提督の憂鬱   作:sognathus

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黒潮が大佐の膝に寝転びながら何かを訴えていました。
特に駄々をこねいるといった感じでもなく、黒潮は寝そべって大佐の顔を下から見上げながらリラックスした様子でこんな事をお願いしていました。


第×15話 「運」

「大型建造を?」

 

「せや。久しぶりにやらへん?」

 

黒潮の問い掛けに大佐はちょっと苦い顔をしながら言った。

 

「いや、建造は、特に大型はいろいろあって気が進まなくてな……」

 

「それ、大佐が間違って指示出したり、無い資材で遊び感覚で運試しした所為やろ」

 

「……まぁ、な。実際行った回数は数えるくらいしかないが」

 

「相変わらず弾薬がないからなぁ」

 

「全くだ」

 

「いや、そこ何とかしよ? いっつも同じ遠征ばっかりやからやん、それ」

 

「だがおかげで弾薬以外は困った事がないぞ?」

 

「せやな。とりわけ、空母や戦艦に至ってはいつでも修理可能っちゅう感じやな」

 

「まぁそれも今は高速修復剤の数が心許ないから単純に保有している量しか誇れないがな」

 

「明石さんも頑張ってくれる思うけど、流石に戦艦や空母の修理ばっかりやと疲労で倒れてしまうやろなぁ」

 

「ふむ、というわけでうちは現在弾薬はいつもの事だが、バケツも足りない。よって大型建造は無理して行わない方がいいと思うんだが?」

 

「うーん……やっぱそうかなぁ」

 

提督の結論に黒潮は納得した様にも見えたが、それでもまだ何か言いたい事があるようで、彼の膝の上で未練がましくズボンの生地を掴んで離さなかった。

 

「一体どうしたんだ?」

 

「や、うちってさっき大佐も言ってたけど大型建造自体はあんまりしてへんやん?」

 

「ああ」

 

「せやから、せやからな? うちも……うちも一回やってみたいなぁ、なんてぇ……えへへ」

 

黒潮はそう言って照れながら言い難そうに本当の理由を正直に言った。

提督はそれを聞いて考えるように顎に手を当てながら呟いた。

 

「確かに駆逐艦にはまだあまりやらせた事がなかったな」

 

「やろ!? せやろ!? せやから……なっ? ねっ、お願いや大佐」

 

提督の言葉に確かな希望を感じた黒潮は、勢いよく半身を起すと今度は彼の服を握って期待に満ちた目でせがんだ。

 

「ふむ……。建造機の使い方は解るか?」

 

「ばっちしや! 投入する資材決めて建造イメージを本部に送ればいいんやろ?」

 

「そうだ。だが言っておくがイメージ通りにいくとは……」

 

「わかってるって。練度や艦種も影響するんやろ?」

 

「ああ、なにぶんまだシステム的に不安定らしくてな」

 

「ええて、ええって。ちょっちやってみてその事を皆に自慢したいだけやし」

 

「……建造の理由が不純だが、まぁ確かに最近やってなかったしな。分かった、だが1回だけだからな?」

 

「ホンマおおきに大佐! ほな、やってくるね」

 

「ああ」

 

 

 

――そして次の日。

 

「本日着任となりました大鳳です。よろしくお願いします」

 

装甲空母大鳳が新規着任艦として提督の執務室を訪れていた。

 

「……」

 

「はぁ~……」キラキラ

 

大鳳は自分の着任の挨拶に対して鈍い反応を見せる二人に戸惑った顔をした。

 

「え、あの……ど、どうかしましたか?」

 

「いや、ちょっとこいつの引きの良さに放心していただけだ。よろしくな大鳳。そしてようこそ我が基地へ」

 

「あ、はい! 早速の歓迎のお言葉、ありがとうございます提督!」

 

「ああ、俺の事はできたら大佐と呼んでくれ。ここでの愛称みたいなものだ。心さえちゃんと意識していれば、そう硬く考えなくていい」

 

「大佐……ですか。了解しました。では改めてよろしくお願いします大佐!」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「黒潮さんもよろしくお願いしますね」

 

