に輝き、明らかに褒美を貰えることを確信していた。

 

「仕事に見返りを求めるな」

 

「Nein!(ナイン)」

 

「……」(ドイツ語が多いな。拗ねてるのか)

 

「ねぇ、ご・ほ・う・び!」グイグイ

 

「引っ張るな。……そうだな」

 

「くれるの!? キスね!?」

 

「いや、ウドンだ」

 

「 」

 

「なんだ?」

 

「え、いや……。う、ウドン? 何それ?」

 

「なんだ、食べた事なかったのか?」

 

「食べ……? 食べ物なの?」

 

「知識自体がなかったのか。なら余計にウドンだな。仕事が終わったら昼に作ってやる」

 

「……私、食べ物より大佐とイチャイチャしたいな」

 

「なら、俺が作ったウドンが不味かったらそうしろ」

 

「美味しくなかったら構ってくれるの!? 本当!? ホントね!?」

 

「おい、失礼だぞ。最初から不味い前提で話をするな」

 

 

それから暫くのち、提督は約束通り手作りのウドンをビスマルクに振舞った。

彼女は最初こそあまり美味しそうな目で見ていなかったが、箸の代わりにフォークを使ってその麺を口に含んだ瞬間、その顔は喜びに満ちた。

 

「……! 美味しい~♪」チュルルッ

 

「ほら」

 

「? なぁにそれ?」

 

「七味だ。まぁ掛けてみろ」シュッシュッ

 

「しちみ……? ん……!」ズズッ

 

「どうだ?」

 

「んく……!」ズッズズッ

 

(返事をしないくらい気に入ったか)

 

 

「……はぁ、美味しかったぁ♪」ゴロン

 

「食べ難い。離れろ」

 

「ん~……ふふふ~♪ やっ♪」スリスリ

 

「時々お前が本当にあのビスマルクなのかと疑うぞ」

 

「私はマリアだもん。他の真面目な子と一緒にしないで♪」

 

「まるで真面目が悪徳のような言い方をするなよ……」

 

「そうは言ってないわ。でも損なのは確かね」

 

「損って、お前……」

 

「私は大佐に甘えらえれるならこっちの方がいいの!」

 

「はぁ……」(これで総合的な能力は改造を受けた扶桑に匹敵する上に、艦隊唯一改三だからな。実力に裏付けられた自信と自負もある分、ここぞという時は期待に応える活躍を見せるから扱いが難しい)

 

「ん~♪ ね、抱き締めてよ」

 

「飯を食ってる」

 

「あ、じゃぁ私が食べてあげる!」

 

「お前が食べるのか……」

 

「あ、食べさせて欲しかった?」

 

あわよくば自分が望む展開へと運べると思ったのだろう、期待に満ちた顔でそんな事を言うビスマルクだったが、提督は特に気にした様子もなく素っ気なく返すだけだった。

 

「いや、別に。だけど普通はそういう思考になるんじゃないか?」

 

「だって本当に美味しかったんだもん」

 

「それは光栄だが、ウドンでそんなに感動したのか……」

 

「日本って本当に美味しい食べ物だけはたくさんあるわよね」

 

「まるで日本の良いところは食べ物だけみたいな言い方だな」

 

「あ、別にそういう意味じゃないんだけど、でも美味しいのは確かじゃない?」

 

「そうだな。本当は基地の食事も現地に馴染んだ料理になるところを国の計らいで日本の飯にしてもらってるからな。可能な限り食材に関しては現地の物を利用してるが、それでも必要な物は国から直接送ってもらっている。その事に感謝しないとな」

 

「その影響かはハッキリとは判らないけど、町にも日本風の食事ができるお店が増えてきたわよね」

 

「基地の建設は防衛と誘致の効果もあるからな。地元住民の同意は得られているとは言え、外国の軍施設に対する印象は普通は良くない。それにも拘わらずここに関してはそれなりに理解も得られてるみたいだ。これは本当に彼らに感謝すべきところだな」

 

「私たちマナー良いもの。問題なんて起こさないわ」フンス

 

「そういう主張を自分からしないのも奥ゆかしい印象を相手に与える為に必要なんだぞ?」

 

「う……で、でもあまりに大人しくても受け身に取られて、場所によってはたかられたりするじゃない」

 

「その辺りのバランスのとり方は難しいところだな。土地柄による理由が大きいから互いに馴染むことによって緩和するのに期待するしかないんじゃないか?」

 

「私、この前タクシーに乗った時ぼったくられそうになったの。でも一銭たりとも負けなかったわ!」フンス

 

「だからそういう事を自慢げに言うなよ……」

 

提督は子供の様な態度でそんな事を自慢するビスマルクに苦笑しながら食事を楽しんだ。




ビスマルク最近使ってないです。
まともなレベリングはせずに演習しか利用しない遊び方をしているのが原因ですがw

ですが、そんな事を1年くらい続けた甲斐があって、ようやく所有している駆逐艦のレギュラー勢が全員まとまったレベルになりそうです。
彼女たちの育成が終わったらやっと次は軽巡の番です。
重巡もそうですが、半端な状態が多い彼女たちをまとまった戦力にするのが楽しみですねぇ。

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