提督の憂鬱   作:sognathus

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例によって提督が堤防で煙草を吸って和んでいると、それに気付いた艦娘が近寄ってきました。
今回来たのは……。


第×4話 「要求」

「ふぅ……」

 

「あら、大佐」

 

「熊野」

 

「おタバコですの?」

 

「ん、まぁな。吸うか?」

 

「なんで自然に勧められるの!? 吸うわけないじゃありませんか!」

 

「そうなのか?」

 

「寧ろ何で疑問形なのかお聞きしたいのですが……」

 

「いや、なんかお前やさぐれてる時に吸ってそうなイメージがな」

 

「理由があまりにも失礼じゃありませんか!?」

 

「……そうだな」フゥー

 

「どうかされたんですの?」

 

「ん?」

 

「大佐、いつもと違う感じがしますよ?」

 

「……ん」

 

熊野の指摘が的を射ていたのだろう。

提督は彼女の指摘にちょっと気まずそうに視線を逸らした。

 

「日本で何かありました?」

 

「まぁ、いろいろと、な……。疲れた」

 

「え?」

 

「……ふぅ」

 

「……そこ、よろしいですか?」

 

「ん? ああ、かまわ――」

 

トス

 

「……おい」

 

「はい?」

 

「何で膝の上に座るんだ?」

 

「これで煙草が吸えないでしょう?」

 

「ああ」

 

「私は大佐にタバコを吸ってほしくありませんの」

 

「……今ここで吸うのを止めたらどいてくれるか?」

 

「嫌ですわ」キッパリ

 

「何故……」

 

「レディにそんな事聞くなんて失礼ですわ。セクハラです」

 

「お前、セクハラの意味解っているか?」

 

「馬鹿にしないでくださいまし。ちゃんと鈴谷に聞いて知ってますわ」

 

「鈴谷に……。因みに何て教えてもらった?」

 

「レディを機嫌を損なわせる行為がセクハラと聞きましたわ」

 

「……」(あながち間違ってないのが質が悪いな。更に教えた相手が熊野だというのがその厄介さの度合いを上げている)

 

「何か間違ってまして?」

 

「いや、全部間違いと言うわけじゃないが。熊野、ちょっといいか?」

 

「何です?」

 

「セクハラと言うのはな。一応今こうやってお前がやっている事も該当するんだぞ?」

 

「? どういう事ですの? 私は今特に機嫌は悪くありませんわ」ポヨポヨ

 

「跳ねるな。だからそれだ。異性が特に理由もなく過剰なスキンシップを強要したり、しかけるのも該当するんだ」

 

「過剰? これが?」フニフニ

 

「だから膝の上で座ったまま動くな。お前は今、俺の膝の上で自分の尻を乗せていて何も感じないのか?」

 

「お、尻だんなんて。大佐、ちょっとはしたないですよ!」カァ

 

(そこに反応するか)

 

「そうか。じゃぁそれを服越しとは言え今密着させているのもはしたないとは思わないか?」

 

「? どうしてですの?」

 

「……」(こいつ、鈴谷や最上に弄られて価値観がちょっとズレたな)

 

基本的にお嬢様のイメージで通っている筈の、わかには信じられない熊野のズレ方に提督は嘆息した。

 

「大佐?」キョトン

 

「……何でもない。もう好きにしろ」

 

「ほ、ほんとですの!?」

 

「前言撤回だ。何をする気だ?」

 

「殿方が前言展開するだなんて情けないとは思いませんか?」

 

「それはお前が何をするかによるだろう。自分に害が及ぶ可能性を事前に回避するのは純然たる正当防衛だ」

 

「が、害なんかじゃないもん!」

 

「おい、言葉使いがちょっと幼くなったぞ」

 

「っ、コホン。が、害だなんてあまりにも失礼ですわ」

 

「じゃぁ実行する前にそれが有害でない事を口頭で証明しろ」

 

「……」プイ

 

「……さて、基地に戻るか」

 

「だ、だめ!」

 

「何をするつもりだった?」

 

「き……」

 

「ん?」

 

「き、キス……とか」

 

「そうか。そういうのは好きな奴とするといい。鈴谷とかとな」

 

「ちょっと、自然に人を同性愛者にしないでください!」

 

「む……」(意外にこれは勘が外れたみたいだな)

 

「わ、私だって理由もなくキスとかしたりしませんわ。大佐が、そのす……だから」ゴニョゴニョ

 

「……お前も同盟に入ってるのか? なんだったか、ああそうだ。重巡同盟ってやつに」

 

「っ! 何故それを!?」

 

「図星か。因みに訊くが、他には誰が入ってるんだ?」

 

