提督の憂鬱   作:sognathus

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前回同様唐突に始まった尻取り大会二回目。
前回の雪辱を晴らす為、金剛は闘志を燃やし、ビスマルクと比叡と榛名は楽しそうにしています。

提督はなんとなく迷惑そうな顔をしながらもゲーム自体には乗り気の様です。


第×18話 「尻取り2」

「第二回金剛姉妹歴史上の人物尻取リ大会デース!」

 

「いいわね、面白そうじゃない。負けないわよ」

 

「今回はマリアも参加するんだな」

 

「あ、はい。マリアさんは霧島の代わりなんです。彼女、今日は扶桑さんと飲んでまして」

 

「大佐! 遅ればせながら扶桑さんとのケッコンおめでとーございます! 第11夫人としてわたし、大佐にお祝辞を申し上げます!」

 

「ん、ありがとう。扶桑の奴指輪を握って飛び出していったと思ったら……そうだったのか」

 

「ケッコン当日に飲みに行くなんて……」

 

扶桑の事を聞いてビスマルクは唖然としていた。

 

「扶桑、よっぽど嬉しかったんデスネ」

 

「フランも大佐に懐いているみたいだし、大佐、練度に達したらあの子ともケッコンしてあげてね」

 

「本人にその意思があればな」

 

「え、フランちゃんもうそんなに大佐に懐いているんですか? 流石ですね大佐ぁ。このこのー」

 

「榛名、フランさんを応援しますよ!」

 

「ワタシもよ。マリア、フランが advice で困っていたらワタシも力になるからネ!」

 

「みんな……Danke schon! フランに伝えておくわ」

 

 

「……フランシスコ・ザビエル」

 

「「「「 」」」」」

 

唐突なゲーム開始に4人は言葉を失う。

だが提督はそんなことを気にしている様子もなく、榛名の方を向くと続きを促してきた。

 

「榛名、お前だ。今度は歳下から上がってマリアの順にしよう」

 

「えっ、わ、私ですか? え、えーと……る、ルドルフ・シュタイナー!」

 

「誰それ!? むぅ、大佐、無理矢理話題変えましたね? いいですけど……あ、浅井長政!」

 

「シュタイナーは昔の思想家か哲学者だったはずネ。浅井はえーと……侍だったわよネ? さ……さ、佐々木小次郎!」

 

「へぇ、流石四姉妹の長女、よく知ってるわね。宇田川玄随!」

 

「マリア、お前の方こそそんな人物どうやって知ったんだ……? 金剛も勉強したんだな。いや、元々知っていたのか? だとしたら知識の幅が解らんな」

 

「フフーン、ワタシだってあの後マリアに負けない様にって頑張ったのヨ!」

 

金剛は依然最初の尻取り大会で辛酸を舐めた後、知識を蓄える為にマリアと歴史の勉強をしたのだった。

今回はその勉強の成果が出たようだった。

提督はそんな彼女に感心しながらゲームを続ける。

 

「やるじゃないか……伊藤博文」

 

「いとうひろふみ?」

 

金剛の不思議そうな言い方に場の空気が凍った。

 

「えっ」

 

「金剛お姉様……?」

 

比叡がびっくりした様に、榛名は口に手を当てて信じられないといった顔で金剛を見た。

ビスマルクも何処か険しい顔をしながら言った。

 

「え? 金剛、その人知らないの? 日本の軍艦でしょ? あなた」

 

「金剛……」

 

自分を見つめる冷めた視線に提督のものも加わったことによって金剛は不安に目を震わせる。

 

「え? え? わ、ワタシまた何カ……?」

 

「金剛お姉様、その方はですね。日本の初代総理大臣ですよ」

 

「え!? p......prim minister(*首相)......the first!?」

 

自国の初代総理大臣を知らなかったという事実に衝撃を受ける金剛に慌てた様子で比叡がフォローを入れる。

 

「け、結構今の世の中若い子だと知らない子もいるみたいですし。そんなに気にする事ないですよ!」

 

