提督の憂鬱   作:sognathus

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仕事中、突然部屋を訪れた初風はツカツカと提督に歩み寄ると、机にもたれた。
そしてまるで暇を持て余して相手を求める猫の様な顔でこう言ったのだった。


第×22話 「強がり」

「ご飯、まだなの?」

 

提督の机に顔を乗せた初風が暇そうな声で提督に訊く。

 

「初風、何故俺に言う? 飯の準備なら鳳翔や間宮がしてるだろ? あいつらに訊け」

 

「むぅ、いいじゃない。大佐はここのさいこー責任者でしょ? それくらい把握しててよ」

 

「悪いが飯時にまで関心はないんだ」

 

「……」プクー

 

「なんだ? 初風は空腹で機嫌が悪いのか? ならこの長門お姉さんが何か作ってやろうか?」

 

提督と初風のやり取りを後ろで楽しそうに見ていたその日の秘書艦の長門がここで話に入ってきた。

 

「……遠慮するわ。だって長門さんにご馳走されたらなんかわたしまで食べられそうだもの」

 

提督の基地の長門は一般的に知られている“長門”の性格とは大分変っていた。

一般的に認知されている長門の性格と言えば、誇り高く、口数が少なく、それでいて強情が祟って素直になれない面を持つ、そんな“凛々しい大和撫子”を体現したような高潔で頼りになる艦娘となっている。

ところがここの長門は、誇り高くて頼りになる、までは合っているが、他は、よく喋り、自分を偽らず、可愛いものは有象無象を問わず好きと豪語し、その上人懐っこいときている。

故に初風はそんな彼女だったからこそ冗談のつもりで言ったのだろう。

しかしそれを単なる冗談として流さず逆に相手を弄る為の材料として使うのが“ここの長門”であった。

 

「ん~? まぁ、今日は節分だしな。可愛いお前の『マメ』を食べるのもいいかもな」ニマニマ

 

「わたしの、豆?」キョトン

 

「長門」

 

「はは、冗談だ」

 

「大佐、長門さんが言った意味解るの? どういう意味? 確かに今日は節分だけどわたし豆なんて持ってないわよ?」

 

「気にするな。大方お前がもし豆を持っていたら取り上げて、それを涙目で取り返そうとするのを見て楽しもうってとこだろう」

 

「おいおい、私はそんなに性格は悪くないぞ?」

 

「わ、わたし豆なんて持ってないからね! それに取られたって泣かないんだから!」プンスカ

 

「む、大佐の所為ですっかり私が悪者になってしまったじゃないか。この責任は追及させてもらうぞ」

 

「元々お前がタチの悪い冗談を言ったのが原因だろうが……」

 

「そーよ! 大佐は何も悪くないわよ! それに責任って何よ? 長門さんが大佐にどうやってそれを請求するっていうの?」

 

「あぁ? そりゃお前決まっているじゃないか。ベッドの上で、だよ」

 

「ベッド?」

 

「おい……」

 

「伽だ伽。よ・と・ぎ」

 

「よと……? ……!」カァッ

 

「ははは、やっと解ったか? 真っ赤になって、あーもう可愛いなぁ」スリスリ

 

「ひゃ!? ちょ、ちょっとひゃめ……」ジタバタ

 

「おー、これは良く伸びるほっぺだ」グニーン

 

「みゅひー!?」

 

「……」(仕事ができん)

 

提督が呆れている中、長門に玩具にされていた初風は必死に暴れる事で何とか彼女の腕から脱出した。

 

バッ

 

「お?」

 

「う、うぅ……。お、覚えておきなさいよ! ぜっったい仕返ししてやるんだからぁ!」

 

テテテッ、バタンッ

 

 

「……涙目だったな」

 

「ああ」

 

「可愛かったな」

 

「お前、歪み過ぎだぞ」

 

「ふふ、冗談だよ。ちゃんと後で謝るさ」

 

「……全く、なんでお前はこうなったのか」

 

「ん? なんだ? 私の性格の事か?」

 

「初めて会った頃からは想像ができない程変貌してると思うんだが」

 

「ああ、だって、なぁ?」ニヤニヤ

 

「……なんだ?」

 

長門は提督の思いを聞くと、何やら悪戯っぽく笑いながら机の正面に回り、身を乗り出してきた。

前屈みになる事によって彼女の“谷間”が提督の目の前にきた。

提督は最初それを彼女が故意にやっているのだと思ったが、それに対して長門は特に意識している風には見えなかった。

恐らく提督と初めて会った頃を思い出しているのだろう。

最初こそからかう様な顔をしていたが、今では昔を懐かしんで柔らかい表情をしていた。

 

「私も最初は確かに大佐の言う通り、なんていうか……優等生だった。……そうだったよな?」

 

「なんで改めて確認するんだ。まぁそれくらい変わったという自覚はあるって事か」

 

「ふふ、まぁな。まぁ確かに今でも仕事の上では優等生なのは変わらないつもりだが、性格がそうでなくなったのは仲間の影響だよ」

 

「ふむ?」

 

「ここの奴らは大体大佐に好意を寄せているからな。そんな中で私は“自分を保ち続ける”事に段々不安になって来たんだ」

 

「不安?」

 

「そうだ。まぁ私は優秀だから? 大佐の役に立つことによって信頼は得る事は難しくないだろう。だがそんな中私は、他の奴らと比べて差が付けられてしまっている事に私は気付いたんだ」

 

「ふむ」

 

「距離だよ、単純に。大佐との距離。親しさだ」

 

自分から問い掛けるように語っておきながらあっさりと自ら答えた長門の顔は優しかった。

 

「……」

 

「最初の私のままでもそりゃ時間を掛ければ親しくなれただろうが、だがそれだと他の奴らは持っているのに、私だけが持っていない“大佐との仲”ができてしまいそうでな」

 

「……」

 

「結論、私はそれを損だと考えた」

 

「もしかして」

 

長門の話を静かに聴いていた提督は呟いた。

 

「うん?」

 

「最初のお前の一番の敵は駆逐艦たちだったか?」

 

「ふふ、正解だ」

 

「なるほどな」

 

「大体理解できてきたか? なら褒美に私の頭を撫でさせてやろう」ズイ

 

「何故褒められる側が上から目線なんだ」

 

「なんだ不満か? ならむ……にぃ?」

 

長門はそう言うと差し出していた頭を引っ込めて徐に胸元に手を掛けた。

提督はそれ以上はさせず、彼女の顔を掴んで引き寄せると、やや強引な形だったが黙って頭を撫でてやった。

 

「よしよし」ナデナデ

 

若干棒読み気味の声だったが、長門はその撫で心地を気持ちよさそうに受け止め、目を細めた。

 

「ん……。まぁいい♪」




那智改二になりました。
初風可愛い。
他にはえーと……早く暖かくなって欲しいorz

艦これアニメ、金剛姉妹が出ると聞いて4話だけ観ました。
が、観始めて5分くらいで観るのやめました。
何故だろう……。
なんかそれ以上観たいとは思えなかった……。

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