提督の憂鬱   作:sognathus

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実家での騒動がひと段落し、提督はようやく一息ついてその日は休む事が出来ました。
色々疲れが溜まっていた事もあってその日は完全に熟睡。
寝ている間に誰かが布団に忍び込んでいても分る筈もなく……。

*一部登場人物の個人名が出てきます


第11話 「寝起き」

モゾッ

 

「……」ピクッ

 

早朝、提督は布団の中に違和感を感じて早々に目を覚ました。

自分の腰に何かが引っ付いている。

 

「……」ムクッ

 

起き上がってみてみると、ちょうど腰から下の辺りの掛布団が不自然に盛り上がっていました。

 

「……」

 

半ば予想は着いていたが、一応念の為状況を確認する為に提督は布団をめくった。

そこには……。

 

「すー……ぅ……に……」

 

案の定、丸くなった龍鳳が自分の腰に抱き付いて寝ていた。

 

「……」

 

提督は軽く溜息を付くと、龍鳳を起こさない様にゆっくりとした動作で彼女を自分の体から引き剥がそうとした。

だがその時――

 

 

ぐっ

 

「?」

 

布団をめくったのとは別の腕が何か重りが着いたように動かない事に提督は気付いた。

 

「……」

 

提督は恐る恐るといった様子で動かない腕の方を見た。

するとそこには……。

 

 

「ん……たいさ……」

 

「……」

 

自分の腕に抱き付くようにして寝ている秋月がいた。

 

 

「あら、おはよう」

 

一番見られたくないところを見られてしまった。

通常なら焦るところだが、提督が状況を把握する前に掛けられたその声は、幸運な事に彼の母親だった。

 

「母さん……」

 

「龍鳳ちゃんも秋月ちゃんもね、あんたが起きる前のずっと早い朝に布団に潜り込んだみたいよ」

 

「潜り込んだみたいって、母さんはじゃあ二人が動いた事に気付いたのか」

 

「まぁねー」

 

「……確かに二人ともまだ子供だけどさ、だけど俺の年齢も考えれば普通はそこで止めるとこじゃ?」

 

「あんたがそんな事するわけないでしょー」

 

「……」

 

「ほぉら、起きたんならさっさと顔洗わんね。龍鳳ちゃんは起きるまでそのまままでいいから」

 

「ああ。……あ?」

 

母の言葉に提督は疑問を覚えた。

何故母は自分に絡んで寝ている二人の内龍鳳の事だけを言ったのだろう。

その答えは、提督が再び秋月が抱き付いている腕の方を見ると直ぐに解った。

 

「…………っ」

 

秋月が真っ赤な顔で腕に抱き付いたまま自分を見つめていた。

あまりにも動揺して恥ずかしさから提督の腕から離れる事にすら気が回らないようだった。

 

「秋月、落ち着け。俺はどうもおm」

 

「忠哲っ」

 

母の注意に提督は直ぐに言い掛けた言葉を途中で飲み込んだ。

どうやら今のはデリカシーに欠けるところだったみたいだ。

 

「秋月……おはよう」

 

提督は努めて冷静に、秋月をそれ以上動揺させない様に彼女の頭に手を置いて撫でながら朝の挨拶をした。

 

「あ……あの、た……い……。あ、ちが、た、ただて……てっ」

 

「大丈夫落ち着け。俺は怒ってないから。だからほら、先ずは挨拶だ」

 

「あ、は、はい! お、おはよ……」プシュー

 

「……」

 

羞恥と動揺でついに挨拶の途中で顔を赤くしたまま気絶してしまった秋月を見ながら、提督は何故こんなにウブなのに彼女がこんな大胆な行動をとれたのか不思議に思った。

 

「あはは」

 

その様子を一通り眺めていたはなえは堪え切れず笑った。

 

 

 

「……なるほど。龍鳳が布団から出るのに気付いて着いて行ったら」

 

「自分も退けに退けなくなんだね」

 

「……はい」

 

朝食の場、話を聞いて事情を理解した鐸と要の確認に、龍鳳はご飯を運ぶ箸の動きもぎこちない様子でションボリと頷いた。

 

因みに今この場に提督はいない。

起き上がろうとした時に腰に抱き付いていた龍鳳がどうしても離れなかった為、抱き上げる事もできずに手だてなく項垂れていたところを運悪く父親に見つかり、また謂れのない罪で説教を受けている。

 

 

「龍鳳もそうだけど秋月、あなたも意外に大胆なのね」

 

「……っ」カァ

 

鐸の指摘に再び真っ赤になる秋月を面白そうに見ていた要がふとある事に気付いて誰にともなく訊いた。

 

「あれ? そういえば大和さんは?」

 

「大和なら二人に先手を取られたショックで……ほら、そこの庭の隅でいじけているわ」

 

「え?」

 

鐸の言葉が一瞬理解できず、要は唖然とした顔をしたが、彼女が指した方向を見ると確かに大和が暗い雰囲気を纏って庭の隅にしゃがみ込んでいた。

雨も降ってないのに何故か傘までさして地面のののじを掻きながら蟻と戯れているようだ。

 

「……ねぇ」

 

大和を見たまま呆然とした声で要は鐸に訊いた。

 

「うん?」

 

「あの人……あの子って“戦艦大和”なんだよね?」

 

「まぁ……ね」

 

「いや、陸軍の子も例外じゃないと思うけどさ。艦娘ってそんなに指揮下に入る提督によって元の気性って変わるものなの?」

 

「それはもう。例えば、本部の総副司令、名誉中将の中老なんて言われてる人の専属艦も大和なんだけど、あの子と比べたらこっちの子は大分子供っぽ……柔軟な感じかしら」

 

「へぇ……」

 

「第二司令官の上級大将、この人も大老なんて呼ばれてるけど。その人の麾下の艦娘ともなると、戦艦から駆逐艦に至るまで全員質実剛健って感じよ」

 

「そうなんだ。本当に司令官によって大分変るんだね」

 

「まぁね」

 

「ね」

 

「うん?」

 

「周防さんの艦娘はどうなの? 専属の子とか」

 

「私の……?」

 

要の問い掛けに鐸は口元に手を当てて本部に置いてきた武蔵の事を思い出した。

 

「……」

 

「? どうかした?」

 

なかなか答えずに考える顔をしていた鐸に要が不味い事を聞いたのではと、申し訳なさそうな声で言った。

その声に我に返った鐸は、苦笑して手を振りながらこう答えた。

 

「ああ、ごめんなさい。なんか私のところの武蔵も気性はちょっとあの子に似ていたような気がしたから」

 

 

 

~日本帝国海軍軍令部(海軍本部)

 

「ぶぇっっくしゅ!!」

 

「きゃぁ! ちょっと何をするんですか武蔵!」

 

「ああ、悪い悪い何か急に……」

 

「もぉ……気を付つけてよぉ……」(閣下に会う前に着替えないと)

 

「いや、本当に申し訳ない。ん……」ジッ

 

「……? な、何ですか? なに……?」タジッ

 

武蔵が急に黙って自分を見つめてきたので大和は怪訝な顔をする。

心なしか何故か嫌な予感がした。

 

「いや、うちの提督が留守でちょっと寂しくてな。お前の胸を見てたら……」

 

「撃ちますよ!?」

 

自分の貞操は絶対に閣下に捧げると決めていた大和は、胸を守るように抱き締めながら久しぶりに焦った声を出した。




いやぁ……まぁ何というか。
すいません、頑張りますorz

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