「……じゃあなんで比叡や榛名は知ってたノ?」

 

「えっ」

 

「そ、それは……」

 

金剛の当たり前の指摘に比叡と榛名は狼狽え、ビスマルクは自分だけ無視されたと誤解して慌てて吠える。

 

「ちょっと、私も知ってたわよ!」

 

「マリアさんちょっと黙ってて!? えっと……わ、わたし達が初めて建造された当時からしたらそんなに昔の人じゃなかった……から、かな? ね? 榛名」

 

「え? あ……え、ええそうです! 榛名達が知っていた理由はその程度ですよ金剛お姉様! だからそんなに気にする事はないですよ!」

 

「というかその当時の人たちからしたら江戸に代わる新しい時代の象徴みたいな人だからな。寧ろ知らない方がおかしいと思うぞ」

 

「た、大佐!?」

 

「同感ね。今の日本の国父と言っても差支えない人だもの、一般人ならともかく国防が使命である軍人がそれを知らないのはどうかと思うわ」

 

「マリアさん!?」

 

空気を読まない容赦のない二人の指摘に比叡と榛名が真っ青になる。

 

「差支えか、マリア、お前もしかして他に国父の本命が?」

 

「ヤー。個人的に実績的には大久保利通だと思っているの。彼、暗殺さえされてなかったら間違いなくあの人が最初の chancello(*首相【独】) になってた筈だもの」

 

「なるほどな、確かにそれは解る。が、俺としては彼の政治手法が少し気になるところがある。だから俺は完全にあの人が総理大臣になっていればとは思えないな」

 

「性格の事ね? それには私も同意よ。でも当時の日本が列強の支配……」

 

 

「た、大佐、マリアさん!」

 

「そ、それくらいにした方が……」

 

何やら議論を始めた二人に比叡と榛名が半泣きで口を挟んできた。

見ると彼女達の後ろで金剛がしゃがみ込んで泣いていた。

 

「……ひっく、ぐす……」プルプル

 

「む……」

 

「えっ、ど、どうして泣いてるの? 金剛」

 

「っ……」ブァッ

 

「マリアさーん!?」

 

「駄目ぇぇぇ!!」

 

ビスマルクの鈍感な発言に二人は絶望の悲鳴をあげるが、意外にも守られていた本人がその雰囲気を壊してきた。

 

「わ……」

 

「ん?」

 

「え?」

 

「ワタシだって最初の人は分からなくても二代目なら知ってるモン!」

 

「え……」(初代知らなくても二代目は知ってるから大丈夫ってこと……?)コショ

 

「こ、金剛お姉様?」(た、多分……。個人的にはどうかと思いますが……)ヒソ

 

「へぇ、それはそれで良いことだわ。人間ってどうしても一番初めと最後に目が行きがちで、二番目とか結構疎かにしがちだもの。二代目だって初代から引き継いだ実績や構想をより確かなものにして地盤を固めないといけないから結構大変なのよ」

 

「そ、そーデス! 確かに初代を知らなかったのは not impressed(*感心できない)な事だと思うケド、二代目だって大事ネ!」

 

金剛はビスマルクの予想外な援護に気を取り直し、未だに涙を滲ませながらも強気な笑顔に戻っていた。

 

「その意見にはかねがね賛成だ。で、二代目は誰なんだ? 言ってみろ」

 

「オッケイよ! それはトーマス・ジェファーソンね!」

 

「え……?」

 

「は?」

 

「なに?」

 

「……」

 

再び場が凍り付いた。

 

「……エ?」

 

「金剛、それは三代目だ」

 

「えっ!?」

 

「お姉様……それアメリカの大統領です。しかも当時の敵国……」

 

「ふぁっ!?」

 

「英国ですらないですね……」

 

「因みに二代目は黒田清隆よ。アメリカの方はジョン・アダムズ。英国の方は1700年代と800年代のどっちの連合法を起点にするかで変わるわね」

 

