提督の憂鬱   作:sognathus

360 / 404
龍田が廊下を歩いていると摩耶とすれ違いました。
龍田はすれ違う数分前にも入浴道具を持った彼女とすれ違っていたので、直ぐに引き返してきた理由が気になりました。
ワケを訊いてみた結果、摩耶は龍田に滅多にない朗報を授けてくれました。

*野分達のキャラ分けが難しかったので三人に関してはセリフの前に名前あり


第×38話 「脅威」

「あらぁ、摩耶さんお風呂に行ったんじゃなかったの?」

 

「おう、龍田。やな、行ったんだけど丁度大佐が入っててさ」

 

「……大佐が?」

 

「ん? おめー知らなかったのか。大佐、今、自分の部屋の風呂が壊れててあたしらの浴場使ってるんだぜ。ま、大佐も不便だよな。このくらいの時間しか落ち着いて入れないし」

 

「……ふーん……」

 

スタスタ

 

聞くが早いか、龍田は摩耶の話に軽く理解を示すと彼女が戻ってきた浴場がある道へ足早に進んで行こうする。

摩耶はなんとなくそんな龍田が纏っていた雰囲気が気になり、それを止めた。

 

「ん? おい、どこに行くんだ?」

 

「え? 何ってお風呂ですけど?」

 

「え、はぁ!? いやいや、お前確か夕方くらいに入ってたよな? ていうか大佐が今風呂に入ってるって言ったろ?」

 

「……部下として提督のお背中を流しにいくだけですよぉ。ご・ほ・う・しです」

 

「ご、ご奉仕って、お、お前なぁ……」カァ

 

「大丈夫です。なにもやましいことなんてしないですよぉ♪」

 

(その割には上気気味で目が楽しそうじゃねーか……)

 

「まぁ待てよ。行っても無駄だぜ。入り口には大佐に見張り頼まれた野分達がいるからよ」

 

「……見張りだなんて、大佐は私達のこと信用してないのかしら」

 

「警戒してるから立ててるんだろうが、ていうかお前だけだ。あたしも含めるな」

 

「……まぁいいです。野分ちゃん達だったらちゃんと丁寧に“お願い”すれば解ってくれると思いますしぃ」

 

「脅す気か?」

 

「ふふ、お願いですよ。お・ね・が・い♪ それじゃ、麻耶さん、失礼しますねぇ」ヒラヒラ

 

 

「……」(行っちまった。……アイツに頼んでみるか。アイツなら真っ向から龍田に素で向かい合えるだろ)

 

摩耶は去りゆく龍田の背中を眺めながらある人物に野分達の救援と援護をお願いする事にした。

 

 

~その頃の大佐

 

「……」(……流石に広いな。そして誰もいないから解放感が堪らない)

 

提督は湯気が漂う広い浴場に一人立ちながら、一通りその様子を眺めていた。

そしてその浴場の雰囲気は彼にある考えを思い付かせる。

 

「……」(これはあまりにも気持ち良くて浴槽で寝てしま……いや、寝てみるのもいいか。若葉達には待たせた分、なにかお礼をしよう)

 

 

 

~見張りサイド

 

野分「摩耶さんに悪い事したかな」

 

朝潮「今回は仕方ないよ。それに、ここが使えなくても入渠用の浴槽使えば個人ならゆっくりできると思うから、摩耶さんならそれくらい納得すると思うよ」

 

若葉「うん、私もそう思う。摩耶さんなら大丈夫だ」

 

野分達は三人可愛く浴場の入り口の壁に並んで座り、提督が用意した看板と一緒にちゃんと見張りを続けていた。

 

野分「うん、そうね。それにしても、結構人断ったね」

 

朝潮「それは同意ね。この時間帯でも結構入りに来る人いたね」

 

野分「まぁ、隼鷹さんや長門さんがお酒持ちながら来たのは意外でもなかったけど、ね」

 

若葉「ああまぁ、あれは……」

 

若葉はどこか呆れたような心配するような顔をする。

 

野分「意外だったのはその後ろに神通さんも楽しそうに着いてきてた事じゃない? あれは本当に意外だったよ」

 

朝潮「ああ、うん。隼鷹さん達は別に気にならなかったけど、神通さんには悪い事した気がしたよね。ちょっと残念そうにも見えたし」

 

野分「……大佐がお風呂からあがったら教えてあげない?」

 

若葉「うむ、それは良い考えだ。私は賛成だ」

 

朝潮「私も。……一応、長門さん達にも教えないといけないよね」

 

若葉「それはまぁ……攫われないように注意しなければ、な」

 

野分「えっ、攫われるの!?」

 

野分は物騒な言葉に驚いた顔をする。

 

朝潮「あ、野分は知らなかった? 結構油断したらヌイグルミ代わりにされるのよ?」

 

野分「ぬ、ヌイグルミ……」

 

若葉「因みに隼鷹さんも油断ならない。私は前に晩酌中に尋ねた為にあの人の酒気だけで頭がクラクラしてしまった」

 

朝潮の注意喚起に続いて、若葉がその時を思い出した所為か冷汗を垂らしながら、更に隼鷹についても注意を促す。

 

野分「え、若葉お酒飲めないの?」

 

若葉「……酎ハイなら。ジュースみたいだし……」

 

若葉はお酒に強くない事を気にしているのか、俯き加減で恥ずかしそうに答えた。

 

朝潮「あ、それ解る。私も初めは酎ハイだったよ」

 

若葉「初めは? じゃぁ今は?」

 

朝潮「ん、今も基本酎ハイよ。それ以外のは付き合いで飲むときだけ」

 

若葉「そうか……」ホッ

 

自分と一緒のお酒を好む人がいる。

その事実だけで若葉は少し安心した気持ちになった。

 

朝潮「野分は飲めるの?」

 

野分「ん? 私? 私は飲めるよ。基本的に朝潮と一緒で酎ハイしか飲まないけど、私の場合は付き合いでないとお酒はあまり飲まないかな」

 

若葉「なるほど。では野分は私と同じで酎ハイしか飲まないんだな」

 

野分「そうよ。仲間ね」ニコッ

 

若葉「……うん!」パァッ

 

朝潮「……あの、私も一応お酒は酎ハイ派だからね?」

 

若葉「解っている。朝潮も勿論私たちの仲間だ」

 

野分「ね、今度飲み会しない? あわよくば大佐とか誘ってさ」

 

若葉「ほう、いいな」

 

朝潮「大佐付き合ってくれるかな」

 

若葉「2月から3月の間はバレンタインとホワイトデーの期間とされているから、大佐もきっと付き合ってくれる。間違いない」

 

朝潮「そう? なら、うん。いいかもね」

 

野分「だね。大佐がお風呂から出たら早速訊いてみようよ」

 

キャッキャッ、ワイワイ

 

 

「……目標かくに~ん。さて、どう攻め……お願いしようかなぁ」

 

ワイワイとささやかな楽しみに湧く駆逐艦たちに、とある脅威が静かに忍び寄ろうとしていた。




エロ書くとか言っていおきながら先にこっちの話を間に入れたくなったので投稿する事にしました。
暖かくなってきましたね。
そろそろエンジンをかけていきたいと思います。
……今週中には。
あと、モバゲやめたい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。