提督の憂鬱   作:sognathus

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少将から電話があった翌日、彼女の言う通り基地に本部から作戦の通達がありました。
提督は一同を集めて早速ブリーフィングを始めます。


第47話 「頼り」

「それではこれより第二次渾作戦のおおまかな概要について説明を行う」

 

「総員、傾注」

 

バッ!!

 

秘書艦の矢矧の合図で全員が姿勢を正して提督の方を向く。

皆の視線が自分に十分に集まっているのを確認して、提督は軽く咳払いをして説明を始めた。

 

「本作戦は前回の第二次AL・MI作戦と同じように第一、第二艦隊を合わせた連合艦隊で臨む。以前との違いは今回は道中、敵主力との会戦時に支援攻撃がある点だ」

 

「それは前の作戦でもありましたが?」

 

その時の作戦にも参加していた神通が早くも疑問点に気付き、提督に質問をした。

 

「あの時は半分中佐に手伝ってもらっていたからな。今回は全て自力で行う。つまり本当の意味で総力戦だ」

 

「なるほど」

 

「作戦は三段階に分けて行う。まず第一段階は水雷戦隊を中心に編成した連合艦隊で敵の前哨部隊を叩き、後半の第二、第三段階で戦艦を中心にした重火力編成の連合艦隊で主力を含め残りの敵勢力を殲滅する」

 

「第一段階は誰が行くの?」

 

伊勢が早速艦隊の編成を聞いてきた。

彼女の目はやる気に満ち、久しぶりの出撃に気分が高揚している様だった。

 

「龍田、大淀、長月、菊月、白雪、初雪、伊勢、日向、那智、三隈、木曽、名取だ」

 

「あらぁ~、久しぶりに私たちの出番~? やったぁ♪」

 

艦隊のメンバーに自分が入っていた事を心から嬉しそうに、龍田は薄く笑う。

だがその笑みにはどこなく酷薄な雰囲気が漂い、いつも以上に凄味があった。

 

「第二、第三段階は?」

 

那智が次の出撃メンバーの構成を聞く。

彼女も何となく自分が選ばれる気がしているのだろう、その顔はいつも以上に凛々しく意気軒昂な様子だった。

 

「金剛、武蔵、長門、加賀、利根、筑摩、大井、神通、響、時雨、夕立、ジェーンで行ってもらう」

 

「ほう……? 大和型の本格的な実戦参加か。ふっ……昂ぶるな♪」

 

武蔵が初めての実戦、それも本格的な作戦への参加に嬉しそうな声をあげる。

まだ艦装を装備していないというのに、彼女の手は早くもまるでそこに自分の砲があるかのように何もない中空を撫でる仕草をした。

 

「赤城、飛龍、龍驤、隼鷹、比叡、霧島、扶桑、山城、早霜、春雨、天津風、時津風にはそれぞれ艦隊の支援をしてもらう」

 

「加賀さんに続いて私も久しぶりの実戦ですね。ふふ、腕が鳴ります♪」

 

残念ながら加賀とは同じ艦隊ではないが、赤城もまた久しぶりの出撃で嬉しそうだった。

これは演習に参加できなかった時も自己鍛錬に励んでいた成果を見せるときね、赤城は心の中で熱く闘志を燃やす。

 

「以上のメンバーで本作戦に臨む次第だ。何か質問は?」

 

「作戦の遂行時間は?」

 

既に艦隊のメンバーに選ばれていた時雨が作戦にかける時間を聞いてきた。

 

「一日だ」

 

「え?」

 

提督の返答に目を丸くして驚く顔をする比叡。

流石に一日とは思っていなかったらしく、隣にいた姉の金剛も比叡と同じく驚いた顔をしていた。

 

「今回の作戦に向けて多少ではあるが資材の備蓄に努めてきた。それを今回は全て使い潰すつもりで臨んで欲しい」

 

「だから一日?」

 

夕立がやる気に満ちた顔で提督に確認する。

資材使いたい放題で支援もある進軍なんてまるで祭りの様だ。

こんな艦娘冥利に尽きる事はない。

夕立は燃えに燃えまくっていた。

 