「ふわぁっ!?」

 

「金剛……」

 

数々の指摘と最後の提督の冷めた視線を再び受けて、金剛はついに羞恥に耐えきれず棒立ちのまま泣き出した。

 

「ふ……ぅぇぇええ……」ジワッ

 

「はいストップ! ゲーム一回ストップです!」

 

「そ、そうですね! きゅ、休憩にしましょう! 榛名ちょっとお腹空いちゃいました」

 

「え、ええそうね」(まだ5分も経ってないけどね……)

 

「大佐、わたし達ちょっとお茶の用意してきます。その間お姉様のお相手をお願いしますね。いこっ榛名、マリアさん」

 

「はい、分かりました!」ビシッ

 

「えっ、私も? 私も大佐と一緒にいた……あ、ちょっと。ねぇ、待ってよ! やだぁっ」ジタバタ

 

「一番頭良さそうだった癖になんでこんな時は子供っぽいんですか! ほら、行きますよ!」グイ

 

「マリアさんごめんなさい。比叡お姉様お手伝いします」

 

「いやぁぁぁぁ……」ズルズル

 

バタン

 

 

「……」

 

「……」グス

 

「こんg」

 

「大佐」

 

「ん?」

 

「ワタシ、頭悪くないネ……」

 

「ああ」

 

「本当ヨ? 偶々なんだかカラ……」グス

 

「……金剛」

 

「ホントよ!?」

 

「いや、別に疑っているわけじゃない。ほら、ちょっと来い」グイ

 

「やぁ……。ホントだモン」

 

「だから疑っていないと言っているだろう、こいつは」ポン

 

まだ提督の信用を取り戻せてないと駄々をこねる金剛の頭に、提督は手を乗せて撫でながら言った。

 

「うぅ……」

 

「俺はな、お前は知識の幅はあると思っている。だがその使い方がただ少し不器用なだけだ」

 

「大佐、ワタシ不器用ぅ……?」ジワッ

 

「だから泣くな。別に頭が悪いと言っているわけじゃない。知識の引き出し方がちゃんとできればお前だってマリアに負けないさ」

 

「……ホント? それができればワタシもマリアに負けナイ?」

 

「ああ、本当だ。だから次は弁論の勉強でもするといい」

 

「弁論……? talking?」

 

「そうだ。口の使い方が上手くなれば相手と話をする時にミスも減るし、自分の立場を優位に保つことだってできるぞ」

 

「ゆーい……!」キラキラ

 

「優位だ」

 

「大佐、ワタシ頑張るワ! そして今度こそ皆の……特にマリアの頭を明かしてみせるワ!」

 

「鼻だ。まぁ頑張れ」

 

 

――そして数日後。

 

「Hello my lord. 今日も良い天気デスネ。ん……ちゅ」

 

「……」(マイロード? 英国風の言い回しのつもりか?)

 

「あ sorry. ちょっと朝の挨拶をしてしまいマシタ。お許しくだサイ」

 

「いや、それよりもな……」

 

「あっ、今日の予定を申し上げますネ。今日の予定は……」

 

口調こそ丁寧に、落ち着いていたが、合わせて話し掛ける態度や雰囲気も妙に色っぽくなっていた事に提督は違和感を感じた。

それは金剛の勉強の成果を確認しに来た彼女の妹達とビスマルクも同じで、その変わり様を呆然とした顔で見つめていた。

 

「「「「……」」」」

 

「あ、4人ともいたんデスカ? どうデス? ワタシの喋り方。喋り方だけじゃないデスヨ? 今は heart を落ち着けて冷静な talk も……」

 

「「「こんな落ち着いたお姉様、お姉様じゃない!」」です」 「ちょっと、大佐を独り占めしないで!」

 

「ええ!?」ガーン

 

「……」(まぁそうなるよな)




吹雪改二になった! と思ったら初霜と那智ですか。
レベルが低いわけじゃないけど育成追いつかないなぁ。

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