提督の憂鬱   作:sognathus

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面談最後の艦娘はプリンツと能代の重巡・軽巡コンビ。
こちらも前の2組ほどではないにしろ、ノリの良さに少し差がありそうな二人です。

提督は何事もなく(些事は除く)最後まで彼女達の相手をできるのか?


第53話 「交流⑦」

コンコン

 

「プリンツ・オイゲン来ました!」

 

「能代です。大佐、いますか?」

 

『いるぞ、入れ』

 

ガチャ

 

「失礼っ」

 

「しま……え?」

 

「……」

 

プリンツと能代が部屋に入ると、そこにはやや憔悴して疲労の色が見える提督がいた。

 

「……ん?」

 

「いや、その……」

 

「大佐、疲れてる?」

 

「ん? ああ、ちょっと前の面談で体力を使っただけだ。気にするな」

 

「はぁ……」

 

「え? ただの面談よね? どうしてそんなに体力を……」

 

プリンツは提督の様子を見ると何かよからぬ想像をしたらしく、両腕を胸を守るように組んだ。

 

「プリンツ、なんでそんな警戒する様な態勢を取るんだ。やめろ、いらん誤解をされる」

 

「え? 誤解って、あっ……」カァ

 

一人会話に着いていけないでいた能代が、そこで誤解の意味を理解して顔を赤くする。

 

「違うからな?」

 

「本当にぃ?」ジッ

 

「本当だ」

 

「ふ~ん……ならいいいよ、信じてあげる! 今回はね」

 

「今回も次回もそういう事はない。それはさっきの矢矧の説明で俺の人となりを理解してくれ」

 

「そ、そうよね。だめじゃないオイゲンさん。大佐を疑っちゃ」

 

「能代さんも疑ってたように見えたけどー?」

 

「そ、そんな事……」アセ

 

「……二人とも取り敢えず座れ。その事も含めてこれからお互い親睦を深めるとしよう」

 

「はーい」

 

「分かりました」

 

「茶と菓子だ」コトッ

 

「あ、わざわざありがとうございます」

 

「わぁ、ありがとーう! 大佐っていい人ね♪」

 

(何だか凄く単純な性格をしてそうだな……)

 

(プリンツさんって凄く解り易いな)

 

提督が用意した茶菓子を目にして早速ご機嫌になったプリンツを見て、彼と能代は心の中でそんな事を思った。

 

 

「ふむ、能代は……矢矧の姉なんだな」

 

「あ、はい。矢矧が先に来ていたようで、妹がお世話になってます」ペコ

 

「ん、いや。あいつは出来た奴だよ」

 

「そう言ってもらえるとわたしも嬉しいです」ニコッ

 

「プリンツは……ああ、マリア以来の海外艦だなそういえば」

 

「マリア?」

 

プリンツが耳慣れない言葉に反応する。

 

「ビスマルクの渾名だ。此処ではそれで通っている」

 

「へぇ、ビスマルク姉さんここではマリアって呼ばれてるんだ! なんかいいですね。可愛い感じで!」

 

「はは、まぁそう言ってもらえると名前を付けた身としても嬉しいな」

 

「え? 大佐が付けたんですか?」

 

名付た人物が提督だと知ってプリンツは今度は目を丸くする。

それは能代も同じようで、食べかけていた菓子を口元で止めて提督を見ていた。

 

「へぇ……なんか意外ですね」

 

「そうか?」

 

「あっ、別に悪い意味じゃないんですけど、大佐ってやっぱり真面目そうだから」

 

「確かに自分でもある程度は真面目なつもりではあるが、それと名前を付ける行為はあまり関係ないと思うけどな」

 

「ね、どういう風に姉さんに名前付けたの?」

 

「ん? ああ、それはな……」

 

 

―――数分後

 

「というわけだ」

 

「へぇ、結構自分の知識? というか教養から付けたんですねぇ」

 

「良いセンスだと思います。ネーミングじゃなくて、そういう風に幅広い知識から考え出すというのは」

 

「はは、そう褒めるな。買い被りだ」

 

「ううん、わたしも姉様のマリアって名前凄く良いと思います! ……あ、もしかしてレーベやマックスにも?」

 

「まぁな」

 

「聞かせて聞かせて!」

 

「あ、わたしも聞きたいです」

 

「ああ、いいぞ。あいつらはな……」

 

 

―――更に数分後

 

