提督の憂鬱   作:sognathus

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提督と川内が堤防に座っておしゃべりをしていました。

お互い暇な時間を潰すために取り止めのない会話をしていましたが、川内がふとこんな話題を振ってきました。


第×9話 「痴話喧嘩」

「ねー大佐ー。大佐って何か苦手な物とかってないの?」

 

「なんだ川内、藪から棒に」

 

「いや、だってさー。大佐って怒ったり笑ったりしても基本静かじゃん? だからなんかもっとこう、ワーってなる苦手なものとかないのかなーって」

 

「別にリアクションを求めているのなら苦手なものじゃなくてもいいだろ。感動するものとか」

 

「そんなのわたしがつまらないもん!」

 

「……遠征メンバーからお前を外すぞ」

 

「えっ!? ダメダダメそれはダメ! ただでさえ最近は夜戦に出る機会も少ないのに遠征の出番まで少なくなっちゃったらわたしストレスでどうにかなちゃうよ!」

 

「ならもう少し慎みを持て。偶に本当にお前は神通の姉かと疑問に思うときがあるぞ」

 

「ちょ、それってどういう意味!? わたしってそんなにおねーちゃんに見えない!?」

 

「どちらかというと神通が姉でお前と那珂は双子の姉妹だな」

 

「ひどっ!?」

 

「なら、偶に夜中に忍者ごっこと称して俺の部屋に忍び込んで悪戯をしようとするのをやめろ」

 

川内だけではないが、提督の基地では常夏の暑さの所為で寝付けずに偶に夜中に起きて騒ぐ輩が何名かいる。

その殆どが駆逐艦なのだが、彼女たちのまとめ役(首謀者)が川内であった。

 

「あれはわたしの制服がいけないの! あれじゃぁ忍者しろって言っているようなもんじゃん!」

 

「夜は寝間着姿だろ? その癖にそれで忍者とは片腹痛いぞ?」

 

「うっ……」タジ

 

「ま、もう少し大人しく、な?」ポン

 

「う、うぅ……」コク

 

「よし、それでなんだったか。苦手な物か?」

 

「教えてくれるの!?」

 

「……」(ここは敢えて自分の生活の安静を優先してみるか)

 

「大佐?」

 

「ああ、悪い。俺が苦手なものはな」

 

「うん!」キラキラ

 

「じょせ……」

 

「あ、女性とかいうのは無しね。絶対ダメ。許さないから」

 

川内が提督が言いかけた答えを遮り問答無用といった様子でそれ以上言わせなかった。

 

「……一応聞くが、何故だ?」

 

「同盟が意味なくなるから。それに嘘だっていうの分かるし」プクー

 

「……そうか」(軽巡にも同盟はあるんだな)

 

「で、苦手なものって何?」

 

「そうだな。せんだ……」

 

「川内とか言ったら泣くからね」

 

「……せんだ」

 

「っ、ふぇ……」グス

 

本当に言われるとは思っていなかったのだろう。

自分の名前が出かけて川内の目に涙が浮かんだ。

 

「冗談だ」

 

「本当に言い掛けないでよ馬鹿ぁ!!」グス

 

「すまん。だけどな、急に言われても改めて考えると思いつかないもんだぞ? ふしだらな女性関係とかじゃダメか?」

 

「それだとわたしたちの関係がふしだらみたいだからダメ」

 

「別にそういうつもりはないんだが……」

 

「じゃぁ所構わず大佐にじゃれたり甘えたりしてもいいの?」

 

「駄目だ」

 

「じゃぁ無し」

 

「……」

 

「仕方ないなー。じゃぁわたしが苦手なものを教えてあげるよ」

 

「どうしてそうなる? 俺はお前が苦手な物を知ったところでなんの得もないぞ」

 

「わたしが言いたいんだからいいの! えっとねーわたしが苦手なのは……」

 

「今から考えるのか」

 

「ちょ、ちょっと忘れちゃっただけだもん!」

 