「そうだ。勿論それ以上かかる事も想定している。が、早く終わらせる事ができればそれに越した事はないしな」

 

「大佐、今回はやる気ありますね」

 

扶桑が微笑みながら提督に話しかける。

傍らにいた山城も頼もしく笑みを浮かべており、今回の作戦にかける意気込みが窺えた。

 

「おいおい、俺は仕事に対しては常に真摯な態度で臨んでいるつもりだ。ただ今回は久しぶりに本当の意味で全力だからな。多少気分が高揚しているのは否定しない」

 

「あはは、これは失礼しました」

 

飛龍が提督の皮肉っぽい答に面白そうに笑う。

 

「ふっ……いや構わない。憎まれ口を叩く余裕があるのは良い事だ」

 

「はぁ……」

 

「長月、大丈夫か?」

 

「ん……何せ私たち駆逐艦の腕の見せ所だからな。少しは緊張する」

 

「お前たちは基本遠征にばかり行かせていたからな。こういう時に緊張するのは仕方ないだろう。長月、行けそうか?」

 

「問題ない。伊達に古参のつもりはないからな。期待してくれ」ニッ

 

「そうか。頼んだぞ」

 

「ん」

 

長月は提督の言葉に頼もしい笑顔で親指を立てて見せた。

 

ギュッ

 

「ん?」

 

服を引っ張られる感覚に提督が後ろを向くと、何か不満そうな顔で彼の服の裾を掴んでいる菊月がいた。

 

「大佐、長月に声を掛けておいて私には掛けてくれないのか?」ムスッ

 

「いや、別にそんなつもりは……。ただ全員に声を掛けているとそれはそれで時間が掛かるしな」

 

「……そうか」シュン

 

「……」

 

ポン

 

「!」

 

あからさまに落ち込んだ表情をする菊月を見て提督は彼女の頭に手を置いた。

作戦開始前に士気を下げるわけにはいかない。

それも、落ち込んでいるのが自分を慕う部下なら尚の事だ。

 

「頑張れ」

 

「あ、ああ! 任せておけ!」

 

提督に励まされて菊月は先程までの落ち込んだ顔はどこへやら、一転して輝くような笑顔を見せた。

 

「む、大佐。菊月の頭は撫でて私はないのか?」

 

菊月が頭を撫でられるのを見て早速長月も口を挟んできた。

 

「いや、それを言うなら俺だって」

 

何故か天龍もその流れに乗る、明らかに条件反射的な行動だった。

 

「まぁ天龍ちゃんかっわいい♪」

 

「なぁ!?」カァ

 

「大佐、吾輩も当たを撫でてもらいたいぞ! 所望する!」

 

顔を真っ赤にした天龍を押しのけ利根も撫でてもらう権利を主張してきた。

 

「まさか私を撫でないとは言わないわですよね。た・い・さ?」ニコォ

 

大井も明らかに不機嫌なそうな笑顔で提督に迫って来る。

 

ギャーギャー、ワーワー

 

 

「……」

 

緊張感が満ちたブリーフィングだったはずなのに、いつの間か提督に撫でてもう権利の争奪戦となってしまったその有り様を提督は呆れた顔をして眺めていた。

そんな彼に長門が面白そうに笑いながら話しかける。

 

「ふっ、頼もしいじゃないか。一応それなりの規模の作戦だというのにこうもリラックスできるとは」

 

「そうだな。そしてお前も何気に腕に胸を押し付けてアピールしてこなければ、そのセリフも様になっていたんだがな」

 

「ふふ、私は強かなんだ」ニッ

 

(俺はこいつらの中で一番油断ならないのはお前だと思っているぞ……)

 

「分かった。全員個別に激励してやるから並べ。ただしそんなに時間は掛けないからな」

 

ヤッター♪

 

提督の提案に艦娘たちは争いを直ぐにやめ、一斉に歓喜の声を上げた。




まだE-4はやってません。
やっぱり諦めようかな……。
でも勲章欲しいし……。

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