「へ? あっ、ひゃ、はいな!」

 

大鳳に声を掛けられ我に返った黒潮は、ビクりと身体を震わせるとその場を取り繕うように慌てて返事をした。

大鳳はその様子にキョトンとする。

 

「え?」

 

「……悪い。こいつもちょっとお前が来たことに気が動転してたみたいだ」ポン

 

「あ……う……」カァ

 

「あら、それは。ふふふ」

 

「大鳳、実はな。今回のお前が生まれたきっかけを作ったのはこいつなんだ」

 

「え? そうなのですか? では黒潮さんが建造を?」

 

「そうだ。うちもお前は初めて迎える艦だ。そういう意味でもこいつは動揺してたんだろうな」ポンポン

 

「う……堪忍や。うちも初めての大型建造やったから大鳳さん見た時は正直現実が信じられんくてビビってん……」

 

黒潮は提督に頭を撫でられながらそのフォローを有り難く思いつつ、恥ずかしそうに大鳳に釈明した。

大鳳はそんな黒潮に特に気を悪くした様子もなく、微笑み、彼女の頭を撫でながら言った。

 

「いえ、そんな。私がここに来るきっかけを作ってくれたのが黒潮さんという事なら、私はそれに感謝するだけですよ」ナデナデ

 

「あぅ……さ、『さん』は流石にちょっとアレやから、呼び捨てで構わへんから、そう言ってくれへん?」

 

「え? んー、そうですねぇ……。なら黒潮ちゃんでいいですか?」

 

「あ……う、うん」コク

 

「では黒潮ちゃん、私を導いてくれてありがとうございます。これからよろしくお願いしますね」スッ

 

「……っ、うん! うちこそよろしゅうに!」ギュッ

 

大鳳が差し出した手を黒潮は満面の笑みを浮かべて嬉しそうに握り返した。

 

 

 

それから暫くして、提督は定例となっている交流の場を時間を設けて作り、改めて大鳳を呼んだ。

 

「騒がしくてすまないな」

 

「いえ、寧ろ初めての出会いが賑やかで心に残りました」

 

「そうか、それなら良かった」

 

「……大佐?」

 

「うん?」

 

提督が振り向くと、そこには最初の挨拶をした時よりも明らかに凛とした雰囲気で真面目な表情をして佇む大鳳がいた。

 

「私、大鳳は艦隊唯一の装甲空母として奮戦、奮闘し、国に、海軍に、提督に、貢献する事を約束します。だからどうぞご期待ください」

 

「ふ……頼もしいな。ああ、期待させてもらおう」

 

厳かにそう言って一礼し、自身の決意を表明する大鳳を提督は心から歓迎した。

 

「はい、失望はさせません! ……ところであのぉ」

 

しかし、そんな凛とした雰囲気だった大鳳であったが、その意志を伝え終わると何やら言い難そうにしながらも何か困った顔をして提督に質問をした。

 

「ん? どうした?」

 

「先程から気になっていまして、可能ならお教え頂きたいのですが……」

 

「?」

 

「何故、執務室に調理台があるんでしょう?」

 

大鳳の視線の先には、相変わらず無造作に置かれている提督愛用の調理台が何とも言えない存在感を放っていた。

 

「ああ、俺の趣味だ。何か食べるか? 歓迎祝いで何か作るぞ」

 

「え?」

 

予想外の誘いに大鳳は目を丸くした。




まだ大型建造で空母レシピ回した事が無かったので、イベント前に一回回してみるかと回して見たら何か大鳳が出ました。
個人的には401が出て欲しかったのですが、まぁ結果オーライといったとこでしょうか。

提督の日本帰国編もそうですが、最近艦これのアニメをさわりだけ見てなんとも言えない違和感に創作意欲が湧かず、最近ちょっと混乱していました。
(レギュラーの娘全てに、謎の欲求に駆られ何故か2重のキラ付けを敢行するいう行為に没頭していたというもありますが)

今度一回自分の中のイメージを整理する為、この作品の艦これの世界の設定のあらましのような場を設けようと考えています。
相変わらず作業は亀以下なので何時になるか判りませんが。

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