「……それで何だ?」

 

「お菓子!」

 

「……そうか。今度からお前だけ食事は三食沢庵だけにしてやろう」

 

「なんでそうなるの!?」

 

「魂胆がまる分かりだ馬鹿」スカンッ

 

「いたっ。うぅ……」

 

「もういい。俺が当ててやろう」

 

「え、分かるの?」

 

「そうだな。半年間待機任務だ」

 

「それってただの拘留じゃん! 軟禁じゃん! しかも何も悪い事してないのに!」

 

「拘留は日本の刑法上30日未満のはずだからこの場合は軟禁が意味合いとしては近いな。でも嫌だろ? 退屈は」

 

「うぐ……」

 

「勝負ありだな」

 

「えー! ねぇ大佐、本当に大佐が苦手な物ってないの?」グイグイ

 

「俺は本当に思いつかないんだ」

 

「むぅ、ならこれでどうだっ」

 

そう言うと川内は提督の手を取り、勢いよく自分の胸に押し付けた。

 

フニッ

 

「……」パコン

 

「きゃあっ!?」

 

「あまりそういう事を軽々しくするな」

 

「いったぁぁ……。ぬふふ、でも苦手だったでしょ?」

 

「これは苦手とかじゃないだろ。節操の無さを不快に思っただけだ」

 

「ふふふー、大佐もわたしのこの慎ましい胸でそう感じるなんて結構意識してるんだー?」

 

「嬉しそうに何を言っているんだ。しかもそれで慎ましいとか、龍驤に言うぞ?」

 

「ごめんなさい。すいませんでした本当に」

 

「……それはそれで傷つくだろうなアイツ」

 

「はぁあー、結局大佐の苦手なの分からなかったよー」

 

「……いや、あるぞ。今分かった」

 

「え、なに?」

 

「お前たちだ」

 

「えっ?」

 

まさか自分たちが提督にとって苦手な存在とは思わなかったが、それでも第一声がそれだった事に川内は心底驚いた顔をした。

 

「提督としてお前たちを失うのが何より俺は苦手だ」

 

「……なにそれ。それ苦手っていうより怖がってるじゃん」

 

「はは、そうだな。だが、本当にそれは苦手でもある。だから可能な限りお前たちには提督として気を遣ってるつもりだぞ?」

 

「……ま、それでいいって事にしてあげる」

 

「そうか、ありがとう」

 

「……ねぇ」

 

「うん?」

 

「おんぶしてよ」

 

「基地までか?」

 

「うん」

 

「ほら、乗れ」

 

「やったー♪」ピョン

 

「っと……軽いな」

 

「忍者だもん♪」

 

「今はただのワンピースだろ。おい、ちゃんと裾を抑えてから乗れよ。風で捲れるぞ」

 

「大丈夫だよ。この道基地にしか行かないから人いないし、捲れても大佐見えないじゃん」

 

「恥ずかしいとは思わないのか?」

 

「大佐にはね」

 

「なんだか男として複雑な気持ちになるな」

 

「これだけ胸押し付けられてるのに平然としててよく言うよ。どっちかというとそんな気持ちになるのはわたしの方だと思うけどなー」

 

「……慣れだなこれは完全に」

 

「あ、でもわたしが雲龍さんくらい大きかったらどう?」

 

「それはないな絶対に」

 

「ちょっと、それってどういう意味!?」

 

「ははは、さぁ行くか」

 

「こらー! 答えろー!!」

 

心地よい潮風が吹く基地への一本道を、明るい太陽に照らされながら親子とも兄妹とも取れるそんな二人が和やかな雰囲気で歩いていた。




川内あまり使ってませんが(それでも改二ですが)偶に使うと可愛いと思います。

でもうちは軽巡あまり使ってないんですよね。
だから軽巡のレベルトップは神通でもそのレベルは70ちょっと。

駆逐艦を育てたらいずれは、と考えていますが、気の長い話ですね。

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