「え? 全員ですけど?」

 

「……全員?」

 

衝撃の事実に提督は唖然とする。

 

「はい」

 

「那智もか?」

 

「ええ」

 

「妙高に、麻耶達……高雄型も奴らもか?」

 

「勿論ですわ」

 

「……」(全員を愛する、ケッコンの対象にすると宣言したのはいつだったか。そうだ、確かあの時だ。水泳大会の閉会式だったか。あの時は、まさか宣言したとは全員が俺に好意を寄せるなんて思いもしなかったが……)チラ

 

「大佐?」キョトン

 

「……」(何故だ)

 

「どうかいたしまして?」

 

「いや、取り敢えず今日はキスはしない」

 

「ええ!? そ、そんな……!?」(せっかく同盟の中では足柄さんの次に一歩リードできると思ったのに!)

 

「悪いが。俺にも一応は矜持と言うものがある。今回はそれを保たせてくれ。そうでないと俺はこのままではただの……」ズーン

 

「た、大佐?」(お、落ち込んでる? 何で? どうして?)

 

「替わりと言っては何だが、キス以外でそれ以上に過剰なスキンシップでなければ応えてやる」

 

「えぇ……そんなぁ……。うーん……あっ」

 

「何か思いついたか?」

 

「抱っこ! お姫様みたいに抱いてくださいまし! そして今日はそのままお昼寝したいですわ!」

 

「抱っこ……まぁ、それなら」

 

「ありがとうございます!」パァッ

 

「座ったままでいいか?」

 

「はい!」

 

「そうか。そじゃぁ流石に両腕でずっとお前を支えるできないから……そうだ。うん、上半身は俺の胸に預ける形にしろ。そう……それで……」

 

 

それから十数分後、堤防にはすやすやと寝息を立てる熊野を抱きかかえる提督がいた。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「……はぁ」

 

提督が意味深いなため息を吐いた時だった。

 

「おっ、いー事してるじゃーん」

 

「……」

 

ギギ……と音がしそうな鈍い動きで声がした背後を見る提督。

そこにはいたのは……。

 

「鈴谷……」

 

「次、熊野が起きたら鈴谷ね!」

 

「却下だ。お前は海で泳いでろ」

 

「なんで!? ひーきだひーきぃー」ブーブー

 

「うるさい。ちゃんと日本語を使え」

 

「ちゃんと使ったらやってくれる?」

 

「だめだ」

 

「ひーきだー!!」ブーブー

 

(戦いのときは頼もしいのに何故非番の時はこうも普通の女子高生みたいなんだ……)

 

「大佐っ、鈴谷も! すーずーやぁもー!」グイグイ

 

「やめろ、引っ張るな。熊野が起きる」

 

「熊野が起きたら交代できるじゃん」

 

「それは熊野が許さないだろうな」

 

「ふふん、鈴谷これでもこーしょーとか得意なんだからね。熊野ならちょっとこうしょーすればすぐオッケーくれるもん」

 

「……交渉?」

 

「そ、こーしょう! 熊野にこの大佐の寝てる写真渡させば……」

 

「長門」

 

「呼んだか?」

 

「えっ!?」

 

「こいつを連行しろ。そして写真を全部回収しろ」

 

「ふむ……その写真証拠品としてこちらで預かっても構わないよな?」

 

「……悪用するなよ? 信じているからな?」

 

「任せておけ! それでは行こうか鈴谷」ガシッ

 

「えっ、や……ちょ、なに!? はーなーしーてぇ!」ジタバタ

 

「なに、心配するな。ちょっと島風達と一緒に鬼ごっこしてもうらだけだ。直ぐに開放する」

 

「島風達と!? なにそれ死ぬ、死んじゃう! やだやだ!」

 

「大丈夫だ。私も付き合ってやるから」

 

「そういう問題じゃ……え?」

 

尚も鈴谷が抵抗しようとした時、長門がそっと彼女に耳打ちをしてきた。

 

「大佐は今回全部の写真を回収しろとは言ったが、発生元まで対処しろとは言っていない。今回は写真の回収だけで見逃してやる」ボソ

 

「う……はぁ……。たーすーけーてー」

 

「はっはっは。堪忍したか。それじゃいくぞー」

 

 

「……静かになったな」(なんか最後二人とも話し方が棒読みのようだった気がしたが、気のせいか……?)




大分、作風が前のに近づいてきました。(手抜き)
こっちの方が書き易いし、ペースも上が……いや、続きものが苦手というのもありますが(汗)

しかしこのペース、投稿したての頃を思い出します。

*追記報告
「登場人物」に瑞鳳とレ級の絵を追加しました。

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