提督の憂鬱   作:sognathus

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午前、いつもだったら執務をしている頃の時間ですが、その時に限っては提督は仕事が出来ずに困っていました。
その原因は彼の机に乗っているアルモノが原因でした。
それは……。


第×21話 「嫉妬」

「……山城」

 

「なんですか? 大佐」

 

「机に座ったままだと仕事ができない。下りろ」

 

「……」フイッ

 

その日の秘書艦であった山城は何故か、その時にに限っては提督の傍らで執務の手伝いをするのではなく、彼の机の上に座ってその仕事を邪魔していた。

邪魔をしている山城は少し頬を膨らませ、何故か不機嫌な様子だった。

 

「邪魔するなら邪魔するで、せめて後ろを向いてくれないか」

 

「大佐はわたしのお尻が見たいんですか? セクハラですね」

 

「堂々と前を向いて俺に下着を丸見えにしているお前に言われたくはない。だからせめて後ろを向けと言っているんだ」

 

提督の言う通り山城は提督の方を向いて机に座っていた。

だが、その座り方が体育座りであった為に、彼女の淡いピンク色の下着は提督に丸見えとなっていた。

山城はその事に提督に指摘されて初めて気づいたらしく、顔を真っ赤にした。

 

「……!」カァッ

 

「恥ずかしいだろ?」

 

「……」フイ

 

(子供じみた強がりだな。後ろを向かなければ、座り方も変えないとは)

 

提督は溜息を吐きながら若干あきれ気味に訊いた。

 

「あれか。俺が扶桑とケッコンしたから機嫌が悪いのか?」

 

「……」

 

山城はその質問には答えず、横を向いたままだ。

 

「言っておくが俺にお前から姉を奪ったという考えはないからな。あくまでお互い同意の上だ」

 

「……そんな事解ってますよ」

 

「なんだ。それで拗ねたんじゃないのか?」

 

「拗ねてって……。別に違います」

 

「なら何故機嫌が悪いんだ? 原因がそれじゃなかったら俺には皆目見当がつかないんだが」

 

「……別に」

 

「……?」

 

(言えるわけないじゃない。姉様が先にケッコンしたのがちょっと悔しくて機嫌が悪いなんて)

 

「……取り敢えず仕事がしたい。いい加減下りろ。そのままずっと俺に下着をみせているつもりか?」

 

「……見ていればいいじゃないですか」

 

「なに?」

 

「……っ」(わたしったら何を……!)カァ

 

「おい、強がりもそのくらいにしておけよ」

 

「強がりなんかじゃないです」

 

「強がりじゃなかったらお前それ、ただの痴女だぞ」

 

「ち……!」カァッ

 

(よく赤くなるな。まるで瞬間湯沸かし器だ)

 

「~~~っ」クルッ

 

(やっと後ろを向いたか)

 

 

「もういい。私室で仕事をして来る。やる気のない秘書艦はそこで反省していろ」

 

後ろこそ向いたものの、それでも机の上から意地を張って動こうとしない山城に、提督は本気か演技か相当呆れた様子で席を立ち、書類を纏めてその場を立ち去ろうとした。

山城はそこにきてやっと慌て、焦った様子で彼の服の裾を掴んだ。

 

「あ……」

 

ギュッ

 

「ん?」

 

提督が振り返った先には叱られた子供の様に自分の行動を後悔している山城の泣き顔があった。

 

「ご、ごめ……待って……」ジワッ

 

「……却下だ。子供の我儘に構うつもりはない」

 

「あ……。……っ、あや……まります。ごめ……えぐ……なさ……い」

 

「なら理由を言え。それで納得すれば取り敢えず仲直りという事にしてやる」

 

「……しくて」

 

「ん?」

 

「くや……しくて」

 

提督は山城の言葉を聞いて、たった一つだけ思いついた理由を意外そうな顔で尋ねた。

 

