提督の憂鬱   作:sognathus

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軍の重要拠点に敵の襲撃が予想されているという。
提督は上からの指示でその拠点周辺に存在する敵勢力の駆逐と防衛を任された。
だが、相変わらず資材に余裕がない提督は、指示に従いながらも任務に出す艦隊の編成をバランスと省エネを重視して少し軽めのものにした。
その結果……。

*登場人物が多いのでセリフの前に名前あり


第×26話 「本気」

隼鷹「大佐、帰ったよー!」

 

利根「戻ったのじゃ!」

 

大淀「戻りました」

 

加賀「帰投です」

 

扶桑「只今戻りました」

 

山城「ただいまぁ」

 

基地に帰投した艦娘の格好は一働きした事を表すように、ところどころ傷つき、汚れていた。

提督はそんな彼女達の帰還を労いながら迎えたのだが……。

 

「ご苦労。……なかなか苦労してるみたいだな」

 

利根「……」ムスッ

 

扶桑「そうですね。敵の本体がいる地点は補足できているのですが、守りがまだ……」

 

「ふむ……」

 

返ってきた艦娘達の表情は一部を除けばお世辞にも明るいとは言えず、どことなく浮かない顔をしていた。

どうやら戦果自体は出しているものの、作戦の目的を達成するという本懐は遂げる事ができてないようだった。

 

大淀「個々の働きは問題はないと断言します。しかしそれに対して敵の勢力が……」

 

隼鷹「役に立ってないつもりはないけど、ありゃぁちょっと分が悪いかもねぇ。後一歩攻めきれない感じなんだよ」

 

加賀「流石に悔しくて頭にきてます」

 

 

「……なるほど。仕方ない少し編成を変えてみるか」

 

利根「む、吾輩はまだやれるぞ!」

 

山城「私もよ!」

 

艦隊を代表する子供組が早速吠えた。

ただちょっと残念だったのは、その吠えている子供の様な艦娘が戦艦と航巡という、艦種の印象からは少々想像し難い大人げなさだった。

 

「分かっている。お前達を責めているわけじゃない。ただ、倹約重視の守編成から重消費を前提とした攻編成に切り替えるだけだ」

 

大淀「資材、大丈夫でしょうか?」

 

「短期必勝を願うしかないな。勿論攻撃に転じるからには完遂するつもりだが」

 

扶桑「力及ばず申し訳ございません……」

 

加賀「……」プクー

 

隼鷹「まぁまぁ加賀、別に悪い事をしたわけじゃないんだから」

 

「その通りだ。これ以上お前たちを出撃させるのも返って疲労をだけが蓄積してしまう事にもなりかねないからな。ここは戦略的一時撤退と思っておけ。敗退ではない」

 

利根「……了解じゃ、ちょっと寝る!」

 

「いや、先ずは風呂に入って来い」

 

汚れて破損した服の所為で半裸に近い恰好となっていた利根が、執務室のソファーに横になろうとしたのを提督がすかさず注意した。

 

 

山城「お風呂! 姉様お背中流します!」

 

扶桑「そう言いながら胸揉まないで。怒るわよ?」

 

大淀「分かりました。では申し訳ないですが、入渠の後、待機任務に入りますね」

 

「ああ、皆ゆっくり休んでくれ」

 

隼鷹「やっほー! おっふろー♪」

 

加賀「……まぁいいでしょう」

 

「ああ、お前達二人は修復剤使ってシャワー浴びたら直ぐに戻って来い。次の出撃にもお前達にはそのまま参加してもらう」

 

隼鷹・加賀「 」

 

山城(あ、二人とも固まった。隼鷹はともかく、加賀もお風呂が嬉しかったのね)

 

利根(二人ともご愁傷様じゃ。そして申し訳ない)

 

 

「大淀」

 

大淀「え、あっ、わ、私も……?」

 

「いや、そこの二人をシャワー室に連れて行ってやってくれ。扶桑も頼む」

 

大淀「あ、そういう事ですか。分かりました」(よかったぁ)

 

扶桑「分かりました。お任せ下さい」

 

 

 

―――それから三十分後。

 

陸奥「それで、私達が呼ばれたのね」

 

武蔵「ふふー、久しぶりの実戦だな。楽しみだなぁ♪」

 

提督の前に基地の重火力を代表する戦艦達と航空戦術のエキスパートが集まった。

陸奥と武蔵は久しぶりの出撃に目をキラキラさせ、長門は興奮で疼く体を抑えるように腕を組みながら嬉しそうに言った。

 

長門「右に同じだ。偶には動かないと太ってしまうからな」

 

赤城「長門さん、私太ってないですよ?」

 

何故か名指しもされていないのに赤城が直ぐに長門の言葉に反応した。

提督は早速緊張感が崩れる場の雰囲気に内心苦笑しながら目の前の頼もしい部下たちに言った。

 

「誰もそんな事言ってないだろ。長門、そこで白くなっている加賀と隼鷹を艦隊に編入して準備が出来次第出撃しろ」

 

長門「了解だ。任せてくれ。赤貧基地が火を起こすとどれだけ恐ろしいか敵に刻み込んでみせよう。ところであいつらに色が着くまで遊んでいいか? 私は隼鷹がいいのだが」

 

「駄目に決まっているだろ。いい加減にしろ」

 

武蔵「あー、楽しみだなー♪ 46cm全然撃ってなかったからなぁ♪」

 

陸奥「武蔵、やり過ぎちゃダメよ? ムダな消費は避けるのは絶対なんだからね?」

 

赤城「今回は加賀さんと隼鷹さんまで一緒なんですね。これなら敵に“空は無い”様なものです。期待してて下さい大佐♪」

 

「ああ、頼んだぞ」

 

 

こうして利根達の代わりに新たに編成された艦隊は、彼女たちの奮闘と提督の期待に応えるかのようにものの見事に出撃してから一刻も経たない内に敵本隊を撃破し、目的を達した。

提督の基地は、普段演習で勝つ事より試合を経験させ育成を重視しているので偶に外から甘くみられがちだが、このように本当の主力と呼べる火力はちゃんと保持している。

今回はその事を内外に示す良い機会になったようで、戦闘後の残り火によって赤く染まった空を背景に帰還する彼女たちを見た敵はそれを恐れ、また偶然近くを通った味方はそれを見て頼もしく感じたという。




E2、扶桑・山城・加賀・隼鷹・利根・大淀でE2を攻略していたのですが、どうもボスへの到達が悪かったので、少ない資材を振り絞って編成を本文に著した様に少し重くしました。
すると、あっけなくクリアできたという……。

1週間くらい早くこれやっとけば良かったかなぁ。

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