「へぇ、レーベ、レイスちゃんはともかく、マックス、ジェーンちゃんはなかなか思いつかないですね」

 

「いや、レイスはギリギリ余地があるとしても、マリアとジェーンに関しては、普通は名前の音を聞いただけではその過程なんて連想できないと思うぞ。自分で言うのもなんだが、かなり無理やりだしな」

 

「ふふ、マリアさんはともかく、ジェーンちゃんは確かにそうですね」

 

「へぇ~いいなぁ。ね、大佐」

 

「うん?」

 

「わたしにも渾名、ここでの名前付けてよ!」

 

自分以外の仲間が独自の名前を持ってる事を羨ましく思ったプリンツが身を乗り出して提督にお願いしてきた。

提督はそれに対して特に考える間もなく一言言った。

 

「……お前はプリンでいいんじゃないか?」

 

「ぷっ。あ、ごめんなさい。でも、ちょっと何かかわい……」クス

 

「えー、何それ―? なんか甘そうでドイツっぽくないー!」

 

「マリアだってそうじゃないか?」

 

「姉さんはまだちゃんと人の名前だし、マリアっていう名前も姉さんの容姿のおかげもあって凛々しい感じするじゃないですかぁ」

 

「ふむ……?」

 

「だから、わたしもプリンなんて名前じゃなくて全く違うコレー! って名前がいいです!」

 

「ふ……む、そう言われてもな。ちょっと待て」

 

「うん、考えて考えて!」

 

(どんなのを思いつくんだろ)ワクワク

 

 

―――また数分後

 

「よし」

 

「決まった!?」

 

「教えてください」

 

「うん。フランソワ、なんてどうだ?」

 

「フランソワ……!」

 

名前の音の響きにプリンツは目を輝かせる。

 

「は……ぁ、良い感じだと思います」(本当に予測できない。どうやって考えたんだろ)

 

「うん! 凄く良いと思います! ね、ね! 一体何から付けてくれたの?」

 

「ん、今回はそう複雑じゃない。お前の名前、プリンツ・オイゲンというのは実在した昔の軍人に因んで付けられたんだろ?」

 

「ええ、そうよ」

 

「その軍人の名前はドイツ語読みだが、それをフランス語にするとウジェーヌ=フランソワ・ド・サヴォワ=カリニヨンとなる。そこから取ったんだ」

 

「ながっ」

 

「あれ? でも名前の中にプリンっぽい響きが無いよ?」

 

「プリンツというのは公子という称号の事なんだ。だから本名は別にあってフルネームはこんな長い名前なんだ。それをフランス語読みにするとこうなるというわけだ」

 

「へぇ~。わたしプリンツも名前だと思ってた」

 

「ドイツ生まれならドイツの単語くらい知っててもいいんじゃ……」

 

あっけらかんとさり気なく爆弾発言をするプリンツに、能代は少し呆れたように笑いながら言った。

 

「え? あはは。に、日本で見つかったからかな」

 

「ははは、かもな。で、どうだ? もし、受け入れてくれるのなら、フランソワと毎度呼ぶのもアレだから、普段はフラン、と愛称で呼びたいんだが」

 

「フランかぁ……んっ、いいよ! たった今からわたしはフランソワ! フランって呼んでね!」

 

「ああ、分かった」

 

「分かったわ。じゃぁ改めてよろしくね、フランさん」

 

「うん! 大佐、良い名前を付けてくれて本当にありがとう!」

 

「いや、俺もそう喜んでもらえて何よりだ」

 

「うんうん、お菓子も紅茶も美味しいし、もう言う事無しだよ♪」

 

「そうね。わたしも凄く心地よい雰囲気だと思います」

 

「そうか、それは良かった」(今までの面談の中で一番楽だ)

 

提督は今までの面談を思い出しながら考え深げにそう思った。

 

「流石重巡と軽巡、と言ったところか」ボソ

 

「え?」

 

「んっ?」

 

「いや、何でもない。それよりまだ時間はある。今日はゆっくりしていくとい」

 

「はーい、ありがとう大佐!」

 

「ありがとうございます。お言葉に甘えちゃいますね」




能代もプリンツも良いキャラしてますね。
阿賀野型は残すはネームシップである阿賀野と酒匂となりました。
矢矧を手に入れてから数か月越しによやくゲットした阿賀野型なんですよねぇ彼女。

残り姉と妹はいつになる事やらw

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