「……扶桑にケッコンで先を越されたから?」

 

「……お、お姉様には内緒にして……」

 

「……悪い、それは本当に分からなかった。意外過ぎて」

 

「……」

 

「お前は完全に姉っ子だと思っていたからな」

 

「……お姉様は大好きです。……でもわたしは大佐も好きだから、その……。ごめんなさい。こういう気持ち初めてでどうしたらいいか考えてたらつい機嫌が……」

 

「なるほどな」

 

「……」シュン

 

「分かった。大方理解した。取り敢えず先ず仲直りだ」スッ

 

提督は下を向いて俯いている山城に手を差し出した。

表情こそいつもの通り不愛想だったが、それでもその顔は彼女を叱っていた時より明らかにどこか柔らかく見えた。

山城はその顔を見て安心が小さな息となって口から洩れるのを感じた。

 

「あ……」

 

「握手だ」

 

「う、うん……」

 

ギュッ

 

 

「よし、それじゃ仕事を始めるか」

 

「!? ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

むず痒い反省の雰囲気も、ほろ苦い恋の雰囲気も微塵もない唐突の展開に山城は信じられないという様な声で叫んだ。

 

「ん?」

 

「え? なに? これで終わり? 終わりですか!?」

 

「ん? ああ、そうだな。お前も早くケッコンできるように頑張れ。応援しているぞ」

 

「え……あぅ……えぇ……? あまりにもあっさりし過ぎてないですかぁ……?」

 

「そう言われてもな。俺はお前の気持ちを知って光栄に思うくらいしか……」

 

「人のパンツまで見たのにそれだけ!?」

 

「あれはお前が見せたんだろ。それに、別に俺はそれによって劣情は抱いたりはしていない」

 

「興奮しなかったっていうの!?」

 

「おい、人を年中発情しているような獣の様な言い方するな」

 

「だって、ねぇ? 人ってそうじゃない? 違うんですか?」

 

「発情というよりかは『常に興奮できる』だろ。さっきの場合は、日中、仕事中、この二つの環境下で俺が性的興奮を覚える可能性は皆無だったという事だ」

 

「そんな……」

 

山城はそれを聞いて今まで感じていた羞恥が、言いようのない虚脱感へと転じるを感じた。

何か恥ずかしさを我慢して一瞬でも意地を張った自分が凄く馬鹿に思えた。

 

「こんなことで女のプライドの無駄遣いするなよ……。良識の範囲内で行動すれば済む話だろ」

 

「う……」

 

「どれだけ余裕が無かったんだ」

 

「あ、改めて考えてみれば凄く子供っぽい事してた……」カァ

 

「今更か」

 

「はぁ……もう嫌ぁ……。不幸だわ……」

 

「自分で墓穴を掘っただけなのに、それを運の所為にするな。ほら仕事しろ」

 

「せめて慰めて欲しいんですけど……」ジトッ

 

「……昼休みになったら構ってやる」

 

「っ、本当? 本当ですね? お、お姉様みたいに優しくしてくれます?」

 

「……どう優しくしろって言うんだ」

 

「ひ、膝に乗せてくれたり、そのままあ、頭……撫でて、くれたり……とか……」

 

「ああ、分かった分かった。ついでに飯もたべさせてや……」

 

「口移しで!? い、いきなり大胆ね……」

 

「話を勝手に捻じ曲げるな。何もしないぞ」

 

「あ、嘘、嘘だから! 山城頑張ります! 先ずは何が食べたいですか?」

 

「今日の献立は決まってただろう。鳳翔に迷惑掛けるな。あと仕事しろ」

 

提督は頭痛を覚えつつ溜息を着きながら言った。




こんばんわ、扶桑よりかは山城が好きな筆者です。
山城がデレたら可愛いんだろうなという妄想をよく抱きます。
そんな彼女もほぼ演習だけをこなしながらレベル97になりました。

頑張ろう!

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